『行かないで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「行かないで」なんて言ったら困らせてしまうかな。
でも、今は独りになりたくない。ただ一緒にいてほしい。わたしを置いてかないで。
【行かないで】
2人ぼっちでいた頃と打って変わって
最近ではきみはもてはやされる様になって
どんどん僕ときみの間にものが詰められて
無理やり距離を離されている様な気がしてしまって
もちろん僕だけのきみもいることは
重々承知しているけど
それでもどうしても内心では
行かないでって思ってしまっていた
でももういいよ
どんなに邪魔が入ったって
僕からきみに追いつくように走るから
2024-10-24
行かないで
って言えたらどんなによかったことか。
あの時、遠ざかる背中に手を伸ばさなかったのを今でもずっと後悔している。だけど、心のどこかでは引き留められなかった自分に安堵している矛盾した気持ちもあって、やっぱりずっと気持ち悪いままだ。
真っ赤な夕焼けに消えていくあの人が翻すコートの端に手が触れていたら、きっと現状は無いのだろう。あの人は優しいからきっとこんな地獄を受け入れてくれる。そうして変わり映えのしない生温い日々をずっとずっと繰り返していくのだ。あの人の地獄はわたしの天国。
だから引き留められなかった。
あの人の瞳には未来が映っていて、その中にはわたしもちゃんといたのだけれど。わたしの目には雁字搦めの過去しか見えていなかった。宝物ばかりを詰め込んだ大事な大事な過去。無数の骸のような宝物たちが行かないでって足を引っ張る。手を引いてくる。首を絞めてくる。
そうしてわたしはあなたの未来にならなかった。
行かないでっていえなかったこと、今でも後悔している。
どこかで輝いているあなたが恨めしい。
せいぜい元気に生きて、時々頭の片隅にわたしを思い浮かべて心に靄を燻らせるといい。
今度は私があなたに行かないでって言わせてやる日まで。
行かないで
お母さん、行かないで
僕を一人にしないで
ひとりぼっちは嫌だよ
寂しいのはもうたくさんだ
お父さんも行っちゃった
おばあちゃんも
おじいちゃんも
優しいけど
お母さんがいいよ
行かないで、お母さん
僕を一人にしないでよ
ドアノブを捻る手、振り向いた時に滑らかに広がる髪の毛、私を見つめる笑顔、「いってきます」と動く唇。
背中がぐんぐん遠くなる。ドアの外、光の中へ吸い込まれて、小さくなって消えていく。
「いかないでっ……。」
か細い自分の声に、目が覚めた。はぁ、はぁ、と息遣いが聞こえる。苦しい。涙がこぼれ落ちて、耳の中へ入る。
鼻を噛みたくて、耳の中を拭きたくて、身体中を拭いたくて、起き上がった。
こんな欲求、なんて贅沢なんだろう。自分の苦痛を取り除く為に、起き上がれるなんて!
