『雫』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
雫。
零れて、落ちて、滴った。その雫が綺麗だった。
よく、辛い日の事を、雨の日も雪の日もって表す。雨の日も、雪の日も、挫けず前を向いて進んだ。そんな風に表現し、例えて、称える。
私は辛い時涙を流す。苦しくて、辛くて、上手くいかないけど、言葉には出来なくて、したくなくて、吐き出す為に涙に置き換える。それは弱いからじゃなくて、強いから。何かを傷つける選択より、自分を傷つける手段を取るから。大粒の雫が目から溢れて、音にもならない嗚咽を、ただ一人の時に吐き出す。
僕は辛い時、とにかく動く。頭を空っぽにして、忘れたくて、筋肉をしならせては鍛えて、汗が尽きるまで続ける。もう無理だと悲鳴をあげているのは、心ではなく身体だと錯覚させる。口から出せない言葉を、飲み込むために、ただ執拗に続ける。
逆境を乗り越えるなんて、大層な言葉では表せきれない。なんとか耐えて、構えて、避けて、背けて、やっとの事で歩いている。
その芯から漏れ出る雫を、とても美しいと誇ろう。
雫
あれ…ギュッと握った拳に、雫が落ちてきた…なんで…と思うそばから、次々に頬を伝って落ちてくる…次第に滲んでゆく視界、喉の奥から、声にならない何かがこみ上げてくる…
私の前を歩く、二人組の背中…見慣れた、あなたの広い背中と、長い髪を揺らす背中…時々見えるあなたの横顔は、迚も優しくて、微笑んでいる…いつも、遠くから見つめているだけだけれど、あなたの姿が見えるだけで、ドキドキして、気持ちも昂っていた…誰にも負けないくらい、いつもあなたを目で追っていたから…知らない誰かと、一緒にいるのが…止め処無く溢れる雫…でも…だけど…やっぱり…色々な想いが一気に押寄せて…
「雫」
君の頬から滴っていく雫はなに?
悲しい?哀しい?
知ってる?
喜劇はいつか悲劇になる。
悲しいも哀しいも嬉しいも楽しいも全部悲劇
でも人間は生きていく。
進化を続ける。
醜くく小癪に、生きていく。
その頬から滴る雫も、
進化の源になる。
進化の源。なんだかよく分かりませんね、
ただ喜劇はいつかは終わる時がくる。
悲劇が来ない人など一人もいない。
何故なら…みな人類は進化を続けるから…
やはり難しい…
『朝露』
例えばこんな朝を人生に例えると 一抹の夢なんだな
朝露浴びて嬉々とする蛙たち 日が差してまるでカーニバル 短すぎる永遠は三回半の瞬き このまま続いていくような ある時ぷつりと終わるよな
花壇のチュ―リップの葉っぱに雨粒があり、それを見つけた子どもが葉っぱを触ると、雨粒の雫が滑り台の様に滑って茎に吸収されていった。
ふっくらした雫が、動いているみたいに見えて、温かい気持ちになった。
雫が落ちる微かな音
一瞬現れる波紋
ただ、それだけのことなのに
見ると何となく癒やされる
忙しなく動く毎日
時間に追われる毎日
余裕が無くなっても
自然を見て
キレイだなぁと思う気持ちは
いつまでも持っていたい
「雫」
大丈夫、と笑うきみの
頬を伝う涙を、ぬぐいたい。
「溢れてしまいそう」
あとどれくらい隣にいられるかを数えて、安心する。
今日も明日もずっとこのままでいられたらいいのに……なんて、決して叶うことのない願い。
この想いは、まだ口にする勇気も度胸も覚悟もない。
気の置けない関係のはずなのに、気を抜けなくなっている。
