『蝶よ花よ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
小さな頃
父が選んでくれた初めての浴衣の柄は
"蝶よ花よ"
「甘やかされてたんだなぁ」
クスッと笑えるような年齢になった頃に
サイズアウト
凛と前を向いて
手折られないような女性になりたい
「企画書、やり直して」
突っ返された仕事に
「承知しました」と返事する
私が蝶よ花よと愛でてきた、年の離れた妹は、齢二十にして可憐に女ほころび咲いて、愛する男のもとへ羽ばたいていった。
姉の私はただの一度も咲きもせず、朽ちてゆくだけ。それで構わない。最愛のあの子が、幸せに満ち満ちて暮らしてゆけるのであれば、私はどんな苦労も厭わない。
私たちは早くに父母を亡くし、頼れる親類縁者もいなかった。姉妹二人、手を取り合い支え合い、身を寄せ合って生きてきた。そんな妹が手を離して去ってゆくのは、とても寂しい。しかし、ともに重ねた苦労の中で固く結ばれた私たちの絆は、今でも変わらないと信じている。
妹を守り育てるという、私の役目は終わったのだ。それは安堵とともに虚しさを連れてきた。私は生きがいを失ったのだ。これから何を心の支えとして生きてゆけばよいのだろう。
働き詰めの毎日で、恋人はおろか友人も趣味もない。これから職場と家を往復するだけの単調な日々を続けていくのかと思ったとき、ふっと糸が切れてしまった。
そうして私は十年間勤めた職場を辞め、ふらりと一人旅に出た。ただ足の赴くままに、様々な土地をさまよった。
これは、そんな私の放浪記。たくさんの出会いと気づきを書き留めた、私の大切な記録。この頁を開いてくださったあなたにとって、何かしらのきっかけになれたら嬉しい。
20年前、4人兄弟の末っ子として生まれた。初娘ということもあってそれはもう、蝶よ花よと可愛がられて育てられてきた。
そんな私も明日で20歳。だいすきなお父さん、お母さん、お兄ちゃんたちに大切に育ててくれてありがとうって伝えるんだ。お兄ちゃんたちが好きな唐揚げを沢山作って、ケーキを食べて、プレゼントは何貰えるのかな?明日が待ち遠しい!!
妹が書き遺した日記にはそう記されていた。
蝶よ花よ
「いい天気だね」
「ええ。…そろそろ休憩しませんか?」
あまり日に当たらないよう、医師からも言われている。
さっき食堂の側を通ってきたので、そこまで戻った。
「私はお茶だけでいいから、君何か食べて。でも此処のマカロニだけは駄目」
「なぜですか」
「…あれしか食べられない場所があったら、そこは地獄と呼ばれるべきだろうね。ゆで方であそこまで不味くできるって初めて知ったのが此処」
彼を窓側に座らせて、お茶とゆで卵、それと果物を少し持って行った。自分にはシェパーズパイとゆで卵。蛋白質は大切だ。
彼はいつも何でも上品に食べる。
「綺麗な絵でしたね」
「うん、花も綺麗。付き合ってくれてありがとう」
たまの休日に家族連れで混み合う王立植物園に来たのは、彼の観たがっていた博物画が展示中だからだ。
「もっと何というか、お洒落な店があれば良かったんですが」
「座れて君がいて花がよく見える、最高じゃない。あ、蝶々」
「そう言えば、さっきの蝶の鱗粉の絵もすごかったですね」
画家は後に著名な絵本作家になった人で、かつてここで働くことを望み、論文を書いて応募したという。
だが、望みは叶わなかった。
裕福に育って好きなことに才能があっても、女性だというだけで夢が潰えることがあるのだ。
「『チョウヨハナヨト』、蝶のように花のように、みたいな言い回しが日本語にあるんだって。大切に可愛がる、転じて甘やかす、くらいの意味合いでも使うらしい。あんなに綺麗に花や虫を描く人は、何の苦労もせずに夢が叶うといいんだけどね」
辛い思いをしないでほしいというのは同感だ。
「確かに…でも見てください、みんなうさぎのぬいぐるみを持ってますよ」
「本当だ」
「買って帰りますか」
「可愛いけど…私ね、読んだ中ではねずみが一番好きなんだよ」
仕事の無理がたたって眠り込んでしまった仕立て屋の代わりに、ねずみたちが大事な依頼をほぼ終わらせてくれるのだという。
