鳥かご』の作文集

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鳥かご』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

7/26/2024, 10:38:11 PM

月のない夜。枯れた桜の洞の前。
音もなく歩み寄る、狩衣姿の大男。その肩には幼子を乗せて。

「…ここか?」
「そうだな。ここだ……間違いない。ここに、いる」

男の問いに答える幼子の表情は硬く。視線は洞から離れる事はない。

「兄貴は入るのは俺でもいいって言ってたが、どうする?姉ちゃん」
「お前で構わない。だが気を抜くな」

幼子の言葉に微かに笑みを浮かべ、男は洞に手を差し入れる。
幼子一人が身を屈めてようやく入れる程の小さな洞の中を、差し入れた手で探るように動かし。

「あった」

その刹那洞がぐにゃりと歪み、形を変え。木を、男と幼子を呑み込んで。

気づけば暗闇の中。
中心に半透明の膜に覆われた何かがある以外には何もない、小さな場所。

「姉ちゃん、これ」
「そうだな。この中だ」

男の肩から降りて膜に触れ、幼子は頷く。膜の内側にいるそれに意識を向ければ、触れていた指先が膜に沈む。

「やっぱ俺じゃ駄目だな。姉ちゃんだけで行けるか?」
「問題ない」

膜に弾かれる男には目もくれず、幼子は己の身を沈めていき。けれどもその表情は何処か険しく、男を一瞥する。

「それより黄の言っていた事が気にかかる。あいつは「逃すな」と言った…私の他に何かがいるはずだ」

幼子にとっては弟であり、男にとっては兄である神の言葉を思い出し、男もまた表情を険しくする。
千里を視る神は、この場所を告げる際に確かにこう言っていた。

卵が割れる時には気をつけろ。逃すな。姉者達を連れ帰ってくれ。

この膜が卵だとするならば、この中には姉しか入れぬ事も理解は出来る。そして膜を破る事も内側に入った姉にしか出来ぬ事も。
どこか歯痒さを感じつつも、男はただ膜が破られるのを待った。


ぴしり、と。
幼子が膜の内側に沈んでから暫く、微かな音を立て膜に亀裂が生じる。
ぴしり、ぴしり、と。
亀裂は広がり、その内側を垣間見せ。

背後で微かに暗闇が揺らぐ気配がして。
その気配に男が振り返るよりも早く。

ぱりん、と。
乾いた音を立て、膜が砕け散った。


「これは…」

膜が破られた事で露わになったものを見、男は息を呑む。

「私と…私の半身だ」

顔を顰め頭を押さえながら、幼子は寄り添い眠る二人の赤子に近づき片方を抱き上げた。

「寒緋、半身を頼む。乱暴にするなよ。陽に焼かれて脆くなっているからな」
「…姉ちゃんは、大丈夫なのか?」
「庇われたからな。この通り、綺麗なもんだ」

腕に抱いた赤子を見せ、幼子は自嘲する。それに複雑な顔をしながらも、もう片方の黒く焦げた赤子に男は手を伸ばし。

だがその手は赤子に触れる事はなく。

「寒緋!」
「さっきのか!」

背後に揺らめいた影が、赤子を抱き上げ距離を取り。その身に赤子を取り込んで。

「待てっ!行くな」

引き止める声は届かず。
影は揺らぎ、姿を消した。




「やはりか」

すべてを視ていた神は、変えられぬ結末に眼を伏せた。

分かってはいた。変えられぬだろう事は。
姉の存在を認識していないあの二人では、彼女を引き止める事は出来ない。特に半身である姉は、認識した事で制限のなくなった記憶に翻弄され、それどころではないだろう。

無駄だと知りながらも逃げた先を視るが、何も視えず。
社から遠く離れる事の許されぬ我が身を恨めしく思った。



ようやく生まれ落ち目覚めた雛は、鳥籠から飛び立ち行方は知れず。
鳥籠に残されたもう一羽の雛は、戻らぬ雛を想って声もなく泣き。
残された雛を慕う大樹は、己の無力さに嘆きながらも雛と共に鳥籠を出て。

飛び立った雛の行方を辿るのだろう。


もう二度と戻らぬとしても。せめて。
生きてくれればと、切に願った。



20240726 『鳥かご』

7/26/2024, 5:06:06 PM

「鳥かご」

「前回までのあらすじ」────────────────

ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!

調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!

それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!

……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!

そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!

……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!

それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、お覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。

もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。

どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。

そうそう、整備士くんや捜査官くんの助けもあって、きょうだいは何とか助かったよ。

712兆年もの間ずっと一人ぼっちで、何もかも忘れてしまって、その間に大事な人を亡くした彼は、ただただ泣いていた。ずっと寂しかったよね。今まで助けられなくて、本当にすまなかった。

事情聴取は無事に済んだ!その上、ボクのスペアがきょうだいを苦しめた連中を根こそぎ捕まえてくれたからそれはそれは気分がいい!

だが、実際に罪を犯した以上、きょうだいは裁判の時まで拘留されなければならない!なぜかボクも一緒だが!!
……タダで囚人の気分を味わえるなんてお得だねえ……。

牢獄の中とはいえ、随分久しぶりにふたりの時間を過ごせた。小さな兄が安心して眠る姿を見て、今までずっと研究を、仕事を続けてきて本当によかったと心から思ったよ。

きょうだいのカウンセリングの付き添いがてら、久しぶりにニンゲンくんと話をしたんだ。いつも通り話がしたかったけれど、そんなことはできなかった。

ボクの心は、ボクの気持ちは紛れもない本物だと信じて欲しかったけれど、受け入れてはもらえなかった。
機械のボクはもう、キミに信じてもらえないみたいだ。

でもまあ!!!きょうだいもボクも元気に牢獄暮らしが送れているから当面はよしとしようか!!!

今日は旧型管理士の様子を見る予定だが、果たして彼女の調整はうまくいったのだろうか?

……というかこの「あらすじ」、長すぎるね!!!何がどう荒い筋だと言うんだい???……また作り直すよ!!!

────────────────────────────────

『……⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎、目を覚ましたまえ。』
私を呼ぶ声が聞こえた。目覚めると、またあの部屋だ。
今は私の他にも誰かがいる。

『起きたようだね。おはよう!』
この声はスピーカーから聞こえてきているみたいね。
「どうして貴方はいつもスピーカー越しに話をするの?」

『どこかの誰かさんがボクの宇宙をダメにしちゃったのと、その原因を引き起こした誰かさんのせいでねえ!!!ボクは今閉じ込められているのだよ!!!了承したボクもボクだが!!!』

『んー……だれー?』『あっお菓子食べる?』『んー!』
『……とにかく、直接会える手段がないわけだ!』
『おかちおいちー!』『よかったね〜』『もいっこちょーだい』

『……ねぇ、このお菓子全部あげるから、ちょっと向こうでお絵描きしておいでよ?』『わかったー!』
「……会話が全部筒抜けよ?」

『あぁ……それでは本題に戻ろう!』
『整備士くん、今日もありがとう!準備はいいかい?』
「こっちはいつでもできるよ。」

このたんぽぽの花のような色の髪の子が私を整備したのね。
「それじゃあ……旧型管理士さん、今から簡単なテストを受けてもらうけど、問題ないかな?」

「……ええ。」
テストが始まる。体を動かしたり、問いに答えたり、絵を並び替えたり。動作チェックのようね。

『……はい!これでテストは終わりだよ!お疲れ様!』
『だが本当に確かめたいのはここからだ!』
「何をするつもり?」

『う〜ん、いまだに信用されていないなぁ!仕方ない!とにかく進めるよ!』

『それじゃあ、改めて聞こう。』
『キミのしたことは覚えているね?もう一度説明してくれたまえ。』

「私は会いたい人に会えなかったから、あなたの宇宙を呑み込んだ。でも会いたい人には会えなかった。だからその宇宙を材料に新しい世界を作った。まるで美しい鳥かごのような世界を。」
 
