『星が溢れる』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
星が溢れるほどの、満天の星空。
そんな、美しい夜空の下
私達は出会い、結ばれた。
・・・はずだった。
けれど、僕らは今離れている。
場所も、心も。
どんなに頑張ったって、もう結ばれない。
あまりにも切なく、悲しい恋。
「・・・ていう感じのストーリーで小説書こうと思っ
てるんだけど、どう思う?」
「いんじゃな〜い?」
「ねぇ、ちょっと聞いてる・・!?」
「聞いてる聞いてる〜」
「はぁ・・・もういい。別れよ」
「は!?」
「あんたといても全っ然楽しくないし!」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ!美幸!!・・はぁ。
本当に、その通りになっちまったなぁ」
満天の星空の下・・と言っても、都会の屋上。
とあるカップルの会話。
女性は深夜を照らす光へと落ちていき、
男は悲しみに落ちていった。
この話の意味、わかる?
「こうして会うのは久々だな」
天河タケルは口角を横に大きく開いて、ニカリと笑った。
暗闇に光るようなその笑顔は、最後に一緒に舞台に立ったその時と、なんら変わらないように見えた。
「そうだね、2年ぶりくらいかな」
「もうそんなになるか」
「劇団、先週解散したよ」
「そうか」
「あのことがあってから、ずっとそうなる気はしてた。あれから何回練習しても上手く合わなくて、次の公演、大失敗だった。SNSでも結構バッシングが酷くて、そのうちみんな辞めてっちゃった」
天河は黙って聞いていた。
何か言いたそうな素振りもない。
私がここまで来たのは、確かめたいことがあったから。
私は天河を真っ直ぐに見つめた。
「教えてよ。志乃を殺したホントの理由」
長い沈黙の後、厚いガラス越しで、天河はため息をついた。
残り5分、と看守が告げる。
天河タケルはウチの劇団でダントツの人気を誇る舞台俳優だった。
3年前にウチに入団し、瞬く間にトップに上り詰めた。
ルックスだけでなく、役をその身に宿したような演技が評価されて、すぐに映画やバラエティにも呼ばれるようになった。
一等星の溢れる芸能界でも、天河の輝きは一際だったようで、色んなメディアで活躍していた。
しかし、どれだけ仕事が増えても、天河は舞台に出るのをやめなかった。
ひとたび舞台に上がれば、全力で役を演じて、当然のように客を魅了する。
闘志を剥き出しにしてギラつくその目は、使命というより、執念に燃えているかのように見えた。
テレビに出始めるようになってから、特にその傾向は強まった。
台本を食らいつくように読んで、ブツブツと何かを呟いては、頭を抱える。
そんな時間が増えていた。
それでも舞台に立てば誰よりも凄まじい演技をする。
その姿が少し怖くて、でも美しかった。
ロングランの公演の千秋楽。
ラストシーンは天河の一人芝居。
主人公は、屋敷に火をつける。
音楽が流れて、主人公は屋敷の中で踊り続ける。
悶えるように、楽しむように。
演者のほとんどは袖にいて、食い入るように天河を見ていた。
怖いのに目が離せない、不思議な感覚だった。
音楽が鳴り止んで幕が下りると、演者が出てきて挨拶をする。
その時出てきたメンバーに志乃はいなかった。
探しに戻らないと、と思ったけれど、そのまま続けるよう指示があったので挨拶を済ませて楽屋に戻った。
そこで、着替えを済ませようとした時、ノックが響いた。
開けると、そこには警察の人が立っていた。
志乃の死体は見ることができなかった。
ただ、ナイフで心臓を刺されていたことと、殺されたのが舞台の間だということを知らされた。
その日は、着替えもそこそこにすぐに帰らされた。
起こったことに現実味が感じられなくて、ぼーっとしたままだった。
犯人を知ったのは、次の日だった。
大仰な見出しとともに天河の顔が、記事に載っていた。
動機については、痴情のもつれと説明されていた。
しかし、私は違う理由がある気がして仕方なかった。
天河の演技を思い出して、私は仮説を建てていた。
「完成させるため、だったんでしょう?」
天河の表情は変わらない。
室内に響く土砂降りは、拍手に似ていた。
星が溢れる
夜空に浮かぶ星達の中で私の目に映るのは
