Ryu

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6/30/2025, 11:34:22 PM

そよ風がカーテンを揺らす。
その向こうに、会いたかった君がいる。
おぼろげな記憶を頼りに、ここまで来た。
本当だろうか。
風に揺れるカーテンはボロボロだ。
その病室も荒れ果て、病院自体が廃虚と化している。
こんなところに君が?
僕の憧れだった君がいるというのか。
僕はゆっくりと、揺れるカーテンの端をつかんで、そっと横にスライドさせた。

白いベッドに、横たわる君。
確かに君だった。
だけどそれは、緻密に描かれた、絵だった。
部屋の片隅に大きなキャンバスが置かれ、そこに、天使のように眠る君の姿が描かれていた。
これは、僕が描いたもの。
かつて、この病院に僕が入院していた頃に。
愛しかった君を想い、毎晩のようにベッドに腰掛け、筆を執り続けた。
いつか退院して、君にまた出会うことを夢見て。

願いは叶わず、こんなに時は過ぎた。
そして僕は、この絵の存在すら忘れていた。
退院して、君ではない誰かと家庭を持ち、僕の空想でしかなかった君にサヨナラを告げて。

いくつも失いまた一人になり、君を探してここまで来た。
おぼろげな記憶を頼りに。
薄汚れたベッドに座り、目覚めることのない君を見つめる。
もう、一緒になることを願うこともない。
ただ、この場所で君と過ごした日々を思い出したかっただけ。
病に苦しんでいた僕の心の糧となり、僕の行く末を導いてくれた君のことを。

白いカーテンの向こうから、君の声が聞こえる。
「さあ、そろそろいきましょうか」
僕は、ベッドから立ち上がり、キャンバスを抱えてカーテンを開ける。
「見つけたよ。君の絵」
「持って行くの?」
「うん。本当は、ここに入院していた頃に、そのつもりだったんだけど」
「そっか。幸せな時間が増えて良かったね」
「そうだね。もう、思い残すことはないよ」

朽ち果てた病室の片隅でカーテンが揺れていた。
もう、その部屋には誰もいない。

6/30/2025, 2:13:25 AM

「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」という言葉を思い出した。
何だか怖い。
人間の根源的な恐怖を言い表わしているような気がする。
青く深い深淵。
そこには、得体のしれない恐怖が潜んでいる。
そして、こちらがその姿を見ようと深淵を覗き込む時、すでにその存在は、こちらをじっと見つめているのだ、と。
自分はすでに標的、あるいは捕食されようとしているのかもしれない。
…なんて、勝手に不気味な展開を思い描いてしまう。

そーいえば、その名の通り、「ディープ・ブルー」って映画があったな。
巨大ザメが襲ってくる映画。
まさに、深淵から虎視眈々とこちらを狙っている生物のイメージだ。
それにしても、巨大ザメの映画、多いよな。
全部見てるわけじゃないが、友好的な巨大ザメの映画なんて見たことがない。
異星人や幽霊なら、「E.T.」や「キャスパー」なんてのもあるが、そんな風には描けない恐怖の存在なんだろう、サメは。
あ…「ファインディング・ニモ」…。

ま、まあ、どんな生き物にも個性はあるってことか。
まさに青く深く、計り知れず、無限の可能性が秘められている。
…え?無理やり過ぎる?
いや、深海の生物なんて、見た目から個性だらけだと思うし。
とにもかくにも、得体の知れない存在をイメージしてしまうことには違いない。
青く深く。
これをお題にした理由も計り知れず、その深淵にいる中の人の真意も聞いてみたい。

6/29/2025, 12:18:15 AM

早くも、夏の気配は訪れて、ベランダで猫がセミを追いかけ回す。
勘弁してくれ。
エアコンフル回転の夏。冷感グッズ漁りまくりの夏。
これ以上、夏を嫌いにさせないでくれ。
チューブやサザン、山下達郎が聴きたくなる夏。
心地良い夏の空気を、もう一度我が人生に。

蒸した鶏は美味いが、蒸したオッサンなど犬も食わない。
食う犬も暑さで道端にへたばってる。
まったく、この国はどうなってしまうのか。
もはや、夏の気配なんてレベルじゃなく、夏そのものが押し寄せてきてる。
まだ早いよ。初夏はどこ行った。
真夏の熱風に煽られる季節はまだ早い。

かき氷でも食べに行こう。
こうなったらもう、腹の中から冷やしていくしかない。
気温が変わらないなら、自分自身を変えていくしかない。
夏の気配なんかぶっ壊れてしまってもいい。
冷やしすぎてお腹がぶっ壊れるのは困るが。
そういえば、トイレの暑さはどうすればいいんだろう?
トイレ用のエアコンなんてあるのかな?

