『もう一つの物語』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
『もう一つの物語』
もし、この世の何処かに
自分の人生の中で
選択しなかった世界があるなら、
その世界の私は
どんな人生を送っているのだろうか。
私は、もし、そんな世界が何処かにあるなら
きっと、
私が産まれていない世界だってあると思っている。
私の母は、
本当に絵に描いたような気苦労が多い人だった。
母を思うと、
生きて来た人生にどれだけの幸福が
あったのだろうかと
きっと、幸福を感じるよりも
胸を痛めた方が多いように思う。
生前、幸福だったかとは聞けなかったし
聞く事も躊躇ってしまう位だった。
多分、聞いたとしても
大きなお世話だと言われ、
自分の人生を考えなさいと怒られるだろう。
それに、きっと、
母はどれだけ心を痛めたとしても
幸せだったと言える強い人だ。
だからこそ、私は思うのだ。
もし、父親と結婚せずに
愛した人と結婚していたのなら、
あなたは今も元気で生きているのだろうかと。
あなたが、心を痛めずに
素直に幸福を感じられているのだろうかと。
あなたが涙を流すよりも
多く笑っていられる人生なら
私が産まれない世界があれば良いと。
あなたが私の幸福を祈るように
私もあなたの子供なんだから
あなたの幸福を祈りたい。
だから、考える。
はっきりと無いとは言えない世界があるのなら
あなたが
今日も明日も笑っていらますようにと。
もう一つの物語
「じゃ、また来月に来るね」
「うん」
遠距離の彼を見送る。
改札でさよならするのは嫌で、新幹線ホームの入場券ボタンを押した。
手をつないで上がる長いエスカレーター。
発車時刻を待つ新幹線が見えた。
「じゃぁね」
「待ってる」
新幹線に乗る彼の手を離そうとしたら、彼に引っ張られて、思わず私も乗ってしまった。
「やっぱり嫌だ。ユミ、すぐ仕事辞めてオレと一緒に……」
本当に紡ぎたかった……その先の物語。
もう1つの物語。
主人公とヒロインと悪役というふうに3つのキャラに
別けられると思わない?
最初は主人公目線で始まってからヒロインの
悲しい出来事から主人公に手を差し出され
救われ、立ち上がる。そして、悪役と出会い、
何故、悪役になってしまったかの回想が入る。
大体こんな感じのアニメ、漫画が多いと思ってる。
さて、本題に入るが大体のアニメや漫画は考察できる
箇所があり、先のストーリーを予測し、楽しむ。
という遊びもできる訳だが、それをもう1つの物語だと
思っている。
考察し、こうではないか?と説をたてる。
主人公だと思っていた奴が本当は悪役だった、とか
そんな考察をしストーリーを形成する。
これが、もう1つの物語だと思った。
じゃ、言いたいこと言えたからありがとうございました
エピローグから始まる、そんな物語があってもいいってきみが教えてくれた。
─もう一つの物語─ #109
(しばらくお休みするかもです。なかなか書けなくなってしまって、一旦離れてみようと思いまして。でも必ず戻ってきます)
人目に付く所にあるはずなのに
私のものはみんなに見えていないみたい
何かもらえるだろうと期待して
期待するだけ無駄だと分かっているのに期待して
ああ。埋もれて何処かに消えてしまった
もう誰の目にも留まらない
もしも、あの日。
もしも、あの時。
もしも、あの場所に。
戻れたら。やり直せたら。
そんな非現実があり得るとしたら、そうしたら、何か変わるのだろうか。何か変えられるのだろうか。
後悔を、失敗を、未練を。取り返すことを、その努力をきっと精一杯行うのに。それなのに、やはり、時間は巻き戻りはしない。過去は過去だ。
けれど。未来──現在から続くその時間は、確かにこの手で描き換えることができる。
後悔は遅すぎる。それでも、かつて舐めた辛酸を糧に成長する権利は今ここだけにあるのだから。せめて、
せめて。躊躇わず己の望みの方へ一歩踏み出すと決めた。
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テーマ; 【もうひとつの物語】
「暇だなぁ…」
宝箱の側で、灰色の少女が退屈そうな声を上げている。
「ねぇ、楽しい事っていつ起こるの?」
少女は、唇尖らせて如何にもぶーたれてますっていう顔だ。
質問に答えてあげたいのは山々だが、それに答えられる人は現実的に少ないだろう。
「いつか、だよ」
「ふーん」
やはり私の曖昧な言葉では、満足してもらえないようだ。