ティッシュに手を伸ばしながら、斜め左を見た。あの子と目が合った。振り向いて私を見た時の笑顔のまま。
元気な姿を見せたいのに、あの子が重い鉄の扉に吸い込まれる時も、小さくなって帰ってきた時も、そして今も、私は「行かないで」と縋るだけ。
いつしか、前を向いて歩いて行ける日が来るのでしょうか。あの子は、その先にいますか。
憂いでるとか、儚いだとか、
そんな言葉で人生満了未遂の彼らを崇め、
神格化してはいけない。
自死は逃亡だ。
自死は解脱だ。
そこに正しさや間違いは無い。
優しさも慈悲も無い。
そして、往くべき者は死者を責めることも、
褒めることも、羨むことも許されない。
常に美しいものは、未来だけである。
絶望の果てに魅せた結末を、
美しがっては、いけない。
「行かないで」と言われて初めて、思っていたよりもこの人の中の自分の存在は大きかったんだなと気づいた。
好きだった人だった。大切にしたいと想った人だった。でも時間と共に、いつしか生き方や価値観が少しずつ変わっていって、お互いの方向性が交わらなくなっていった。その時にはもう私は「この人が人生の唯一ではないんだ」と呆気なく腑に落ちていて、同時に「私もこの人の人生の唯一にはなれないんだ」とどこか悲しかった。
むしろ、置いていかれたのは私の方だと思っていた。
だから初めて「行かないで」と言われた時、なんだか腹立たしくさえ感じた。好き勝手楽しそうにしてたのはあなたの方なのに、どうして私のせいみたいに言うんだろう。
その言葉は、まるで呪いのようだった。
お題/行かないで
未だに仕事中に客に吹聴したりSNSで言いふらしたりしてる23年前の自分の身の上に起きた盗作されました話。そういう行動がどれほどみっともない、ブザマでダサいかは結構解っている ... ようで本当の意味では全く理解出来ていないんだよね。いや ... こうした事は、アタマで理解出来ても止まる事の無い時の流れと移り変わりの中で理解して忘却する事は実は極めて難解なのではないだろうかと自らの身の上話であるにも拘らずそうあらためて自らを宥めるを繰り返し続ける悲惨を晒し続けている。ただ昨今新たに気が付き始めた事があって ... 私は ... やはり名誉名声報酬以外の ...〝 美し過ぎる物語の剰りにもチンケなオチ 〟に対する落胆が未だに尽きない事に困迷 ... いや昏迷気味なのである。逆に ... そういうというかこういう事は中途半端の方が私は好ましく念うタイプの人間であろうに ... 抑もは。だのに私の中の何かしらが私の現況を許し得ないのである。〝やはり目立ちたい?〟〝すごいエラいと拍手喝采されたい?〟〝嫁子供を世間様から羨ましがられたり嫉妬される立場にさせたい?〟............. いや、私は ... 白眼視と侮辱嘲笑の嵐の人生の中を歩いて来た最中に挑んだ神と宿命との決闘にケリを着けたいのだ ..... 大勝利というオチで。私自身に謂わせて頂けたなら根拠無く私を蔑み冷笑した諸々の奴人を地球全体の笑われ者として晒してやりたい .... それが私の残念乍らも極めて本意であろう。私は悪魔のつもりはないが勿論神様でも仏様でもなく ... そしてこうした自らの感情に捕えられている自体極めての凡人なのであろうと自負する。そんな私に何故運命は透明の豪服を纏わせ裸の王様にする企てを行ったのか ... それが憎い。
行かないで
君はいつだって、
皆の頼れる存在で、
優しくて、格好良くて。
俺はずっと、
そんな君に憧れてた。
でも、
君が俺の側にいてくれたのは、
俺が、君の友達の中で、
一番頼りなくて、
放っておけない存在だったから。
…だよね。
君にとっての俺は、
きっと。
心配で目を離せない、
頼りない友達でしかない。
その事は、ずっと分かっていた。
それでも、君の側にいられるなら。
俺は、その優しさに、
甘えていたんだ。
だけど、君に新しい後輩ができた。
仕事も、慣れない事も、
全て、一から教えてあげるべき、
真っ新な存在だ。
君が、彼の側にいる時間が、
俺よりも増えるのは、当然だよね。
どんなに優れた人でも、
初めは、何も知らないんだから。
行かないで。
心が締め付けられる。
叶わない願いが、
