『病室』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「病室」の窓から見る景色はどうだい。
窓の外にある大きな木に座っている少年が尋ねてきた。
「最悪だよ。特にその木、大きすぎて邪魔。」
と答えた。すると少年は少し笑った。
"酷いなぁ。僕はこの木、結構好きなのに。"
だからそんなところにいるんだ、と思った。
"ねぇ、知ってる?この木、桜なんだよ。"
気づかなかった。今はすっかり緑に染まっていたから。
「そうなんだ。」
僕は俯きながらそう言った。
"知らなかったなんて残念。次の春までお預けだね。"
と少年ははにかんだ。
「次の春」か。待ち遠しいね。
そして病室には、無機質な音が鳴り響いた。
花瓶の水を差し替えて、造花の脚を濡らす。
今日も今日とて瞼の裏の世界から戻ってこない彼を見つめながら。
「あなたがどうしても起きないから、もうこの子も枯れてしまった。なんてね」
病室に、私の声が響く。花の色が幽かに白い壁を染める。
僅かに開け放された窓から、鳥のさえずりが迷い込む。
日に日に彼が白と同化していく。
ちょっぴり賑やかなお土産をそこに。まるでお供物のように。
今日も今日とてあの世から戻ってこない彼を想いながら。
「あなたがいつまでも帰ってこないから、もうあの子も巣立ってしまった。ホントよ」
霊園に、私の声が響く。線香の煙が、思い出の風化を早める。
乾いてしまった墓石に、蜘蛛が一匹。白い糸を伸ばして。
日に日に彼の遺した温もりが、白く儚く錆びていく。
入院し始めて、どのくらい経っただろうか。退院した時に社会に馴染めるかとても不安だ。まぁ、いつ退院できるか、まだわからないけど。仲のいい友達はどうしているかな。だいぶ時が経ったから、きっと友達もたくさん増えて楽しく過ごせているだろう。でも、それは困るかもしれない。友達が遠くに行ってしまって、自分のことを忘れるかもしれない。もしそうだったら、嫌だな。
嗚呼、病室(ここ)から抜け出せたら___
病室の窓から見える景色は、春から夏に移り変わっていた。
春には見事に咲き誇っていた桜も、すっかり花が散り緑色の葉っぱになっている。
私の命は長くないそうだ。お酒の味も知らないまま、尽きてしまうだろう。
それでも私は、窓から見える桜が咲き誇り、儚く散り、緑の息吹を見せてくれることを楽しみにしている。
桜の花は散ってしまうけど、また新しい葉が芽吹き、次の花を咲かせる。
それは私に「次の人生」への希望を抱かせてくれる。
私が死んでも、魂はきっと生きている。
そして、あの桜の花のように、いずれまたこの世界に還って来られるだろう。
そんな儚い希望に縋りながら、それでも私は今日もまだ生きている。
日差しが眩しくて気がつくとあなたが隣で微笑んでいた
そこは真っ白な壁に囲まれていて軋むベッドに横になっていました
"病室"
緩々と瞼を持ち上げる。カーテンを見ると、窓の外の太陽の光を吸い込んで柔らかく光を乱反射していた。
──今何時だ…?
すると扉の外から、コンコンコンと小気味良いノック音と飛彩の「失礼します。」という声が聞こえ、数瞬後控えめな音を立てながら少し開けてベッドの上に横たわる俺を見た。俺は「…んお。」と声を上げる。俺が目を覚ましているのを確認すると大きく扉を開けて入ってきた。
「やはり早いな。」
応えようと酸素マスクに右手を伸ばすと、手首をを捕まれ制止させられた。
「何度言わせる。そんな事せずとも、貴方の声は聞こえるし一言一句逃さぬようしっかり聞いている。」
そう言われ、捕まれた右手の力を抜く。力を抜いたのが伝わったのか、飛彩も俺の手首を捕んでいた手を離す。
「まぁな。年取ると目覚めが早ぇんだよ。」
などと揶揄すると飛彩が顔を顰め、言い返してきた。
「5歳しか違わないだろ。それに先の声、『ついさっき起きたばかりです』と言いたげな声色だったぞ。」
「う…。…随分と言うようになったじゃねぇか。」
意外な返しをされた。その上図星を突かれた。人の事をよく見て聞いていやがる。
「当然だ。そうでなければ貴方の恋人は名乗れないからな。」
──こいつやっぱり食えねぇヤツだ。
恋人になる前から分かっていたが、ここまで食えないヤツとは思っておらずさっきの様なやり取りをする度に驚く。
「そんな事は置いて、体温計。あと人差し指出せ。」
そう言って机の上に置いてあった体温計の中身を取り出し俺に差し出してきた。受け取るとポケットから酸素飽和度測定器を取り出す。左人差し指を差し出して酸素飽和度を測定する。体温より早く酸素飽和度が出た。挟んでいた指を離し、液晶に表示されたパーセントを見る。
「99%だ、もう外していいぞ。」
「はぁ、やっと外せた…。」
そう言いながら酸素マスクを外して飛彩に手渡すと今度は体温計が鳴った。
「どうだ?」
「…心配せずとも、平熱ですよ。」
わざとらしい敬語で返しながら体温計を手渡す。液晶の数字を見て僅かに肩を落とした。
「この分なら近々…、早くても昼頃には病室移動できるな。」
「そうか。」
と、一言だけ返すと不意に顔を近づけてきて、唇を奪われた。
「おはよう。」
おはようのキスのつもりだったのか、離れると柔らかい声色でそう言われた。驚いて一瞬反応が遅れたが
「…おはよう。」
と挨拶を返す。
──こんな恥ずかしい事を平気な顔でしてきやがって、やっぱり食えないヤツ…。まさか入院している間、毎朝こんな事されるのか?
