ラブソング
今はもっぱら失恋ソングしか聴いてないことに気づいた。
手紙を開くと
実家の整理で学生時代のままにしていた自分の荷物を20年ぶりに開けた。
その中に、当時の自分が残しておきたいと手紙をしまった箱が出てきた。
開けると一気に学生時代の自分に会えた。友人や大切に想っていた人からのメッセージは、温かいものばかりだった。
悲しいことが続いたけれど、もう少しがんばってみよう、そう思った。
部屋の片隅で
「久しぶり。元気だった?」
半年前に別れた彼の声に心がざわめく。
気づかれないように冷静を装う。
「え、元気だよ。番号変えた?」
「え……変えてないよ……そっか……ごめん、俺勝手だよな」
「いや、そうじゃなくて、」
「いや、いいんだ。そんなもんだよね。俺の方が別れたこと、すごく後悔してたんだな」
違う、そうじゃない。
番号を入れたままにしたら、かけてしまいそうで縋りたくなくて消去した。
かかってきたら、その時考えよう。そう思って部屋の片隅には、まだ彼の荷物がある。
「この気持ち伝えないと俺、一生後悔すると思って電話かけたんだ。でも、もうユミは……」
350キロは思っているより遠い。
そうじゃないと言いたいけど……言えない。
半年が過ぎた。
結局、あれから電話がかかってくることはない。
部屋の片隅で積まれた3つの段ボールが問いかけてくる。
――本当に後悔するのは……。
逆さま
うちには逆さまの住人がいる。
今も3人から4人、冷たい環境に置かれている。
「使い切っちゃうね」
彼がそのうちの赤い子を選んだ。オムライスによく合う。
お尻の方を持ちフリフリすると「あっ!」と叫んだ。
「ふっ」
思わず笑ってしまった。
フタが開いて、飛びちった赤い液体。
「ごめん」
いつもクールな顔なのに、赤くなっている彼に思わず笑ってしまった。
「拭けば大丈夫」
――ただ一緒にいられるだけで良かった。
午前1時の緊張。
やっと隣で規則正しい寝息を立て始めた彼女を起こさないように、そっとベッドを抜け出した。
ワンルーム。
音を立てずに暗闇の中、机の引き出しを開ける。
あらかじめ用意しておいた糸とペンを手にして、彼女のブランケットを少しだけめくる。
その細い薬指に糸を巻き、ペン先を糸にあてた。
すぐブランケットを戻し、糸とペンを引き出しにしまう。
「……ん? どうかした?」
――やばっ。
後ろから彼女の声がした。
「あ、トイレ行ってた」
ごめん、ごめんと言いながらベッドに入る。
「寒くない?」
寝ぼけた声で彼女が言う。
「大丈夫だよ、おやすみ……」
「ん」
――びっくりした。
彼女が再び規則正しい寝息を立て始めるまで、オレに寄せてきたその体を抱きしめた。
気づかれただろうか?
まだ心臓がドキドキしている。
お題:眠れないほど