『ブランコ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
昨日は、頭が回っていなかった。朝は、家から最寄り駅までの道のりで、転んだ。私は、元々ロンファーと不仲なのはいつもだが、昨日は酷かった。バスが混んでいて、席を詰めなくてはならなかった。私は、左右どちらかに座らないといけなかったが、アワアワしてしまった。学校では、数学の時間に計算ミスをし、初めからやり直しだった。数学は、2時間有ったが、どちらもケアレスミスのオンパレードだった。お昼休みに昼食を食べられず(忙しいことは悪いことじゃない)、5時間目はウトウトと睡魔に襲われた。やっと、授業が終わり、部活に行ったが、やはり失敗続きだった。私は、彼氏の髪にすら触れられず、とぼとぼと帰路につた。電車内で、日記をアプリに書くも、書き終わった時に、データが消え、水の泡とかした。昨日は、散々だった。最寄り駅から家の道のりで、小さな公園がある。その公園のブランコに腰を下ろした。久し振りに、本気でこいでみた。この風の爽快感も空に近付き、離れる楽しさも、子供心を擽られる。嫌なことほど、忘れようと思えば思う程、忘れられない。だから、楽しかったり嬉しかったりしたことで、隠そうとする。それで、明日が迎えられるのならば、きっとそれで良いんだ。
家に帰ると、彼氏から連絡が入った。ハグをしたいと書かれていた。彼氏は積極的な方ではない。そんな彼が勇気を出して、書いて送ったのだろう。でも、私は正直怖かった。一昨日髪を初めて触ったのに、もうハグを求められる事に抵抗を感じていた。人に急に距離を詰められて、怖じ気付いてしまった。ただ、どうしようも無い程に、私は怖がりで、対人関係に悩むことが多い。もし、対人関係がブランコのように行ったり来たりだったら、私はそれを望まない。急に離れて近づいて、安定しない関係に不安感と不信感で、押し潰される。きっと、離れる事が正解だったとしても、私はゆっくり、寄り添えるように近付いていきたい。
私は、昨日から心臓がバクバクと成っていた。今日、学校で彼氏にハグをされると思うと、変に緊張していた。そして、二人きりに成った時に、ハグをした。どうして、ハグをしたくなったのか聞くと、「きっとバグしたいって言わなきゃ、ずっとしなかっただろから」と言っていた。確かに、そうかもしれない。ただ、ハグをしてから思ったのだが、案外怖くは無かった。好きなものをちゃんと好きと言え、大切に出来るのはどれだけの時間が必要なのだろうか。小さい頃は、好きなものは、直ぐに好きだと言えたのに、今は、素直に成れなれず、言葉が憚られる。だけど、どうしても言いたい。言っておきたい。私は、本当に彼氏を愛している。敬愛している。だから、ちゃんと話し合おう。もっと、君の事を知りたい。触れてみたい。時間がないのは、お互い周知の事実だろう。だけど、合間を縫って、一緒にこれからの事を考えていこう。
私は、今日もブランコに腰を下ろした。子供の頃の記憶が蘇っては消えって行った。
月が輝いて、暗い街を照らしていた。
子供の頃に乗った、ブランコから降り、家に着いた。
【ブランコ】
キコキコと軋んだ音をたてて、私を乗せたブランコが揺れる。真夜中の公園でブランコを漕げるのは、大人の特権だと思う。思い切ってハイヒールで地面を蹴ると、ぐいーんと体が宙を舞う。
終電を乗り過ごしてたどり着いた駅、そこから徒歩三分のところで見つけた、見知らぬ公園。雑然とした一戸建ての群れに紛れた、古そうな児童公園だ。このテの公園、まだ絶滅していなかったみたい。ゾウ型の滑り台やらカラフルなジャングルジムやら変な顔したパンダらしき乗り物やら、童心をそそるものがひと通り揃っている。ベンチは朽ちかけていてまともに座れなさそうだったから、ひとときの休息にこのブランコをお借りしている。なんとなく、小学生ぶりに漕いでみたくなったというのもある。だって、分別のある大人は人前で嬉々としてブランコなんて漕がないでしょう? それなら、ひと気のない真夜中のいまこそ、大の大人がブランコを漕げる絶好のチャンスじゃないですか。このチャンスと特権、逃すわけにはいかないじゃないですか。……まあ、この整備不良っぽいブランコが、大人の女の体重にどれだけ耐えてくれるかはわからないけど。
