愛情』の作文集

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愛情』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

11/29/2024, 1:51:51 AM

母は子供達を皆平等に愛していた。
誰か一人を愛でる訳でも、蔑ろにするでもなく。母は持てる全てを子供達に与え続けていた。
だが母である前に、彼女はただの弱き人であった。与えられるものは限りがあり、その両の手は子供達を守るにはあまりにも小さい。
だからこそ、時に取りこぼし切り捨てなければならない事は仕方がないと、誰もがそう思っていた。
母である、彼女以外は。



今日もまた彷徨い歩く彼女を見下ろして、彼は小さく息を吐く。
じゃら、じゃらり、と体に巻き付く鎖を鳴らしながら、腕を上げて風を起こす。風に体を押し留められ、木々の騒めく音に気づいた彼女の子供達に連れ戻されていく彼女を見届けて、いい加減諦めてほしい、とぼやいた。

彼女は子供達を愛している。それは痛いくらいに分かっている。
愛情だけで救い守れるものなど、ほんの僅かしかない。それも分かりきった事だ。

よくある話。
彼も零れ落ち終わってしまった者の一人だ。
仕方がない事だと、彼自身も分かっていた。
今でも思い出せる。
笑い合い、話す声。母と兄を上の兄と妹と一緒に待っていた。
どこかで響く爆発音。停電。悲鳴。
崩れ落ちてきた天井から、咄嗟に妹を庇えたのは奇跡に近かった。
妹を突き飛ばし、代わりに崩れた天井に巻き込まれた。
隣で泣きじゃくる妹と、瓦礫の向こう側の弟。
まだ子供の兄には酷な選択だった。けれど聡明な兄だったからこそ、正しく選ぶ事が出来たのだろう。

――助けにくるから。必ず戻ってくるから。それまで頑張れ!

泣きながらも告げた兄の言葉に何と答えたのか、彼はもう覚えてはいない。答える事すら出来なかったのかもしれない。
しかし引き止める事だけはしなかったと、それだけは断言できた。激痛に霞む意識の中、どうか戻ってこないでと願い続けていたのだから。
そのまま彼は終わりを迎えた。迎えたのだと思っている。今際に聞こえた母の声は、一人の不安が作り出した幻聴であると願っている。
たとえそれが、普段の母とは似つかぬ強く荒々しい言葉だったとしても。


皆が戻っていった事を確認して、ゆっくりと地に降りる。
じゃらじゃらと音を立てる鎖が煩わしい。肉体を失い魂だけとなった彼が未だにこうして現世に留まっているのは、この全身に巻き付く鎖が留めているからだった。
何度か訪れた迎えも鎖を解く事は出来ず、こうして今も彼はこの場所で一人鎖が解ける日を待ち続けていた。


「こんにちは」
「あぁ、また来てくれたんだ」

聞こえた声に振り返れば、いつも訪れてくれる常世の迎えのモノ。しかし今日はその傍らに見た事のない黒い男の姿があった。

「なんだこれは」

眉間に深く皺を刻み、男は不機嫌を隠しもせずに吐き捨てる。男の視線が鎖に向けられているのを見て、確かにこれは見苦しいものだな、と苦笑した。

「解けない。鋏にも切れなかった」
「当然だ。鋏で鎖は切れん」

嘆息し、男は彼に近づいていく。その手にはいつの間にか黒い刀が握られており、躊躇いもなく男は刀の鯉口を切った。
だが男の動きが止まる。眉間の皺はそのままに怪訝を浮かべた目が鎖の先、彼女達が去って行った方を見遣り細くなる。

「腕が足りんな」

腕、と言われ、彼は己の腕を見下ろす。そこに腕はある。しかし左腕だけだ。
言われて、初めて腕が一本足りない事を彼は認識した。

「鎖の先?」
「そうだ。ただの執着かと思ったが、これは反魂だろう」

反魂。魂を呼び戻し、死者を蘇らせる術。
何故、と彼は首を傾げる。そこまで求められる理由が、彼には思い当たらなかった。
あれは仕方がない事だった。時折聞こえてきていた大人の声も何度も言っていた。
仕方がない事だ。兄の判断は正しかった。残った子供達を大切にしてほしい。
最近は聞こえなくなっていたが、それはつまり納得したからだと思っていた。
少なくとも母以外は彼の死を乗り越えているだろうに、一体誰が。

