「またね」
そう言った君は帰って来ない。
いつからだったろう、その瞳の色が褪せるように思い出せなくなったのは。
いつからだったろう、その透き通る声を思い出せなくなったのは。
いつからだったろう、その綺麗に輝く髪の匂いを思い出せなくなったのは。
いつからだったろう、その名前を、思い出せなくなったのは。
きっとやり直すことなんて何回でもできた。会いに行くことだっていつだってできた。でも、僕はそれをしなかった。君が、君が帰ってくるって言ったから。だから待ち続けた。待ち続けて待ち続けて、君が本当にいたのかすら曖昧になっても待ち続けて。
あの日笑いかけてくれた君は、あの日手を引いて前へ進んでくれた君は、あの日怯えてた僕に怖くないよと声をかけてくれた君は、あの日、またねって別れを告げた君は本当にいたのかな。
はやく、会いたい。
またね
最近気づいた。
ただただ歩いていると意外とたくさん虫がいて、久しぶりに蝶々がいる、と感じる。 1度気づくと毎日のように見かけて、見えてなかったんだと思う。
見上げてみると、鳥が飛んでいてあんなに羽ばたいてるなんて珍しい、と感じる。1度気づくと意外と鳥は風に乗ってるんじゃなく自分の力で飛んでいるんだと思う。
足元に目を向けると綺麗な花が咲いている。小さいものも大きいものも上に向かって真っ直ぐと、時には過去を見ながらも、視界の端で懸命に生きているんだと思った。
雲を見るとたくさんの色がある。ただの白じゃない。同じ雲なのに1箇所だけ塗りつぶしたみたいに灰色だったり、掴むとちぎれそうな雲だったり、触れただけで霧散しそうな雲だったり。
その後ろには広くて大きい空がある。どこまで続いているのか想像もつかないくらい大きな空。真っ直ぐ見ていると薄い水色なのに真上に行くに連れて濃く青く、怖くなるくらいに深い青。
何も無くても、自分が生きている世界はただそれだけで色々なもので溢れていると気づく。
もっと、もっとと思っているうちに近くしか見えなくなる。近くも見えなくなって段々真っ暗になっていく。
だけど、自分が思っているよりも世界は美しく広大でもっとたくさん見えてくる。
ほら、空を見てごらん。
あぁ、こんなにも、どうして、青いんだ、、。
青く深く
私の今年の抱負は無理をせずに高校生活を乗り切ること。去年は受験終わってッパァァってなってたけど知らないうちにちりつもでストレスが溜まってたのかなんなのか萎え〜って感じだったから少しでも早く高校生活が終わりを迎えるように穏便に心に優しい穏やかな生活を心がけていきたい。
今年は果報は寝て待てということで寝ることを大切に行こうと思う。よって今年の1文字は「寝」!
街灯のない空気の綺麗な場所で空を見上げると大空いっぱいにきらきらと輝く星が見える。どの星が一等星かも分からないくらい全部の星が強い光を放っている幻想的な景色は日々の生活の中でふとした時に思い浮かべる漠然とした不安を忘れさせてくれる。自然セラピーというやつだろうか。
幼い時は星を見るために空を見上げることはほとんど無かったし、星を見る事で忘れられるような悩みや不安も持っていなかった。それくらい毎日が輝いて見えた。
星空が霞んでしまうくらい幸せだったあの頃、全てが楽しかったあの時期に戻りたいと思ったことは何度もある。もっと苦しくない生活がしたい。だけど、今見上げているこの空が以前よりも綺麗に見えるのは今生きているこの瞬間がどうしようもなく真っ暗で終わりの見えない闇の中だからなのだろうか、そう思うともっとこの景色を目に焼き付けておきたいと思う。
はやくこの地獄から解放されたい。その時自分はまだ星を見ることが好きなのだろうか、好きであって欲しい。