今が夏で、そして晴れの日でよかった。クーラー対策でカーディガンを持っていてよかった。始発が動くまで外で過ごしても、風邪を引くほどの寒さじゃない。むしろ、夜の空気がひんやりしていて、アルコール入りの体には心地いい。
満月だから、空もやたらに明るい。まあ、街灯だけでも、明かりは充分。むしろあの満月、忌々しいあいつのことを思い出させるから、邪魔に見えてくる。なんでブランコからいい感じに見上げたアングルで、存在を見せつけるように皓々と浮かんでるんだろう。なにからなにまで、忌々しいあいつそっくりだ。
忌々しいあいつとは、同期の望月のこと。入社したときは確かに同期だった。だけど五年経ったいまでは上司だ。名字通り、欠けたることもなしと思うような完璧なシゴデキ野郎で、あれよあれよという間に手の届かない存在になってしまった。
あいつが順調に出世する一方で、私はうだつの上がらないペーペーのまま、来月には会社を辞める。実家に帰って、怪我を負った父の介護をしながら、家業の工場(こうば)を継ぐことになる。
今日は上司や後輩と引き継ぎのスケジュールを打ち合わせして、そのついでに飲んで、ひとり二次会でさらに飲んで、このていたらく。乗り過ごしに気づいた時点で、血の気と一緒にスッと酔いは引いたけど。ううん、真夜中の公園でキャッキャとブランコ漕いでる時点で、まだ酔ってるなぁ。
こうなりゃ酔いに任せてヤケクソだ。私はありったけの力をハイヒールに込めて地面を蹴った。体を大きく揺らして、力いっぱいにブランコを漕ぐ。
体が仰向けになると、真正面に満月が見える。いまなら届きそう。なのに、届かない。遠ざかって視界から消えて、また視界に入って近づく。また遠ざかる。近づく。その繰り返し。
ぎゅっと鎖を握り込んでいるこの手さえ離せば届くんじゃないか、そんな恐ろしい考えが、ちらっと頭をよぎる。このまま体を宙に放り出せば、どこまでも飛んでいけそう。なのに、大人の分別が邪魔をして飛べない。飛んだところで、きっと、月には届かない。
こんなに漕いでるのに。こんなに一生懸命、あいつ目掛けて、心ごと揺さぶっているのに。
ギィギィガチャガチャと鳴る鎖がうるさい。この鎖が、必ず私を地面に引き戻してしまう。なのに、鎖から手を離せない。
仕方がない、ブランコに乗ってる以上、私は振り子の錘だ。実家を支点にして揺れるだけの、宙ぶらりんな存在だ。
ブランコでどう足掻いたって、月に届くわけがない。
私がどんなに頑張ったって、望月に敵うわけがない。
私がどんなに騒いだって、この心は望月に届かない。
あと一ヶ月もすれば、望月に会うことすらできなくなる。
それが悔しくて悲しくて、ただ思いっきり、ブランコを漕いだ。
突然、ブランコの真後ろの家の窓が、ガラッと開いた。
はっとしてブランコを急停止させ、おそるおそる振り向くと、見知った顔がぽかんと口を開けてこちらを見ていた。
「え、うそ、望月……?」
「なんかうるさい奴がいるから追い出してやろうと思ったら、まさかの金森? こんな時間になにやってんの? 近所迷惑だろうが」
「……も、望月こそ、なんでこんなとこに……」
「こっちのセリフだよ。ここ俺ん家だよ。金森もこの辺だっけ? ……違ったよな。路線は同じだけど。さては、乗り過ごしたな?」
望月が呆れたように目を細める。
「だいぶ飲んでたもんな。俺と同じ電車で帰るの断って、さらに飲みに行ってたみたいだし」
「ご明察通りでございます」
「公園で野宿するつもりか? それで体調崩されたら困るし、まあ……仕方ないから、うちに泊まって、ちゃんと寝ろ。客用の布団があるからさ。……おい、そんなあからさまな警戒の目で見るなよ、親もいるんだから、変なこと起こるわけないだろ」
「そ、それならありがたくお言葉に甘えて……」
