水たまりに映る空なんて、どうせ濁った灰色だ。
…と思っていたけど、それは澄んだ青色だった。
灰色の空なんか見つめずに、本物の空を見上げなよ、そう励まそうかと思っていたのに、これじゃ俯いたままの君を元気づけることも出来ない。
水たまりに映る空はキラキラ輝いて、風が立てるさざ波に揺れている。
フェイクなんだけどな。ニセモノなんだけどな。
でも君は少し微笑んで、
「こんな道端にも、綺麗な空があるんだね」
そう言って、僕の顔を見上げた。
それは、泣き腫らした後の笑顔だったけど、きっと本当の気持ちを僕に伝えてくれた。
「ツライけど、もう少し頑張ってみるよ。だって、雨は上がって、空は青くて、私はまだココにいるんだから」
その意味はイマイチよく分からなかったけど、君が笑ってくれるんなら別にいいや。
涙はさっきまでの雨が、綺麗に洗い流してくれたんだと思いたい。
君の悩みがそんな簡単なものじゃないことは分かってるけど、雨が上がって、傘を閉じて、君と二人歩く歩道の水たまりに映る空は青く、それを見たら何となく、無理に元気を出して上を向いて歩く必要もないんだな、と思えた。
足元にだって喜びは転がってる。
靴を濡らすだけの水たまりも、時にこうして、俯くことしか出来ない誰かを勇気づける。
「…さて、じゃあ、お腹も空いたし、ご飯でも食べに行こうか」
食欲、あるの?
そうツッコミたかったけど、君の笑顔を曇らせそうで、やめた。
だってほら、足元の水たまりには、今の君の笑顔がキラキラと輝いている。
澄んだ本物の青空を背景にして。
恋か、愛か、それともエロか。
男なら、これじゃないだろうか。
時折思う。
神様がいるのなら、どうして男という生き物をこんな風に作ったのか。
恋や愛に対する興味は同じでも、エロに対する興味は、男と女で差がありすぎはしないか。
だから、いろんな場面でトラブルが発生する。
一方的な独走が悲劇を生む。
その類の犯罪を許せはしないが、個人的な意見としては、「男とは、本能に抗わなければそーゆー生き物だ」と思ってる。
だって、物心ついた時には、そんな感情が芽生えていた。
欲望と言った方が正解か。
それを責められても、その感情を完全に失くすことなど出来はしない。
男って、そーゆー生き物だと思う。
まあ、男女お互いにそーゆー気持ちがなかったら人類は滅亡するし、そう考えれば、エロは人類存続の鍵とも言える。
恋や愛、それだけじゃこの世界は終わりを迎えていたかもしれないのだ。
願わくば、エロを単なる悪者にしないで欲しい。
いや、悪用する者も確かにいるが、純粋なエロは、まともな男である証なんじゃないかと勝手に思い込んでいる。
昨今、エロが過ぎて失脚する男性芸能人が後を絶たない。
本当なら、「仕方ないじゃん、男ってそーゆー生き物なんだから」と言いたいところだが、被害者が存在する限り決してそれは認められない。
秩序が守られなければ、男だ女だ恋だ愛だの問題じゃなくなるから。
合法な範囲で、生まれ持っての性であるエロを楽しもう。
それを咎められる理由はないはずだ。
この世界には、男と女という生き物しかいなくて、お互いが求め合うから人類は存続してきた。
もちろん、いろんな愛の形があることも事実だが、この構図には誰かの意思が絡んでいる気がしてならない。
どっちかと言うと無神論者だが、まあ、うまいこと作ったなーというのが素直な感想だ。
恋か、愛か、それともエロか。
このどれもが、我々の人間たる所以だと思ってる。
恋をして、愛し合って、エロいこと考えて。
…うん、まともな人間だ。
喧嘩しても 仲直りしようよ
きっといつか お互いが大切な存在になる
だってほら 思い描く理想の世界は
笑っちゃうほど そっくりだからね
どうしても 立場があるから
子供のように 無邪気な関係じゃいられない
だけどほら 思い描く理想の毎日は
不思議なくらい おんなじだからね
朝起きて太陽の光浴びて
美味しいご飯食べて仲間と話して
働いて学んで遊んでのんびりして
たまに恋をして落ち込んだりして
そんな他愛のない毎日を守りたい
この国に住む すべての人達の幸せを
僕達がいがみ合えば その暮らしは崩れ始める
分かるだろ President 約束だよ United World
住む世界が違っても 友達にはなれる
お互いの苦労だって きっと分かち合える
だって僕も君も President 世界を変えていける
僕達が目指す世界は この星にたったひとつのユートピア
だから約束だよ United World
喧嘩しても 仲直りしようよ
それぞれの願いがあるけど 譲り合う心を持とう
だってほら 思い描く理想の世界は
笑っちゃうほど おんなじだからね
この世界はひとつ 僕達が守る
約束だよ My friend この星に生きる命のために
朝起きて太陽の光浴びて
美味しいご飯食べて仲間と話して
働いて学んで遊んでのんびりして
たまに恋をして落ち込んだりして
仕事が終わり、自分のアパートに帰る途中、人けのない一本道を歩いていた。
左右を高い塀に挟まれ、確かこの塀の向こうは墓地だったはずだ。
背伸びしても見えないが、少しジャンプすると、一瞬だけ静まり返った墓地群が見える。
あまりこの時間に見たい景色でもないが。
少し先の、塀の向こう側、傘が見えた。
塀の上に、傘の生地の部分が見えている。
誰かが塀の向こう側にピッタリと張り付いて、傘をさしている、そんな感じ。
だけど、雨は降っていない。
空には星が輝いてるし、日傘も不要なはずだ。
人がさしているとは思えない。深夜0時を回ったところだ。
墓地のあるお寺も、閉まっている時間じゃないだろうか。
何かの上に開いたまま乗せられて、固定されているのだろうか。
誰かが忘れていった傘が?
