hashiba

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本人は無個性を装っているが、その実非常に我が強く心も強い。雑踏に埋もれながらも自らを見失わず、他者に理解を求めることすらない。彼の拠り所はいつもその身一つだけらしかった。彼自身が彼の住み処であるなら、きっと終わりもそこで迎えることになる。その中に自分も入れてほしかった、なんて言ったらどんな反応をしただろう。ソファでうたた寝している彼と、その手に嵌った指輪をそっと見遣る。自分と同じように彼も、自分という住み処で羽を休めてくれたら。これ以上の幸せなど他にありはしなかった。


(題:鳥かご)

7/26/2024, 9:59:02 AM