ご両親がいらっしゃるなら、男の家とはいえ安心だろう。かえって気まずいけれど。っていうか、望月実家住みだったの? なんとなくシャレオツマンションに住んでるイメージだったから、意外なんですけど。
私は立ちあがろうとして、そして、果たせなかった。
「……ええと、ブランコの揺れで酔いが回って立てない。あと、ヒール、いつのまにか折れてる」
「阿保か」
ぴしゃり、と窓が閉まった。
ほどなくして、スウェットにサンダルを履いた望月が公園に現れた。いつもピシッとスーツを完璧に着こなした姿しか見ていなかったから、寝巻き同然の姿で気兼ねなく外に出てくることに驚いた。まあ、こんな格好も、ひと気のない真夜中だからこその特権だ。私にとっては、ある意味眼福。
「はい、水。と、サンダル。オカンの勝手に持ってきた」
「ありがとう」
ペットボトルの水を受け取り、ハイヒールを脱ぎ捨ててサンダルに履き替える。その間に、望月も隣のブランコに座る。
「お、月がちょうどいい眺めじゃん」
「いまこそ、月が綺麗ですね、って言いたいところだけど、ヘンな意味になるからやめとくわ」
「そのフレーズのせいで、気軽に月を褒められなくなったよなぁ」
望月がキコキコとブランコを揺らす。
なんの気もなさそうなその横顔に、ちらりと視線を送ってから、ペットボトルに口をつける。ああ、冷たさがアルコールを押しのけて五臓六腑に染み渡る。
「それ、百五十円な」
「暴利だ。ドラッグストアなら八十円ぐらいでしょ」
「運搬料込みってことで。まあ、宿代と一緒にして、後日三倍返ししてくれればいいよ」
「わかった、宿代百円ってことにして、後日菓子折りをお届けします」
「勝手に料金決めるなよ。ってか、べつになにもいらんわ。甘いもの好きじゃないし」
「菓子折りは望月へのお礼じゃなくて、望月のご両親と布団様へのお礼だから」
私はぐいっと水を飲み干した。
それを待っていたように、望月がブランコから立ち上がる。
「多少は醒めたか? じゃ、行くぞ」
私はちょっと目をみはった。望月の手が、真っ直ぐ私に差し出されていたからだ。まだ酔っててふらつきかねないと思われてるんだろう。確かに、この状況はある意味ふらつきかねない。
それならばと、望月の手をぎゅっと掴み返してやった。引き寄せんばかりの力を込めて。
今度は望月が目をみはる。
いまこそ、私のブランコが、いちばん月に近づいた瞬間だ。こんなに心揺れる夜は、真夜中の公園に迷い込んだ私だけの特権で、そして、人生最後のチャンスになるだろう。
少し一旦お題はパスで、私のこと書こうと思います!5日前にアプリ始めました。
私は、中3であんまし余裕のない、大の甘党受験生です☆
部活は元吹奏楽部でした!(トロンボーン吹きです)あまり交友関係が広い方でなく、ずっと物語に助けられて生きてきました!あんまし面白みのある人間ではないかもですが、文章力は日記を毎日読む先生のお墨付きです笑
よろしくお願いします♡♡
空がほんのりライラック(だから) ブランコ降りて じゃあまた明日
題目「ブランコ」
恋人と
深夜のデート
夜の公園で
ブランコ揺らしながら
酒呑みたいな
いつの話だろう
はやく叶ってね。
_ ₁₄₈
テーマ『ブランコ』
持ち手の鎖が、音を立てる。
わたしが小さいときはまだこんなに錆びていなかったはずだ。
風が吹き太陽が傾き始めたこの時間は肌寒く、薄着で出てしまったことを後悔した。そうして一人息を吐き、人が少なくなって昼間の景色とはうんと違う景色を見て思い出した。
もう十数年も前の、まだ自分が親に守られていた頃のことを。
まだ遊びたい気持ちを胸に押し込めて、わたしは母の手を握る。ドラマで出てくるような「今日はなんのごはん?」なんて聞きながら、遊んでいた遊具にさよならをし、家路に着くのだ。
あの頃でしか味わえない形容し難い感情がひどく懐かしく、鼻の奥が小さく痛んだ気がする。もう戻れないんだなぁと思うと無性に寂しくも感じた。
「…そろそろ帰るよー!」
「えぇ?もう?」
すべり台で夢中になって遊んでいたわたしの宝物が、口を尖らしてわたしの元へと駆けてくる。その姿がまた、愛らしい。