少しでも気を抜くと、溢れてしまいそうになる。
気づかないでほしい。
でも、本当は知っていてほしい。
だけど、やっぱりこのままでいい。
ぐるぐると思考は回る。
そして、行き着く先は現状維持。
まだ、このままでいい。
まだ、この気持ちは抑えられる。
だからまだ……
────雫
泣いていた。一切涙を見せたことのない彼が、ズビズビと鼻を鳴らしながら幼子のように泣いている。
元国語教師で、口がよく回る彼に何度も泣かされてきたのはこちらの方だった。だから、初めて見るそんな彼の姿に呆気に取られ、言葉に詰まっていると
「……たとえ歪んでいたとしても、おれは、おれの正義を全うしたい」
嗚咽を挟みながらもゆっくりと言葉を紡ぐ彼。
「誰かに理解してもらおうなんて思っていなかった。でも……なんでだろうな、お前に分かってもらえないのは、何故だかつらいんだ」
俯いていた顔がこちらを捉える。目と目が合い、重力に従った雫がぽたりと彼の頬から落ちていく。まるでスローモーションになったかのように、その雫の行方を追いかけた。
点と落ちて、小さな水たまりができた。しばらく手入れのされていないボロボロでくたくたな茶色のブーツ。それはまるで彼の心みたいだと思ったし、彼はずっと自分以外のために生きているんだと理解した。
私には言えない、言いたくない秘密を抱えて、葛藤しながら毎日を生きてきたんだ。私がなんにも考えずにケタケタ笑っている時も、彼の心の底では複雑に絡み合った感情がぐるぐる渦巻いて、今にも飲み込まれそうだったんだろうな。
「おれは、お前がいないと生きていけないんだって、気付いたよ」
情けない話だ、と鼻を赤らめながら滲ませた瞳でそう言った。
情けないのはこっちだ。愛おしい人のことをなんにも分かっていなかった私のほうだ。ぐっと唇を噛み締めて、勢いをつけて彼の胸元へ飛び込んだ。抱きつけば、自然と彼は受け止めてくれる。その"慣れ"には二人の過ごしてきた時間と経験と優しさと情が溢れていた。今更手放すことなんて、できない。
「幸せにはしてやんないけど、ずっと一緒には居てあげるから」
私はへらりと微笑んで、力いっぱい抱きしめた。
あ、落ちた。
新たな雫が落ちる。
新たな生命が生まれる。
雫がだんだん地面に近づく。
生命が年を取る。
雫が地面に落ちて消える。
生命が地に帰る。
雨が降っている。
この一瞬ひと粒の雨でも沢山の命が平等に動いている。等間隔に雨が振り地に帰る。
このひと時、世界が一周する。
貴方はだあれ?
問いても、皆消えゆく。
あるところの国宝には神器がある。
この神器は古の聖女が、女神と仲良くなり授けられたという。
一つ雫が形成され長い年月をかけて落ちる。
それだけだった。
なんの用途に使うのか、雫はどういった物なのか、
王室は調べた。
しかし、分かったことは雫は何らかの物質でこの地には無いもの。
聖女は女神に用途を聞いた。
その後聖女は用途を話さなかった。
雫が落ちるのみと結論付けられた。
一人の研究者がいた。
その研究者は未だ解明されてない雫がなにかべることにした。
今の王様(56)に許可をもらい文献からその日の違いまでじっくりと調べた。
この雫が新たに形成され始めたのは約55年前
そろそろ雫が落ちそうだ。
文献は残ってなかった。
それ以外何も分からなかった。
雫はもうすぐ落ちそうだ、なぜ落ちないのだろう?