「切るのは容易いが、最悪術師が死ぬな」
「それは、だめ」
「分かっている。人間の死に我らが関わるわけにいかぬのだから、しばらくはこのままにするしかないだろう」

舌打ちして男は踵を返す。咄嗟に引き止めようと伸ばした彼の腕は男に届く事はなかったものの、じゃらり、と耳障りな鎖の音に、男の足が止まる。

「あの。誰が、ぼくを」

やはり、母なのだろうか。
母は子供達を愛している。それは今も変わらない。
彼を取り戻そうと手を尽くしてくれるような存在は、母以外に思いつかなかった。

「貴様の血に連なる者だ。それも複数のな」

え、と。気の抜けた声が漏れた。

「貴様の一部は術師の元にある。それを縁に戻るのも、この地に留まるのも好きにしろ」
「術が解けたら、また迎えにくる」
「術師が死ぬまでの時間だ。そう長くはないだろう。もしも術師が化生に堕ちたのならば、その時は切り捨ててやろう」

そう言って、常世のモノ達は去って行く。
一人残された彼は、受け容れがたい事実に呆然と立ち尽くし。


「見つけた」
「お母さん!おお兄ちゃん!こっちだよ」

鎖を引かれた。
突然の事によろける体を支えるように、逃がさないと閉じ込めるようにして背後から大きな腕に抱き留められる。

「ちぃ兄ちゃん。わたしよりも小さくなっちゃった」
「あの時から変わんないんだろ。ま、これくらいが丁度いいよな。抱き心地いいし、可愛いし」

大人になった下の兄と妹がくすくすと笑う。二人のその右手に巻き付く鎖を見て、彼はびくり、と肩を震わせた。
何故、と混乱する思考で彼は必死に考える。意味が分からなかった。優しかったはずの二人に巻き付く赤色の鎖の先が、己の左右の足にそれぞれ巻き付いている事を認めたくはなかった。

「あぁ、こんな所にいたのか。随分探したんだそ」

低い男の声。
記憶にあるより、大きくたくましくなった上の兄を見上げた。やはりその右腕に巻き付くのは朱殷の色をした鎖。その先が己の左腕に巻き付いているのを見て、彼の目に僅かに怯えの色が浮かんだ。
口元を歪めて、上の兄が軽く鎖を引く。下の兄に抱き留められているためにその身が倒れ込む事はなかったが、己の意思に反して持ち上がった左腕を上の兄はそっと手に取り、唇を触れさせた。

「帰ろうな。父さんはいなくなってしまったけど、俺達がいるから寂しくはないだろう?」

何処までも優しい声音。それに底知れぬ恐怖を覚え、かたかたと体が震え出す。

「お母さん!おお兄ちゃんがちぃ兄ちゃんを怖がらせてるよ」
「怖がらせるつもりはなかったんだが」
「兄貴、大きくなったからな。見下ろされるのはけっこう怖いと思うぜ?」
「大丈夫よ。急に皆が来て少し驚いてしまったのでしょう。ずっと一人だったから安心したからかもしれないわね」

柔らかな、記憶のそれと変わりのない声。
そっと左腕が離される。背後から抱き留めていた腕が離れていく。
そうして微笑む彼女が――母が目の前に来て、そっと彼を抱きしめた。
抱きしめられる前に見えた彼女の右腕に巻き付く柘榴色した鎖の先は、きっと己の胴に巻き付いている事だろう。

「迎えにくるのが遅くなってごめんなさいね」


母は子供達を皆平等に愛していた。
そして子供達も母を愛し、兄弟を愛していた。
ただそれだけの事。少し違うのは、その愛情が他の誰よりも深く、重い事だけ。
父はいなくなったと兄は言った。彼女達を止めてくれる人はもう、誰もいない。