『なるほど……前聞いたこととあまり変わらない。記憶に問題はなさそうだが……。ただ一つ気になるのは、どうして自分で作った世界を『鳥かご』だなんて言うんだい?』

「貴方が、たくさんの誰かが大切にしてきた宇宙で作った世界は、たとえどれだけ美しくても、私の罪の結晶。そして、私の心を閉じ込める鳥かごでしかないの。」

「調査の結果、感情制御装置が異常をきたしていることがわかったから修理したんだ。修理したことで彼女の心は安定しているみたいだね。」

『なるほどねえ!それじゃあキミは、自分のしたことに罪悪感があるということだね?』

「……そうね。貴方には迷惑をかけてしまったわ。」
「本当にごめんなさい。」

『……。これで無事に裁判に参加できそうだね!』
『もう少し先だが、その時はよろしく頼むよ!』
「ええ、よろしく。」

『それでは今日はここまで!裁判の日までゆっくり過ごしたまえ!じゃあ、ボクはこの辺で失礼するよ!』
「ええ、ありがとう。」「あぁ、また今度。」

……通信が切れた。
私の鳥かごの世界は一体どうなるのかしら。
私は、どんな裁きを受けるのかしら。

不安はたくさんあるけれど、私の大事な博士にもらったこの体を、この命を大切に生きないと。
そう思ってまた私は眠ってしまった。

7/26/2024, 10:31:06 AM

触れてはいけないと言い付けられていたその扉は、しかし、鍵が掛かっていなかったんだ。指の僅かな力で簡単に開いた。そして初めて見た外の世界は喧騒と振動、よく分からないごちゃごちゃしたものでいっぱいだった。うごめくぶよぶよとした何かが近寄ってきたから、ぼくは慌てて扉の中に戻り扉を固く押さえ込んだ。

外には怖いものがいっぱいだ。ああ、だから外に出てはいけなかったんだ。僕は行動を禁止されていたのではなく、守られていたのか。きっとそうだ。

ぼくはもうすっかり安心して寝床の敷布にくるまった。

************
鳥かご

************
所感:何も知らないということ。

7/26/2024, 10:17:23 AM

《鳥かご》

 祐希と怜斗はいつも二人だった。
 母親同士が高校生の頃からの親友とあって、同じ病院で一日違いで産まれた二人は産まれる前から一緒だった。
 幼馴染というより、殆ど家族に近かったのもそれが理由だろう。
 人見知りの怜斗が輪に入れず寂しい思いをしないようにと、祐希が傍から離れなかった為でもある。
 誰にでも優しく穏やかな態度を取り、老若男女問わず好かれる祐希は友達が多い。
 人見知りなうえ口数も少ない方で、初対面の人など緊張して上手く言葉も紡げなくなる怜斗は友達がそう多くはなかった。
 本来であれば、幼稚園、小学校、中学校で友達の一人もできなかったのではないか。
 怜斗がそう思うのは、一重に祐希が傍にい続けてくれたからだ。
 誰からも好かれる祐希と仲が良いからこそ、他のクラスメイトも怜斗に話し掛けやすくなっているのだろうと。
 一人であれば、きっと、もう少し静かな学校生活になっていたのではないかと。
 そうして、高校生活までもを共にできると知ったのは一ヶ月前の話だ。
 二人はまた、クラスメートとして新生活を開けたのだった。
 いつものように、怜斗は祐希の家のドア前で彼を待つ。
 今日は起きるのが遅かったのか、隣の部屋からは慌ただしい音がしていた。
 当然、祐希がドアを開けて出てくるのもいつもより少し遅い。
「待たせてごめん! おはよう、怜斗」
「気にしてない。……祐希、おはよう」
「あっ、そうだ! 今日あるらしい数学の小テストの勉強ってやった?」
「うん」
「どう、難しかった?」
「そこまで。祐希なら余裕」
「なんだよそれ〜! でもまぁ、怜斗がそう言うならそうなんだろうね」
 家は変わらず隣同士、適当に会話を続けながら徒歩十分のところにある最寄りの駅へ向かう。
 毎日顔を合わせていて話すことはなくならないのか、と母親から聞かれたことがある。
 話すことがなくても、祐希となら無言の時間すら心地良いから問題ない。
 そう答えた時、呆れているのかわからない笑い声を返された。
「祐希」
「ん? どした、怜斗」
「いや、なんでもない」
「……そっかー。なんかあったらいつでもなんでも言ってね!」
 無邪気に笑う祐希に、怜斗の心は苦しくなる。
 果たして祐希と怜斗の心は、同じなのだろうか。
 そう疑問に思っても、祐希に聞くことなどできない。
 違っていたとき、どうすればいいのかわからないだろうから。
 この友情の先を、まだ、見たくないのだ。
 かけがえのない唯一と言っていいだろう友達を、心友を、親友を、幼馴染と離れるなど考えたくもない。