「また来ようね。パパももうすぐお仕事終わるし」
「うん。あ、今日なんのごはん?お腹空いちゃったよ」
まるで昔の自分を見てるみたいで思わず笑いが込み上げてきた。小さく笑えば、不思議そうに小首を傾げるわたしの宝物が目に映った。
「何がいい?」
錆びた鎖から手を離し、小さな手のひらをきゅっと握る。
えっとね〜!と楽しげに話すこの子を見て思うのだ。
あの頃の母の気持ちってこんな感じだったのかなって。
戻りたくても戻れないもどかしさと、今の幸せが入り交じってわたしはこの子の頭をそっと撫でる。
そうして振り返りゆらゆらと揺れるブランコに、また来るねと告げた。
レイ「ここの公園、ブランコあったっけ?」
優花「三年前の市の政策で市で運営する公園が一斉に改装されたときにね、増えたよ
変わりにジャングルジムが無くなっちゃったけど」
翠 「私は、小さい頃はブランコ、少し苦手でした」
翠 「おかぁさん、怖いよ、足、着いてないよ」
母親「大丈夫よ、ほら手をしっかり掴んでないと落っこちるわよ」
翠 「揺れた!揺れた!助けて!」
母親「押すわよー」
翠 「いやぁぁぁぁ」
翠 「今は減ったけど、昔は嫌いなもの多くてね、お肉は脂っこくて嫌い、魚はパサパサしてるから嫌い
野菜は苦いから嫌い、お化けは怖いし、お風呂は溺れそうで怖くて、異性は殴られそうで怖くて
この世の全てが怖くて苦手で嫌いだった、そんな中で近所の公園にお母さんが連れて行ってくれて
そこで乗ったブランコが本当に初めは怖かった
足はつかないし、宙に浮く、空に投げ出されてしまいそうで泣きじゃくった、でもねそんな私の背中を
お母さんは思いっきり押したの、酷いよね、でも、楽しかった初めてワクワクした
風を切り裂き、空に飛ぶ感覚が不思議と怖くなかった、それから色々なことに挑戦して、
出来ることが増えて、楽しかった」
優花「瑞希先輩は姉貴って感じでしたけど、翠先輩は、どちらかというとお姉ちゃんって感じがしますよね」
レイ「あー、分かる、瑞希先輩はマネージャーのくせして、誰より好戦的だったからね
見てな!新米の諸君、喧嘩はこうやんだぞ!って背中で教えてくれる感じだったけど
翠先輩は戦ってきな、って背中押してくれる感じ」
翠 「なんかそれ、凄く嬉しいなぁ、瑞希先輩みたく、頼りないかもだけど、見守ってるから」
優花「私も、瑞希先輩みたく、強くなくていいから、翠先輩みたく、優しく包み込める人になりたいです」
翠 「ありがとうっ!2人とも、また明日!」
翠「拝啓、ブランコへ
私は応援しか出来ない、選手の背中も押すことすら叶わないかもしれない、でも、私に
挑戦する勇気をくれたのは紛れもない貴方です。
もう一度、挑戦するのなら、わたしはあなたを忘れない」
【ブランコ】
日暮れ時、公園で遊んでいるといつも胸が苦しくなった。
もう帰ろうね、と母が言う。
幼稚園児の僕はそっぽを向いてブランコを漕ぐ。
あと15回漕いだら帰ろうと思っている。
口には出さない。
あと15回、あと10回。
まだ帰らない。あと5回。
何も言わないで見ていて、あと少しだけ。
伸びる影に視線を落とし、僕は祈った。
ブランコ
風に乗って
キーキーキー
音が鳴ってる
ユラユラユラ
子供が帰る夕暮れを
何を思って見つめてる
誰かが忘れた
靴 片方
塗装の劣化も
目に映る
誰もいない公園で
遊び相手は風だけか
ブランコ
人生ってブランコに似てるね。
高く舞い上がる瞬間には
心が軽くなり未来への希望が広がる。
でも、揺れ幅が大きければ大きいほど
振り落とされる恐怖も付いてくる。
人生はブランコみたいに
安定のない冒険でもある。
時には幸福の頂点に立つし
時に絶望の淵へ転がり落ちる。
そんな人生を乗り越えた先には一体何があるんだろうね。
行き先をなくした僕の日常は影を映すこともなく闇と時を過ごし、なにも知らない帰宅を待つその顔がいとおしい。僕はどこへいったなどと答えのないことを考える素振りだけを知らない誰かたちにみせては日常を繰り返す。