「迎えに来てくれて、ありがとう。おかあさん」

目を閉じて、彼は母の背に左腕を回す。
そのまま抱き上げられる。母が歩く度にじゃらじゃら、と鎖が音をたてた。

絡み付く鎖のような愛情は、あの時の瓦礫よりも重くのし掛かる。
諦め全てを受け入れながら、彼は密かにこの終わりが少しでも早く来る事を願った。



20241128 『愛情』

11/28/2024, 5:25:32 PM

愛情

「あったかい。やっぱり愛情だね」
「…料理を温めるのは熱だと思います」
「何でそんな、大昔のSFのロボットみたいなこと言うの⁈」
「大昔のSFのロボットみたいなものですので」
「君は法律上完全に人間だし、それ以前に私にとっては代わりがいないひとなんだよ」
「嬉しい気がしますが、加熱は重要です。それについて大事なお話が」
「何? 別れ話?」
「違います。この間、俺が当直でいなかった時、ベイクドビーンズの缶をそのまま食べていましたよね? 温めずに缶からそのまま。あらゆる状況証拠からそのように判断しました」
「…だって、自分のために何かするって面倒なんだもの」
「面倒ですか」
「うん、面倒くさい。一人でいた頃も缶詰ばっかり食べてた。ハウスキーパーさんが強引に作り置きしてくれなかったら死んでたかも」
「…これは缶詰と比べてどうですか」
「比較にならない美味しさだね」
「ただの温かいオートミールです」
「何かちゃんと麦の味がする。あのね、壊れてる人間って味が分からないんだよ。身体にいいか悪いか、美味しいかまずいか、そもそもそれを食べたいのかどうか。素材の味も分からなくなって、塩分と糖分しか感じ取れなくなる。そういう時にまともなもの、つまり誰かが誰かのために作ったものを食べると、ものすごくほっとする」
「ほっとしますか」
「うん。加熱によるものかもしれないけど、ここは誰かの、つまり君の愛情が私を温めているという考えを推したい」
「…お願いがあります」
「叶えたいです」
「ご存知のとおり、明日当直です」
「だよね。…いつも思うけどこの世が終わりそう」
「温めたらおいしいものを作っていただくので、食べてください。温かいものを食べてお風呂に入って、ほっとしてほしいです」
「…善処します」

「ただいま帰りました」
「おかえり」
「…やっぱり愛情ですね」
「何が?」
「あったかいです」
「…私も今、ものすごく君の温もりを感じてる。ということは君の熱が私に流れ込んでいる、つまり君の体温が私より高いということだと思うんだけど」
「実際はそのとおりですが、とてもほっとしています。ここはあなたの愛情が俺を温めているという考えを推したいです」
「素晴らしい。やっぱり愛情だね」
「はい。…ところで、昨日はちゃんと食べましたか?」
「…あんまり食欲がなくて…」
「今日は? 何か食べましたか?」
「…本読んでたからまだです…」
「じゃあ、一緒に温かいものを食べましょう」
「…怒らない?」
「読書に夢中になるのはごく自然なことです」
「ありがとう。…あのね、君のこと大好きだよ」
「俺もです」

 遅めの晩ごはん:しっかり温めたハウスキーパーさんの力作スープ(昨日食べるはずだったもの。豚の塊肉とたっぷりの野菜、押麦入り)、ホウレンソウとポーチドエッグのサラダ(卵たっぷり)、カリッカリに焼いたバゲット(ちょっといいバター付き)、山盛りの愛情

11/28/2024, 1:36:29 PM

私の癒しは末娘の背後から忍び寄って、彼女の肩に自分の頬をくっ付けること。
13歳の彼女はどう思っているのだろう。

「お母さんの癒し。ぴたっ」
「ヒィエエエエッ」
まるで自分がバケモノに遭遇したかのような発声だ。

(失礼なやっちゃな)と思いつつ、私に頬を触れさせたままでいるところを見ると、彼女はそれほど嫌がってはいない。
照れ隠しで奇声を発してるだけなのかも。期待してしまう。

お母さんの愛情を、娘が奇声を発して受け止める。

うん、平和だから良き。




愛情

11/28/2024, 11:09:48 AM

これからも共に


 先日、エミール幹部から茶会の招待状を受け取った私は返答をどう返したら良いのか分からなくて、困っていた。受け取った後すぐにヴァシリーに相談した。ヴァシリーは真剣に話を聞いてくれて、その後に「どうにかする」と言って立ち去った。けれど、それから数日間会えていない。
 そのせいか、最近は何をする気にもなれない。幸いなことに任務はここ数日入っていない。
 自室でぼんやりと過ごしていると扉をノックする音が響いた。扉を開くと、心配そうな顔をするスピカとルカがいた。

