『無色の世界』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「これ、なーんだ?」
「?白いキャンバス」
「正解! 真っ白で、何にも描かれてない新品のキャンバスだ」
「何か描いてくれるの?」
「何がいい?」
「え? うーん、何がいいかな·····」
「この真っ白なキャンバスは君の世界だ。真っ白に見えるけど無色の世界。白く見えるのは君がまだ何もこの世界に意味や形を与えていないからだ」
「なんだか難しいな·····」
「なんにも難しいことなんかないさ。君の見たいもの、好きなもの、こうしたい、ああしたい、何でもいいから描けばいい。逆に見たくないもの、嫌いなものを描くのもアリだ。君の世界なんだからね」
「でも俺、絵の描き方なんて分かんないよ」
「絵を描こうとしなくていいんだよ。君の気持ちの赴くままに、画材だってなんだっていい」
「その前に、なんで俺が描くことになってるの?」
「君の世界を私に見せて欲しいんだ」
「いやいや、稀代の天才の前でそんな大それたこと出来ないって!!」
「·····見せてよ」
「·····っ」
「今を懸命に生きてる君が何を感じているのか、どんな世界を見ているのか、私に教えて欲しい」
「·····いいけど、下手だよ?」
「下手な絵なんてこの世には無いよ。絵はね、見る者に響くか響かないかだ」
「·····頑張ってみる」
F4号の白いキャンバスが部屋に持ち込まれて数日が過ぎた。そこにはまだ線の一本も描かれていない。
ゆっくりでいい、と言った。
描きたくなった時でいい、とも。
描きたいと思う。自分がどう世界を捉えているのか。
それを自分自身が知りたい。
「·····」
部屋を見渡して、唯一見つけた画材を手に取る。
一本の鉛筆で気の向くままに走らせた一本の線。
無色の世界にようやく色がつき始めた。
END
「無色の世界」
無色の世界
色がないと見分けがつかない。
家族感でも何色でって兄弟で分けてたり、
推しカラーは無色じゃ成り立たない。
やっぱ色がないと寂しい。
変化がないと面白くないね。
無色の世界
モノクロの写真に写る、あの人の姿…本当は、普通のカラー写真なのに、背景も、顔も、古い写真の様に、色が目に入らなくて…つい、この間迄、あんなに、想っていた筈なのに…そして、そっと、接吻して、愛の詞を囁いていたのに…
急に、告げられた、別れの言葉…何となく予感していて、覚悟していた筈なのに…あの日から、周りの何もかもが少しずつ色褪せ始めて、滲んでゆく景色と日常…そして、気が付くと、あの人の記憶が、どんどん遠い闇に吸込まれていく…
最近、よく言われる
『たまには休んでいい』
『よく頑張っているから1日くらい良いじゃないか』
『疲れた顔をしている。頑張りすぎだよ』
僕はそんなこと思わない
よく休んでいるから頑張るんだ
頑張っていないから1日も無駄に出来ないんだよ
疲れてなんていない。もっと出来る。
進まなきゃいけない
今まで進んでなかった分、進まなくてはならない
時は金なり。疲れた分はちゃんと払っている
進めなかった分、稼がなくてはならない
進まなければ何も稼げない
よく頑張ってるから休め。
そんなこと僕に言わないでくれ
僕より頑張ってる人なんて何億といるだろ
そんな人達に言ってくれよ
僕はよく休んでいる。
疲れの借金はちゃんと払っている
利子なんてあるのか?それは知らなかったな。
無意識に感情で払っている?