「毎日、ねずみが犯人捕まえてくれないかなって思いながら出勤してる」
さすがに逮捕はできないのではないだろうか。
「あと、見たいところはありますか? さっきの赤い家とか」
「君、あれは一応宮殿だよ」
可愛らしいので家かと思った、と言ったら彼は声を上げて笑った。
「家もいいけど、あっちの塔がいいな。私たちはもう素敵なおうちを持ってるからね」
もう少し休んだら、そこに登ろう。家に帰ったら、何でもしてあげよう。まさしく蝶よ花よと。
「蝶よ花よ」
あのお城には、小さな小さなお姫様が住んでいるの。
純白のドレスに身を包んで、マホガニーの調度品に囲まれて。
欲しいものは全部手に入れてしまえる、そんなお姫様が。
まさに、“蝶よ花よ”という言葉がぴったりの暮らしを送っているそうよ。
私もあのお城に行ってみたいわ。
でも、私は美しくないからきっと無理ね。
蝶のような美しい羽も、花のような良い香りも。
私にはないの。
どれだけお姫様に憧れても、あの子はこちらを見てくれない。
求めてももらえないの。
だって私は、蝶でも花でもないから。
……でも、あなたがいてくれるおかげで私は寂しくないわ。
ただの小鳥でしかない私を、こんなにも可愛がってくれる。
暖かくて、とても幸せ。
だから、これからもずっと一緒にいてね?
【蝶よ花よ】
物心ついた頃には私は「花魁」になるための指導を受けてきた。
本当の親は声も顔も知らない。
どんな人だったのか知りたくなった日もあったが、皆優しくてあったかいココでの生活が心地良くてすぐにどうでも良くなった。
先輩に当たるお姉様たちとココで1番偉い地位の楼主様が私の家族であり、親なのだ。
月日が経ち、私は「花魁」になることができた。
お姉様たちや楼主様は凄く喜んでくれた。
花魁になった後も、私の生活はそこまで大きく変わることはなかった。
私自身の価値が上がったことで今までより身分が高いお客様と会うことが多くなった。
だけど、時間を買ってもらった分だけ相手をする日々なことには変わりない。
別に「花魁」という立場や仕事に不満がある訳じゃない。
蝶よ花よと大切に育てられてきて感謝しているけれども、私の心はどこか満たされずに沈んでゆくばかり。
「私」は買ってもらえなければ鳥籠の外には出ることはできないし、この鳥籠にいる間は「恋人ごっこ」を強制される。
別に気持ち良くもないが、お客様の気分を損ねぬようにアッアッと喘いで達した演技をする自分が本当に気持ち悪くて嫌になる。
「花魁」になってからは高値なお陰で呼ばれる頻度が少なくなったからまだマシだけど。
今日も私は完璧な恋人を演じる。
いつか鳥籠の外に連れ出される日を願いながら…。
蝶よ花よと大切に育てられたお嬢様は、今年で小学四年生になる。
今はお盆休みの数日前。つまり夏休みだ。
お嬢様は都内有数の小学校から、福島県某所の避暑地に退避していて、なるべく夏から逃げている。
すでに夏休みの宿題は自由研究を残すのみ。余裕だ。
目は石板の電子機器から離さず、指先が腱鞘炎の原因になるくらいまでめちゃくちゃに動かしながら日が暮れるのを待っている。
ネット上で、とある炎上を発見した。
情報拡散が激しく火花を散らせている。またたく間にお嬢様の興味をひく。
思い立ったが吉日。
片手に学タブを持ち、片手に麦茶の入った長コップを持って、好奇心に赴くまま、クーラーのよく効いた部屋を出た。
熱帯夜の常駐する暗く長い廊下を通るとき、ものすごい湿気とミンミンゼミのミンミ〜ンが、大後悔をもたらした。別にチャットで聞けばいいか、いやいや。
廊下を走って数秒後、避暑地の主である祖父の書斎に、ノックもせずに入室した。
祖父はいまだ矍鑠としており、新聞を広げてやれやれと首をかしげている。昨今の乱高下の激しい日経平均株価が気になるらしい。同調して赤ベコのように首を振っている。
「ねえおじさま。聞いていい」
「なるべく手短にな」
ここ数日は、この会話から始まっている。
「今SNSを見たらとある有名人で話題を呼んでいるじゃない。いわゆる、炎上?」
