NoName

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心の中でそう呟いた。
 聞こえるはずもなくすっと彼女は僕の前を通り過ぎていく。

「みんなわざわざありがとう!元気でね!」

 いつもと同じ、セーラー服に季節に合わない黒色のカーディガンを羽織った女の子。
 こちらに振り向いて太陽のような笑顔で手を振っている。もう電車が出発するまで時間はそうない。

「向こうでも元気でね」
「離れても連絡取り合おうね」

 それぞれ彼女に別れを告げていく。そんな中でも僕は彼女に口をつけずにいた。

 結局それから彼女と目が合うこともなく、電車の扉が閉まった。

 扉が閉まっても尚、手を振り続けている。きっと見えなくなるまで振り続けるのだろう。

 僕も周りのクラスメイト達に合わせて手を胸あたりで軽く手を振った。ふと彼女がこちらを見てばっちり目が合ってしまった。目が合っただけだ、だけなのに鼓動が少し早くなったのを感じた。

 彼女は少し驚いたような顔をした、けれどすぐに微笑み返してくれた。ような気がする。

 その後はすぐ視線を他の子にうつしあっという間に電車は発車してもう見えないところまで行ってしまった。

 鼓動は収まらずむしろどんどん早くなっていくように感じた。

 …結局最後の最後まで何も伝えられずに終わり、僕の初恋も呆気なく終わりを迎えた。


〖行かないで〗

10/24/2024, 5:05:35 PM