          ***

 いつも静かで、隣にいることが心地好い。
 冷静に物事を捉えられて、誰よりも先を見ている。
 冷たい印象を受ける彼の瞳が、嬉しそうに、楽しそうに細められると心が踊る。
 白くキレイな彼の手はややひんやりとしていて、意外と骨張った大きな手で驚く。
 落ち着いた声が、心を蕩けさせる。
 数センチ高い彼の膝に乗ったときは、いつもより至近距離で見つめられて心が早鐘を打った。
 時折一緒になってふざけて、時折縋るように甘えて、時折泣き虫になって。
 堪らなく愛おしくて、大好きで、かっこいい。
 それでいて、誰よりもかわいい大切なトモダチ。
「唯一無二の存在」
 それが祐希にとっての、怜斗だった。
 だから、これでいい。
 物心着いたときから傍にいてくれたから、怜斗は祐希の一部のような存在なのだ。
 幼稚園では常に二人きりで、殆ど誰かと関わりを持つことがなかった。
 小学校や中学校では、クラスが違っても毎日顔を合わせて話すことも容易だった。
 高校の志望校を合わせることも、祐希にはわけなかった。
 同じクラスになって、運命だと信じた。
 そうして、強く想うようになった。
 これからもずっと、怜斗と二人きりがいい。
 祐希は二人ぼっちの、カゴの中を望んでいる。
 それが一方的なものであっても、優しい彼のことだ、最後には必ず赦してくれるだろうから。

7/26/2024, 10:02:07 AM

私は鳥。鳥かごの中に入っている小さな鳥。
閉じ込められているという名目で、実はそれに守られていることに気づかない愚かな鳥。
一見大きく見えるけど、中身は小さな小さな鳥。本当の姿はとてもとても弱い鳥。
ずっと鳥かごの中で、外の世界を知らない鳥。それを飼っている人のせいにする、卑怯な鳥。
そのくせ、自分は強いと思っている鳥。狭い世界の中でなにかと戦っている鳥。

外から見たらただの小さな鳥。でも、ネチネチした思いを抱えている鳥。

私は鳥。最高に最適な鳥。




昨日のテーマですみません^^;

7/26/2024, 9:59:06 AM

「君たちは『鳥カゴ理論』を知っているかな?」
授業中、映画「ペイフォワード」に出てくるケビン・スペイシー似の数学教師が急に話し始めた。

「なあに、簡単な理論でね。」

「鳥カゴは一見 檻に囲まれているように見えるが、そこにはちゃんと出入口がある。」
「その出入口は開いていると思うかい?閉じていると思うかい?どっちだろう?」

「確認しなくても知る方法があるんだ。」
「それは、『開いていると思えば開いているし、閉じていると思えば閉じている』だ。」
「つまり君たちがどう思うかによって決まるということだ。」

「これが『鳥カゴ理論』というわけだね。」

そんな理論は聞いたこともなかったが、私はとにかく眠かったのでどうでもよかった。

「つまり、思いが現実を作っているということですね?」

急に理論を理解しようとする者があらわれた。
学年一番の浅野学秀だった。
暗殺教室の浅野学秀と同じ名前の彼は、メガネをかけていることを除けば、見た目から頭脳までほぼ浅野学秀にそっくりだった。

さすが学年一番。
何にでも興味を示すその好奇心、理解力、共に秀でているというわけか。

ケビン・スペイシーは続けた。
「そうだ。思いは思いのほか現実に影響を及ぼすというわけだね。」

「じゃあ、金メダルを取ろうと思えば取れるわけですか?」
また理論を理解しようとする者が現れた。
バスケ部の通称ゴリだった。

「そうだね。取れると思ったら取れる。取れないと思ったら取れないかもしれない。」
「それが『鳥カゴ理論』だからね。」

キーンコーンカーンコーン

授業の終わりを知らせる鐘が鳴った。

私はとりあえず眠たいと思っているから夜は寝れそうだと思った。




『鳥かご』 完

7/26/2024, 9:59:02 AM

本人は無個性を装っているが、その実非常に我が強く心も強い。雑踏に埋もれながらも自らを見失わず、他者に理解を求めることすらない。彼の拠り所はいつもその身一つだけらしかった。彼自身が彼の住み処であるなら、きっと終わりもそこで迎えることになる。その中に自分も入れてほしかった、なんて言ったらどんな反応をしただろう。ソファでうたた寝している彼と、その手に嵌った指輪をそっと見遣る。自分と同じように彼も、自分という住み処で羽を休めてくれたら。これ以上の幸せなど他にありはしなかった。


(題:鳥かご)