今はパリ五輪の開催中。
世界中が熱狂の渦に巻き込まれているのだが、日本人の金メダル獲得が芳しくないのだろうか。
時間稼ぎか何かで、とある芸人が炎上していた。
ざっと目を流してみたが、割とどうでもよいネタで炎上している。
もちろん、彼女はネットリテラシーが高いので、そんなことは呟かない。
金魚鉢の水槽をみるような目で静観しては、このように雑談の蝶よ花よとしているのだ。
学タブの画面をONにし、見せた。
「ここなんだけどね」
どれどれ、と覗き込む祖父。
老眼鏡の黒いものを上げた。目玉ごと、くいと。
「この謝罪文、末尾に別の芸人を出してるの。○○さんと××さんは関係していませんって。わたし、炎上の経緯を追ってないからよく分からないけど、どうしてかなって」
「まあ、またポロっと書いただけだろう」
電子機器から目を離し、新聞記事に戻る。
「脇が甘いな、何歳なんだ。その厚化粧は」
「うーん、推定30代前半……年齢未公開だけど」
「五年も経てば山婆確定だな。復帰できた芸人の、あの老け顔を思い出す」
祖父はこの通り、毒舌家である。
きっとお嬢様が突撃する前でも、新聞記事についてボロクソに吐いていただろう。でも、
「気になるよ。だって突然出てきたから。見直しとかしないの? こんなところに書いたら、ツッコまれるって。まるで何か、救援メッセージでも投げかけてるんじゃ……」
「それを考えたら思うつぼだぞ」
新聞でも広げながら適当なことをあれこれと呟いた。
「あれでも裏でいろいろとあったんだろう。SNSの連中はSNSのことだけがすべてだととらえがちだが、表があれば裏もある。表の情報だけがすべてじゃない」
「じゃあ、どうしてメラちゃんは、裏の情報を出してきたの?」
メラちゃんというのが件の炎上の人物である。詳細は伏せるが、文字通りめらめらと燃えてしまったのである。
「そのまま表向きの謝罪をして、裏のことは秘密にしてしまえばいいのに…」
「それは300万人のフォロワーが納得しちゃくれんだろう。
ものすごいインフルエンサーだったんだろう? インフルエンサーとは、私にはわからん職業だが、個人経営、信用取引みたいなものだな。ハイリスクハイリターン。普通の人は保険をかけて防御するが、その人は慢心したかで掛けていなかった。おそらく一人っ子のようなものだ」
「一人…、孤独?」
「子供ならその語句が類語になるが、大人になれば自己判断、自己責任。今まではフォロワーが多いということで目をつぶってもらっていた部分もあった。
それが『キャラ』だということで、売名なりマーケティングなりをして数字や金を得た部分もあった」
「CMとか教科書に掲載される予定だって書いてあったよ。それらも今は白紙に戻ったみたいだけど」
「教科書に載るような人物が、冗談でも言っていけないことを呟いたから、とSNSの連中は糾弾するだろう」
「ラジオのパーソナリティも降板されるみたい。『他者を尊重しない誹謗中傷する行為は決して認めることができない』だって」
彼女はふっと、嘆息した。
「やっぱり、干されちゃうのかな」
「SNSの連中も飽きないな。毎度展開が一緒だ」
新聞をたたむ大げさな紙の音。
しかし、書斎内までで熱帯夜の廊下には遠く及ばず、すぐに音は止んだ。音まで一緒に畳まれる。
「SNSの温暖化だ」
「あっ、なんかそれいい! ねぇ、自由研究のテーマにしていい?」
「なんだ、指だけでなく心も火傷したいのか。将来不登校になりそうで、心配になるな」
「それが学生にとっての〝干される〟になるのかな?」
わたしは
長女だ。
大人になった今
両親から
大事にされてきたこと
は
よく分かっている。
愛情をもって
育ててくれたし
何かあると
心配してくれたし
やりたいことは
やらせてくれたし
お金も
かけてくれた。
でも
子供の頃は
過保護だなぁ
と思ってたし
友人は
もう少し
両親が
自由にさせてくれて
あんなふうに
ほっといて欲しい
と思ったことは
たくさんある。
家族って
子育てって
ムズカシイ。
#蝶よ花よ
16.蝶よ花よ だいやち
前回のあらすじ!
