「君たちは『鳥カゴ理論』を知っているかな?」
授業中、映画「ペイフォワード」に出てくるケビン・スペイシー似の数学教師が急に話し始めた。
「なあに、簡単な理論でね。」
「鳥カゴは一見 檻に囲まれているように見えるが、そこにはちゃんと出入口がある。」
「その出入口は開いていると思うかい?閉じていると思うかい?どっちだろう?」
「確認しなくても知る方法があるんだ。」
「それは、『開いていると思えば開いているし、閉じていると思えば閉じている』だ。」
「つまり君たちがどう思うかによって決まるということだ。」
「これが『鳥カゴ理論』というわけだね。」
そんな理論は聞いたこともなかったが、私はとにかく眠かったのでどうでもよかった。
「つまり、思いが現実を作っているということですね?」
急に理論を理解しようとする者があらわれた。
学年一番の浅野学秀だった。
暗殺教室の浅野学秀と同じ名前の彼は、メガネをかけていることを除けば、見た目から頭脳までほぼ浅野学秀にそっくりだった。
さすが学年一番。
何にでも興味を示すその好奇心、理解力、共に秀でているというわけか。
ケビン・スペイシーは続けた。
「そうだ。思いは思いのほか現実に影響を及ぼすというわけだね。」
「じゃあ、金メダルを取ろうと思えば取れるわけですか?」
また理論を理解しようとする者が現れた。
バスケ部の通称ゴリだった。
「そうだね。取れると思ったら取れる。取れないと思ったら取れないかもしれない。」
「それが『鳥カゴ理論』だからね。」
キーンコーンカーンコーン
授業の終わりを知らせる鐘が鳴った。
私はとりあえず眠たいと思っているから夜は寝れそうだと思った。
『鳥かご』 完
7/26/2024, 9:59:06 AM