俺の胸の奥で、揺れている。
行かないで。
でも、俺にはこの言葉を、
君に伝える勇気なんて、
何処にもないんだ。
行かないで。
だから、俺は。
心の中で呟くんだ。
…君には聞こえない声で。
「なんでもないよ」
僕はそう言って自分の気持ちを誤魔化した。だってそんなこと言ったって君は止まってくれないから。
いつからだったんだろう、もっと早く気づいていたら何か変わったんたろうか、数え切れないくらいに考えたその疑問は未だに自身の脳裏に纏わについて離れない。
去年の今頃、2人で夏祭りに行った時は、また距離が遠く離れてしまうのが苦しくてつい口に出した。それでもあの時は、寝て起きればまたいつも通りの日常が流れるあの時はどれだけ距離が離れたって心はずっと近くにいると思っていたから言うことが出来たし笑うことも出来た。君が遠くに行く事が2人を断ち切る訳がなかったあの時は。
今とは全然違う。もう君の気持ちが分からなくなってしまった。僕だけがその事実を受け入れられなくて君は1人進んで行ってしまう。まるで夜の闇に1人取り残された僕はやっぱり1人ではなくて正確には1人になるのは君で、頭では分かっていてもどうしても身体が、心が、思い出がそれを理解するのを拒絶する。
言わなかったのは君が困るからなんて優しい理由じゃない。それを言うことで明確に離れてしまうかもしれない君に、言うことが出来なかったんだ。
結局僕は臆病だった。
最後の最後まで何も出来ずに、何も言えずに後悔ばかりして。あぁ、それでも、やっぱり、1回くらい、吐き出してしまいたかった。言ってしまえば君との距離は少しくらいは縮まっていたのだろうか。
今更答えが帰ってくるはずもない問いにその言葉は誰にも聞かれることなく空に消えた。
「行かないで。、、、やっぱ今のなし。忘れて。」
「あははは、なにそれ。大丈夫だよ。永遠の別れでもないんだから。来年の夏も一緒に来ようね!」
「うるさいな、、、うん。」
_______逝かないで、、
︰行かないで
いい感じの話とかなんも書けねぇし読めねぇ。
何が言いたいのかさっぱり分からん。心動かされる刺激的な何かもない。いよいよ感性が死んできた。
今までみたいなやつもう書けねぇしなあ。
不安定な精神に頼りきって書いてきたもんで、随分クリアな思考ができるようになってからはこう、深く暗いところを漂うような話の良さがいまいち分からなくなってきた。なんだ、クリアにはなったが、何かこう、不健康なクリア故に、攻撃性ばかり増しているような。
悩みがあるなら解決すればいい。解決できないなら諦めればいい。諦めきれないなら悩みが少しでも解消する方法を探せばいい。立ち止まってウジウジしてたって何もないだろう。卑屈になっていじけている暇を使って順序立てて攻略していけばいい。
何を勝手に決めつけて出来ない言い訳ばかり探しているのだ。出来ない言い訳ばかりをしている理由すらも探っていけばいずれ「何故か」に辿り着く。根本が見つけられればそれに対処すればいいだけ。対処できないなら何故対処できないのか考え、それの対策をまた考えるだけだ。考えたら実践あるのみ。考えるばかりで行動に移さないからグルグル回ることになるのだ。
腹括れないなら遠回りしてもいい、言えないなら言えるようになるまで気長に待てばいい。人生は短いから早くしろなんていうが、今その時ではないのにやって自滅する方がよっぽど無駄だ。1年でも3年でも5年でも10年でも長く待つほうがいい。
どの道ウジウジ人間はウジウジが解消されなきゃ暫くずっとそんなことばかりして問題解決は出来ないわ悪化させるわで碌でもない。
碌でもない、碌でもない、価値観や考え方ってのは、本当に変えられるのか?
誰かに教え込まされた何かがあるなら無理矢理にでも引っこ抜きましょう。
夢見ていたものがドロドロ溶け始めてベタベタになってきたんだ。人の心の儚さ?脆さ?美しさ?何が美学だって?人との繋がりがロマンスだって?感傷的ってやつだろ。さっぱり分からん。
人が消え死に苦しむ話ってのはそんなに心引っ張られるのか。他人が死んでもどうでもいいのに?というかなんで殺してしまう。それ以外インパクトを出せないからか?誰かを傷つけないと自己表現できない?