かくかくしかじかのまるまるうまうまでしばらくの間私の住んでいる部屋で主将と2人、ひとつ屋根の下で生活することになってしまったのだ!
ただし前回なんてものは無い!
(そんなこんなで主将と一緒に生活ことになっちゃったけど上手くやっていけるかな……主に私が)
谷地はお風呂に入りながら頭を抱えていた。別に主将が悪い人というわけではなく、他人と2人で生活することが不安なのだ。
谷地がどんなに気を落とそうが世界はいつも通り動き続けてゆく。谷地がお風呂からあがれば1人うなだれている訳にもいかず、朝が来れば学校にも行かないといけないのだ。
人生ほんとに諸行無常と言うかなんというか……。
そんなことをうだうだ考えていると段々のぼせてきた。もうそろそろお風呂からあがらないと主将にも心配させてしまうだろう。
ええい、ままよ!これ以上考えていても何もなさそうだし、申し訳ないけどあとは主将に丸投げしてしまおう。
そう心に決めたまま谷地はリビングのドアに手をかけた。が、やはりリビングに入るのは躊躇われてしまい、そのまま動くことができなくなってしまった。
数秒、はたまた数分後。体感的には数時間が経った頃谷地からは力を加えていないのにドアが開いた。
「うおっ!」
「ひょえっ!?」
突然上から降ってきた声に驚いて谷地は変な声をあげてしまった。
「谷地さんか。どうかしたか?」
「い、いえ!大丈夫であります!」
慌てて上を向くと少し困ったように微笑んでいる主将と目が合った。
「ほら、取り敢えず入りなよ」
「は、はひ」
あまり客人である主将を困らせる訳にも行かないので一旦リビングに入った。そして動揺を悟られないようにリビングにくっついているキッチンに行き水を飲む。頭を冷やすのはコップ一杯の水には荷が重かったようだ。
主将の分の麦茶をコップに注ぎ、主将の座っているソファの前にある机に置いた。
「麦茶わざわざありがとう。あー、あとすまんな。こんなことになって」
「いいいいえいえいえ。そんな、主将が謝ることじゃないですから」
主将とは反対側のソファに腰かけ下を向いていた私が返答しながら顔を上げると短パンにシャツ1枚とかなりラフな格好をした主将が居た。
その格好は男の人に慣れていない私にとっては目に毒というか……。
「にしても谷地さんの服可愛いな。とても似合ってるよ。あと掃除とかものの整理とか谷地さんがやってるんだろ?部屋、すごい綺麗だよな。なんというか大事に育てられたんだろうなぁ」
どこを見ればいいのか分からず視線が迷子になっている谷地に気付いていない主将は次々と爆弾を落としてくる。
その発言は男の人に慣れていない私には(ry
次回予告!
そんなこんなで始まった主将との同居生活!本当に最序盤から限界ギリギリ!これからの生活、どうなっちゃうの〜?
