霜月 朔(創作)

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行かないで



君はいつだって、
皆の頼れる存在で、
優しくて、格好良くて。
俺はずっと、
そんな君に憧れてた。

でも、
君が俺の側にいてくれたのは、
俺が、君の友達の中で、
一番頼りなくて、
放っておけない存在だったから。
…だよね。

君にとっての俺は、
きっと。
心配で目を離せない、
頼りない友達でしかない。

その事は、ずっと分かっていた。
それでも、君の側にいられるなら。
俺は、その優しさに、
甘えていたんだ。

だけど、君に新しい後輩ができた。
仕事も、慣れない事も、
全て、一から教えてあげるべき、
真っ新な存在だ。

君が、彼の側にいる時間が、
俺よりも増えるのは、当然だよね。
どんなに優れた人でも、
初めは、何も知らないんだから。

行かないで。

心が締め付けられる。
叶わない願いが、
俺の胸の奥で、揺れている。

行かないで。

でも、俺にはこの言葉を、
君に伝える勇気なんて、
何処にもないんだ。

行かないで。

だから、俺は。
心の中で呟くんだ。
…君には聞こえない声で。

10/24/2024, 5:50:12 PM