部屋の片隅で
「久しぶり。元気だった?」
半年前に別れた彼の声に心がざわめく。
気づかれないように冷静を装う。
「え、元気だよ。番号変えた?」
「え……変えてないよ……そっか……ごめん、俺勝手だよな」
「いや、そうじゃなくて、」
「いや、いいんだ。そんなもんだよね。俺の方が別れたこと、すごく後悔してたんだな」
違う、そうじゃない。
番号を入れたままにしたら、かけてしまいそうで縋りたくなくて消去した。
かかってきたら、その時考えよう。そう思って部屋の片隅には、まだ彼の荷物がある。
「この気持ち伝えないと俺、一生後悔すると思って電話かけたんだ。でも、もうユミは……」
350キロは思っているより遠い。
そうじゃないと言いたいけど……言えない。
半年が過ぎた。
結局、あれから電話がかかってくることはない。
部屋の片隅で積まれた3つの段ボールが問いかけてくる。
――本当に後悔するのは……。
12/7/2024, 3:18:07 PM