「できない言い訳を探している」
左様でございますか。
理解した風で言っているけど根本的なところ何も分かっていない。他力本願して自分の首絞めて最後の最後まで自責風他責って。一体何が「分かってる」なんだろう。
素直に「分からない」「怖い」「不安」「やめてほしい」とだけ言って、聞き入れてもらえたらハッピーなのか、って、なんだ?なんで相手が主体なんだ?自分が言いたいから言うんだろう。聞き入れてもらえないと分かっているなら最初から吐き捨て前提で言えばいいじゃないか。怖いって?なら今は黙っていろ。言えるようになるまで一旦箱にしまっておきましょう。
置いて行かないで、とは。元来お前は最初からそんな人間だったではないか。自分では共感能力が高いだのと自負していた割には人に寄り添うのがストレスで?人の気持ちを汲み取るのもストレスで、イライラしてきて「まず共感」なんでできやしないし、基本的に事実優先で、慰めてほしいなら最初から「慰めてくれ」「心配してくれ」と言えやと思っていて、そのくせ自分は人に察してちゃんとは、実に傲慢で自己中心的な人間だろう?いやはやどこが繊細なんだ。ああ!自己防衛に必死という点において繊細かね?
人の気持ちが分かるというなら、本当に人に寄り添えるというなら、自分が優しい人間だというなら、お前、なんで今そんななんだ?
大丈夫、お前は元からそんな奴だよ。今更それが悪化しようが好転しようが大して変わらない。心配いらない。君は実に優れた社会不適合者だ。幸せにはならないから安心して不幸を全うし謳歌すればいい。素敵な人生だろうが素敵じゃない人生だろうか、そんなこと気にするより大事なのは明日の食い物さ。人生の満足度を考えたってそれで腹は膨れないよ。
別に、腹が膨れてほしいとも思わないけど。
本当に?なら今頃とっくに餓死しているはずだろうに。
ぐ〜たら生きて気ままにのらりくらりヘラヘラ笑ってやってくのが一番だな。
『行かないで』
幼い頃から私はこれが言えなかった…
たった一言
されど一言
大人の顔色を伺い、大人の心がわかってしまう
これは良いスペックなのだろうか?
子どもの頃は子どもでいるべきだ
でも子どもの頃、大人だった私は
大人の誰にも
『行かないで』とは言えなかった
困らせたくない
ただそれだけ
だから体調が悪くて
早退したって、休んだって
「ひとりで大丈夫よね?」
と言われてしまうと
『行かないで』とは言えなくなる
今になって思うのだ
大人は卑怯だ
相手をねじ伏せる言葉や行動を
無意識に数多く持ち合わせている
経験値の違いだろう
子どもだったけど大人だった私には
それは持ち合わせていなかった
だから
今でも言えない…
大切な人を困らせるという不安、葛藤
経験を積んだとて
なによりも相手を困らせることを知っているから
言えない…
ねぇ?!
君は…君だけは…
離れて『行かないで』…
本当はそう言いたい
愛着障害に双極性障害、パニック障害の私は
どうしてもリセット癖が抜けないし
自己肯定感が極端に低い
それは学んでわかった
分かっても…
沢山のトラウマを抱えた者は
どうやったって
「仕方ない」と想うことが難しいんだ
そして、本音を吐き出すことも難しい
でもね
いつも想っているんだ
誰も私から離れて『行かないで』って…
言えたら変われるのかな?
いつか言えると良いな…
人と群れるのは苦手だけど
ずっと独りは寂しいって勝手過ぎますか?