今日の僕は昨日の僕とは違うと言ってくれた誰かの顔が思い出せず思い出そうともせず、ただあたたかいマフラーみたいなあなたの言葉をどこかの奥から引き出す。
あなたの声がききたいです。
いつ行けばあえますか。時間はポケットの中にしまってあります。誰と行けばいいですか。僕はひとりで歩けます。どこに向かえばいいですか。外は雪が降っています。僕のころんだ場所は憶えていますか。あなたの走った道は憶えています。明日むかえに行ってもいいですか。ぎしこぎしこと音の鳴る方へ。
ブランコ
「ねぇ、引っ越すってほんとなの?」
私たちは放課後、近くの公園にあるブランコに乗りながら話始める。
私は、少しうつむきブランコを揺らし始めながら答える。
「ほんとだよ。ここから結構離れた場所に行くんだよね。」
私たちは幼稚園の頃からずっと親友だった。
暇さえあればこのブランコに乗って遊んでいた。
「そっか、、、。」
しばらくの間、沈黙が続き、私がブランコを揺らす度に鳴る鉄の音が響いた。
しばらくして、親友が口を開く。
「離れても、私たち親友だよ。」
こんな臭いセリフ親友から聞くと思っておらず、思わず口元が緩む。
まぁ、これで涙を流してる私も私だろう。
「当たり前でしょ。」
私はそう言いながら、高く高く上がったブランコから地面に飛び降りた。
ブランコ
公園の名前って
昔クジラの遊具があって、今はクジラの遊具がなくてもクジラ公園
土地が三角形だと三角公園
夏にセミがいっぱい居るからセミ公園
キリン公園にタコ公園
誰も正式名称で言わないし、実は正式名称がわからない。
私の住んでる団地の中にある公園は意外と広く
ベンチ、ブランコ、滑り台に砂場と一通りあった。
私の子供の頃は日のあるうちは必ず誰かが遊んでいたが
今ではいつ見ても人っ子一人いない。
静かに下がってるだけのブランコが、妙に寂しく感じて
乗ってみちゃおかなー、なんて気分になった。
ブランコに座ろうとする…
え、狭っ。嘘でしょ?幅が狭くて入らない。
まさかの私ブランコに座れなくなってた状態。
ショック…、い、いや、ここのブランコ小さいよな、うん。
ははは、はは…。仕方なく横向きに跨がって座るが
座面が思った以上に低い。
いわゆるヤンキー座りの体になってるよな、これ。
「ごめんよ」と早々に寂しげなブランコに別れを告げた。
(ブランコ)
《ブランコ》
世界樹には、古びたブランコがある。
誰が何を思って作ったのか定かでは無いが、ずっと昔からあるものだ。
世界で一番大きな、世界樹を囲む森は、その根から生まれたとされている。
そんな世界樹の枝にぶら下がっているブランコは、遥か上空にあって霞んで見える程。
実際、どれ程の高さにあるのか調べようとした冒険家が、三十年間毎日登り続けてもわからなかったという。
ただ登っても登っても霞が晴れることすらなかったが、それでも確かにそこにあった遠いようで近い、そんな不思議なブランコらしい。
世界樹の上には土地があって、そこには高次元の存在が暮らしている、というのは世界中誰もが知っている御伽噺だ。
だからこそ、世界樹を見上げた者らは皆、その世界樹の上——上界に住まう者達が為のブランコなのだろうと、そう結論付けた。
果たして、それは正しかった。
「ねぇ、どうしてこの世界は真っ黒なの?」
世界樹を見上げる者には到底聞こえないが、しかし、上界の中で最も低い場所に作られた空中ブランコ。
そこに座る無邪気な声が、純粋な疑問をぶつける。
「それはね、彼らが生まれてしまったからさ。少し目を凝らしてご覧、見えるだろう?」
穏やかな声の示す先を少し目を凝らして見ると、そこには蠢く真っ黒な何かがいた。
「彼らって、あれのこと? なーんだ、ちっとも怖くないや。かわいいね!」
どす黒く澱んだ闇を纏い、どろどろと体の溶けた得体の知れないモノ。
見る者に恐怖を与えることなど容易い筈のそれを見て、可愛いなどと宣うのはこの少女だけだろう。
風が吹くままに髪を踊らせ、少女は笑う。
「あんなのに負けちゃったのね? あはっ、みーんな弱いのね!」
自身が嗤っていることに気が付いていない少女を見つめ、