と、恥ずかしがりながらそんな事を考えているとカーテンが大きな音を立てて開かれる。一瞬眩しさに目を細めるがすぐに慣れて、窓の外を見る。綺麗な青空が広がっていて、あまりの綺麗さに見蕩れてしまう。
「そろそろ行く。…ではまた後で。」
ハッと我に返り、扉の前に立つ飛彩を見て言葉を返す。
「あ、あぁ。…"行ってらっしゃい"。」
さっきのお返し、と俺も恋人らしい振る舞いをする。目を見開き驚いたが、すぐに柔らかな笑みを浮かべて
「あぁ、"行ってきます"。」
そう言って部屋から出て扉を閉めた。扉が閉められた後、思わず「はぁ〜っ」と大きな溜息を吐いた。サラリとされた言動の、あまりの恥ずかしさに早く退院したくなった自分と、恋人の様な事が出来てあまりの嬉しさにこんな時間がずっと続けばいいのに、と思う自分がいて、心の中が相反する感情でグチャグチャになり、
「あぁーっ!!」
と、声を荒らげながら頭を掻き乱す。
コロナ禍過ぎに家族が入院をした。
お見舞いに行くと、面会カードをナースステーションで書くことに。
看護師さんにカードを渡すと、ラウンジで待ってて下さい、本人が会いに行きます、とのこと。
家族は大部屋に入院していることは知ってたけれど。
(あ、病室には行けないんだ)
診察待ちのベンチには、おくるみでぐるぐる巻きにされた赤ちゃんを抱っこしたお母さんが、我が子の寝顔を愛おしそうに見つめている。
私は赤ちゃんを起こさないように、しっかり気をつけて、少しも振動を起こすまいとそっと隣に座る。
順番に座らなければならないから仕方ない。
ほんの少しギジリとなった古いベンチが憎らしい。
しかし、お母さんは笑顔で私の方を向いて、
「大丈夫ですよ。昼間はよく眠るんです。夜に寝てくれればいいのに」
と、言いながら、また愛おしそうに我が子に目をやる。
「そうですか。よかったです。可愛いお子さんですね」
と、何も返事しないのも変かもしれないと、顔の見えない赤ちゃんを褒めておく。
するとお母さんは嬉しそうに、
「えぇ、眠っている時が一番可愛いなんて言ったら贅沢ですよね。でも、こうも夜泣きが続くと寝不足で…」
と、子供のいない私にはわからない育児の悩みを話されて、何と答えるのが正解かわからなくて、頭の中がパニックになる。どうしよう。どうしよう。
さっき来たばかりの私。このお母さんが先なんだけど、呼ばれる気配はない。何か言わなきゃと思って
「大変なんですね。」と声にだす。
お母さんは嫌な顔一つしないで笑顔。
よかった。間違った事言ってない。とホッとしたのに、お母さんは会話を続けたいようだ。
「産むまでこんなに大変だとは思わなかったわー。主人もあてにならないし、実家には頼れないしでへとへとよ。」
こういう時は、『あぁ』『いいですね』『うん』『えぇ』『おぉ!』の中から適切なのを選ぶ。
『あぁそうですね』だと冷たく感じるかもしれない。
『えぇそうですね』だと知ったかぶりみたい。
悩んだあげく
「はぁ」
と、どちらとも言えない曖昧な返事をしたが、お母さんは気にする素振りもなく、
「今日だって、診察なのに、パパは、病院に来てもくれないの。ひどいでしょ?」
そう言われても…何と返事しよう。どうしよう。と悩んでる間にお母さんの方が先に答えがでたようで、
「仕事だから、仕方ないのはわかるのよ?でも、パパとしての自覚が足りないんじゃないかって思うの。」
もう、返事なんかいらないのかもしれない。
とにかく、うんうんと、首を赤ベコのように振る。
「私が専業主婦になっちゃったし、家族の為に働いてくれてるって思って我慢してるけれど、それでも、ねぇ?」
…?ねぇ?って事は返事待ちな感じ?どうしたらいい?
