書き終わりました。なう(2024/11/28 20:15:37)
▶27.「愛情」人形は夢を見る
26.「微熱」
25.「太陽の下で」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形✕✕✕
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俺たちは街道から遠ざかるように森の入り口から端に沿って移動した。
陽のあたる場所に腰を下ろす。
「それで、だ。聞きたいことはたんまりあるが後回しだ。✕✕✕、お前寝るんだよな?その間俺は夜に火を燃やし続ける。他にやって欲しいことはあるか。それと時間はどのくらい必要だ」
「私は目から光を、熱は体全体から取り込んでいる。なので日のあるうちは、それに合わせて私を動かして欲しい。火の大きさや距離は通常の野宿と同じでいい。期間は2日といったところだろう。シブの都合で私から離れることは構わない」
「話が早くて助かるね」
「私もシブの理解が早くて助かる」
「そりゃプロでベテランの仕入れ屋だからな」
「私を起こす必要性が出てきた時は、先程のように強く叩いてくれ。攻撃されたと検知して覚醒する」
「おう…って叩いて悪かったな」
「問題ない。他にないようなら休止形態に移行する」
「ねぇよ。さっさと寝ろオヤスミ」
日光の向きを確認していた✕✕✕は俺の言葉にピクッと動きを止めた。
「それでは頼む。おやすみ」
表情も変えずに同じ言葉を返し、✕✕✕は太陽を見ながら横になった。
フツーのやつなら目なんか開けてられねぇはずなんだが。
「ピクリともしねぇ。パッと見死んでるな」
元々野営の準備はあるが、
長い2日間になりそうだ。
◇
太陽の光と熱をめいいっぱいに受けながら、人形はシステムを少し変えながら休止形態へと移行を進めていた。
死んでる、という言葉が微かに耳に入ったが、もう返事もままならない。
(修復機能を右足首に集中、眼瞼固定。
待機形態への自動移行停止。定期的な意識の浮上を設定)
✕✕✕は深い眠りにつき始めた。
意識が閉ざされていく中、人形はいつものように、これで良かったのか?と自分に問いかけた。
しかし答えが出る前に意識は眠りの中へ落ちていった。
一定の時間が過ぎ、✕✕✕の意識は少しだけ浮上した。
足の修復は進んでいるようだ。
目は開いているが画像処理を行っていないため、明るさや温かさが分かるのみ。暗闇の中に揺れる光を見たり。そのとき寒いはずの背中があたたかいこともあった。
ふわっと浮いた意識は、また沈む。その繰り返しの中で人形は夢を見た。
人形の記録にも博士の記憶データにもない、だから夢だ。
そこで✕✕✕は人間のように自然に感情を出すことができたし、
博士からの愛情を感じることができた。
笑い合い、対等で、通じ合う。
✕✕✕には、それが素晴らしいことに感じた。
2日後、人形は目が覚めた。
夢を見た自覚はあるものの、
その時に得たはずの感覚は何もわからなくなっていた。
11/28/2024, 9:14:38 AM