オチなんかないよ。続きもないよ。
蝶よ花よ
中世ヨーロッパ時代において
ある少女がおりました。
『武芸は芸術です。』
『そして血も生まれてからずっと持つ血でもあります』
ある少女は、1番権力を持つ有力貴族出身だった。
そして、血を見る為に、少女は、女性を殺害した。
メイドが少女が大人の女性を殺害するところを目撃し
『だ………誰かぁ⁉︎』
若いメイドも少女によって殺害された。
まるで、少女は、ブラッディメアリー
(血まみれのメアリー)とも呼ばれる
メアリースチュアート
血の伯爵夫人とも呼ばれる
エルザベートバートリみたいだ。
『私の血ダァ………血だ』
少女は生まれながらに持つ血を知らない。
血ダァ
血ダァ
狂う少女は、人を殺害することに楽しみを感じる。
まるで少女は、吸血鬼、ヴァンパイア のようだ。
『血って、こんなに美味しいんだ⁉︎』
鉄の味がする血にとっては、少女は、血の味が、
甘い苺の味がするらしい。
屋敷に仕えていた人たちは、処刑されてもかなわない。と、裏切り、その人が捕まり斬首で処刑されたり、自ら処刑されても構わない。と、死刑を望んだ執事、メイドたちも。そして、死に去った。
残った少女の家族は、庭に突き出して
厳しく少女にキツくあたった
『何してるの!貴方が今、していることは、殺害なのよ!』
『………ふふ………あなたの血が欲しいの…』
ブチュッッ
少女は、罪がない
あたった母親から先に、刀で腹を刺して
父、姉たちをも殺害した。
『血がドンドン出てくる………』
少女は、庭で家族全員を殺害して庭が血で赤くなる光景を楽しむ
そして…
『血ってこんなに美味しいんだね』
屋敷の庭が血だらけの庭で
赤い蝶と、血で赤く染まった花
『血………もっと、ちょうだい………』
(夏なので、寒くなるような少しホラーを入れました)
モデルは、エルザベートバートリと、
ヒロアカのトガヒミコ
蝶よ花よ
蝶よ花よと育てたが、それが正しかったのか分からない。全ては結果であってどんな育てかたでも全ては結果なのかなと感じてしまう。過程が大事と言うけれど自己満だったのかも。あの子をみてそう思った。
蝶よ花よ…
そんな育てられ方されなかったしな…
そんな育て方もしなかったしな…
(蝶よ花よ)
蝶よ花よ
「ママ、いつまでも元気でいてよ。」
常連のハンチング帽がお似合いの、仁さんがお会計を済ませて帰り際、カウンターの和代ママに声をかけた。
駅前からちょっと裏道に逸れた場所にスナックを構えてもう30数年、客足が絶えないのはひとえにママの人柄だと皆口を揃えて言う。
「私なんてね、この土地に流れ着いた正体不明の怪物なのよ〜。」とガハハと笑う豪快な様も、大柄な体型にマッチしていて可愛らしくて憎めない。
初見のお客様には、オーダーが入る前にキンキンに冷えた生ビールや、角ハイボール、焼酎の梅割り、レモンサワー、時には山崎のロック…お客様もびっくりする位、今日の気分のお酒が一杯目になる。
もう、占い師も心理学者も敵わない。神業だ。
ママは決まって、「何か、そういう顔して入ってらしたから。」「ヤマ勘!ヤマ勘!当たったからママにも一杯サービスしてね〜。」とおねだりも忘れない。
ただ、おつまみに関しては決して充実しているとは言えないが、ママが気まぐれに急に作リ出す焼きそばや、キャベツと卵だけのお好み焼き風のそれや、じゃがいもの明太子炒めなんかも、イレギュラーだから、それにありつけた日のお客様は皆、飼い慣らされたワンちゃんよろしく嬉しそうに頬張る。
