燈火

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【神様が舞い降りてきて、こう言った】Other Story:B


周りに評価を聞けば、ほとんどが「良い人」と答える。
ただそれは言葉通りでなく、(都合の)良い人という意味。
頼まれごとは断らないし、不平不満も言わない。
事なかれ主義な自覚はあるが、性分だから変われない。

「ほんと損な性格してるよな、お前」
小学生以来の幼なじみは諦めたみたいで苦笑い。
「僕もそう思うよ」クラス全員分のノートは重い。
それでも手を貸してくれて助けられている。

「そろそろ断ることも覚えろよ?」無理だろうけど。
そんな副音声が聞こえるのは気のせいか。
「俺にできることなら手伝ってやれるけどさ」
わかるよな、と物言いたげな目が僕を射抜く。

最近、幼なじみからの小言が増えてきた。
僕も迷惑をかけるのは本意ではないから改めないと。
変われない、というのは思い込みかもしれないし。
そんな事を考えていた帰り道、事件は起きた。

まさに青天の霹靂。晴天から落ちた一筋の光。
その軌道をなぞるように降ってきた、一人の少女。
思わず空を見上げた。とても現実だとは思えない。
重力を感じさせない速度でゆっくりと落ちてくる。

ふわりと地面に横たわり、少しして目を覚ました。
「あの。大丈夫ですか?」問うと、少女は目を瞬く。
何も言葉を発さないまま、物珍しそうに周りを見回して。
「私は『あの』なの?」一瞬、理解ができなかった。

「たぶん違うと思いますよ」知らないけど、たぶん。
話を聞くと、封じられた力が名前に紐づいているらしい。
「一緒に調べてくれる?」期待に目を輝かせる少女。
「……いや」断るべき場面もある。今は心からそう思う。

7/28/2024, 9:40:48 AM