「律」
「ん?」
振り向いたその一瞬を逃さない。路地裏にシャッター音が響く。
「撮った?」
「あぁ。綺麗だったから、つい」
雨上がりの澄み切った空気。
満月に掛かる虹は弧を描いている。
濡れた銀糸は月明かりを受けて煌めく。
「そっか。確かに夜の虹って珍しいよね」
「だからお前が映えるんだよ、律。誰にも見せるつもりはないが」
廉の言葉を理解し、律はそっと目を逸らした。
『WallPaper』
お題
君と見た虹
(Over 1000♡!Thanks!)
魔女の箒に乗せてもらうということ。それは最高の名誉、相手が異性ならば求婚ともなる。
「……」
ディートリヒは何度もエレオノーラと空の旅を共にしていた。最初は手も背中も震えていたが、練習に付き合っているうちに上達し、今はこうして星空を眺める余裕もある。
『命を預ける』
お題
夜空をかける
※wip
目眩がする中で壁伝いに階段を降りる。暗闇も相まって、目の前の段差も上手く見えない。
「ヘロン、止まって」
聞き馴染みのある声が反響する。足もガクガク震えているし、これ以上は危ないからと手すりを掴む。何かが翻る音がして、支えられながら階段に座る。
顔を上げてみると、律の銀髪が揺れていた。敵を取り押さえた直後とは思わないほど、明るい笑顔を浮かべていた。その顔を見ると気が緩む。でも、まだ、感覚が鋭敏なままで気分が悪い。
「大丈夫。目閉じて、ゆっくり呼吸を整えてね。オーバーロードしてるから、鎮静剤打つよ」
どうやら能力を使いすぎたらしい。道理で気持ち悪いわけだ。目を閉じると同時に、首筋が冷たくなる。
「力抜いて、すぐ終わるから」
はっ、と軽く息を吐いた直後に針が首筋を突き破る。思わず声が出てしまった。彼女の指が首を這ってくすぐったい。
「わっ……」
銃声と硝煙がまだこびり付いている。たまらずに彼女を抱きしめてしまった。謝らないといけないのに、声が出ない。
「気にしないで」
彼女の心音と体温、気配に身を委ねる。
『ただの相棒、本当に?』
お題
君の声がする
「来年もこうして、アーサーと話せるかな」
「話せるよ。僕から会いに行くつもりだ」
あの日から二年。
暁人はいないが、彼を通じて、凪紗とアーサーは二人で会っていた。
「ありがとう」
まだ傷は癒えていなくて、悪夢を見る夜もある。それでも、アーサーの存在は少しずつ彼女の中で大きくなっていた。
『いつかの願いは』
お題
星に願って
遠い宇宙の何処かの話。
彼女は星を見るのが好きだった。
病弱故に満足に外へ出ることもできず、家族が買った望遠鏡を大事にしていた。
ある日、星は人の形を成し始めた。そのうちの一人が、彼女の屋根裏部屋に興味を示すように近付く。
彼らの言葉は分からなかったが、二人は楽しく過ごした。
彼は星の王であった。
秘密基地というものを試しに作ってみれば、これが楽しかった。
狭くて小さい空間に、自分の好きを詰め込むのが良い、と。
彼は悩んだ。こんなに楽しいことを教えてくれた彼女に、何で返すべきか。もう時間がない、彼女がそうこぼしたのを思い出した。
そういうわけで────
星が降る。
彼女はその目で流星群を見た。
望遠鏡の傍らに眠る彼女が起きることはない。誰かが言った。
「これは弔いの光。夜が明ける前に、彼女を送り出そう」
こうして主を失った秘密基地だが、家族は変わらず手入れを怠らない。
「いつもありがとう。また会いに来るね」
『蒼き星を仰ぐ』
お題
静かな夜明けの