ほとんどが名前を持つ者達かもしれない。
今見ている星にも名前があるのだと思うと
何だか敬意を表して名前を呼びたくなる。
その名前をつけた人はどんな気持ちだったのだろう
どんな意味をその名前に込めたのだろう
名前を知っている星は少ないけれど
探してみたら運命を感じる名前があるかもしれない。
🍀星が溢れる
星がよく見える今日は1人物思いにふけるのもいいものだ。
こう言う日だからこそ、これからも自分を大切にできるように溢れかえった思考を整頓させていく。
【星が溢れる】
夜空を見上げると、あの人のことを思い出す。
「夜空の先には、星が溢れてるんだ」
あの人は、特に仲の良いでも尊敬している人でもなく、一度しか話したことはない。
それでも、あの人の言葉が忘れられないのだった。
何を思って、そんなことを言ったのかは分からないが。
暗くて何も見えない夜空の先に存在している数多の星の輝きを……いつか、私の瞳に映したい。
そして、再びあの人に会えたら、私の瞳を見せて、
「ほら、言っただろ」と笑う顔が見れたらいいな。
堪えきれぬ涙はすかさず
見上げて都心の空で拭う
眼と気持ちのやり場に良い
星が今夜はいくつか見える
分刻みの電車のように
星が流れ落ちていた
泣き虫が直るように
祈りを捧げていた
遠く離れた故郷の
夜空の思い出馳せる
拭いきれぬ涙はまもなく
下まつ毛の格子を抜ける
かすかに光る星の数だけ
こぼすくらいは 今夜は
「星が溢れる」
瓶に詰めていた僕の素敵なもの
僕にはこれが夜空に輝く星に見えたんだ
そうして、1個1個詰めてると沢山僕の大切な物が
いっぱいになって溢れてきていた。
きっとこれは幸せってことなんだろうな
物心のついた頃、祖母からきれいな箱をもらった。
木製で、彫り細工のされた箱、内側には赤いきれいな布が貼られていて、それはもう、宝箱のようだった。
その頃の私には一抱えするぐらいの、大きな箱。
でも中には何も入っていなくて、どうしようかと悩んでいた。
ある日、とてもとても嬉しいことがあった。
忘れたくなくて、ずっとずっととって覚えておきたくなる、そんなことが。
私はたくさんたくさん悩んで、その嬉しいことを書き留めて、小さく包んで箱にしまうことにした。
この日から、この箱は私にとっての宝箱になった。
楽しいことがあったとき、一つ。
嬉しいことがあったとき、一つ。
幸せなことがあったとき、一つ。
最初は数えるほどだったそれは、いつしか箱の底が見えない数になり、積み上がっていった。
結婚したとき、子供が生まれたとき、孫の顔を見たとき、増える宝物は、もう箱に入り切らないぐらい……。
ある時、孫娘が私の部屋に来て、私の箱を羨ましがった。
よく手入れしていたからだろうか、綺麗な鼈甲色に染まった箱が宝箱のように見えたのだろう。
一つ、約束をした。
遺言書にも残した。
私にはもう十分だから、これからはこの子の幸せを仕舞ってやっとくれ……。
穏やかに眠る祖母の顔を見て、涙が溢れた。
大好きな祖母だった。
出棺の前に、私に……箱の中身を棺に入れて一緒に燃やしてほしいといった。
中には何が入っているのか、私は聞いたことがない。
とても大切なものが入っているのだろう。
一度聞いたとき、中に入っているのは私の星だよ、と祖母は言った。燃やしちゃっていいのかと聞いたら、一つも余さず持っていくから、残さず箱から溢しておくれと言われてしまった。
献花が終わり、棺の上で箱を開ける。
中に入っていたのは、小さく丸められた無数の紙だった。
父も驚いた様子で、けれど母は小さく笑っていた。
一つ取って、開いてみた。
──娘が生まれた。
それだけ書いてあった。
これが祖母の言う、星なのだろう。
元通りに丸めて、返す。
一つも余さず棺に溢して、封がされた。
立ち上る煙を見上げながら、箱を抱えながら泣いた。
本当なら箱も、祖母は持って行きたかったんだと思う。
それでも箱だけは残してくれた。
あんたの星を、いっぱい集めるんだよと背中を押された気がした。
布団がもぞ、と動いたと思ったら眠そうに眉をひそめた男が顔を出した。まだ覚醒していないのか、んー、と間延びした声を発している。ほんとうに目覚め悪いなぁ、と考えながら髪を梳いていると目をぱちぱち、と瞬いた後に口が動いた。