 「ミル……いつもより顔色悪い」

 「朝食、食べてないだろ。だから持ってきたんだ」

 そう言ったルカの手には盆にのせられたコーンスープと小さなパンが一つあった。

 「これだけでも食べられないか?」

 「……ごめん。食欲無い」

 「だめ。せめて、スープだけでも飲んで。じゃないとミルが倒れる」

 真剣な顔でスピカがそう言ってくる。食の大切さは幾度もヴァシリーから教わった。どれだけ体調が悪くとも、食べれる時に食べておけと。
 でも、今の状態ではとてもじゃないけど……。

 「ミル。いつも元気なあんたが、どうしたんだ?俺たちじゃ力になれないか?」

 「……」

 「話すだけでもきついか?」

 「……誰にも話さないと約束するなら」

 「!ああ、約束する」

 「主に誓って、誰にも話さないよ」

 二人の言葉に私は「ありがとう」と返す。
 このまま塞ぎ込んでいるより、少しでも話したら心が少しだけでも楽になれるようなそんな気がしたから。


 彼らを部屋に招き入れ、私は先日のことを話した。彼らは「幹部から茶会に誘われる」ことに驚き、顔を見合わせていた。
 私の前にはコーンスープの入った器と小さなパンが置かれている。相変わらず食欲はおきない。

 「幹部からの茶会の招待か……俺たちからすれば、とても光栄なことだ。だが、あんたのその様子からして喜んでいる感じはまず無いな」

 「うん。むしろ嫌がっているよね。ヴァシリー幹部はどうにかするって言って、数日は見てないし……」

 「茶会に対する恐怖と育ての親に会えないことに対する不安が、ミルの今の状態を生み出したってことか」

 ルカのその発言に、私は納得した。茶会に誘われたことに怖い、という感情もあるけれど。
 ヴァシリーに会えていない。それだけでこんなにも寂しくて、心細い。

 「ヴァシリー幹部は何処に行ったんだろうな。弟子がこんなにも怖がってるんだから、側にいた方がミルにとっても楽だと思うんだが」

 「俺もそう思う……でも、幹部には幹部の考えがあるんだと思う。どうしたら、ミルのことを守れるか。だから、何の理由もなくミルの側を離れることは無いと思う。だって、ヴァシリー幹部はミルのことをすごく大事にしているから」

 「確かに。ヴァシリー幹部はミルのことをものすごく可愛がってるな。何かと理由をつけて、側にいさせることが多いし。……そのうち、戻ってくるとしか俺たちは言えないけどさ、こうして側にいることは出来るからさ」

 ルカはにかっと笑う。スピカも隣で頷いた。

 「俺たちもミルに何かあったら助けたい。だって、友達だから。……ヴァシリー幹部みたいに強くないし、頼りないかもしれないけど……少しでもミルの力になりたい」

 私は二人の顔を交互に見た後、目の前に置かれたコーンスープに視線を落とす。ほわほわとさっきよりも薄い湯気をあげるそれに私はスプーンを入れ、一口分を掬う。そして、それを口に入れた。
 少し冷めているけど、優しいコーンの味が広がった。
 彼らの顔を見れば、少し驚いたように目を見開いて私のことを見ていた。

 「……美味しいね。このスープ」

 私がそう言えば、スピカは少し微笑んで頷く。

 「そうでしょ?だから、ミルに飲んで欲しかったんだ」
 
 「けど、無理して全部飲まなくていいからな」

 「ううん。ちゃんと全部飲むよ。パンも食べる。……ありがとう。二人とも。話を聞いてくれて」

 「大したことはしてないさ。な?スピカ」

 「うん。俺たちは話を聞いただけ。でも、それでミルの心が少しでも楽になったなら俺たちは嬉しい」

 彼らの優しい言葉に目の奥が熱くなった。

 「これからもずっと一緒にいてくれる?スピカ、ルカ」

 「当たり前だ/もちろんだよ」

 当然のように返してくれるその言葉が何よりも嬉しい。
 その想いに報いるために何があっても、彼らのことは守ってみせる。彼らが困れば、私が一番に手を差し伸べる。
 互いのために想いあい、行動する。それが私の信念なのだから。