「私はお料理が苦手だから、男の人はみんな愛想つかして逃げちゃうのよね〜。やっぱりいい女ってみんな料理上手!真逆よ〜。」
「ママ俺、料理上手だから通ってあげるよ~。」
なんて冗談とも本気ともとれる、トラック運転手の城さんには、急に真顔になって
「わたし、もう男はこりごり…ひとりが一番。」
「こんな私でも、子供の頃は蝶よ花よで甘やかされてワガママ娘で大変だった頃もあったのよ〜懐かしいわ~。」
と、お客様がついでくれたサッポロ黒ラベルの冷えたビールのグラスを呑み干すママは、どこか寂し気に見えたりもする。
そんな時ママは決まって大好きな煙草を燻らせて、「煙くない?ごめんね〜、やっぱりハイライトはやめられないわ~。」
そして、「禁煙なんてクソ喰らえ!あ、健ちゃん禁煙中だったわね!失礼〜。うちのお店では煙はお酒のスパイスだと思ってね〜ヨロシク♡」
と、お茶目にウインクをするママは、ヘビースモーカーの怪物だけど、やっぱり憎めない。
目を閉じれば思い出す。
あなたが初めて「生きている」と叫んだ声を。
あなたが初めて自分の足で歩いたのを。
あなたが初めて友達を家に呼んだのを。
あなたが初めて喧嘩をしたのを。
あなたが初めてテストで100点を取ったのを。
あなたが初めて挫折したのを。
あなたが初めて好きな人を連れてきたのを。
あなたが初めて新たな命を抱えたのを。
「お母さん!」
どうしてないているの?私は昔から、あなたの笑った顔が好きよ。
私の大事な大事な宝物。蝶よりも花よりも愛しい私の子。
命が散る。
2024/08/09 #蝶よ花よ
蝶よ花よ(足掻いても敵わない)
もう疲れた、俺は疲れた。
早く夏休み終わってくんねーかなあ。
年の離れた双子の世話を、毎日朝から晩まで見るのはしんどい以外の何物でもない。
始めは親から押し付けられて渋々面倒を見ていたが、そのうち双子どもは何もなくても俺に相手をしろと宣うようになっていた。
………しんどい。実にしんどい。
「にいに遊ぼ。なわとび」
「こんな炎天下で縄跳びしたら死ぬよ。いいの?」
「にいに遊ぼ。すけぼー」
「だから外は無理なの。焼け焦げて息絶えるから」
こんっな真夏の最高気温叩き出してる太陽を見て、どうしたらそんなにアクティブになれるんだ? しおらしくお絵描きでもしてりゃ可愛げもあるってのに。
―――俺はソファに寝そべって棒アイスを齧りながら、双子の催促を適当にあしらう。
「にいにが遊んでくれない」
「くれない」
唐突に悲しげに沈む、今にも泣き出しそうなその表情。
俺はそれに敏感に反応すると、慣れた手つきで掌をひらひらと振った。
「ざーんねん、その手には乗らねーよ。お前らの泣き落としなんぞこちとら見飽きてんの。無駄な足掻きはヤメなさい」
「「む」」
双子の表情一転、可愛いお目々の眉間にシワが刻まれる。
「にいにそんなこと言っていーの!?」
「けっ、何とでも言いやがれ」
全く動く気のない兄に、わあわあと一頻り騒ぎむくれた後。
―――彼女らはぼそりと悪魔の一言を言い放った。
「………花火のときのあの女の子に言いつけてやる」
!!
―――俺は働かない脳を無理矢理起こし、一瞬にして計算する。
・こいつらと彼女は顔見知り →
・夏祭りでだいぶ距離が縮まった →
・仲違いしてしょーもない悪口を吹き込まれる →
・俺の心象が悪くなる ←ここに行き着くこと必須!
「………。縄跳びとスケボーするぞ。用意して来い!」
「「やったー!!」」
―――かくして今日もめでたく俺は双子の奴隷に成り下がり、意中の彼女の心を掴むため涙ぐましい努力に励むのだった。
END.