「お前って夜みてぇ、だよなぁ……」
「はぁ」
あまり理解出来ずに、今度はこちらが間延びした声を出してしまった。当の本人はそんなこと気にしていないのか眠そうに目を細めている。
「夜って怖ぇ……じゃん?」
うん、と相槌を打ち静かに続きをまつ。
「でも包み込んでくれる優しさ? があるっつうか」
包み込んでくれる優しさ、不意に出た恋人の本音に愛おしさが込み上げてきた。頭を撫でている手に力が入る。
「そしたらあんたは星っぽい、かも」
「……ほし?」
なんでほし?おしえろよ、と騒ぎはじめる男。正直言いたくないが、どうせこの後二度寝して会話の内容なんてまともに覚えていないだろう。えーっと、という前置きをして話し出す。
「眩しくて仕方がなくて、絶対落ちてくるはずがなかったのに……なんでだろうね」
〝星が溢れる〟夜のなかであんたは一番星だったのに、見れるだけで良かったのにまさか降ってきてしまうとは。 そんなん、と直ぐに返事が返ってきた。
「俺が惚れたからに決まってんだろ」
「簡単に言うねぇ……まあ、あんたが言うならそーなんだろな」
んじゃ、俺起きるから、と告げると既に寝息が聞こえてきて笑ってしまった。時計を見ると時刻は5時。あと二時間もすれば起きてくるだろう、早速朝飯の支度をするために背伸びをして気合を入れる。
ふと窓の外を見るとまだ藍色ががっている空。目を細めれば夜に見える、なんて考えながらキッチンへと足を進めた。
「おはよ、やっと起きてきたの?」
休みだからって気抜きすぎじゃね?と言えばにやり、と思いっきり悪い顔をする男。嫌な予感がぴりっと背中を駆け抜ける。
「落ちてきた俺には優しく扱わねぇと戻っちまうぞ?」
「っはー……なんで覚えてんだよ」
やっぱり、深いため息がこぼれた。今日一日はこの話題でいじられそうだ。
「恨むなら俺の記憶力を恨むんだな」
てか今日の飯気合い入ってんな、と目を輝かせた恋人の顔を見てしまえばまあいいか、とどうでも良くなってしまった。なんだかんだ甘いな、俺。そう思いながらいただきます、と手を合わせるのだった。
星が溢れる
君が亡くなって空の星の一部になった。
人は亡くなったらお星様になるんだよ、幼い頃に母からそう聞いた事を思い出して何となく夜空を見上げた。
キラキラと輝く星々。僕も遠くない未来で死んだ時に星の一部になるんだろう。その時は君の隣のお星様がいいなぁ。君とまた、肩を並べて輝ける、僕らはいつも誰かの光だった。
君がいたから僕は居た。僕がいたから君は居る。
僕らが歩んだ軌跡は誰かの道標。いつも誰かの輝きに寄り添えるように。僕らはずっとその時まで生き続ける。僕らが憧れた一等星のように。
もし夜空がたくさんの星々を抱えきれなくて、夜空から溢(あふ)れそうになったら、きっと僕は君と一緒にすすんで溢(こぼ)れる。君となら星から溢れたって構わない、君の隣が僕の居場所だから。
僕は頑張った。今そっちに行くからね。
窓越しに輝く星々に優しい笑みをこぼした。
金木犀は踏まぬよう
灰色の 路地で
硝子細工に 細かな亀裂
蝋燭の火は 風の吐息に
ゆうゆら 揺れて
この素晴らき夜 忘るる夢に舟を漕ぐ
お題【星が溢れる】
タイトル【空のワイングラス】
「死んだら人は星になるなんていうけれど、厳密には違うのよ。確かに人は星になるわ。でもね、それは現世にほっておけないとか忘れられない相手がいる人だけなの。見守り続けるために、星になるのよ。それでね、星になった人は一度だけ他人の願いを叶えられるの。自分の存在を燃や尽くして消えるのと引き換えにね」
「だから、きっと私、死んだら星になるわ」
カーテンを締め忘れた窓から覗く夜空は、とても澄んでいて、まるで星が溢れるようだった。いつかの冬の寒い日に、夜の公園でふたりで泣きながら見上げた空と、その時の君の言葉をふと思い出した。
夜空を見る。
目に飛び込んできた美しい星屑がいつか落ちてくるんじゃないか、自分のものになるのではないかと、いつもワクワクしていた。
あれから数十年。私は天文学者となり、すっかり夢のない大人になってしまった。
手に入れたかった星空は背伸びしても届かない。
落ちてくる星は小さすぎて燃え尽きてしまうし、その他の溢れる星は私が手に入れるには大きすぎる。
そう、思っていたのだが。