心の中でそう呟いた。
聞こえるはずもなくすっと彼女は僕の前を通り過ぎていく。
「みんなわざわざありがとう!元気でね!」
いつもと同じ、セーラー服に季節に合わない黒色のカーディガンを羽織った女の子。
こちらに振り向いて太陽のような笑顔で手を振っている。もう電車が出発するまで時間はそうない。
「向こうでも元気でね」
「離れても連絡取り合おうね」
それぞれ彼女に別れを告げていく。そんな中でも僕は彼女に口をつけずにいた。
結局それから彼女と目が合うこともなく、電車の扉が閉まった。
扉が閉まっても尚、手を振り続けている。きっと見えなくなるまで振り続けるのだろう。
僕も周りのクラスメイト達に合わせて手を胸あたりで軽く手を振った。ふと彼女がこちらを見てばっちり目が合ってしまった。目が合っただけだ、だけなのに鼓動が少し早くなったのを感じた。
彼女は少し驚いたような顔をした、けれどすぐに微笑み返してくれた。ような気がする。
その後はすぐ視線を他の子にうつしあっという間に電車は発車してもう見えないところまで行ってしまった。
鼓動は収まらずむしろどんどん早くなっていくように感じた。
…結局最後の最後まで何も伝えられずに終わり、僕の初恋も呆気なく終わりを迎えた。
〖行かないで〗
「行かないで」
たくさん言ったけど
笑顔でバイバイと
子供をあやすように
君はまた別の世界へ行ってしまう
同じ世界にいることはできないみたいだ
→短編・女郎蜘蛛
あら? そろそろご出立なさるの? でもねぇ、ご覧くださいな。雨が……、まるでジョウロで振りまいているかのような大きな雨粒ですわ!
荒天もありなん、とラヂオのお天気予報通りでございますねぇ。まぁ、ご存知でらっしゃらなかったのですか? あらあら、まぁまぁ。
こんなお天気ですもの。もう少しごゆっくりなさっても宜しいのではなくて? お茶を淹れ直して参ります。渡来品の砂糖菓子もお持ちいたしますわね。
え? お茶はもういい? そんな、ご遠慮なさらないでくださいまし。え? そうではなく、朝からすでに何杯もいただいた、と。
まぁ! なんて謙虚なお方なのかしら! 訪問販売員をなさってらっしゃるとは思えないほど、内気なご性分ですのね。
あっ! わたくし、良いことを思いつきました! 夕餉をご一緒いたしませんこと?
え? そろそろ日暮れ前だから帰社をお考えに? まぁ、残念! 持っていらした包丁セットを全て購入させていただいて、当家の料理人たちに与えようかと思案していた矢先だったのですが……。お帰りになるなら、そのような込み入ったお話をするわけには参りませんわねぇ。本当に残念!
あら? 思案顔をなさって、可愛らしいこと。どうかなさったの?
まぁまぁ! もう少しお時間の都合がいただけそうですの!? 嬉しゅうございますわ! さっそく、新しいお茶とお茶菓子、それに夕餉の準備を指示いたしますわね。
ところで、少しばかり顔色がすぐれないご様子ですが、大事ございませんか? 身体が重い? あらあら、お薬に弱い体質でらっしゃるのね。
あぁ、独り言でございます。お気になさらないで。無理をなさらず、そちらの長椅子でお寛ぎくださいませ。
ご安心なさって。包丁セットはさっそく上手に使わせていただきますから。
テーマ; 行かないで
ある日、任務から帰ると、私がこの世で一番大好きな彼らが、私のことだけを忘れてしまっていた。
他の人の事はおぼえてるのに私のことだけ忘れてしまって.. た、
これまでの人生「行かないで」という言葉を誰かに言ったことはあったかな?
