朝の通勤電車。
突然急停車して、アナウンスが流れる。
「先ほど、お客様がこの電車に接触したため、運転を見合わせます」
身動きの取れない満員電車の中、缶詰状態が続く。
お金を払って乗っているのに、どうしてこんな苦難を強いられるのか。
ヘトヘトになって辿り着いた職場では、いつものようにハードワークを強いられる。
こんな人生でいいのか?これが幸せと言えるのか?
朝の通勤電車。
もう何本も見送る。
満員電車が怖くて乗れない。
いつからこんな風になってしまったんだろう。
入社当時は何でもなかったのに。
突然、アナウンスが流れ、人身事故が発生したことを告げる。
もう無理だ。これ以上に人が増えて進まない電車には乗れない。
家に帰ろう。
自分の人生が、微かに音を立てて崩れていくのを感じる。
朝の通学電車。
たくさんの人達が詰め込まれてゆくのを見る。
行くべき場所を持っている人達を羨ましく思う。
私はもう、どこへも行けない。
今日ですべてが終わる。
このホームから、一歩足を踏み出すだけで。
きっと、たくさんの人に迷惑をかけるだろう。
最後まで、こんな人間でごめんなさい。
人生なんて、最初から期待しなければよかった。
朝の通常電車。
様々な人の人生を乗せて走る電車。
私はその電車を運転している責任を感じながら、安全運行を心掛けている。
快適に、迅速に、確実に。
個人的な性格が為せる業だが、これをもう何年も続けている。
視界の先に、ホームの上でふらつく少女を見つけた。
何となく、直感で分かる。
私は、電車のブレーキに手をかけた。
この、四角い箱にたくさんの人を乗せて、毎朝同じレールの上を走り続ける。
人生の成功や失敗など、関係なく日々運行される電車。
物語はいくつも生み出され、流れてゆく。
時には終わることもある。
だけど、誰もが幸せになりたいんだ。
すべての物語をハッピーエンドにしたいんだ。
たとえば、誰もが今日という日を悩みながらも生きて、消えるはずだった一人の少女の命が、かろうじて救われ、生き長らえたことのように。
10/29/2024, 2:20:52 PM