私が新しい星を発見すると、世界は一気に輝きを増した。
その星は、生命がいる可能性が極めて高いとか。
私は二つの意味で、新たな星を発見した。
テーマ『星が溢れる』
7歳の頃、君と一緒に見たプラネタリウム。
北極星に目を奪われる君がかわいくて、ずっと眺めてた。
……なんて、恥ずかしくて言えないよ。
13歳の頃、キャンプで星空を見上げた夜。
別の班だったけど、君がこっそり来てくれたよね。
満天の星空に、夏の大三角形が眩しかった。
君の指先の熱を、今も覚えているよ。
16歳。高校で進路が分かれた僕ら。
18歳。まさか、同じ大学を選んでるなんて思わなかった。
また君と会えたのは、素直に嬉しかった。
だけど今、君の隣にいるのは僕じゃない。
六等星になっても、星はずっと輝き続けるんだったよね。
僕は僕の空で、輝いてみることにするよ。
大人になって、一人でキャンプへ行った。
ふと、子供の頃の記憶が蘇る。
君の横顔と、溢れるくらいに瞬く星々のきらめき。
テントの中でコーヒーを飲みながら、ふぅ、と白い息を吐いた。
オリオン座に、北斗七星。君が夢中になった北極星。
流れ星を見つけるたび、遠くへ行ってしまった君を思い出す。
今が過去になったとしても、僕は君を忘れないよ。
子供の頃の姿で微笑む君が、北極星を指さしてはしゃいでいるのが見えた。
#58【星が溢れる夜に】
今夜も、
天の川から溢れた星々が地上に流れ落ちている。
この頃の戦いで今日もたくさんの命が亡くなっているのだろう。
死んだ人の一部は流れ星になり、
大切な人の元に帰るという
地上に強く思いを残している程、
天の川から溢れて流れ落ちるそうだ
今夜こそ
あの人の星は流れ落ちてくるだろうか?
私はずっと待っている
星が溢れる夜を
せめてこの手で
星になったあの人を
受け止めることが出来たらと__
お題 星が溢れる
「結婚してください」
片膝をついて結婚指輪の収まる箱を彼女に差し出す。
絵に描いたようなプロポーズ、こんな大袈裟にするなんてと昔の自分は笑ったことがあるが。なんにせよそれほど本気になってしまったのだ。この人とずっと一緒に生きていたいことを。
沈黙が長くて、怖くて。おそるおそる顔を上げる。
彼女の目は大きく見開かれていて、その瞳の中にひとつ星が輝いていた。
その星の正体に気づいた時、星が溢れおちる。
星が溢れる 感謝の気持ちに
星が溢れる 清らかな祈りに
星が溢れる 夜の匂いに
星が溢れる 新たな生命に
どこに行こうとここに戻れる
大丈夫だよとあなたは微笑む
優しさに照れて僕はおどける
ほら、今その瞳から星が溢れる
垂直にキャンパスを貫く 一本の白い管
それは美しい乳の道
流れるものが忠誠か 愛情なのかは知らずとも
彼女が思い続けるなら
いつしか静止画の白い星も 溢れ出すのかもしれない
ー「牛乳を注ぐ女」を鑑賞してー
2023/3/16
ザラザラザラ
部屋の扉を開けると何かが瓦解して崩れ落ちる音がした。足には多量な小粒の感触がした。しかし部屋には何の異変も無い。だがそれも夜になると一変する。今は見えていない粒一つ一つが発光するのだ。
始めの頃は一粒二粒程度で蛍のようだった。次第に粒は増えプラネタリウムのように室内が星空に、そして天の川のように犇めいていき今では夜照明いらずである。眩しすぎて眠れやしない。今聞いた音から察するにもう足の踏み場などありはしないだろう。
この星が溢れる現象の発端は硝子コップだった。偶々行き会った青空市場で見つけたコップ。一目で気に入り購入した。その日の夜、コップの中に一粒の星が転がっていた。
#星が溢れる
星が溢れる中を時速200キロを越えて、その列車は進んで行く。
僕がこの列車に乗車したのは人生で2回目
一度目は20年前、親友と乗り、目的地に辿り着くことなく列車を降りた。
二度目は今この時、
妻と子供を連れて海水浴に海を訪れた時
溺れた子供を助け、僕は溺れ死んだ
それから今、この列車に乗った。
一度目と違い今回は目的地にたどり着いた。
「久しぶり」
「うん、久しぶり、ずいぶん背が伸びたようだね」「そりゃあ20年も経ったからね、結婚して子供ができたよ」
「そうかおめでとう」
「話したかったことがたくさんあるんだ」
「そうかゆっくり聞くよジョバンニ」
僕は親友に連れられその列車を降りた。