蝶よ花よ
最近、何か、あれもこれもしようとして、焦りすぎてる気がする。
もう少し、落ち着いて、ゆっくり一つ一つ丁寧に、沢山かかえこまずやっていかないと。
今年の春から、好きな仕事につけて、うれしくて、あれもこれも頑張ろうとする。
仕事も家事もバランス良くやっていかないと。
言葉の使い方は、全然違うが、蝶よ~花よ~と、お花畑で無邪気に走ってる自分でも想像しながら、1度、頭の中をゆったり整えないといけないと感じる今日この頃です。
「蝶よ花よ
私はあなた方のように美しくなりたいのです。
その姿がどれよりも1番輝いていて
美しいものに見えるから、。」
と願って悲しんでも
あなたがその姿かたちで生まれたのは
この世の他に比べるものなどないくらい
素晴らしいことだ。
『置かれた場所で咲きなさい』
と言う言葉があるように
他の者の様になりたいと、ひねくれて育つよりも
貴方自身の容姿や性格など
貴方にしかない人間性を大切にし生きる事は
どれだけ価値があり美しい行為だろうか。
《蝶よ花よ》
あの少女を闇に魅入られし者として監視を始めてから、それなりの期間が経った。
そこで、彼女の人物像を整理してみようとその行動を呼び起こしてみる。
普段は、主に読書をしている。内容は過去の帝国の記録から、他国の叙事詩や伝説、果ては図鑑や幻想物語、絵本まで多岐に渡る。
基本的に好きだから読んでいるのだろうが、それなりに教育を受けてはいると推察される。
僕の執務が一段落している時などは、歌を口ずさんだりもしている。
美しいが、聞いたこともないメロディに全く知識にない言語の物もあった。どこの歌なのか聞いても、はぐらかされてしまう。
話すことも好きなようで、話しかけると笑顔で受け答えをする。
時折出てくる何気ない話題も、交わしていて心が休まる事が多い。微笑みを絶やさずにいるのも大きいだろう。
ここまでの印象ならば、多少の疑問はあれど彼女は蝶よ花よと大事に育てられたかにも感じられる。
しかし、だ。
飼い主以外に心を開いていない余所の猫に対し、爪を立てられても変わらず愛情を示し、抱き止めようとさえする。
集団でいじめを行う女性達に、味方もいない単独の状態で正論を堂々と言い返す。
あまつさえ、彼女を使い僕を脅そうとした相手を、自分を餌に取り押さえようと言い出し作戦を立て、実行してしまう。
このような、時折垣間見せる突拍子も無い行動に度肝を抜かれる事もあった。
この一連の出来事で、彼女への蝶よ花よの印象は完全に霧散…いや、四散した。
何と言うか、自分の身を顧みない無茶をするタイプのようだ。見ていて非常に危なっかしい。
そんな人だが、彼女の口癖は「すみません」「ごめんなさい」だ。
ほんの少しの事を頼む時ですら、この口癖が出るくらいだ。無意識の負い目が出ているのだろうか。
…それとも、語られぬ本人の人生がそうさせているのか。
何にしても、彼女の本質は今ひとつ掴み切れていない。
が、思案を整理すればするほど強く蘇る。
帝国に来て間も無い満月の夜、耳にした彼女の独白。
僕に、命を預けると。
裁かれるなら、僕に引き金を引いてほしいと。
それには儚げな雰囲気と共に、彼女の強い覚悟が感じ取れた。
そして、彼女と初めて出会ったあの時。僕はかつての旅の仲間と言い争った。
仲間は彼女を、自分の心に住み共に旅をした者だと紹介した。
だが、僕は彼女の髪と瞳の色を見て強い疑念を抱いた。それは、闇に魅入られし者の色ではないのかと。
その疑念を切っ掛けに始まった仲間との口論に終止符を打ったのは、僕と仲間の間に割って入った彼女だった。
彼女は腕を精一杯に広げ、小さな背を僕に向け、仲間から僕を守っていた。
彼女に疑念を向けた僕を、だ。