不思議で仕方がない。
それから四年が経った、さらに落ちそうな雫はまだ落ちない。
いつ落ちるのだろう。
今できることは落ちる雫を持つことだけだった。
あれから三ヶ月、ついに雫が落ちた。
そのすぐ後に王様がなくなったとしらせが入った。
国民は嘆き悲しむ中研究者は一人雫の用途に気づいた。
王様が亡くなったとされる時間と雫が落ちる時間は全く一緒だった。
これは人の生きる時間が見える雫だった。
次の雫はまだ形成されていない。
王様がいきなり亡くなったため、王妃様の赤子はまだ生まれていない。
しかしもうすぐだ。
この説が正しければ次生まれてくる王子様と同時に雫が形成されるだろう。
国庫から、研究費を捻出してもらっている我が身だがこれを発表するのは、なかなかあぶない気がする。
もし、雫が落ちるスピード等変わるのならば様々な陰謀が謀られるだろう。
結局このけんきゅうはシッパイしたとされた。
雫
久しぶりです。
王様の王様は結構元気だった。
ピッチドロップ実験を参考にしました。
面白いです
とある男性ユニットの方が歌われているこのタイトルの曲が大好きで、よく聴いています。
やさしく切なく刺さる歌詞とあたたかな自然を感じる曲調が、堪らなく魅力的なのです。
そして、わたしの目からこぼれていった感情の雫たちを、幾度となく拭ってくれたのです。
こうして話していたら、何だかまた聴きたくなってまいりました。
よろしければあなたも一緒に、いかがですか?
リキュールを一雫垂らす。
白いミルクのクラウンが跳ねて、コーヒーの濃い茶色がゆっくりと広がっていく。
マドラーでゆっくりと混ぜると、リキュールはみるみるミルクの中に、マーブルを描きながら、溶けてゆく。
今、混ざってしまったコーヒーリキュールの雫は、もうコーヒーリキュールには戻れない。
同様に、たった一雫であれ、コーヒーの雫を受け入れてしまったミルクは、もうノンアルコールの牛乳には戻れないのだ。
僕は、リキュールの雫たちをすっかり混ぜ終わると、カップを持って立ち上がり、電子レンジへと向かう。
つきっぱなしのテレビ画面の外では、大勢の人たちが騒いでいる。
怒号と悲鳴と泣き叫ぶ声…。
大ニュースだ。画面越しの…この地域の、関わりのない者たちには、それだけに過ぎないが、画面向こうの地域では、この後しばらくは語り継がれるレベルの世紀の大事件だろう。
今日の現地時間午前に、突如、主要国の大都市で起こった大規模戦闘は、全世界を震撼させている。
実際、テレビニュースもインターネットニュースも、現在の状況を追いかけるのに必死だ。
リキュールの混ざってしまったミルクは、もうノンアルコール飲料ではない。
泥の雫が混ざってしまった水は、綺麗な水には戻れない。
それは人のコミュニティも例外ではない。
僕は温め終わったカルアミルクを啜る。
ほんのりと温度の増したアルコールは、確実に、いつもより素早く、脳に染み渡っていく。
どうやら、僕たちの準備した“雫”は上手く混ざり、人々を唆して、平和な街を別物に変えたようだ。
テレビの向こう側ではますます諍いの騒がしさは増し、スタッフも慌てながら、地獄の様相を呈した街中を駆け巡っている。
僕たちが“正常な世界”とやらに見捨てられ、この世に絶望し、世界を破壊し尽くしてやる、と、復讐を決めてから数十年。
最初の計画は、大成功を収めているらしい。
当たり前だ。念入りに、何度も、怒りに飲み込まれないように冷静に、準備してきた計画だ。成功しないわけがない。
カルアミルクを啜る。
腹の中に暖かい満足感が広がる。
もちろん、僕たちの計画はここで終わりではない。
だが、僕の役目は、そろそろ終わるだろう。
僕は立ち上がり、パソコンを立ち上げる。
そして、エンターキーを叩く。
作り上げてきた“雫”を送り出す為に。
今の平和を守る秩序を、混沌に変える為に効果的な“雫”は、人員だけではない。