なかったと思う。あったのかもしれないけれど、深い思いを込めて言ったことはない。
そんな私も、これから大人になって大切な人と一生会えなくなる日がいつかは来るのだろう、、また、恋人ができて、振られてこの言葉を口に出すような辛い日が来るのだろうか。悲しくて泣き叫びながら言うのかな、、私は優柔不断だから結局言えなくて後悔するのかも。
そんな感じで生きていって、時間が流れて、老いて、おばあちゃんになって、なれるかはわからないけれど、、そして人生が終わる日が来るんだと思う。
その時にたくさんの人たちからこの言葉を言われたいな。って思ったけど、人生やりきってもう悔いなし!って感じで、みんなにもいってらっしゃって送り出されるのもいいななんて思ったりもする。あーでも、やっぱり最後には心の中で一言この言葉をつぶやいてほしいかもしれない。
こうやって考えてると人生の終わりはもうすぐそこだな。
「行かないで」
玄関にかけていた手を掴まれる。
彼がこんなことをするなんて珍しい。
「どうしたの?」
そんな言葉をかける。
「今日は行かないで。」
彼は俯いたまま答える。
何か不安なことでもあるのだろうか。
こんなことは初めてなので、嬉しいよりも驚きが勝っている。
「理由、教えてくれない?」
彼は顔を上げた。
涙が浮かんでいた。
「嫌な予感がするんだ。もしかしたら、命に関わることかもしれない。」
彼はとうとう泣き出してしまった。
「怖い夢でも見たの?」
彼は顔を横に振る。
「本当に今日はダメなんだ。行っちゃだめ。行かないで。」
いつもの彼からは想像できないくらい必死だ。
今日は重要なことは無かったので、有給を取ることにした。
仕事を休むと言ったら、彼は安心したのかその場で寝てしまった。
仕方ない、寝室に運んであげよう。
今日は嫌な夢を見た。
俺の恋人が死ぬ夢だ。
夢を見て不安にならないわけがない。
だが、彼に心配させたくない。
だから、今日もいつものように彼を見送った。
彼は次の日になっても帰ってこなかった。
連絡もつかない。
警察に連絡し、俺も仕事場やよく彼と行った場所を周った。
それでも見つからなかった。
という夢を見た。
が、また、彼がいなくなる夢を見た。
毎回原因が異っていた。
だから今日は伝える。
彼がいなくならないように。
「行かないで」
行かないで。
逢えてる時は
嬉しい。
でも逢えなくなる
時間まで
あと少し。
背中を向けて
背中に
【行かないで】。
叫んで
届くなら
今日も
大声で君の名を叫ぼう。
デスクで仕事をこなしていると、午前の終わりを知らせる放送が流れ始めた。
(うーん、いまいちな進捗だな。午後は気合を入れないとな)
Todoリストを確認しデスクを軽く片付けると、周りの流れに乗るように社員食堂へと向かった。
食堂で日替わりランチを受け取るとそのまま足を進め、すでに定位置となっている席に着いた。
「おう、なんの話してんの」
そこではすでに二人の先客が昼食をとっていた。
入社して六年ほど、配属先の部署はバラバラになったがやはり同期の社員は気安く話しやすい。
いつの間にか同期で集まって昼食をとるようになっていたが、これも長く続いていた。
「今こいつの彼女の愚痴を聞いてたんだよ」
「そういう話ね、なんか面白いの聞けた?」
「おいおい、お前までそっち側に回るのは勘弁してくれよ」
「まあまあ、とりあえず先にメシ食うわ」
愚痴を話し出したが最後、根掘り葉掘りいろいろと聞き出されてしまったのだろう。“これ以上は敵わん”と立ち回る同期を制すると、俺は続く会話を横目にまだ温かい日替わりランチを食べ始めた。
「そういや、結婚してるお前もそういう話の一つや二つくらいあるんじゃないの?」
「いや、特にはないかな」
唐揚げを食べていると、話の矛先が急に俺へと向けられた。
だが、残念なことに俺はそんな愚痴ばなしのストックを一つも持っていない。
彼女は会社でも順調にキャリアを積んでいるし、性格も明るく、家事もそつなくこなす。料理に至ってはおいしい上にバリエーションも豊富ときた。俺の作るなんちゃって料理とは比べるまでもない。
唯一勝てるところがあるとしたら風呂掃除の速さ、あとは力作業くらいなものだ。
そんな彼女に不満などあろうはずもない。
「かー、順風満帆てな感じでいいねぇ」
愚痴を期待していただろう彼らには申し訳ないが、ここぞとばかりに惚気させてもらう。
「俺にはもったいないくらいのいい家内で」
『行かないで』