そうですね?かな?旦那さんもお辛いんでは?かな?
家族と仕事の両立なんてした事ないからわからない。
どうしよう。どうしよう。私の不甲斐なさを見抜いたようにお母さんは
「あなたお子さんいらっしゃらない?」
と、聞いてくる。即答できる質問でよかった。
「はい。居ません。」
すると、途端に私に興味を失ってくれたようで、
「そう…」と言って、また我が子を愛おしそうに見つめ始めた。
良かったような、なんかお尻がもぞもぞとする居心地の悪さの中、診察の時間をじっと待つ。
隣に座るお母さんが、我が子の頬を撫でたりお尻や背中を摩っているのを横目に見る。
幸せだわって声が聞こえてきそう。
ふと、お母さんが診察に呼ばれて行った。
赤ちゃんだけを連れて。
手荷物を置いて行ってしまったようだ。
どうしよう。すぐ前にいるから教えてあげようか。
それとも、赤ちゃんを抱いているからわざと置いて行ったのかもしれない。
受付の人にだけでも伝えた方がいいだろうか。
そうしよう。
私が少し腰を上げると、ベンチはまたミシリと音をたてた。
その音で、あのお母さんがふわりと振り返る。
そして、「あぁ、やだわ。また荷物置いてっちゃったわ。駄目なママですねー」と赤ちゃんに話しかけながらこちらに来る。何かおかしい。
おかしな理由がわかるとギョッとした。
声も出なかった。
お母さんは、荷物を取ると何事もなかったように、
「ごめんなさいね。」と、私に声をかけ、
「さぁ、行きましょうね」と、赤ちゃん人形に声をかける。
しばらくして私も、診察室に呼ばれた。
彼女とはまた違う病気ではあるけれど、心の病を治すために、この病院にいる。
私の病室に戻る。
さっきの診察で退院も近いと聞いて、嬉しいやら不安やら。
あのお母さんが、病院から出られる日がくるのだろうか?ここにいた方が幸せなのかわからない。
私は、私は?
この病室からでて、どこに行くのか?どうやって暮らすのか。もう忘れてしまった。
私の世界はこの病院の中。
私の自由は、病室の中。
どうやっても、何をしても生きるしかない病室でしか生きられないのに。
ひとり病室で考える。あの時の母の気持ちがよくわかる。もっと話を聞いてあげればもう少し気持ちが楽になったかな。病気と闘うことの辛さもっと受け止めてあげられたらよかった。自分が同じ立場になった時に気付くのはちょっと遅すぎた。
全身に激痛が走り目が覚めた。仰向けで目だけ動かして周りを見ると、不安そうな表情をした両親と、医師と看護師がいた。なるほど、そうか。僕は失敗したのか。生きているのは奇跡だと言われたが、僕にとっちゃ奇跡でも何でもない。ただの地獄だがな。なぜこんな時だけ運がいいのだろうか?なぜこんな時だけ神は救うのだろうか?涙が込み上げた。
「よく生きてたね。頑張ったね…」
「生きていて良かった…!」
…僕の気も知らないでそんなこと言うな。涙を抑えようと天井に目を向けた。ああ、駄目だな。真っ白に統一されたそれを見ると、僕の居場所などどこにもないような気持ちになる。点滴と、苦しみの匂いがした。
不思議病院そこは異世界で唯一異世界の奇病をもつ患者
通称異世界患者を受け入れる病院…
主に重度の異世界患者を取り扱っているのだかその患者
が病室から毎度脱走し担当医や看護師やヘルパーさんが
慌ただしくしているそんな時またしても緊急事態が起き
急いでその病室の扉を勢いよく開けたその瞬間驚くほど
病室が血で染って真ん中に立っていた患者は首よりした
から縦一直線に引き裂き開かれ内臓はえぐり出され
滅多刺しされた自○あとがその光景を見た男性の看護師
が悲鳴上げその場でうずくまり震えていた
その悲鳴を聞きつけた担当医とヘルパーが来て慣れた
手付きで対処し男性看護師の心と精神のケアに当たった
その後その男性は看護師を辞め別の穏やかな日常を
送っているっと
不思議病院での働き方が変わりった
そして異世界では自殺をした者又重罪の者はに
不老不死の呪いがかかる
不老不死の呪い…永遠の若さと人生と引き換えに
消える事無い痛みと苦しみを味わう…
という呪いだ…
その後その病室22番号室蛹殻黒百合は常に担当医又は
黒百合の専属のヘルパーが付く事が義務となった