「ごめんね、ちゃんと答えられなくて…」
明確な答えがあれば良いのだが、それとは別に月日が経つにつれ、現実的な問題が眼前に迫っている。
どんな中にあっても、生きていく選択肢は選ばなくてはいけない。
「はいはい、大人は大変だね」
「まぁね…。だから、今この状況が変わらない、或いは、悪化するのなら、別の道を検討しなきゃ…」
「…飽き飽きしてる、あのルーチンの世界に戻るってこと?」
「うん、そう。最早慣れ親しみ過ぎて、先がよく見える世界だよ…行きたくないけど」
そう言うと、少女は真面目くさった顔をしてこちらをジッと見てきた。
「あのさ、今この状況って曇りかなーって自分思うんだけど。覚えてる?」
「曇り?太陽が隠れて、薄暗い状態だね」
「そうじゃなくて、光の道と影の道だよ。一人歩きの時よく考えてたじゃん」
懐かしい考え方だ。
太陽が出ていると必ず道には、光と影が出来る。
建物の影、草木の影──光がある限り、道には大小の影がある。
光が好調期と考えるならば、影は停滞期と考える。
光があるうちに前をよく見ておけば、誤って影に踏み入れてしまったとしても、光の場所を目指して早く切り抜けられる。
逆に自身の足元の影ばかり見ていると、影の中に入ったことにも気づかず、影での停滞が長くなってしまう。
前を見て、常に先を考えなさいという事だ。
そして、太陽が無い曇りの時は──
「前と上を見るんだよ。雲の切れ間が空にあるかもしれないし、前に光が差し込む瞬間を見つけられるかもしれないんだから」
少女がニコニコしながら言う。
大抵のことはそれでなんとかなるだろう。けれど──
「今回、その考えは使えないかな…。ちょっと状況が合わない…」
そう返すと、少女は腕組みをして眉毛をギュッと寄せた。
暫しウンウンと唸っていたが、答えが閃いたのか目を大きく見開き大きな声をあげた。
「だったら、期限を決めるのはどう?!期限を決めて、それ以降はスパッとあきらめちゃうやつ。現実的問題を鑑みて、来月半ば頃まで何も起きない、或いは、悪化するのなら状況をリセットしちゃうの」
リセット…。
「…なるほどね…。うん、一つの物語候補としておくよ」
出来ればなってほしくないルートだ。
可能性のレベルを極小にして、見えづらいところに置いておくことにする。
「じゃあ、次は明るい道を考えよう」
こちらの暗澹たる心もつゆ知らず、少女が明るい声を出す。
「現実的問題は脇にやって、やりたいことをすれば良いと思うよ」
「…それなりにしているよ」
「けど、お預けを食らっている犬みたいな顔をしているよ」
その言葉に心臓がドキリとした。
心のどこかで見ないふりをしていた感情が、ざわざわとしている。
「…わからないんだ。何だかここのところ全部空回りしているみたいで。ずっとどこか宙ぶらりんな感じがするんだ。その度に、不安が現実を連れてきて。その度に跳ね返して…ひたすらに待って、信じるを繰り返してるんだ」
「待って信じてるだけって!本来の性に合うわけないじゃん。私見て!好奇心で何キロも歩く奴だよ?待ってないよ?」
「行きたいんだけど、道がわからないんだよ」
「だったら簡単さ」
少女が得意そうに言う。
「行きたい場所があるなら行けるよ。想像の羽根は無尽蔵、奇跡だって起こすよ。その為に、邪魔な思考なんて取っ払って…」
少女は、私の頭の上をパタパタとはたいてくる。
まるで、羽虫を追い払うかのような仕草だ。
「はい、はい、余計な思考いらない。余計な気遣いもいらない。邪魔、邪魔、重い感情も、はい、そこ除け、そこ除け、お呼びでない、必要なのは明るさ、
希望、心が温かくなるものだけ」
軽い調子で紡がれる少女の言葉に思わず吹き出すと、心が軽くなった。
「ようやっと笑ったね。ならば、質問です。あなたの願望は何ですか?」
私の願いは──
「──早く会いたい」
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もう一つの物語
「もう一つの物語」
ここから、もう一つの物語が始まるんだ。
僕の人生の第2章が始まると僕は思った。
「付き合ってください。」
彼女からの一言で、俺らの物語は始まった。
「将来は、君のお嫁さんにしてくれますか?」
物語の中盤。彼女は、頬を染めながら、俺に尋ねた。俺は、彼女を抱きしめながら言った。
「もちろん。だから、この指は残していてください。」
俺が言うと、彼女は更に赤くなった。その姿が、とても愛おしかった。
「卒業したら、一緒にサイズ測ろうね。」