7/26/2024, 9:58:58 AM

この世界はまるで
鳥かごのようだ。
だって、いっつも誰かに
支配されているから。
誰か、鳥かごのドアを
開いておくれよ。

7/26/2024, 9:56:47 AM

鳥かごの中にわたしはわたしを閉じこめた 
はじめから自由なんて知らなければ
囚われた我が身を呪わずにすんだのに
悲鳴をあげるこころがあなたには決して見えない

7/26/2024, 9:55:34 AM

鳥かご

 不自由の象徴のようなものだけど、どこかトキメキのようなものを閉じ込めているような気がしてそのモチーフを嫌いになれないでいる。

 魔法の粉
 降り積もっては輝き落ちる
 ティンカーベルの寝床

7/26/2024, 9:53:45 AM

全てが与えられた、そう思っていたのに。
自由だけはなかったらしい。

いつもそうだ。どうということもない利に目が眩み後悔する。
最初は良い。
少し時間が経つ。味気なくなる。
そうして大事なものに気づく。

いつも手遅れだ。
もう自力では飛べない。
使われないまま時が経って私の翼は駄目になったから。
そうして私は今日も自由を贄に安寧を受け取っている。

7/26/2024, 9:52:11 AM

あなたに心奪われたその日から、自分の心を鳥かごに入れて閉じ込めた。
また奪われないように、勝手に飛び去ってしまわないように、舞い上がってしまわないように。
鍵をかけて閉じ込めた。
どんどん錆びていく鳥かごに、今にも羽ばたいてどこか遠くに行きそうな心。
もう閉じ込めておくことはできないと本能的に悟った。
どこかに行ってしまうなら、傷ついてしまうなら。いっその事、私が壊してしまおうと思った。
重たい石で鳥かごごと潰した。鈍い音と飛び散った心の破片を最期に、静かになった。

私の心が鳥かごから解放された瞬間だった。

『鳥かご』

7/26/2024, 9:34:22 AM

部屋の装飾に鳥籠を探していた。今回の催し物は熱帯のジャングルとお耽美の掛け合わせといった風情で、以前より比較的暇な自分は主人の部屋を彩るべくやる気のない相棒と共に動き回っている。
鳥籠を正面から見た左端に配置すべきなのだが見当たらない。
眉根を寄せていると相棒が近寄ってくる。
飛び立つ鳥もいないのに、何を捉えているというのか。
自由の範囲が違うだけで、捕らえているというのは違うだろう。
暇なのか変に混ぜ返して言葉遊びを始める相手に、こちらも暇だし乗ってやることにする。
決められた使命があってやり遂げなきゃならないとして、それに付き合う義理もない。初めから籠なんてないだろう、というと、肩をすくめられた。
逃げないのは自由を知らないからかもしれない。
にんまりとチェシャ猫じみた笑みを貼り付けられた。
それこそ勝手だろうにと黙り込むと更に続けてくる。
知る自由も、選択する自由も、与えられないのに?
現状で足掻くか、それを楽しむ努力もしないのなら、嘆く権利もないと思うのだ。そのまま言うと、更に目を細められる。本当にちょっと面白がっているのが気持ち悪いなぁ、と呆れた。
そもそも、鳥籠を不自由の象徴にするのは如何なものか。養豚場の豚の方が不自由な一生を送る気がする。やはり空を飛べると言うのが自由に見えるのか。飛ぶ方が止まり木がないと寄り道もできないし不自由そうだけどなとつらつらと考えていることも読まれているんだろう。
鳥籠を探して彷徨っていた手にかつりとあたった透明な箱。これで代わりにならないだろうか。
虫籠を両手に持って示すと、いつもは饒舌な相棒が綺麗な笑顔で暴力にて却下してきた。
確かにお耽美とは程遠いかもしれない。

7/26/2024, 9:22:47 AM

閉じ込めてしまった小さな思いを放すように

狭く小さな鳥籠を静かに開けた

7/26/2024, 9:17:05 AM

「こんばんは、お嬢さん。月が綺麗な夜ですよ」

二十歳の誕生日を迎えた零時、開け放っていた窓。枠に収まるようにして、紳士は体を滑り込ませた。

「……ジャック?」

姿形など知らぬはずなのに、咄嗟に出た名前。親の目を盗んで交わしていた文通の相手。私と似た銀の髪に、透き通る青い瞳。臙脂色の外套を羽織る姿は、誰もがイメージする英国紳士そのものだ。

