「なんでもないよ」
僕はそう言って自分の気持ちを誤魔化した。だってそんなこと言ったって君は止まってくれないから。
いつからだったんだろう、もっと早く気づいていたら何か変わったんたろうか、数え切れないくらいに考えたその疑問は未だに自身の脳裏に纏わについて離れない。
去年の今頃、2人で夏祭りに行った時は、また距離が遠く離れてしまうのが苦しくてつい口に出した。それでもあの時は、寝て起きればまたいつも通りの日常が流れるあの時はどれだけ距離が離れたって心はずっと近くにいると思っていたから言うことが出来たし笑うことも出来た。君が遠くに行く事が2人を断ち切る訳がなかったあの時は。
今とは全然違う。もう君の気持ちが分からなくなってしまった。僕だけがその事実を受け入れられなくて君は1人進んで行ってしまう。まるで夜の闇に1人取り残された僕はやっぱり1人ではなくて正確には1人になるのは君で、頭では分かっていてもどうしても身体が、心が、思い出がそれを理解するのを拒絶する。
言わなかったのは君が困るからなんて優しい理由じゃない。それを言うことで明確に離れてしまうかもしれない君に、言うことが出来なかったんだ。
結局僕は臆病だった。
最後の最後まで何も出来ずに、何も言えずに後悔ばかりして。あぁ、それでも、やっぱり、1回くらい、吐き出してしまいたかった。言ってしまえば君との距離は少しくらいは縮まっていたのだろうか。
今更答えが帰ってくるはずもない問いにその言葉は誰にも聞かれることなく空に消えた。
「行かないで。、、、やっぱ今のなし。忘れて。」
「あははは、なにそれ。大丈夫だよ。永遠の別れでもないんだから。来年の夏も一緒に来ようね!」
「うるさいな、、、うん。」
_______逝かないで、、
10/24/2024, 5:41:16 PM