百瀬

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9/13/2024, 10:11:31 AM

「ごめんなさい、そのお願いは叶えられません……」

補助魔法の類は、肉体への負担を鑑み強さと持続が反比例するように組まれている。
術者であるエレノアはこの場に留まるという選択をした。一騎打ちをするディートリヒの邪魔にならぬよう、遠距離の攻撃を弾き、彼に強化や回復を施し続ける。彼が相対するドラゴンは大きさはもちろん、攻防を両立している点で厄介極まりない。攻撃が当たろうと掠り傷にもならず、こちらの体力だけが消耗されるだけ。

「ディートリヒ!盾を構えて伏せて!」

舌が鉄の味を感じ取った。生暖かい液体が唇を伝うが、気にする間もなく詠唱を続けた。
掌くらいの火の玉は質量を持った隕石に変わる。

「メテオストーム!」

熱を伴った爆風が全員を弾き飛ばす。ドラゴンが翼を上げたタイミングで当たったものだから、体がひっくり返って弱点を晒す形になる。
垂れ落ちる紅が魔導書も汚す。視界が霞み、立つのもやっと。それでも、とどめを刺そうと立ち上がるディートリヒのために力を使いたい。攻撃の増幅をあと一発、ギリギリ二発かけられるか。
濡れた手では滑って杖を握れない。

「エレノア」

彼がしっかり手を握ってくれる。ふらつきながらもなんとか立つことができた。

「ディートリヒ、いまの……」

羽ばたく音が聞こえ、制御を誤ってしまった。それでも、彼は一瞬の好機を捉えた。
振りかざした刃は、柔い腹を縦に裂いた。
脳を揺らす咆哮、断末魔の叫びが響き渡る。

「すまない、俺も」

彼に連なって、私も倒れ伏す。咄嗟に出した彼の腕が頭を守ってくれた。

「エレノア……」

掠れた呼び声の後、全ては闇に落ちるばかりだった。

『せめて腕の中で』
本気の恋

9/12/2024, 9:12:39 AM

受診日と支払い、必要最低限の書き込みしかなかった。しかし、近衛と過ごすうちに、ペンの色は二色では足りなくなって、手帳を買うことになった。

「和泉、これからたくさんの思い出を作ろう」



この夜明けを持って、王国は一度滅び公国として蘇る。そう、新たな祝日がこの国に生まれることになったのだ。

二本立て
カレンダー

9/11/2024, 7:29:52 AM

母レベッカがこの世を去った。
私が家督を継ぎ、戦後処理を終えて一ヶ月もしないうちに。

妹が生まれて間もなく、入れ替わるように父は急逝。夫不在のブレヴォリス家を守るために奔走し続けた彼女に、心休まる時はあったのだろうか。

母には感謝してもしきれない。忙しく、外圧が強まる中で家族で集まることは少なかった。しかし、年に一度、皆の誕生日を祝うのが楽しみだった。

この恩は必ず返すと誓ったはずなのに。
間に合わなかったことがただただ悔しくて仕方がない。いつの日か子を成し、母に孫を抱いてほしかった。

「ロランス……準備はできたかしら」

侍従長であり、母の親友であったフリーダ。
忙しい母に代わり、私たちを育ててくれたもう一人の母。今は落ち着いているけれど、泣き叫ぶ姿に胸を締め付けられた。現に、こうして目を腫らしているままだ。

「皆を待たせてしまっているのなら、申し訳ない。すぐに行く」

母の棺、その前にはたくさんのカーネーションが添えられていた。亡き父の遺志を受け継ぎ、民にも寄り添い続けた母。継承の儀は行わなかったが、彼女も間違いなく歴代当主と同じように責務を果たした。

「亡きレベッカ・ブレヴォリスを偲び……」

皆が喪服に身を包む、長い夜が始まろうとしている。悲しみに暮れ、立ち止まる暇はない。それでも、前に進むために。

『我らの母を偲ぶ』
喪失感

9/8/2024, 9:15:46 AM

「お姉様のところには行かせない、私が相手よ!」

 エレーヌはロランスに向けられた剣を弾き飛ばした。突然降ってきた妹に驚き、腰を抜かしてしまったり

「早く!ここは私がなんとかするから!」
「わかった……生きて帰るのよ」

 令嬢とは思えぬ特攻に誰もが呆気にとられ……

wip
おどるように
『踊る剣閃』

9/7/2024, 9:15:14 AM

地平線の向こうから亀裂が広がる。
東から昇る太陽が夜明けを告げる。


wip
時を告げる

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