「それでも、侮ってはいけない。彼らがいることでまた、私達が存在する理由にはなるのだから。そうだろう? アテナ」
きょとんとした表情の少女——アテナの頭を撫でた。
「それに、これは君の姉である先代様が手を貸したことで実現した世界だ。それを否定してはいけないよ。君の姉様が可哀想だ」
「悪く言ってないもん! ただかわいい子達の味方をしてあげられないのが悲しいだけ!」
梟の頭を撫でながらブランコを漕ぐアテナに、苦笑を漏らす。
「確かに彼女がそう決めたことだから、君は不満があるかも知れない。でも、やってくれるんだろう?」
「だってもう姉様はいないもの! だから私に任せて、兄様」
実の兄ではなく、世話を任されただけの彼によく懐いているのは何とも皮肉だ。
それだけ、男を近付かせないようにされているばかりか、その名の所為で人も寄って来ないのだろう。
工芸、学芸、知恵、戦いを司りし一柱。
処女神アテナというのは、音に聞く女神だ。
伴侶を持たぬが故に処女神と言われているが、当然だろう。まだ今のアテナは、十四歳程なのだから。
そんなアテナが唯一懐いているのが、彼だった。
「ああ。頼りにしてるよ、勿論。さあ、どこに行くのかはもう決めたかい?」
「うん! あの特に黒いところ!」
アテナはいつもブランコに乗って下界を見下ろし、導くべき場所を目標として決める。
そして、そこに神の奇跡を起こしに出向くことが日課であり、責務だった。
「ねぇ、兄様も一緒に行きましょう? まだ戦いは苦手なの……」
不安げに彼を見つめると、
「仕方ないな、いざとなったら力を貸すよ。でも、できるだけ自分で導くこと。いいね?」
「うん! じゃあ——行こっ!!」
アテナは彼の手を掴むと、ブランコから飛び降りた。耳元で風が唸る。
まだ幼いアテナのはしゃいだ声を聞きながら彼は——軍神マルスは、空へと共に身を投げたのだった。
こうして神々は奇跡を起こす。
時には手を携えて、代々受け継ぎながら。
ブランコを揺らして遊んだ小学生の頃
あのときは何もかもがキラキラして見えた。
何もかもが大きく見えた。
どこまでも行けるのだと思っていた。
毎日小学校が終わってからというもの、
公園に行って、ブランコを高く漕いだり、友達と鬼ごっこしたり、、、夕方までずっと遊んでた。
あのときはもっと遊べたらいいのにってずっと思ってたな…
でも、
年齢が上がるにつれ、世の中の黒いものを知った。
空気を読めなければならない、
年相応の行動をしなければならない、
そう考えるたび輝いていたはずの世界が色褪せ
息が詰まる毎日になっていた。
子供の頃確かにあったはずの自由は大人になるにつれ
常識を学び囚われ自由を失っていく
無邪気だったあの頃と正反対の世界…
今はただ昔遊んだ公園のブランコに腰を掛けるだけ…
「お前、ブランコって知ってるか?」
職場の先輩に恋愛相談をしていると、突然先輩は私に質問を投げかけた。
「ブランコって、あの公園にある奴ですよね?」
「ああ、そうだ」
先輩は静かに頷くと、私にこんな話をしてくれた。
「ブランコってのは、振れる周期に合わせて力を加えてやると、その分大きく動くよな」
「ええ、そうですよね」
「恋愛も同じで、押す引くのバランスが重要なんだよ」
などと語り始めるが、確か先輩が今の奥さんと結婚出来たのは、先輩の方から強引に何度もアプローチをしたおかげだと、恋愛は攻めに攻めまくるのが大切だと、昔得意げに話していたような気がする。
「前に強く押せば押すほど、後で返ってくる時の反動が大きいんだ」
そう言いながら、先輩はこっそりと私に離婚届を見せてくれた。
私の気分はブランコのように揺れ動く。
上手くいったものだ。その実スーパーハイテンションな無敵感とスーパーローテンションな絶望感を交互に味わわされている。
ここのところは気分が負に振れたまま固められてしまったようで、1年ほど自己批判に浸っている。
とかく阿呆である。
さて、私の気性のなかでもうひとつ揺れているものがある。
それによって私の部屋はゴミ屋敷とミニマリストを行き来している。もちろんこれも圧倒的にゴミ屋敷期間が長い。