11/28/2024, 10:38:46 AM

【愛情】

2月14日はバレンタイン、好きな人に愛情を込めてチョコレートという菓子をプレゼントする日である。
私も興味の無い同級生に3枚の板チョコレートを貰ったは良いものの、どう処理しようかと頭を悩ませながら家に帰ると妹が駆け寄って来た。

「お姉ちゃん、その板チョコ持ってきて欲しい!手伝って欲しいことある!」
「良いけど、手伝って欲しいことって……あれ?牡丹さん、どうしたんですか?」
「実はね……?」
「牡丹さんが陽稀くんっていつも日向ぼっこしてる男の子にチョコ渡して告白したいんだって。でもさ私達チョコに興味無いけど毎年チョコを渡されるから、今年はそれに消費する事にしたから!」
「ありがとうございます……」
「まあ良いけど、そういう事は連絡してよ!言ってくれたらもっと買ってきたのに」

牡丹さんという女の人は私の一番上の姉の大学の同級生で、陽稀くんという男の人に恋をしている。話を聞きながらチョコレートを溶かしていると一番上の姉が大学の講義から帰ってきた。

「ただいま〜!って牡丹がなんでいるのよ?」
「陽稀くんにチョコ渡して告白したいんだって。だからいらない板チョコ溶かして作ってんの!」
「あんた達、それ早く言いなさいよ!」

姉は文句を言いながらも牡丹さんに協力してくれた。しばらくしてチョコが出来上がって、牡丹さんの身だしなみも彼好みにして牡丹さんは「陽稀くんを私の彼氏にします」と言って告白をしに行った。

その後牡丹さんと陽稀さんはお付き合いを正式に始めたようで二人はいつも幸せそうに近所を歩いている。
そんなバレンタインにひとつの愛情が功を奏した話。

11/28/2024, 10:09:06 AM

海に行きたいんだ、虎雄はベランダで空を見ながら独り言のようにつぶやいた。片手には、いつから持っているのか分からない飲みかけのビールがある。
洗濯物が風にゆられてはためいている。

虎雄と私はずいぶん海に行った。行って砂浜を並んで歩いた。取り留めもないことを取り留めもなく話していると、話しながら、歩きながら、夢をみている気がしてくる。
二人して、このままどこかへ迷い込んでしまおうか、手を繋いだまま虎雄は私をもう片方の手で抱き寄せた。

この人は、かわいそう。かわいそう。

自分の手が、虎雄に巻きついて離れなくなりそうな気がして慌てて力をゆるめた。
大丈夫。大丈夫だから。
誰に言うでもなく、私は心の中で呟いた。

11/28/2024, 10:00:15 AM

一番大事で一番難しいのは自分を愛してあげる事。
自分を愛してあげられない人は他の人も愛せないから。
—————-
お題:愛情

11/28/2024, 9:58:23 AM

「愛情」

「ニンゲンしゃん!」「だいしゅきだよー!」

この小さな機械は自分に向かってよくこう言う。
嬉しいと同時に、なんで出会ってそう長くない誰かをそんなふうに思えるのか不思議でたまらなかった。

だからつい、聞いてしまった。

「なんで好きなんだ?」
「だってねー、だっこちてくれるからー!」
「それだけ?」「んーん。」

「えとねー、ごはんたべたりねー、おちゃべりちたりねー、いぱーいたのちいから!かわいいて褒めてくれるから!」

「もし、抱っこもせず、楽しいこともしなかったら?可愛いって褒めなかったらどう?それでも好き?」

「だいしゅきだよ?なでしょなことゆーの?」
「……ごめん。ちょっと気になっただけだよ。」「んー。」

「ね、ニンゲンしゃん!ニンゲンしゃんはボクのこと、しゅき?」「……うん、好きだよ。」「だいしゅきていってよー!」「大好きだよ。」「やたー!」

……好きってなんなんだろうな。いまだにわからない。
勝手に期待するだけして、勝手に失望したら嫌いになる。
それをただ繰り返すだけなのに。

「ニンゲンしゃんがいぢわるでもねー、ボク、ニンゲンしゃんだいしゅきだよ?」「……なんで?」「だってねー、⬛︎⬛︎ちゃんのおともだちだから!」「だいじなこの、おともだちだからー!」

