17時過ぎたらもう真っ暗
まだ春は遠い
なんて思いながら夜空を見上げたら
月が紫色に染まっていた
違う、いつもの月は黄色いままだ
その晩、月がなぜか二つあった
紫色と黄色が混じった夜に
二つの月に背を向け安全であることを確認すると
私は宇宙について考えた
特別な
夜
完
光さえ届かない
マリアナ海溝の底の底
僕はその底で
地球を敷き布団にして寝転んでいる
未来から来たドラ猫に
海底でも呼吸ができる道具をもらって
まるで河川敷の土手に寝転ぶように
気軽に、気楽に、ラフに
近くに見たこともない深海魚がいる
その深海魚を見ていると
まるで自分もその一部になったような気持ちになり
深海の海に融けていくような気がした
そうして漆黒の闇の中に漂う自分に
なぜか宇宙を感じたのだ
そうして僕は
深海からこの世界を
神を
宇宙を
悟ったのだ
そしてそのまま次元の海に融けていった
目が覚めると見たこともない世界が広がっていて
もといた世界は
視認できないほど小さく
知覚できないほど圧縮されていた
もう もといた世界には戻れない
そう直感した
そうか
僕は次元の外に出たのだ
その時気づいた
不思議とわくわくしていた
本当の僕はここから始まるような
そんな予感がしていた
それはとてもあたたかい感覚だった
海
の
底 完
「これからの世界を動かすんだよ」
レアアースという言葉を、僕は彼女から教わった。
キャンパスの図書館前、
春の光が白く反射するベンチで、
彼女はそう言って笑った。
十七歳。
高校の制服のまま、未来の話をするのが似合いすぎる少女だった。
僕は二十歳の大学生だ。
年齢の差は、ほんの三年。
それでも、彼女はいつも少し遠くにいた。
大学では資源工学を学んでいる。
レアアースの研究は、環境と経済を両立させる鍵だと言われていた。
未来を支える技術。
希望という言葉を、学問として扱える世界に、僕は少し酔っていた。
アルバイトも順調だった。
株の勉強を始め、小さな成功を重ね、生活は驚くほど軽やかになった。
お金に追われない日々は、心まで自由にしてくれる。
お気に入りのカフェでコーヒーを飲み、夜はゆっくり本を読む。
「豊かさって、こういうことかもしれない」と思えるくらいには。
それでも――
ふとした瞬間、彼女のことを思い出す。
進路の相談をされた日。
「私、未来に行きたいんだ」
そう言って、目を輝かせていた横顔。
彼女は今も、どこかで未来を信じているだろうか。
年齢を理由に、連絡を取るのをやめたのは僕だった。
大人ぶったつもりで、ただ臆病だっただけかもしれない。
彼女のまっすぐな視線を、受け止める自信がなかった。
研究室の窓から、夕焼けを見る。
空はレアアースの元素図鑑みたいに、複雑で、美しい色をしていた。
僕は思う。
未来は、技術やお金だけでできているんじゃない。
誰かに「会いたい」と願う気持ちが、きっと原動力なんだ。
もう一度、彼女に会いたい。
十七歳のままの憧れとしてではなく、
それぞれの時間を歩いたあとで。
豊かに生きるって、
ただ気分良く暮らすことじゃない。
大切な誰かを思い出せる心を、失わないことだ。
君に会いたくて。
その想いが、今日も僕を未来へ進ませている。
君に会
い
たくて 完
いつもと同じ時間に起きて
朝食を食べて
支度して
スカート履いて
電車に乗って
学校へ。
授業を受けて
友達としゃべって
帰る。
夕食を食べ
お風呂に入って
寝る。
それが
すべて
夢と
今日も
気づかずに。
ほんとうの私は
こことは違う世界で
ずっと眠っているに
違いなかったのだ。
夢を見てたい
END
豆を食べていた
どこで貰ったのかも忘れた
コメダの豆菓子を
答えを求めるように食べていた
食べながら答え探した
終わりたくなくて
一つずつゆっくり食べていた
食べ終わる頃には
答え見つかるように
願いながら食べた
ずっとこのまま
完