今思えば、あの頃の私の世界は、色がなかった。
廊下の隅や暗がりに見える「それ」と、周りにいる人々の気配。
みんな私を見てるようで見ていない。
「それ」は私を見ていても、近づいては来ない。
みんな私が不気味だと、怖いのだと言っていた。
何処かで聞こえるひそひそとした話し方は、人か?それとも「それ」なのか。
近くにいても、誰も傍にはいてくれない。
全てがどうでも良くて、全てがあるようで何も無い。
消えてしまいたかった。
無くなってしまいたかった。
そんな私に、あなたは言ってくれた。
「どんな君でも、君だから大切だ」と。
その言葉が、きっと、ずっと、聞きたかった。
頬を濡らす涙と一緒に、
私の世界は、その日、色を付けた。
4/18/2024, 2:52:12 PM