……そうか。この子は目一杯愛情を注がれて、大好きな家族がそばにいて、猜疑心を持つ必要もなく暮らしてきたんだ。これ以上ないくらいに純粋なこどもだから、自分のことを好きだと言った。

可愛い。羨ましい。自分だってこんな風になりたかった。

なんで自分はこんなこと考えてるんだ。
ただ今すべきなのはこの子の気持ちを純粋に受け止めること。
それだけなのに。

「変な奴に騙されちゃ駄目だぞ?」「んー?……ん!」

「ニンゲンしゃ、おなやみ?」「え、いや……?」
「しょーなの?よかったー。」「ぎゅー。」「??」
「むずかちいおかおだったからぎゅーちたの!」

「よしよし。ありがとう。お兄ちゃんはかわいいな。」
「かわい?やたー!」「ニンゲンしゃんもかわいーよ!」
「もいっかい!あいじょーいぱーいのぎゅー!」

あったかい。かわいい。……なんだか心が満たされていく。
「じゃー、いっちょにおひるねちようねー!」「はいはい。」

こんな日がいつまでも続けばいい。
そう思って、自分と小さな機械はひとときの眠りについた。

11/28/2024, 9:55:26 AM

愛情の数値を、紙に書いて提出する学校があった。

導入された経緯などは、生徒たちにはよく分からないのだが、体温を確認するみたいなものだろう。
ちなみに隣の欄は「今日の体温」だ。
その人は女の子だったので、丸くかわいい字で数字を書いていく。

体温 36.4
愛情 36.4

親から示された愛情を、このように100分率で書いていく。36.4%受けてきた、という意味だ。
子どもの立場を鑑みると、愛情とは与えられる側だから、このような記述となるだろう。
体温と同じ結果になる。
風邪を引いて体温が上がると、いつもよりやさしくなる。大丈夫? 苦しくない? と親は子をわが子のように心配し、甲斐甲斐しく接する。
しかし、風邪が治ると愛情の数値が目減りする。
不機嫌になり、意見の相違があるとケンカをするようになる。

「先生、愛情って何ですか?」
まるで、勉強をする意味を他人に問うように、担任の先生に尋ねた。そうすれば、いつものように教えてくれる。そうだと思い込んだ。
しかし、今日ばかりか今月の担任は、げんなりとした顔つきである。美術の時間で習った言葉。グロッキー。
「入院すれば、分かるようになる」
「入院しないと分からないってことですか?」
子どもの質問を無視して、
「ああ……、今すぐにでも入院したい」と独り言。
「そしたら、金を稼がなくても親がお金をくれるようになる。もう残業したくない」

先生は頬杖をついた姿勢から、自分の顔をサンドイッチの具材のようにした。横方向からぐちゃっとした濡れた唇が縦に開いた。その中から覗いた前歯が汚い。そしてヤニ臭い。

こんな大人にはなりたくないなあ。
目が悪く、教室の最前列……。
くじ運も悪く、教壇の目の前が定位置である生徒はしばし心のなかで毒づく。
そして嘘だらけの紙切れに向き直った。
「もう辞めたい……」
「うるさいです先生」

11/28/2024, 9:49:40 AM

書きたいのでメモ
「愛情」

これとべつの書きかけ達は確定で取っているお休みの日に
書きます:)

11/28/2024, 9:47:06 AM

題 愛情

「好きだよ」

そんな言葉は呪いだ。

だって・・・だって、何とも思ってなかったのに、そう言われた次の日から意識してしまっている私。

しかも、告白した当の本人は話しかけてこないくせに、私のことチラチラ見てる。

今日だけで教室で何度も視線がかみ合ってしまっている。

そんなこと言わないで欲しかった。

だって、友達だったから。
凄く大好きな友達だったから。

間違いだって言ってくれないかな。
そんな考えすら湧いてきてしまう。

ダメだよね。
相手が真剣に言ってくれたなら考えなきゃ。

そう思うのに・・・そう思うのに、考えられない。

恋愛って何?今いくら考えても答えなんて浮かばないよ。

相手のこと、大事だし、友達としてとても大切にしていきたいけど、それ以上・・・それ以上かぁ。

はぁ、とため息を一つ。

無理だ、私には今気持ちに応えることは出来ない。

でもそしたら友達じゃなくなっちゃうかな?
チラッと相手を見ると、また視線がかち合った。

・・・気まずい。

気まずさ絶好調・・・。

どうしたらいいのっ?!