その時の彼女の表情は見えなかったが、背を向けたまま「…いいの。」と呟いた彼女を見ていた仲間の顔は、愁傷に満ちていた。
それも含めて今思えば、彼女の行動はとても演技などとは思えない。
僕は、信じたくなっているのか。
彼女の行動が、全て本心からであると。
…僕も随分と緩んだものだ。
今、世界は邪神による災厄からの復興に明け暮れている。
邪神を倒す旅に参加していた僕は帝国の復興を導く者として持ち上げられ、今も我武者羅に奔走している。
それを妨げられるわけにはいかない。僕の判断に左右されるならば、尚更だ。
もしも彼女が本当に闇に魅入られし者ならば、僕自身が潔く引き金を引こう。
その時涙と悲しみが溢れたならば、それも潔く飲み込もう。
これが僕の現在の判断への、責任と覚悟だと肝に銘じて。
蝶よ花よ
私は小さい頃から綺麗な花が大好きだ
そこにトッピングかのように飛んでいる蝶をみるのはさらに好きだ
心が洗われるという感覚が1番身近に感じられる
蝶よ花よこれからも咲き誇れ
『可愛いね』
私には、意地悪な母と姉、そしてそいつらに意地悪されてる妹がいる。姉と母と私がパーティーに行っている間、妹は洗濯や掃除、花の水やりをやっている。私が妹もパーティーに連れて行こうとか、家事をみんなでやることにするとか、言ったけど聞いてくれなかった。妹は亡くなった父の連れ子だから、可愛がりたくないそうだ。私は、妹とはこっそり仲良くするようにした。
親戚同士でのお茶会(マウントの取り合い)があった。やっぱり妹は連れて行ってもらえなかった。母が私達を紹介する時、「上の子と下の子と、家に家政婦がいます。」と。イラッ 妹は家政婦じゃない。顔が引き攣る。親戚は中身のない会話で時間を溶かす。姉と私は、「可愛いね~」「美人さん」と褒められた。生ぬるい声が気持ち悪かった。イライラが爆発する寸前にお茶会はお開きとなった。夜、妹がお茶会の話を聞きたいと言った。全然聞いてなかったから、いかにも楽しげな話を捏造した。母が言っていた事は墓場まで持って行く。
今度はお城でパーティーだ。王子様が結婚相手を見つけたいそうだ。やはり妹は連れて行ってもらえない。王子は、興味ないのか面倒臭いのか、全員に「可愛い」と言っていた。だが、急に足を止めてどこかを見つめた。視線の先には…妹が。王子は駆け寄っていった。3分ほど話して、妹は立ち去って行った。王子は追いかけようとするが、女に囲まれてしまう。私の頭は疑問で埋め尽された。「なぜ、妹がいるのか」「どうやって来たのか」「なぜ、王子が駆け寄ったのか」「何を話していたのか」「なぜ妹はすぐに立ち去ったのか」考えても仕方ない。妹に聞くことにした。だが、帰った時、妹があまりにも平然としていて、夢だったのかと思った。聞くにも聞けず、モヤモヤが残った。
一週間後、朝起きたら妹が失踪した。私は家を飛び出して探した。何度も何度も名前を呼んだ。辺りが暗くなってきた。その晩、私の部屋に伝書鳩が入って来た。手紙を読むと、「お姉ちゃんへ 私はパーティーで出会った王子と結婚することになりました。私はお姉ちゃんが大好きだからお城に招待します。これから仲良く一緒に暮らそうね。 お母さん達は招待してないので気をつけてね。」という内容だった。私は嬉し涙がちょっと出た。夜の内に家を出て行こう。
こうして私と妹は、お城で幸せに暮らした。王子から、ベタ褒めされてる妹を見ると微笑ましくなる。私もシェフから猛アタックを受けていて舞い上がっている。小さい頃たくさんの人から言われた「可愛いね」より、今大切な人から言われた「可愛いね」の方がずっと嬉しい。妹とお茶を飲みながら、そんなこと考えた。あ、花に蝶がとまった。今日はいいことありそう。