僕の、作り上げた“雫”は、“言葉”だ。
かくして、僕の“雫”は垂らされた。
インターネットに、世界中に。
…あとは、この平和な世界のクソッタレた秩序をお守り申している方々が、訪問にいらっしゃるのを待つだけだ。後は、この世界をぶち壊したいと願う仲間たちが引き継いでくれるだろう。
僕は椅子に腰掛ける。
背もたれに背を預け、ゆっくりと目を閉じる。
…良い夜だ。
こんなに心が安らいだ夜は、何時ぶりだろうか。あの時ぶりだろう。
僕たちが、周りの大人たちに脅かされた毎日から、命を懸けて逃げ出したあの日。
逃げ出した先で、大人の保護がない子どもに待ち受ける未来の、全貌を知った日。
そして、そんなクソッタレな世界の秩序を恨んだ日…。
そんな世界も変わるのだ。僕たちの垂らす雫で。
赤ん坊の頃以来、体験した覚えのない、懐かしい、柔らかな意識の遠のきが訪れる。
僕は、その“眠気”という感覚に、初めてなんの懸念も持たずに、全身を預けた。
月の雫
君は瞳から
一粒二粒と真珠のような雫をこぼす
僕はこの手で
それをすくってみようと試みるが
両手でも溢れ出るようで
雫はだんだん落ちていく
君は瞳から
あの夜の月にも負けないような雫をこぼす
僕はこの手で
それを拭ってみようと試みた
指をつたって
もう君の雫は落ちることは無かった
雫
ポタポタ、ぽたぽた。
雨の溜まった軒下で、絶え間なく流れる雫と雨を眺めていると、落ち着いてしまい、眠くなってくる。
絶え間ないリズム、一定に続く音。
まるで心音みたいだな、と思う。
いつも見えないけど、何かを生み出しているリズム。
また明日も宜しくね。
目が覚めたら、雨は止んでくれているといいな、と思いながら、今しばらくはこの音の世界に抱かれたままで。
「雫」
涙の谷… 悲しみの中にある現世のありさまを、谷に喩えた話。
悲しい縁が多い人生で彼女は涙の雫の種を蒔きました。悲しみの種は歓の実を彼女の前に広げました。
芥川龍之介は言いました。
彼らは涙の谷をすぐれども其処をおほくの泉あるところとなす また前の雨はもろもろの恵をもって之をおほへり
令和の若い人たちが分かるように言うと、こうなる。
バカな谷を通っても、そこを泉の湧くところとします。また前の雨は池をもってそこをおおいます。
太宰治は、そんな涙の谷にを悲しみの中にある現実のありさまと喩え、妻のおっぱいとおっぱいの間にある涙の谷にと喩えた。
愚かさを寛容されただいとおしく思われながら妻に抱きしめられて泣いたという意味なのだろう。けれど妻は本当の救いを与えることが出来るのか?と不安になるのではないか…それが現世の中にある悲しみの種、不安と疑心暗鬼の涙の谷から湧く一滴の雫がやがて池をもってそこをおおいます。
人生は涙の谷を渡り一滴の涙の雫が集まり溜まった池におおわれています。
わたしたちはその悲しみを湛えた澄んだ池と池と谷と谷の間を脚をとられないように歩くのです。
きっと、涙の雫をこぼしながら悲しみの種を涙の谷に返し、また池をつくるのでしょう。
2024年4月21日
心幸
作品No.21【2024/04/21 テーマ:雫】
降り落ちたひとしずく
いつか海へとつながって
そしてまた
空へと戻っていくのだろう
どこにも行けない
私を濡らして
もしも未来が見れるのなら 19日
何もいらない 20日
雫
もしも未来が見れるのなら、良い未来になっていたい。
未来は、誰にも分からない。選択の連続分岐だと思う。 だから、1つずつ選択をしていかなければならない。
選択をするきっかけは、沢山ある。
後悔をしないために、1つずつ少しずつ。
たまには、何もいらない、運まかせって事もあるだろうし、本当に無限に広がっていく。
雫が落ちて、水面に波紋が広がるように、伝播していくものだとも思う。
雨上がりいつもは天気を気にして
空ばかり見てしまうけれど
雨上がりふと見た花に雫が落ちていた
