あひる

Open App

もう一つの物語

 
 
「じゃ、また来月に来るね」
「うん」
 

 遠距離の彼を見送る。
 改札でさよならするのは嫌で、新幹線ホームの入場券ボタンを押した。


 手をつないで上がる長いエスカレーター。
 発車時刻を待つ新幹線が見えた。


「じゃぁね」
「待ってる」
 

 新幹線に乗る彼の手を離そうとしたら、彼に引っ張られて、思わず私も乗ってしまった。
 

「やっぱり嫌だ。ユミ、すぐ仕事辞めてオレと一緒に……」
 

 本当に紡ぎたかった……その先の物語。
 

 

10/29/2024, 3:12:11 PM