そんなことないだろ。
私は感情なら沢山ある
ああもうこんな時間だ。
早くやることをしなければ
時間が無い……
無色の世界ってのは、白と黒の2色だけしかない世界のことなのかな。もしそうなら、かなり味気ない世界なんだろうなあとも思うけど、案外この世界と大して変わらないのかなとも思う。色が無くてもたぶん、白と黒の割合とかで美しいとか格好いいとかが決まるんだろうし、色がある世界で抱ける感情は色の無い世界でも抱けると思う。
まずはハローワークに行って、自分に見合った条件の仕事を…無職の世界。
私腹を肥やすことばっかり考えて、国民の生活を守ろうなんてこれっぽっちも…汚職の世界。
有名なシェフが作ったらしいから、そりゃ高級な食材と豪華なビジュアルで…美食の世界。
あれ?このアーティストの名前、この漢字じゃないよね?確かに似てるけど…誤植の世界。
着るもんと食うもんは何とかなってるけど、住むとこはなかなか手に入んなくてね…衣食の世界。
生きてても何も楽しいことがなくて、何かに感動したり、思い悩むことすらない…無色の世界。
まずは働こう。
「人間の幸せは、愛されること、褒められること、役に立つこと、人に必要とされること。愛されること以外は、働いてこそ得られる」
てな言葉もある。
そして、世の中の理不尽に声を上げて、美味しいものをたくさん食べて、大好きな推しを作って、足るを知れば、人生に色がつく。
なかなか強引だが、あながち間違ってもいないような。
…ええ、行き当たりばったりで書きましたとも。
「無色の世界」
みんな、自分の色が、あるのに
俺だけが色が、無くなってしまった
視線の先には色の無い世界。無色の世界。
「…可笑しいなぁ…途中まで…色が見えてたのになぁ…
何を書いても何を塗っても…色が分からへんのや…。」
「…色が分から無くなったのは、アンタが迷うてるからや。
どんな事でもエェ。色が見付かるまで書き狂い。
迷うたらあかん。迷うことなくなったら、色が戻ってくる。」
俺は寝食忘れて、書き狂い出した。
色はいつ戻るかは不透明。
アァ…色の無い世界は怖いとこやな…
夏が来る少し前の、夜が明けるのが少しずつ早くなる季節が苦手だった。ずっと暗ければ、見ないふりができるのに、少しずつ明るんでいく空に急かされているような気分になる。今日も変わらず、ほんの少し開いたカーテンの隙間から白い光が漏れ始める。後悔でもない、虚しさでもない、焦っているわけでもない、ただ朝を待つだけなのに、こんなに苦しい。何度目かの寝返りを打つ、衣擦れの音がやけにうるさい。ほとんど埋まっていた顔をさらに布団の中に埋めて、光を全部遮断する「寝れないの」耳元で低い声が聞こえる。声の主に返事をすることもなく、暗闇に身を潜める「起きてんでしょ」少し不機嫌そうな声は諦めたようにその場を後にする。遠ざかる足音にホッとして、息を吐く「やっぱり起きてんじゃん」ぶわ、と広がるのは真っ白な世界と少し肌寒さを覚える外の空気「目、ギンギンじゃん」「うるさい」ようやく出た声は少し掠れている「呼べって言ってるでしょ」「雷蔵も寝てないじゃん」不貞腐れたような声は彼の顔を歪めるには十分で、捲りあげた布団にするりと入り込む彼を止める術はない「あ、ちょっと」「俺が隣にいるとよく寝れる、って言ってたの、お前じゃん」何も嘘はない、でも失言だったと今になって思う。ただ隣にいるだけなのに、侵食するように睡魔がやってくる。じわじわと色を変えていく「雷蔵」名前を呼んでも返事はない。夜勤明けの彼はすでに限界だったのか、小さな寝息が聞こえ始めた「あんたの方が寝るの早いってどういうことよ」呟きながらあくびを噛み締める、寺島印の安眠枕の効果たるや、伸ばした腕をゆっくりと彼に絡め目を閉じる「おやすみ」次起きたら、もう離したくないって伝えよう。
無色の世界
みずいろ、きいろ、あかいろ
どれもとってもきれいないろ
これは なにいろ か、わかるのに
ぼくは なにいろ か、わからない
限られた時間が、刻一刻と過ぎ去っていく。
しかし目の前にある真四角のキャンバスの中には、まだ一つの色も浮かんで来なかった。
下書きの線も、輪郭の丸も、なにもかも。
進まないもどかしさで焦れる思考に対して、どこか奇妙なまでに凪いだ胸のうちでは「そうだろうな」という無音の呟き声が数回こぼれてきた。
あまりにも聞き馴染みすぎる声の主へ、相づちを乗せる。
というか、難しいにもほどがある。
今の“私”を描き表せるような彩りを探そうとしても、そんなにすぐには見つからないモノであり、それこそ深く考えれば逆に見つけられなくもなるのだ。
突拍子もなく出される課題たちには、今までも散々手を焼いてきた。
が、だからと言って突然「自らの手で“私”を知れ」だなんて謎の超難関ミッションを課されるとは。
相変わらず出題者の、普段から変わり者だと呼ばれる人物が持つ発想は恐ろしい。
……今回も無事に、こなせるだろうか? 不安だな。
【無色の世界】
無色の世界の音は眠たげな鈴のよう
手を伸ばすとピトピトする膜があり
ちょっとわざとらしいお砂糖の匂いがする
小宇宙の飴玉のどこかの高原でひとり
遥かむかしに夢に逃げたはずが
いつからか素敵な星間旅行
同次座標のパニックな私へ
私は確かにここにいる…てんを繋ごう
