病室の窓から見える景色は、春から夏に移り変わっていた。
春には見事に咲き誇っていた桜も、すっかり花が散り緑色の葉っぱになっている。
私の命は長くないそうだ。お酒の味も知らないまま、尽きてしまうだろう。
それでも私は、窓から見える桜が咲き誇り、儚く散り、緑の息吹を見せてくれることを楽しみにしている。
桜の花は散ってしまうけど、また新しい葉が芽吹き、次の花を咲かせる。
それは私に「次の人生」への希望を抱かせてくれる。
私が死んでも、魂はきっと生きている。
そして、あの桜の花のように、いずれまたこの世界に還って来られるだろう。
そんな儚い希望に縋りながら、それでも私は今日もまだ生きている。
8/2/2023, 11:36:58 AM