俺がからかうように言うと、彼女は拗ねてしまった。それでも、小さく頷いてくれた。あぁ、俺はなんて幸せなのだろう。ずっと、この幸せが続いて欲しい。そう心から願った。
しかし、人生思い通りにいかない。彼女は交通事故に遭い、この世を去った。ここで、俺らの物語は幕を閉じた。
俺は部屋の外に出れなくなった。外に出ると、彼女との思い出が散らばっているから。そんなものを思い出してしまったら、きっと俺は立ち直れない。俺は、部屋の隅に蹲ったまま。傍には、彼女に渡すはずだった指輪。
「内緒にしてたのになー。」
時々、考えてしまう。あの事故がなかったら、俺達はずっと幸せだった。そんな起きない、もう一つの物語。あぁ、俺はもう駄目みたいだ。
もう一つの物語
こんにちは。俺はオバケ引き寄せ体質の尾上蓮。
幼馴染のちいせぇ無害なヤツら(オバケ)と戯れていたところを転校生の縦ロールお嬢様に目撃されてしまった。
小さいヤツらと戯れるのに夢中になっていた俺は、背後から刀を振るわれたことに気付かず、目が覚めたら……。
オバケは除霊、俺は所詮「見えるヤツ」ってことで縦ロールお嬢様と同じ「陰陽師」になることが決定していたのだった。
いや厳密には違うらしいんだけど。とりあえず一般人として暮らしていくのに不自由ない程度にそういう知識と技術を伝授してくれるんだってよ。ありがた迷惑ですって一回断ったんだけどな。
『二十歳前に行方不明になるのと、怪異に食べられて生きたまま化け物になって2度と人の道をあるけなくなるのと、普通の人と同じように大学や就職するの、どれが良いですか?まだ選べますわよ』
それもはや一択だろ。
行方不明も人間やめるのも一緒じゃねえのと思ったが。まだ自由度が高そうな道ってことで今おれは柳谷邸にいる。
もしあの時お嬢に出会わなかったら、また違う道だったと思う。
行方不明になった後とか、怪異になって徘徊するのとか、知らないまま、そのみちの世界にかけだして行ったんだろうなと思う。
ハローハロー、お嬢に出会わなかった俺。
そっちはそっちで、元気にやってて。
時刻は夜の10時
「部活疲れた…ほんとしんどい…死ぬ」
これからお風呂やご飯も食べないといけないのに体が動かない
「最悪…」
こんなことなら
部活なんて
「…入らなければよかった」
「〇〇はなんの部活入るのー?」
「うーん…まだ決めてないかな〜」
「じゃあ一緒に見て回ろう!」
友人の提案で学校を回り、一通り部活を見学することにした
廊下を歩いていると吹奏楽だろう、
軽やかな音楽が聞こえてくる
友人は私より先を歩いており何かを見つけたようだ
「〇〇!これみて!イラスト部らしい〜!」
友人はイラストを描くのが好きで上手かったので
興味を惹かれたらしい
私はというと
ふと窓を見る
【剣道部】と書かれた看板があった
「(剣道部か…授業で少しだけやったけど…全然わかんないな)」
友人が私を呼ぶ声がする
「…わかった!今行く〜!」
(…まぁ剣道部入ったとしても私初心者だし笑
疲れるしいっか笑!)
そしてその友人と共にイラスト部に所属することになったはずだ
剣道部で仲良くなった大多数の友達とは話すこともなく
関わりもなく、その後を過ごすだろう
合宿で皆と辛い稽古をして励まされて乗り越えたのも
深夜のコンビニも
沢山出来たマメも
アザだらけの腕も
面白い同級生も
全ての思い出を経験せずに卒業することになる
そして、私の学校生活を変えてくれた君とも出会うことがなかっただろう
そこまで考えて思考をストップさせる
「………」
私は直ぐにお風呂に入りご飯を食べる
しっかり寝ないといけない
明日も朝練がある
もちろん放課後練も
きつい稽古が待っている
でも私は大丈夫だ
私がきつい時、励ましてくれる友達がいるから
「おやすみなさい」
独り言を呟いて私は眠りに落ちた
最初はね、昔からの腐れ縁くらいにしか思ってなかったのよ。
家が近所でね。小さい頃から遊ぶのも学校へ行くのも一緒だった。
もう当たり前ってくらい一緒にいた。だからなかなか気付かなかったわ。本当はわたしにとって、あいつは大切で特別な人だったんだってこと。
あいつが就職で地元を離れることになってから、好きだって自覚した。さんざん泣いたわ。わたしってなんて馬鹿なんだろって、後悔した。
それで腹が決まったのかな。わたし、あいつのこと追い掛けて行っちゃったの。自分が就職した会社を一ヶ月で辞めてまでね。あいつすごく驚いてたわ。それでますます驚かせてやろうと思って告白してやったの。そしたらなんて言ったと思う?
