百瀬御蔭

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1/17/2025, 6:01:50 AM

 悲しみも悔しさも、深奥で混ざりあえば黒くなる。だがしかし、頬伝う雫は透明で、君を想う気持ちという上澄みのような気がした。

『魔女の泪』
お題
透明な涙

1/9/2025, 12:13:43 PM

森の奥に住む画家は“ギフト”を持っている。
自然の力を借りて色──絵の具を作り出すのだ。雪解け水の白銀、樹木から得た琥珀、黒い薔薇から絞る深紅。ある令嬢が遺した首飾りの紺瑠璃。



宗教画や華やかな貴族たちを主題とし、緻密な計算の上で描くのが主流の中、彼女はただ一人それに逆らった。
自然の猛威と生命の躍動、そこに生きる人々のありのままの生活。 頭に負った傷が原因で、作風が変わったと本人は言う。しかし、迷いのない豪快な筆遣いは色褪せなかった。


先で述べた紺瑠璃を使った絵画『ネモフィラが散る夜に』は若くして亡くなった令嬢自らが頼み込んだことに由来する。淡い恋は無惨に散らされ、残ったのは深い悲しみと恨み。
流した涙が花を染め、雨に変わった時には──。


いつしか彼女の絵は、彼女自身や画風、その在り方から圧政に対する反抗の象徴となってしまった。これを危惧した権力者たちによって多くの絵画が焼却処分されたが……。
以下、パーヴェル・イグルノフの手記からの引用である。

『燃え盛る炎の中に絵画が投げ込まれた。貴重な文化的財産が灰と煙に還る中で、彼女の絵だけは傷一つ付かなかった。炎は術者でも制御できず、皆が恐れる中、夜が明けるまで広場を照らしていた』

生家との確執や他国からの身柄引き渡し要求など様々な圧力に晒されてきた。しかし、彼女の夫セントヴァリス公ヴォルドの庇護、ブレヴォリス大公国の牽制もあり、彼女は圧力に妨げられることなく最期まで活動できた。



『レーギュルスの大号令』
ツェスカ王国の建国記念日である11月17日、歴史上最大の流星群が観測された。夜空から絶え間なく降る星に人々は恐れ慄き、その門戸を固く閉ざした。事実、セントヴァリスの広場には激しい轟音と地響きを伴って隕石が落ちた。
しかし、その翌日、彼女はまだ熱を持つ隕石に刃を入れ、それを砕いて絵の具にしたのだ。当時において用意できる最大のキャンパスに書き込まれた流星群。

加工の手順を記したメモ、題名を決める際の夫との手紙、絵の具を含めた道具も寄贈されており、描く彼女の背中が鮮明に思い浮かぶのではないだろうか。
当時の街の空気をそのまま切り取った、と言わしめるほどの迫力に貴方達も息を呑むだろう。


『白狼の画家 エディア・アルヴィン』
お題
星のかけら

1/9/2025, 9:22:06 AM

耳の奥 ちりんちりんと 涼やかに
甘やかな声 この身は手毬に


君の声が今も頭から離れなくて
声聞くたびに手毬のように転がされてしまう


お題
Ring Ring……/「り」

短歌に訳を追加

1/8/2025, 9:27:04 AM

鏑矢は頬を掠めて敵を貫く
見知らぬ御方背中合わせで

『反撃の狼煙』

お題
追い風

※短歌アプリ57577にも掲載済み

1/7/2025, 9:07:20 AM

「寒いね」
マフラーに埋もれながらそう嘆く君。既に指先は冷え切っていて、感覚が麻痺しているのではないかと心配になる。けれど、君は自由で。こんな寒い中でアイスに釣られてしまっていた。
「今日も頑張って生き抜いたから」
たっぷりのクリームもいいが、ほろ苦いカラメルも悪くない。引き換えにカイロと金を握らせた。
 
夜風に首を狙われながら、今日も俺達はアイスを味わっている。

「甘美なる誘惑」
お題
君と一緒に

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