今日だってそうだ。脱ぎ散らかした服の山をかいくぐって身支度をし、明日着る予定の服を山から引っ張り出して袋に入れる。引っ張り出した服には自分の抜けた髪の毛が絡んでいたりホコリが着いているので間にゴミを払う作業が入る。袋をキャリケースに入れて、レシートがくちゃくちゃになったカバンから必要なものを引っ掴んでそれもキャリーケースに。そいつらを整理するのは旅先のホテルでの作業だ。
なぜ部屋がこうなっているかと言うと物がとんでもなく多いからである。
服や本が収納場所から溢れると持っているもの全ての把握ができなくなって持っているのに持っていないような感覚になって買い足す。
負のサイクルを巻き起こしているのだ
じゃあものを減らして何時でもものをしまえるようにしておけ、という正論が聞こえてくるが全くもってその通りである。
社会人になってすぐや大学生になってすぐなど、部屋をオシャレにしようと思ったことは何度かある。
そのタイミングでは断捨離を実行し、部屋が綺麗になるのだが直ぐにとんでもない不足感に襲われる。
他人と自分を比べ、自分は他人より劣っている自分は何も持っていない、そんな寂しさや不安感を購買欲にぶつけ服や雑貨、服を買い集める。
いい加減もので自分の価値が埋まらないことに気がついた方が良い。
ブランコ
公園のブランコに乗りたいのに いつも
先を越される。
「次貸してね!」って言ってるのに
なかなか貸してもらえない
しまいには、横入りされ
別の子がブランコに乗ってしまう
私は、泣き出して、
「次は、私だもん! ずっと並んでたのに」と 乗っていた子を突き飛ばして
転ばせた。
その子は、膝を擦り剥いて 鼻血を出して
泣き出した。
その内 大人の人が寄って来て
突き飛ばした 私を責めた。
どうして? 私が怒られるの?
代わってくれなかった子が悪いのに...
私はずっと待ってたのに....
理不尽だ 誰も分かってくれない
大人なんて嫌い!!
【20年後】
私は、大人になり二児の母親となった。
今 当時と全く同じ状況が目の前で
繰り広げられていた。
私の娘 はなちゃんが よその家の息子さんのたっくんをブランコから
突き飛ばしたのだ
当然 たっくんママは、激怒していた。
私は 深く深く頭を下げたっくんママに
謝罪した。
公園から家に帰る道すがら 娘は一言も
喋らず俯いていた。
「はなちゃん」と私は、呼び掛けてみる。
が返事はない
当時の私も不貞腐れて 一言も喋らなかったっけ....
親子だなあ...
私は、娘の頭を撫でる。
「はなちゃん 偉かったね! ちゃんと
順番守って 並んで 誰にでもできる事じゃないよ! 偉い 偉い!」
私のその言葉に娘は顔を上げて
大きな丸い瞳から 大粒の涙を零す。
私は、泣きじゃくる娘を優しく抱き締め
明日 幼稚園でたっくんに怪我させた事を
謝ろうと娘を諭す。
娘は、泣いて モヤモヤがすっきり
したのか 素直に頷いた。
「へえ~そんな事があったんだぁ~」
夫は呑気に晩酌をしながら昼間あった
出来事を説明する私に相槌を打つ
私は笑いながら...
「ねぇ 今思うと何であんなにブランコに
執着してたんだろう... 他にも公園の
遊具なんて いっぱいあったのに...」
「でも分かるかも 子供の目線からだと
ブランコって まるで空を飛んでいる
みたいになって 気持ちいいんだよなあ!」
「私に順番を譲りたくなくなる位
楽しかったんだあ!」と私は悪戯っぽく笑う
すると 夫は、バツが悪そうに
「あの時は、楽しすぎて 周りの声が
聞こえ無くて.... 悪かったと思ってるよ
でも あの時突き飛ばされたんだから
おあいこだろう... すげーあの時痛かったし...」
「そうだね...」私は嬉しそうに笑う
そう あの当時私は、ブランコを代わって
くれなかった男の子が大嫌っいだった。
それなのに 何の因果か 今は
一番大好きな人に変わっている。
大人にならないと今の気持ちが分からない
様に 子供の頃の私達だって 今の私達には分からないだろう...