俺が十五年も言えなかったことを、お前はあっさり言うんだなって。むかついたから叩いてやったわ。早く言いなさいよ。せめてこっちに来る前に告げなさいよねって。
私の人生に連なる、私の知らないもう一つの物語である、父と母の馴れ初め話。
まるで少女のように笑う母の隣で、私もクスクスとつい笑ってしまった。
【もう一つの物語】
人生にもう1つの物語があるのならば
それはきっと、自分が過ごしたかった人生なのだろう。
理想の物語を自分で創り出すの。
今の人生に満足していない?
過去をやり直したい?
それとも、今の自分を
最初から無かったことにしたい?
ほんとばかじゃないの。
もう1つ物語があったとて結局
今の物語が1番幸せだと私は思うよ。
2024.10.29. もう一つの物語 03
あなたの前に転がるもうひとつの物語
私は日々色々な選択をして生きている
私が選んだ方の物語は私と共に描かれる
だけど私が選ばなかった方は私とは別に
描かれるそれぞれ違う道だけど
お互い幸せであることを願って
人は何かと物語を紡ぎたがる生物である
そしてそれらの物語は恣意的に示唆的になる
要は共感させることで、もしくは恐怖させることで
さらには感嘆させることで
人を導きたいという思いがそこにはあるのだ
アナザーストーリー
訓話でも童話でもない
人の意図の介在しない物語
つまり事実なのである
意見を交えず、考察を交えず、事実を淡々と述べる
そう、歴史の教科書こそ純粋な物語たり得るのである
という詭弁だった
#もう一つの物語
隣にもし、あの人がいたら、
ぼくはどんな風に暮らしていたのだろうか?
果たして、今と同じくらい
平凡な、でも、大切な宝物を託されて
幸せに人並みに 生活を送れていただろうか?
もう一つ、物語ができたなら、
ぼくは誰を選んだだろう…
【もうひとつの物語】
やあ、元気かい?
ここに寄ってくれたんだね
嬉しいよ。
独り言、聞いてくれるかい?
聞いていなくとも
そこにいてくれるだけで気が楽になる。
今日はお題通り書きながら
独り言も交えて書こうかな
人生は選択の連続。
選択した分だけ成長できる。
選択した分だけ諦める。
選択した分だけ違う世界がある。
もうひとつの世界。
もしもの、Ifの世界。
もし 僕が男だったら…
もし 私が君と出会っていなかったら…
もし もう少し頑張っていたら…
もう少し、楽に生きられただろうか。
少しは、こっちの方がマシだろうか。
まだまだ選択をした数は百にも届かない僕だけれど
もし、もっと良かったら
もし、あの時こうだったら
もし、僕が居なかったら
なんて想像してしまうのは
誰でもあるんじゃないだろうか。
もし、それが僕だけだったなら
もうひとつの世界には何があるんだろうか
過去をいくら悔やんだって変えられないのは
誰でも知ってるはずなのに
もし選択が違っていたら?
っていう想像してしまうのは
過去を変えられるチャンスがあったことに
気づいていたからだろうか。
ただ、その選択肢が嫌だっただけなのだろうか
それともその両方か。
私は僕があまり良くないことを知って
ほぼ無理やり一人称を変えた。
別に自分を表していることならば
私でも俺でもなんでもいいだろうよ
なんて主張はどこかへ捨ててしまった。
そんな私は周りに流されて
自分に自信が持てない生活を送っている
もし、僕を貫いていたならば
此処にいる僕のように
自分をさらけ出せたのだろうか
世の中の「普通」に押しつぶされて
自分の中の「普通」をどこかへ捨ててしまった人は
私以外もいるんじゃないか
もし、こう生きられたら。。。
どれだけそう望んだと思っている。。。
孤独が怖くて失敗を避けてきたらこの通りだ。
どの道へ進もうが、孤独というのは変わらないんだ
どれだけ主張しようが避けようが何も得られない。
誰でも譲れないものの一つや二つはあるから
その一瞬が世の中の「普通」にあっていないだけで
押しつぶさるんだ。
私は私、僕は私。
はあ……自分の世界にひきこもりたい……
疲れたよ……
現実が見えすぎるのも良くないけれど
たまには色眼鏡をかけて
遠くを見るのもいいと思う。
僕は此処にいる
自分が自分って言える此処が好きなんだ
自分を出せないくらいなら失明した方がマシだ。
君もそう思うのかい?
