「こんばんは、お嬢さん。月が綺麗な夜ですよ」 二十歳の誕生日を迎えた零時、開け放っていた窓。枠に収まるようにして、紳士は体を滑り込ませた。「……ジャック?」 姿形など知らぬはずなのに、咄嗟に出た名前。親の目を盗んで交わしていた文通の相手。私と似た銀の髪に、透き通る青い瞳。臙脂色の外套を羽織る姿は、誰もがイメージする英国紳士そのものだ。「えぇ。準備はよろしいですか?」 差し出された手を迷いなく取る。『差し込む自由』テーマ「鳥かご」
7/26/2024, 9:17:05 AM