忘れた人が気付くように、ああして見えるように置いているのだろうか。
そんな事を考えていた矢先、傘がクルクルと回り出した。
思わず足を止める。
これは…誰かのイタズラか?
誰かが自分を驚かそうとしているのだろうか?
何のために?
なんにせよ、この道を進まないと家に帰れない。
出来るだけ傘を見ないようにして、歩き始めた。
目の端に、回り続けるその存在を感じながら。
横を通り過ぎようとした時、傘がフワッと浮いたように感じた。
思わずそちらを見てしまう。
目の前で、傘がゆっくりと上昇してゆく。
生地の部分が回りながら浮き上がり、柄の部分が見えてくる。
そしてその持ち手のところに…一匹の猫がぶら下がっていた。
…猫?
持ち手のところにつかまって、傘と一緒にクルクルと回っている。
少し太った、三毛猫だ。
理解出来ない光景に、その場で立ち止まり固まってしまった。
すると、声が響く。
「何ボーッと見てんだよ!助けろよ!」
…助けろ?誰が言った?この猫が?
唖然としながらも、条件反射で傘に飛びつこうとするが、塀が高すぎて手が届かない。
そうこうしているうちに、傘と三毛猫はゆっくりと昇っていき、暗い夜空に紛れて消えてゆく。
呆然と空を見上げ、その場に立ち尽くしていた。
何だったんだ、今のは?
三毛猫のメリーポピンズか?
でも、助けろって…不本意ながら飛んでいたのか?
考えても、答えは出ない。
傘に秘密があったのか、それともあの三毛猫が不思議な力を持っていたのか。
三毛猫のオスは貴重で、生まれるのは奇跡に近いと聞くが…。
まあ、だからといってあの状況は理解し難い。
辺り一帯は静まり返り、まるで何事も無かったかのように、いつもの帰り道だった。
「腹減ったな。夕飯まだだった」
私はいつもの帰り道を歩き始めた。
何かとても変なものを見たが、まあ、私の生活には特に何の影響もない。
家に帰ったら、SNSに今夜見たことを投稿して、飯食って風呂に入って寝よう。
明日の朝、少しでもそれがバズってることに期待して。
あの交差点の角にある お気に入りのカフェ
メロンパフェが美味しくて 休日の午後を過ごした
一人の時間が優しくて 誰にも邪魔されずに
窓際の席で文庫本を開いて 雨降る午後を過ごした
他に何もいらなかった 昨日あの人とサヨナラしたけど
この場所があれば平気だった
泣かずにいられる自信があった
窓の外 雨は上がり 商店街は活気を取り戻すけど
私はこの席を立てないまま
今もまだ入り口のドアを見つめてる
上の空 本を閉じて パフェのアイスは溶けてゆく
私は味わうことも出来ずに
今もまだ開かないドアを見つめている
雨が上がったら あのドアは私にとって
入口じゃなく出口でしかないのに
この席を立つことが出来ない
雨上がりの街に出ていくことが出来ない
きっと泣いてしまうから この場所を離れたら
街に降り注ぐ光を受けて 涙を止められそうにない
終わらないで雨 降り続けて
私をこのお店に もう少しだけいさせて
窓の外 遠い世界 あの人と私を隔てる壁があって
それを築いてしまったのは私
今もまだ入り口のドアは閉じたまま
あなたは入って来ない
もう会えることもない
雨が上がっても 私の心は晴れないまま