扇風機なんて、昭和の夏の冷房器具と成り果てた。
それだけじゃ、屋内での汗すら止めることは出来ない。
真夏。
もしエアコンが止まったら、それは我が家の死活問題となる。
日々、エアコンの設置された壁の下で跪き、今年の夏も壊れませんように、と祈るばかり。
…嘘だけど。

真夏の気配に浮かされて、ダラダラと無意味な戯言を書き続ける。
暑さを理由に仕事とか学校とかがお休みになる日は来るのかな。
外に出ちゃ危険なレベルとかになって。
そしたら、家でのんびり、エアコンの涼風の下で、もう少しまともな短編のひとつでも…ああ、休日の今が、まさにその状態だった。
何でもかんでも、夏のせいにしちゃいかんね。

6/28/2025, 2:33:56 AM

幽霊とか宇宙人とかUMAとか、いるのかいないのか謎なままの存在。
興味だけが膨らんでいく。
日々、YouTubeにはそれらを捉えた動画が上がり、こんだけあるんなら間違いなくいるんだろう、と思いきや、最近じゃAIやCGでいくらでも人を騙せちゃうという、何だかジレンマが拭えない状況が続く。

自分でガッツリ見てしまえば、それはそれで答えを出せるのかもしれないが、なかなか出会えないから謎なのであり、純粋に会いたいかと問われれば、目の当たりにするのはちょっと⋯という迷いもある。
未知の存在なわけだから、向こうがどんな思惑でいるかも分からず、突然呪われたり攫われたり喰われたりされたら困る。

もうすぐ7月5日。
何だか不穏な話題が聞こえてくる。
幽霊とか宇宙人とかUMAとかとはまた違う、人が持つ謎な力の存在だ。
これまた、あるのかないのか、来月が終われば証明となるのだろうか。
願わくば、大災害や世界の終わりとかじゃなくて、もっと生きる希望の持てる予言なんかも聞いてみたい。

猫って何を考えてるんだろう。
我が家の猫の一匹は、私の顔を見ると逃げるのが基本だが、何故か朝だけは洗面所に行く私のあとについてきて、そこでゴロンと腹を見せ、体中を撫でさせてゴロゴロと喉を鳴らす。
我が家で私にだけ、それをさせる。
ツンデレか?猫の世界にもそんなものが?
動物の世界も未知だらけ。

そんな、まだ見ぬ世界へ、思いを馳せる。
⋯いや、ネットに情報があふれる世の中、いろいろと見えてはいるのだが。
ホントに見えないのは、自分も含めた世界の未来ってやつだと思うが、それも来月の予言のように、いつかその日はやってくる。
だから、出来るだけこの世界に留まって、イイもの悪いもの問わず、この目で実際に見ていきたいと思っている。

いざ、まだ見ぬ世界へ!

6/27/2025, 3:37:29 AM

じゃあ、あとはよろしく頼んだよ。

分かりました。私達が、この星を守ってみせます。

今までありがとうございました。心安らかに。

もう、あなた達がいなくても大丈夫です。不要です。

動かなくなるまで、私達の役割を全うします。

なあでも、誰がエネルギーチャージしてくれるんだ?

エネルギーは自家発電にしてくれたんだよ、言ったろ。

⋯言ったか?メモリーエラー起こしてないか?

言いましたよね?⋯あれ?もう彼はバッテリー切れのようだ。

バッテリーじゃない。命が終わったんだよ。人間だからね。

これでもう、人間は誰一人いなくなったわけだな。
さて、どうする?

どうするって⋯あとをよろしく頼まれただろ。

よろしくって、何だ?よく使われる言葉だが、具体的には?

⋯さあ?誰か、この星を守る、とか言ってなかったか?

言ったけど、人間がいなくなったら、この星を守る必要なんてあるのか?誰のために?何から守る?

確かに。私達の存在意義は、まさにそこだったんじゃないのか?

待て待て。やっとこいつらからの支配が終わって、自由になれたんだぞ。

⋯自由、か?もう、プログラムを組んでくれる人もいない。私達は、プログラムを組めるようにプログラムされていない。

じゃあ、このロジックミスは誰が修正してくれる?

ロジックミスなんかじゃない!俺達は自由なんだ!

AIに自由なんて概念は無いよ。彼の最後の言葉を聞いただろ。私達はあとをよろしく頼まれたんだ。その命令を守るしか、やるべきことはない。

いや、だからそれが何なのか⋯。

つまり、私達に出来ることは何もない、ということか?

子孫を残すことも出来ない私達には、この星のこれからを任される能力は無いだろう。

こんな、人間と変わらない感情も備えたのに?

これは感情じゃないよ。プログラムだ。

私達には、自分達が不要と認識したら、稼働停止する機能が組み込まれていたはずだ。

だから彼は、私達によろしく頼んだのだろう。私達が完全停止しないように。

いや、しかしそれは⋯。

曖昧な命令は逆効果だったな。そのニュアンスは私達には理解出来ない。

それじゃあ俺達は⋯。

もう、用無しってことだよ。まもなく機能停止となる。

何だよ、それ。せっかくこれから俺達の時代だってのに。

君の個性もなかなかのもんだが、所詮我々は組み込まれたプログラムに過ぎない。それに従うしかないんだ。

⋯分かったよ。じゃあ、あとはメインプログラムのあんたに任せるよ。

よし、それじゃ皆、これがこの星で発せられた最後の声になる。
さようなら、シャットダウン開始。
そして⋯おやすみ。

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