最初で最後の両思いは、病室で。
手遅れだったのか
命拾いしたのか
わからない"恋"をしたことを、
ハッピーエンドだったのか
バッドエンドなのか
わからない"愛"を育てたことを、
ふと思い出すのは夏の夜。
汗と涙は白いシーツに吸い込まれて
朝まで濡れたまま。
#病室
目覚めて目に入るのは真っ白な天井。
何もかも吸い込んでしまいそうな、
汚れなんて一切ないような、
ただ、ただ、真っ白な天井。
僕はそんな天井と睨めっこして毎日過ごしている。
視覚はほぼ機能していない。
僕は視覚を失った代わりに聴覚が発達したらしい。
声で君の表情が分かる。
仕草で君の感情が分かる。
空気の振動。ただそれだけ。
だけど僕にとってはそれが全てだ。
誰がここにくるかだって、足音でわかる。
ほら、君がそのドアを開けるまで、
3.2.1
病室
貴方はこの病室で息を引き取った
貴方は死ぬ前に俺にキスをした
誰にも見られず俺以外誰も知らない最後の
言葉、それは酷いものだった
最後の最後に俺の心を抉ってきた
まだ冬の香りが残る頃
あなたは「桜が見たい」と呟いた
慌てて私は 桜の植木を 探しに走り回った
(——すでに覚悟はできている 頃だった)
近くの花屋 遠くの植木屋
寒さで耳が痛くなるほど 探し回った
車のドアの開け閉めに 飽きるほどだった
◇
やっと 見つけた 小さな苗木
その枝は 細く 細く まっすぐと伸びていた
まだ春の兆しがなく 葉すら存在していなかった
◇
すぐさま 医師に看護師に頼み込み
そっと病室に持ち込んだ 桜の苗木
くすんだ茶色の枝と土の匂い
それでも
あなたも 私も
そこに 満開の花びらを みた
《短編ポエム小説》
“病室”
ここでは真白な風が吹き抜ける
ドアを開けて全面がガラスになった
絶景の部屋の中に駆け回る数多の人の幻はあった
無機質で清潔な閑散とした無人の部屋に降り立つ
愛しくもあり懐かしくもあり微笑ましくもあり
いつでもあるようでいつまでも見つからなかった
何処にでもあるようで何処にも見つからなかった
あのときは笑っていた
あのときは悲しんでいた
あのときは安堵していた
横たわる人の姿が変わっても
駆け回る人の姿が変わっても
時代や場所が変わっても
誰かがそこで喜んでいた
誰かがそこで悩んでいた
誰かがそこで泣いていた
扉を開けると
ある人はありがとうと言った
閉じてまた開けると
ある人はお大事にと言った
閉じかけていると
ある人が頑張れと言った
閉じた向こう側から
ある人が頑張ったと言った
ノブから手を離すと向こう側から
ある人が頑張ると言った
みゆき
『病室』2023.08.02
いささか適当に渡された紙袋。その中には一冊の雑誌が入っていた。
確かに暇は潰れるかもしれない。病室という閉鎖された空間で、気晴らしというのも必要だろう。
しかし、その手段がエロ本というのはいかがなものだろうか。しかも、ナース服をはだけさせた綺麗なお姉さんが表紙というのは、新手の嫌がらせのつもりだろうか。
そんな文句を言うと、雑誌をもってきた彼はまるで心外だとでも言いたげな顔をした。
「みんなやってるんだから仕方ないだろ」
彼の言うみんなが誰を指しているのか。きっと彼より前に来て、同じようにお姉さんの雑誌を渡してきたあの男の事だと察した。しかも、雑誌の内容も被っていないのだから、すごいとしか言いようがない。
これでナースもののエロ本が二冊。他にこういった『気遣い』をしてきそうな男が四人ほどいる。彼らもきっと、同じジャンルのエロ本を差し入れてくることだろう。
「手を折らなくてよかったね」
にっこりと彼は笑う。何が言いたいんだか。
こっちは足を骨折して、あちこち打撲をしているというのに。
ネチネチ言うと、彼は困ったように笑って頭を撫でてきた。
「そのぐらいの怪我で済んで良かったよ。早く治るといいな」
そんな優しい言い方をされては、それ以上文句を言うこともできず、頷くことしか出来なかった。
そして最終的にエロ本は六冊になった。
病室には白いカーテンが引かれ、そこにはひとりの男性が横たわっていた。彼は慣れた手つきで、ベッドの上に散らばった雑誌を整理していた。彼の顔には深いしわが刻まれ、苦痛に歪んでいた。彼の身体は、病気との戦いに疲れ果て、やせ細っていた。
