Saco

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ブランコ

公園のブランコに乗りたいのに いつも
先を越される。

「次貸してね!」って言ってるのに
なかなか貸してもらえない
しまいには、横入りされ
別の子がブランコに乗ってしまう

私は、泣き出して、
「次は、私だもん! ずっと並んでたのに」と 乗っていた子を突き飛ばして
転ばせた。

その子は、膝を擦り剥いて 鼻血を出して
泣き出した。

その内 大人の人が寄って来て
突き飛ばした 私を責めた。

どうして? 私が怒られるの?
代わってくれなかった子が悪いのに...
私はずっと待ってたのに....

理不尽だ 誰も分かってくれない
大人なんて嫌い!!





【20年後】

私は、大人になり二児の母親となった。

今 当時と全く同じ状況が目の前で
繰り広げられていた。

私の娘 はなちゃんが よその家の息子さんのたっくんをブランコから
突き飛ばしたのだ

当然 たっくんママは、激怒していた。
私は 深く深く頭を下げたっくんママに
謝罪した。

公園から家に帰る道すがら 娘は一言も
喋らず俯いていた。

「はなちゃん」と私は、呼び掛けてみる。
が返事はない

当時の私も不貞腐れて 一言も喋らなかったっけ....

親子だなあ...

私は、娘の頭を撫でる。
「はなちゃん 偉かったね! ちゃんと
順番守って 並んで 誰にでもできる事じゃないよ! 偉い 偉い!」
私のその言葉に娘は顔を上げて
大きな丸い瞳から 大粒の涙を零す。

私は、泣きじゃくる娘を優しく抱き締め
明日 幼稚園でたっくんに怪我させた事を
謝ろうと娘を諭す。

娘は、泣いて モヤモヤがすっきり
したのか 素直に頷いた。




「へえ~そんな事があったんだぁ~」
夫は呑気に晩酌をしながら昼間あった
出来事を説明する私に相槌を打つ



私は笑いながら...

「ねぇ 今思うと何であんなにブランコに
執着してたんだろう... 他にも公園の
遊具なんて いっぱいあったのに...」


「でも分かるかも 子供の目線からだと
ブランコって まるで空を飛んでいる
みたいになって 気持ちいいんだよなあ!」


「私に順番を譲りたくなくなる位
楽しかったんだあ!」と私は悪戯っぽく笑う


すると 夫は、バツが悪そうに
「あの時は、楽しすぎて 周りの声が
聞こえ無くて.... 悪かったと思ってるよ
でも あの時突き飛ばされたんだから
おあいこだろう... すげーあの時痛かったし...」


「そうだね...」私は嬉しそうに笑う


そう あの当時私は、ブランコを代わって
くれなかった男の子が大嫌っいだった。

それなのに 何の因果か 今は
一番大好きな人に変わっている。

大人にならないと今の気持ちが分からない
様に 子供の頃の私達だって 今の私達には分からないだろう...

なにせ 子供の頃の気持ちを大人になるまで持ち続けるのが難しい事なんだと...

正面のテーブル席に座る夫を見ながら
私は、しみじみと思ったのだった。

2/2/2024, 6:54:22 AM