まるで一瞬で世界が変わったようだった。
しかし、思っていたより、君のいない世界は、いつもと変わらなかった。普通にご飯を食べて、普通に寝て、ただ何か足りない。
そんな感じだった。きっと、君が死んだことを僕の中で、無かったことにしてたんだと思う。
そして、君がいなくなってから、2年がたち、やっと現実を受け入れられるようになった。その瞬間、今まで普通だと思っていたことすら、出来なくなった。
部屋にこもり、ご飯は食べなかった。
だから、僕はもうすぐ、そっちの世界へ行く。
もう一度、友達になろう。君に会うのが楽しみだな。
無色の世界
先生の腹部から、赤い液体が、
大量に流れ出していました。
その赤い液体は、灰白色の石造りの床を、
赤に染めていきました。
先生は、私の目の前で、床に崩れ落ちました。
私の手には、ナイフが握られていましたが、
そのナイフもまた、赤い液体に塗れていました。
床に臥した先生は、それでも、
何時に無く青白い顔で、
私に、力無く微笑みかけてくれました。
私は、斃れた先生の元に跪き、
そっと、震える手を伸ばしました。
その私の手も、赤に塗れていました。
私が先生を、苦しみのない世界へ
連れていきます。
そこは、無色の世界。
その赤い色を全て捨ててしまえば、
辿り着ける場所。
だから、怖がらないで下さい。
先生の腹部から流れる赤い液体は、
先生の手を、服を、床を、
止め処なく、朱に染めていきます。
先生の息は、次第に細くなり、
その瞳が閉じられました。
気が付けば、
先程迄先生を汚していた赤い液体は、
色を失くしていました。
次第に、周りの景色も、
少しずつ、色を失っていきます。
そして、私は、無色の世界へと、
堕ちていきました。
透明感だと褒め言葉なのに
無色って何かさみしいね
寂しい…物理的な空虚感
淋しい…心理的な喪失感
へぇ〜…
#無色の世界
無色の世界
先立った妻と半生を共にしたこの家も老朽化が進んでいた
住み慣れた我が家を離れるのは名残惜しいが、息子の手筈で近くのグループホームに移り住むことになった
引っ越しの準備で息子が部屋を整理していると、奥から一冊の古いアルバムが出てきた
開いてみると中には何枚かの白黒写真が綴じられていた
撮ったことを今の今まですっかり忘れていたが、妻と写る写真を見て昨日のことのように記憶が蘇った
それこそ確か家に眠っていたフィルムカメラで試し撮りした時のものだと思う
今ではもう無くなってしまった公園で妻と2人で出掛けた時のものだった
何の変哲も他愛も無い日常を切り取った写真
それでも無色の世界で微笑む妻は心の中で色鮮やかに映し出されていた
今思えば、あの頃の私の世界は、色がなかった。
廊下の隅や暗がりに見える「それ」と、周りにいる人々の気配。
みんな私を見てるようで見ていない。
「それ」は私を見ていても、近づいては来ない。
みんな私が不気味だと、怖いのだと言っていた。
何処かで聞こえるひそひそとした話し方は、人か?それとも「それ」なのか。
近くにいても、誰も傍にはいてくれない。
全てがどうでも良くて、全てがあるようで何も無い。
消えてしまいたかった。
無くなってしまいたかった。
そんな私に、あなたは言ってくれた。
「どんな君でも、君だから大切だ」と。
その言葉が、きっと、ずっと、聞きたかった。
頬を濡らす涙と一緒に、
私の世界は、その日、色を付けた。
無色の世界
無色の世界なんてこの世に存在しない。
色の中で唯一存在しない色が無色だから。
世界を色で例えるか。面白いな
赤は情熱、緑は平穏、黄色は笑顔、的な?
無色は、存在しない色だから…
何も起こらない世界…?つまんな。
この季節を愛でるには
僕はこの色を知らな過ぎるみたい
綺麗だ、と思う心はあっても
触れるにはもう遅すぎたかもしれない
淡い色が柔らかく
差す光は影さえも綺麗に映して
どこにも居場所は無いようで
ほんの少し寂しくもあった
歩く人々に風は優しく纏う
散る花、咲く花、
終わりとはじまりが混ざる季節に
僕は目を閉じるんだ
一瞬で無色の世界が出来上がって
ひとつ、深呼吸をした
透明にもなれない、鮮やかにもなれない
無色を纏う僕に
この季節は眩しすぎたから
無色の世界
(本稿を下書きとして保管)
2024.4.18 藍
「色付ける私たち」
何色もない私。色を知らない私たち。
夕暮れ時に手を繋いだ影は何色だろうか?
蝶を追いかけたあの日の記憶は何色だろうか?
カーテンの隙間から指すあの太陽の光は何色だろう?
私は私に問いかけた。
でも、見つからない。見つけられないのだ。
影の色も、記憶の色も、光の色も。
色ってなんだろう。こんなにも、色の名前が出てこない。今私が考えている。この気持ちは何色だろう。何色でもない。分からない。
りんごの色は、赤色で。紅葉の葉は赤色で。
赤と言っても沢山ある。
でも、目で見てパッと分かる色しか分からない。
この世界にとって色ってなんだろう。
実は何色でもないんじゃないか?
ただ、人間の目を通して見えている色が同じなだけで、実はこの世界に色は無いのかもしれない。
ただ、私たちの感情や、目に色と言う何かが隠れていて、私たちはこの無色で悲しい世界をカラフルに見せているだけなのかもしれない___。