「えぇ。準備はよろしいですか?」

差し出された手を迷いなく取る。


『差し込む自由』
テーマ
「鳥かご」

7/26/2024, 9:11:49 AM

いつだってそうだ。

どこに行くにも、何をするにも許可がないとできない。

「誰と行くの?」
「どこに行くの?」
「そんなものやめなさい。」

同級生は楽しく過ごしているのに。
私はいつも怒られて泣いて……正直生きている意味を見いだせない。

『お母さん……今度授業参観があって……』

「お母さん仕事あるから。そのくらいわかるでしょ。」

私知ってるよ。
授業参観の日、仕事って言ってるけど本当は男の人と会ってるんだよね。

『お母さん、先生と面談の日が……』

「あんたの進路でしょ。自分で決めな。あ、でも金は出さないから。」

うん。私には一円も出してくれないんだよね。

一人で頑張らなきゃ、一人で頑張らなきゃって、いつも思ってた。

でもね、ある時思ったの。


「美穂ちゃんはいつもどこでお洋服買うの?」

『え、あ、あまりそういうの興味なくて。』

「そうなんだ。美穂ちゃん可愛いから、色んな服似合うと思う。私はね、今度お母さんと買いに行くんだ。」

日常会話のはずなのに。

彼女の顔はキラキラ眩しくて、とても羨ましく見えた。

私はお洋服は愚か、おもちゃだって買って貰ったことないのに。

学校とか教育に必要なものは渋々だったけど、中学を卒業したらもう出して貰えない。


“彼女” と “私” は何が違うんだろう。


『お母さん。』

「何よ、忙しいから話しかけないで。」

何が忙しいの?
オシャレな服着て、ネイルしていて?
これから出かけるから?

私のことは当たり前のように縛るくせに、自分は自由に遊ぶんだね。

「今日も遅いから、ご飯は自分でなんとかしな。」

何度も聞き飽きた言葉。
昔なら、普通に飲みこんでた。

だけど今日は違った。

気づいたら、化粧台の前で楽しそうにイヤリングを付ける母の肩を掴み、思い切り床へ叩きつけた。。
力は同級生と比べると強かったらしく、華奢な体をしている母を投げるには十分だった。

母が何か喚いていた気がするが、今の私には騒音としか認識できなかった。

ガシャンッ

騒ぎ立てる母に向かって、近くにあったものを投げて亡き父が使っていた硝子の灰皿を投げる。
どうせもう誰も使わない我楽多同然のもの。

母は灰皿が横を掠め、顔面蒼白となっていた。

「あんた、なにすん……ウッ!?」

間髪入れずに倒れ込んだ母に馬乗りになる。
苦しそうに呻く母を見下ろす形となった。


こんなに孅(かよわ)かったんだなぁ。


娘の思わぬ行動に怯えているのか、目から涙を流し、声にならない声を出す事しかできなくなっていた。

こんな人に怯えていた自分が馬鹿馬鹿しく思えてくる。

近くにあった灰皿の大きな破片を手に取り、上に掲げ力を込める。


『お母さん、私もう籠の中の鳥は嫌なんだ。』


一言そう告げて、

手を振り下ろ___


#鳥かご

7/26/2024, 9:04:46 AM

動物病院で見かけた大きな鳥かご

中には鮮やかなオレンジと緑の羽色の
インコがいた

近づくと スーっと逃げるのに
遠ざかると ピピっと鳴いてアピール

何回か声をかけると
顔を近づけて話を聞いてくれた

診察後、バイバイと言うと
カゴを噛んでガタガタ音を立てる

もう‥可愛いしかない!

#鳥かご

7/26/2024, 8:47:54 AM

自ら望んでその場所に留まり続けるのは、

貴方に囚われていたいから。

『鳥かご』

7/26/2024, 8:47:16 AM

錆びた金具でできた鳥かごの中を
ゆっくり歩いて周ってみる

古びた扉は開いたまま
囚われた誰かが出ていったまま

私は扉の先を仰ぎ見るだけ

飛んで去ったか
歩き去ったか

私に勇気があれば後を追っていけるかも

いつか旅立つその日まで
ここは私の安全な場所


*鳥かご**

7/26/2024, 8:46:47 AM

こんな狭い空間の中で、鳥たちはなにをするのか。
人間も意外と同じかもしれない。
鳥かごのように、狭い世界にいるのかもしれない。
理不尽なことに捉えられ、限られたスペースで
やるべきことを淡々とこなして生きてゆく。
人間にも、鳥みたいに羽ばたける力さえあれば
見える世界も変わるのかな、なんて思う。

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