私は授業中にも関わらず頭を抱えてしまう。

友達として、ずっと仲良くしていたいのに、無理かなぁ?
そう言ってみる?そしたら受け入れてくれるかな?

友達からでいいからって言われちゃうかな?

そしたら・・・また考えなきゃいけないよね。

頭が混乱して仕方ない。

とにかく今分かっていることは一つ。

好きだよって言う言葉は呪いだ。

私の気持ちは今すごーく縛られて囚われている。

この終わりのないように見える答えのタイムリミットはもうすぐ近づいている気がする。

終業のホームルームまでには答えを出さないとなぁ。

私はもう一度ため息をつくと、どうしたらいいのか再び出口のない回答を絞り出すべく考え始めた。

11/28/2024, 9:43:51 AM

途中書きです。すみません。

本物の愛情は見返りを求めちゃダメらしい。
私の愛情は偽物?

「愛情」

琴音とは中学生からの親友だ。
寡黙な琴音とおしゃべりな私。

11/28/2024, 9:39:07 AM

愛情。それは流れ星のようなもので特別なのだが、そこにあってあまり気づかないものである。

11/28/2024, 9:30:23 AM

9愛情

とても苦しくて、とても辛くて、でも愛されてると思ってるから

今日も生きてる

11/28/2024, 9:23:23 AM

別に輝く必要なんてない。
朝昼は太陽があるし、夜は眩しいだけでしょ。
むしろ世界にそってるわけで。

ただそこにいればいい。
無理に輝かなくてもちゃんと見えてる。

11/28/2024, 9:22:56 AM

キミを誰よりも幸せにしたい。
いつも笑顔でいられるように、してあげたい。
いつでも僕はキミの1番の味方でいたい。
それくらい、僕はキミを愛してる。
でもね、キミが間違ってるときは、間違ってる。
ってきちんと言うよ。
だってそれが、キミに対する僕の愛情だからね。

11/28/2024, 9:14:38 AM

書き終わりました。なう(2024/11/28 20:15:37)
▶27.「愛情」人形は夢を見る

26.「微熱」
25.「太陽の下で」
:
:
1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬

---

俺たちは街道から遠ざかるように森の入り口から端に沿って移動した。
陽のあたる場所に腰を下ろす。

「それで、だ。聞きたいことはたんまりあるが後回しだ。‪✕‬‪✕‬‪✕‬、お前寝るんだよな?その間俺は夜に火を燃やし続ける。他にやって欲しいことはあるか。それと時間はどのくらい必要だ」
「私は目から光を、熱は体全体から取り込んでいる。なので日のあるうちは、それに合わせて私を動かして欲しい。火の大きさや距離は通常の野宿と同じでいい。期間は2日といったところだろう。シブの都合で私から離れることは構わない」

「話が早くて助かるね」
「私もシブの理解が早くて助かる」
「そりゃプロでベテランの仕入れ屋だからな」

「私を起こす必要性が出てきた時は、先程のように強く叩いてくれ。攻撃されたと検知して覚醒する」
「おう…って叩いて悪かったな」
「問題ない。他にないようなら休止形態に移行する」
「ねぇよ。さっさと寝ろオヤスミ」

日光の向きを確認していた‪✕‬‪✕‬‪✕‬は俺の言葉にピクッと動きを止めた。

「それでは頼む。おやすみ」

表情も変えずに同じ言葉を返し、‪✕‬‪✕‬‪✕‬は太陽を見ながら横になった。
フツーのやつなら目なんか開けてられねぇはずなんだが。

「ピクリともしねぇ。パッと見死んでるな」


元々野営の準備はあるが、
長い2日間になりそうだ。





太陽の光と熱をめいいっぱいに受けながら、人形はシステムを少し変えながら休止形態へと移行を進めていた。

死んでる、という言葉が微かに耳に入ったが、もう返事もままならない。

(修復機能を右足首に集中、眼瞼固定。
待機形態への自動移行停止。定期的な意識の浮上を設定)