まぁそんなことを思ったって、今見ている星々は例えいつか空を見上げなくなったとしてもずっとそこで輝き続けているんだろう。自分が空を見なくたってあの時もこれからも全く同じ空がそこにある。過去の星空を見ないで良かった自分に羨ましさを覚え、いつか来るかもしれない自分が見ていない星空に悔しさというか儚さというか複雑な何かを覚える。だから今この綺麗な空を見上げる。
大空
天才と呼ばれた彼はきっと神様から立派な翼を預かったのだろう。
スポーツ、強いて言うならテニスという競技は才能の差という物が顕著に現れる競技ではないだろうか。別にそれによって全てが決まると言っている訳では無い。試合している中で目まぐるしく展開が変わっていくスポーツの代表と言いたいのだ。そんなテニスの世界の中では、まず瞬発力やスピード、筋力や持久力と言った根本的な身体的要素から冷静さ、集中力、試合の流れを読む力と言った精神的要素が強く必要となってくる。まぁ別に各スポーツの間にそこまで明確なスキルの差は無いのだけれど。つまり言いたいのは必要となる、あればある程いいと言われている能力が多ければ多いほど天才と凡人の差を広がっていくというわけだ。
彼はテニスの才能を持って生まれた。きっと神様が彼のことを気に入ったのだろうと言えるくらいに彼は上手かった。その上彼は貪欲だった。勝利に、強敵に、敗北に、、、。彼は未だ見ぬ強い敵に挑むために多くの時間をテニスに費やしてきた。、、いつしか彼はこう呼ばれるようになる。"天才"と。別に初めの頃は気にしていなかった。言っているのは弱いやつだ、人との差ばかりを考えてその差をどう埋めるかではなくその差に理由を求めるだけの負け犬だと。けど、何をやっても「アイツは天才だから」「比べたところで意味もない」「監督も無理だって分かってるくせに」「最初から越そうと考えることが無駄」。そう言われ続けてきて、彼は止まった。気づいたのだ。自分は誰かに負けることを求められていない、勝つこと以外は間違いだと言うように彼の今までを蔑ろにされていることに。彼は貪欲だった。強くなるために考えられないほどの量、質、時間を練習に当ててきた。でも周りの人間はどうせ彼が勝つのだから彼がどれだけ練習していようが気にも止めなかった。その事に気がついた時彼の目標は1つになっていた。それは、負けること。なんてふざけた目標だと人は忌避するだろう。だが、その望みは天才と言われた彼だけが持てる目標だった。だから、彼は決めたのだ。皆が目指す王者になろうと。誰もその事には気づかない。だって今までものこれからも最強は彼でそれ以外になることはないと疑わなかったから。その事が彼の歩みを止めたということにさえも気づかなかった。
彼が勝ちたいと渇望する相手を諦めたのは他でもなく、彼に勝ちたいと思っていた人たちで、彼に勝てないと諦めた人のせいだった。別に全責任を彼らに負わせるつもりは無いが、彼を天才に、誰にも追いつけない存在にしたのは紛れもなく彼らだった。向けられていた眼差しはいつかこうなりたいという羨望から、なんでこいつにはという嫉妬、果てには勝てなくてもしょうがないという諦念を孕んだものに変わり果てる。今まで見てきたいくつものその色が彼を変えた。
彼はずっと1人だ。仲間と好敵手と監督と高め合うはずのスポーツは彼には無かった。
神様も酷いものだ。どこにだって飛べる翼をくれたのなら休む場所を与えてくれたって良かったのに。長い間上へ上へと目指していたおかげで視界の中には、何も映らなくなっていた。それに気づいて引き返そうとした時には戻る道が分からなくなっていた。飛ぶ力など残っていないが、それでもどこへだって飛べる翼があって、気持ちを置いてバカになったみたいに翼だけが動きを止めない。骨を折って、羽毛も剥がれた醜い羽は遠目では誰にも気づかれない。
_____もう、誰でもいいから助けてくれよ。
そう呟いた彼の声が届くのは、彼の心が負け墜落した時か、誰かが怪我をおった彼に気づいた時か。どちらが先かは神のみぞ知るところだった。
飛べない翼