夏が好きだ。
夏は特別なんだ。
夏の終わりは必ず後悔する。
もっと夏を味わえば良かった、って。
気がついたら夏は終わっていた、
そうなりたくなくて、ここに備忘録を残してみる。
夏の気配 ENDLESS
「宇宙の最小単位ってひもなんだってぇ。」
独特の間延びした声で空美が言った。
彼女の名前は空城 空美(くうじょう そらみ)。
私の幼馴染みだ。
空美はなぜか科学雑誌Newtonを愛読していて、
毎号欠かさず読んでいるらしい。
空美の部屋の本棚には、
過去数年分のNewtonがずらりと並べられていた。
空美は続けた。
「でさ『超弦理論』っていうんだけど、
『超ひも理論』ともいうんだよね。」
「なんでひもなのかな?」
「見えないくらい小さいのに、ひもなんておかしいよぉ。アハハ」
空美は能天気に笑っていたが、
意外と鋭い指摘かもしれない。
「超弦っていうんだから、糸の方がよくない?」
私は答えた。
「たしかに~。じゃあ、超いと理論だね。」
といって、空美は目を細めてにこにこと笑った。
私は空美のこの笑顔が好きだった。
空美の制服は白くて、ふわふわしていて、いい匂いがした。
私がいま空美に見えているものも、
糸でできているのかもしれないと思った。
もしかしたら、赤い糸と呼ばれるものも
同じような物質でできていて、
最小単位まで拡大してみたら、
見えたりするんだろうか。
私の赤い糸の先は、
どこに続いているんだろうか。
空美のにこにこした笑顔を見ながら、
ふと、そんなことを思ったのだった。
「糸」 完
10代の頃
私は
水たまりの中をみつめては
水たまりに映った向こう側の世界に行きたいと
よく夢想したっけ
水たまりに映る空
「You must
be happy forever!!」
(あなたが永遠に幸せでありますように)
YAKUSOKUDAYO END
傘の中はへそくりの隠し場所に最適って、
死んだおばあちゃんが言ってた。
普段は使わない傘の中がよい。
家族の誰も使わないダミー傘を持っておくとよい。
間違って開いたら、金の雨を降らすけど。
傘の中の秘密 完