少し心配だよ。
もう一つの物語
僕には恋人がいる。
お互い同性同士だ。
他の人にはよく思われないかもしれない。
でも、彼は、僕は、互いを愛してやまないのだ。
今日も彼と手をつないで眠る。
彼を愛して良かった、
僕を見てもらえて良かった、
そう思いながら彼の夢を見る。
私には恋人がいた。
異性同士の恋愛だ。
彼は私を救ってくれた恩人ともいえる人だ。
互いに惹かれ合い、恋人にもなれた。
だが、彼は病気で亡くなった。
涙はでなかった、
彼のほうが辛かったから。
私は今日も思い出に浸る。
目の前の黒い海には、大きな月が映っている。
嗚呼、次はどうか、
「私よりも永く、生きてください。」
そう言って、私は黒い海に足を踏み入れた。
朝の通勤電車。
突然急停車して、アナウンスが流れる。
「先ほど、お客様がこの電車に接触したため、運転を見合わせます」
身動きの取れない満員電車の中、缶詰状態が続く。
お金を払って乗っているのに、どうしてこんな苦難を強いられるのか。
ヘトヘトになって辿り着いた職場では、いつものようにハードワークを強いられる。
こんな人生でいいのか?これが幸せと言えるのか?
朝の通勤電車。
もう何本も見送る。
満員電車が怖くて乗れない。
いつからこんな風になってしまったんだろう。
入社当時は何でもなかったのに。
突然、アナウンスが流れ、人身事故が発生したことを告げる。
もう無理だ。これ以上に人が増えて進まない電車には乗れない。
家に帰ろう。
自分の人生が、微かに音を立てて崩れていくのを感じる。
朝の通学電車。
たくさんの人達が詰め込まれてゆくのを見る。
行くべき場所を持っている人達を羨ましく思う。
私はもう、どこへも行けない。
今日ですべてが終わる。
このホームから、一歩足を踏み出すだけで。
きっと、たくさんの人に迷惑をかけるだろう。
最後まで、こんな人間でごめんなさい。
人生なんて、最初から期待しなければよかった。
朝の通常電車。
様々な人の人生を乗せて走る電車。
私はその電車を運転している責任を感じながら、安全運行を心掛けている。
快適に、迅速に、確実に。
個人的な性格が為せる業だが、これをもう何年も続けている。
視界の先に、ホームの上でふらつく少女を見つけた。
何となく、直感で分かる。
私は、電車のブレーキに手をかけた。
この、四角い箱にたくさんの人を乗せて、毎朝同じレールの上を走り続ける。
人生の成功や失敗など、関係なく日々運行される電車。
物語はいくつも生み出され、流れてゆく。
時には終わることもある。
だけど、誰もが幸せになりたいんだ。
すべての物語をハッピーエンドにしたいんだ。
たとえば、誰もが今日という日を悩みながらも生きて、消えるはずだった一人の少女の命が、かろうじて救われ、生き長らえたことのように。
:もう一つの物語
僕達が出会わなければ、
お互い、何処かで壊れていたかもしれない。
別に私がいなくても君は生きていける。
きっとそうだろう。
でも君は、
本音を隠して良い印象を相手に見せつけても、
本性は誰にも癒されることのないまま、
深い深い傷を、君の言葉で刺していくのだろう。
ずっと悪夢に魘されて、独りになるのだろう。
信頼出来る人を作らずに
つまらない人生を送っていくのでしょう。
いや、君は、それも一つの人生だと考えるか。
でもさ、僕らは出逢ったんだよ。
恋病に陥って、お互いが好きで仕方ないんだ。
つまり、君が今から僕と歩む物語はこうだ。
僕と幸せになること。
いや、これから起こる未来を全部話してあげよう。
「一緒に暮らして、苗字もおそろいにして、
旅行もして、時には困難にぶつかって。
二人だけの、この特別な時間を、
大切にしていこうよ。
…まぁ、お金に余裕ができたら、
コウノトリを呼んでもいいのかもね?
私が一番信頼している恋人さん。」