✕‬‪✕‬‪✕‬は深い眠りにつき始めた。

意識が閉ざされていく中、人形はいつものように、これで良かったのか?と自分に問いかけた。
しかし答えが出る前に意識は眠りの中へ落ちていった。



一定の時間が過ぎ、‪✕‬‪✕‬‪✕‬の意識は少しだけ浮上した。
足の修復は進んでいるようだ。
目は開いているが画像処理を行っていないため、明るさや温かさが分かるのみ。暗闇の中に揺れる光を見たり。そのとき寒いはずの背中があたたかいこともあった。

ふわっと浮いた意識は、また沈む。その繰り返しの中で人形は夢を見た。

人形の記録にも博士の記憶データにもない、だから夢だ。

そこで✕‬‪✕‬‪✕‬は人間のように自然に感情を出すことができたし、
博士からの愛情を感じることができた。

笑い合い、対等で、通じ合う。

‪✕‬‪✕‬‪✕‬には、それが素晴らしいことに感じた。


2日後、人形は目が覚めた。
夢を見た自覚はあるものの、
その時に得たはずの感覚は何もわからなくなっていた。

11/28/2024, 9:10:00 AM

愛情


『ねぇ、エドガー。愛とはどんなものかしら』

斜め下から見上げてくるその美しい瞳には信頼と期待に満ちたキラキラとした美しい色を宿したものだった。

私はその期待に応えられるかな?
わざとおちゃらけた風を装ってみたものの、目の前の少女の瞳からの輝きはすこしも曇らない。


『愛、かい?随分と難しい謎かけだね、レディ。』

いつもの唐突な問いかけにもこちらは慣れたものだ。
にこりと笑いかけてふと考える。

愛、愛か。
そう言われてみると具体的な愛というものを考えたことがない。
男にとって愛というものはあまりにも身近にありすぎて空気の様に存在感のないもので、目の前の純粋な少女が望む様なものとは到底思えないどろりとしたものに満ちたものだった。

愛という美しい器はパンドラの箱だ。
輝きに満たされた器の中には人のあらゆる欲が満ちている。煌めきに満ちた世界を夢見られるほど、男は穏やかな生き方を知らなかった。

『そうだね、教えてあげても良いけれど』
目の前の艶やかな小さな手の甲に軽くキスをしてウインクを一つ。少女のキョトンとした顔に苦笑ともつかない穏やかな気持ちを覚える。この綺麗な子供に自分の知る薄暗いものを教えたくなかった。

『そうだね、君はどう思う?』
少しだけ、ズルい大人は答えをはぐらかしながら質問を返す。純粋に、目の前の少女の答えが気になったのもあるけれど。

………

休憩☕️

11/28/2024, 9:09:51 AM

【愛情】〜Mrs. GREEN APPLE様『ダンスホール』〜

いつだって大丈夫

この世界はダンスホール

君がいるから愛を知ることがまた出来る

今日もほら日が昇る

時代が周るダンスホール

悲しいことは尽き無いけど

幸せを数えてみる

11/28/2024, 9:08:02 AM

ねぇ、愛情ってどんな形をしてると思う?

私はね、パズルのピースみたいなモノだと思うの。
人から愛を貰えば自分自身の穴を埋めていける。

でも、全部が全部嵌るって訳じゃない。強く重い愛でピースを多く与えられたとしても、自分のピースまで捧げたとしても、カタチが合わなきゃ嵌らない。

まぁ、平たく言えば相性ってやつかな。恋愛なら二人で互いに足りないモノを補え合えたら幸せを感じるんだろうね。この人なら私の穴を埋めてくれる!って。
逆にどちらも穴だらけだったり、偏ってしまったりすると、不和の原因になってしまう。

現実は恋愛だけじゃなくて友愛だとか親愛だとか、単純じゃないから。もっと複雑にピースのやり取りは行われているし、その上で合う合わないが発生してくるんだけどね。

ちょっと話が逸れたかな。
何を言いたいかっていうと、自分が愛してるからって相手も愛してくれるとは限らない。そんな面倒な愛情の形が私は知りたくなったの。好奇心だよ。

パズルってのは私の一つの考えだから、貴方の考えも聞きたいなぁなんて…。思いついたら教えてね?

ひとまず私の話兼独り言はお終い。

これを聞いてくれた貴方がぽっかりと空いた隙間を埋める様な出会いを得る、もしくはそんな人達とより長く縁が続きますように。

『愛情』

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