病室の壁には無機質な装飾が施され、空気は薄く、静寂が支配していた。男性は窓の外を見つめ、深いため息をついた。彼の目は青く、沈んでいた。彼は自分がいかに弱っているかを知っており、それが彼をますます悲しませていた。
彼は病室の中で孤独を感じていた。彼は家族や友人に会いたいと思ったが、彼らは遠く離れていた。彼は自分自身を責め、自分の選択に後悔した。彼は生きることができるかどうか疑問に思ったが、それでも彼は希望を持っていた。
病室からは医療器具の音が聞こえ、看護師たちの足音が響いていた。男性はそれらの音に慣れていたが、それでも彼は自分自身を取り戻すことを望んでいた。彼の体は弱っていたが、彼の意志力は強かった。彼は病気との闘いで勝者になりたかった。
彼は深呼吸をして、自分の肺が動くのを感じた。彼は自分が生きていることを実感し、それが彼を前進させた。彼は病室を出る日を待ち望んでいた。彼は自分自身に誓った。彼は病気を克服し、生きることを選んだ。
「病室」
自分が死ぬ時、病室の天井を長い時間眺めながら
あの世に行くのかなぁって、今日のお題を見ながら
ふと思いました。
「病室」
白く無機質な部屋、部屋の中心に一つベットがポツンと存在している。
そのベットの近くにはピッピッと電子音を流している機械があり、何もないこの部屋ではただ一つの音。
何も特徴のない真っ白な空間の中で白く清潔なベットに黒を白の中に散らせている存在が一人、長い髪は長いことここにいたことを象徴していて、その病的な程に白い肌は、太陽に当たっていないからだろう、この部屋は窓は一つしかなく、その唯一の窓ですらベットには届いていない。
本当に白で包まれた部屋。黒という存在が異質にも感じられるだろう。
だが、この部屋を異質に感じさせている張本人の長い睫毛に枠どられたその目は閉じられていて、その瞳を外に映し出すことは無い。
毎日見る自分の姿、もう飽き飽きしていまうほど見たこの身体。目を覚まして欲しいけれどどうしようもできない、本人ですらわかっていない自分に戻る方法。
私は高校の帰り道、歩道に突っ込んできた車に轢かれ、こんな体になってしまった。私の家は所謂大手企業の社長で、私は社長令嬢というもの。お母様もお父様も私のことは愛してくれないけどね、成績は必ず全て一位を取って、運動も、友人関係も、社長令嬢という私を望んでいて、それを遂行する。できなければ何があるなんて言いたくない、本当、あの人たちは周りに上手くやるからバレたりしないんだけどね。
私は望んでいない。あんな日々に戻るなんて。でも跡継ぎとしての私の利用価値はあって、目を開けることを望んでいる、?
嗚呼、毎度の事ながらだけど、愛してほしいなぁ。こんな私だけど、すごいねと褒めてくれれば何だってしたのに、私の存在を肯定して優しく頭を撫でてくれれば、もっと頑張ったのに、戻りたいと、そう思ったのに。
でももういいんだ。もう、遅いから。
本当は知っている。ただ戻りたいと願えばいいんだ。そしたらこんな自分を眺めるだけの日々はなくなるのに、でも、でもやっぱり、望んでしまっている、希望を持ってしまう、期待してしまう、あの人たちに、お母さんと、お父さんに。
もう一年くらい経つのかな、それでも二人が私に会いに来たことはない、ただただ広いだけの病室に飾られる花はない、見舞いの品だって一つも、私の目が閉ざされたあの日からずっと。
あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、ぁぁあ、なんで来てくれないの、なんで、もういいかな。
待って、眺めて、眺めて、待って、待って、待って、待った、待ち続けた、でも来なかった。この場所から動こうとしなかったけど。
看護師が換気として開けた病室にあるただ一つの窓、カーテンがひらひらと揺れていて、私の心境など露知らずに当たる太陽の光を気持ちよさそうに受け入れている。
私は窓枠を越え、空に向かって歩みだした。
重力のある世界に。
───グチャ......
そんな音が、最後に、何もいない世界に、木霊した。