きっとすぐに姿は消えてしまうのだろう
なんて儚いんだって思った 雫は
テーマ「雫」
花明りの空の下私はベランダで虚空を眺めていた
ぽつんと置かれたビール缶を口に流し込みながら
君と別れた交差点を思い出す 。
それは春宵のとき
僕は君の軽快なジョークに聞き惚れながら別れを惜しんでいた。淡い髪がゆらゆらと揺れて綺麗だった
そんな時後ろからクラクラするような猛烈な光が君を照らして耳を割く様な音が響き
君を飛ばしていった
君を轢いていった
白いトラックには赤い液体がついている
春は別れの時期と言うがあまりにも無惨だ
私と頬には自然と雫が着いていた
小雨が降り注いでいる
涙を出し切ってしまった私の代わりに
空が泣いてくれている
桜の花びらが目の前をゆらゆらと落ちていった時
ベランダを締めきり部屋に明かりをつけて前を向いた
雫=水や液体のしたたり
したたり=ポタポタ垂れ落ちること
最近は雑談が多いので物語にしようかな(゜゜)
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ザーザーと降る雨が、残り僅かの桜を散らしていく。
ボタボタと大粒の雨を受け止める黒い雨傘をさす男は、濡れそぼつ桜から大粒の雫が溢れるのを静かな眼差しで見つめるとポツリと呟いた。
「春雨じゃ、濡れてまいろう…なんて、風流な事は過去の事だね」
降り注ぐ雨は容赦がない。
男の通勤靴は水没し、しとど濡れるスラックスも肌にピタリと張り付き体温を奪っている。
桜の下にある側溝からは、排水が間に合わないのか、雨水が溢れはじめている。
夏のゲリラ豪雨と対して変わらない雨だ。
気候が狂って久しい今日此の頃。季節的な風流を求めること自体不毛というものなのかもしれない。
男は小さく笑うと、
「気候狂いのカオスな雨故、濡れてまいろう」
グチョグチョと靴音を立てながら水溜りを避けることなく歩き出した。
市街地を抜け、田畑が広がる長閑な道を進む。
歩行者の事を考えられていない道は、アスファルトが無く、地面が剥き出しという所も少なくない。
男の進む道もそれに漏れること無く、雨によって泥濘んでいる。
泥濘の道に構うこと無く、男は進んでいく。
吹き付ける雨は止むことを知らず、相変わらずザーザーと音を立て、雨傘を強く叩いている。
悪路を超えると、前方に小さなビルがポツリと見えてきた。
年季の入ったビルで、外壁の劣化や汚れが著しい。門扉にかけられた南京錠が追い打ちをかけるかのように、廃墟のような様相を醸している。
しかも、南京錠と一緒にぶら下がっているアルミ製の看板は──雨風に劣化したのか──研究所の文字だけ辛うじて残っている状態だ。
ご近所が無いので評判は不明だが、端から見ると怪しい建物にしか見えない。
男は、カバンから大小様々な鍵が付いたキーリングを取り出すと慣れた手つきで南京錠を開け、敷地内へと進んだ。
建物に反して敷地内は整備されており、一角には手入れの行き届いた色とりどりの花々が植えられている。
そのおかげか、外から見た時に感じた廃墟感は一気に薄れ、人が日常的に出入りしている所だと感じられる。
男はビルのエントランスで傘を閉じると、傘に付いた水滴をバサバサと払った。
キーリングに付いた鍵の一つを手に取り、ビルの自動ドアを解除しようと屈んだ瞬間、背後から影がさした。
「博士、おはようございます」
「あ、おはよう」
振り返りながら挨拶を返すと、助手がニコニコしながら立っていた。
ニコニコしているけれど、不穏な何かを感じる。
なんだろう?
首を傾げ助手の視線をそれとなく追う。
僕の顔を見ていない?
心なしか視線が足元の方に向かっているような。
「博士、お着替えされてから研究室に来てくださいね。そのまま入ったら今日のお茶菓子抜きですからね」
足元を見ると、子供が雨の日にはしゃいだような状態になっていた。