なにせ 子供の頃の気持ちを大人になるまで持ち続けるのが難しい事なんだと...
正面のテーブル席に座る夫を見ながら
私は、しみじみと思ったのだった。
知らなかった。カイトが、春に転校するなんて。
なんでもっと早く言ってくれなかったの。私はカイトの胸ぐらを掴んでそう言って責めた。そしたら、いつもみたいにへらへら笑って何か憎まれ口たたいてくるかと思ったのに。
「……ごめん」
全然違った。彼は見たこともない悲しそうな顔で、私に謝ってきた。こんな彼は知らない。見たくもない。いつもみたいにバカ言ってふざけて笑ってよ。あんたに真面目な顔なんて似合わないよ。転校なんて、嘘だって言ってよ。色んなことが信じられなくなって、私はカイトの前から逃げるようにして去った。それからもう3週間くらいが経とうとしている。私のほうが一方的に避けるようにしていた。こんなことしても、カイトが転校する事実は変わらないのに。もう会えなくなっちゃうのに、何やってんだろう、ほんと。それを考えるとまた変な意地が顔を出してきてしまう。素直にごめんって言えたら良いのに。
ウジウジしていたらあっという間に1か月が経ってしまった。もうすぐ冬が終わる。この時期になるとカイトが転校するという話はもう学年じゅうが知っていた。寂しいねー、ってみんなが言っている。私だってその1人。寂しいだけで伝えきれないくらい、心が落ち込んでいる。幼馴染ということが尚更尾を引く。私とカイトはあまりに近すぎたんだ。何でも言い合える仲で、信頼しきっていた。当たり前のようにずっと一緒にいられると思っていた。このままお別れになっちゃったら、私どうなっちゃうんだろう。それくらい依存してしまっていたことに気づいてしまった。ねぇ、カイト。行かないでよ。私のそばにいつまでもいてよ。
『いつもんとこで待ってる』
塞ぎこんでいた土曜の昼間。カイトからこんなメールがきた。いつもの所というのは、私たちが幼い頃によく遊んでいた公園のこと。呼び出された私ははじき出されたようにそこへ向かった。早く会いたくて、気づいたら走っていた。公園に着くとカイトがちゃんといた。ブランコに乗って、ぼーっとしていた。私に気づくと、「よっ」といつものノリで手を振ってきた。
「急に何」
もう、駄目だなあ私。本人を前にするとまた意地っ張りが出てきてしまう。これが最後かもしれないのに、どうして素直になれないの。
「俺、ツバサのこと好き」
「へ」
「こんなんで、お前と会えなくなるの認めたくねーわ」
いきなり何言ってんの。私が言い返すより前にカイトは隣のブランコを指差す。座れ、って意味らしい。大人しくそこへ腰掛けると、カイトは私のほうにぐるりと向き直る。
「転校はやめらんねぇけど、お前とはこれからもずっと会いたい」
「……うん」
「俺、ツバサのこと好きだから」
カイトはさっきと同じ言葉をもう一度言った。そして、立ち上がるとちょっと強引に私を引っ張って立ち上がらせる。
「これでサヨナラになんかさせてたまるかよ」
ぎゅっと私のことを抱きしめて、何かに堪えるような声でそう言った。ごめん。私と同じ気持ちだったんだね。私もあんたも寂しかったんだね。それが分かって、でも離れる事実は塗り替えることができないツラさに初めて涙が出た。
「もっと……早く言えば良かった……」
震える私をカイトは何も言わずただぎゅっと抱きしめてくれた。意地張ってたあの時の時間を激しく後悔した。ブランコが風に揺れてキィキィ鳴る音がより一層寂しい空気を連れてくる。
「ちゃんと連絡するから」
「うん」
ありがとう。私の欲しかった言葉を言ってくれて。素直に言えない代わりにカイトの首にしがみついた。絶対、また会おうね。だから私もサヨナラは言わないから。それでまた会えた時までにはちゃんと、ありがとう言えるようにしておくから。だから、勝手だけど今は泣かせて。