『秋恋』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
小説「秋恋」
今日夢を見た、何年も片思いしていた人と話す夢。私は真っ赤になって上手く話せなかったけど幸せでした。
ウンザリするほど暑い夏、気温がだんだん下がってきてようやく秋が来たと安心していますが、お元気ですか?
もう諦めてしまった気持ちだけど、楽しかった日々や幸せな気持ちは私の中で大切な宝物です。
あなたがずっと幸せでありますように。
秋になると『君』を探す
普段は読まない小説を
読書の秋のせいか読みたくなる
だから今年の秋も恋をする
小説の中に現れる『君』に
筆者のイメージの『君』とは別に
私のイメージで『君』をつくりあげる
実在しない人に恋をする
アニメとは違う想像の世界に住む『君』に
去年の『君』は服には疎いけど音楽センスは秀でる
実際に会って話してみたかった
そう思わせる人だった
秋になると『君』を探す
秋になると紅葉のように頬は染まる
【お題:秋恋 20240921】
「女心と秋の空ってやつなのかぁ」
『いや、ただ単に先輩がうざくなっただけなんじゃないかな?』
なんて事は、口が裂けても言えない。
そんな悲しいサラリーマンな俺は、三連休の初日の夜、会社の先輩に呼び出された居酒屋でだし巻き玉子をつついている。
うん、この大根おろしがあるのと無いのでは味が全然違うよな。
「おい、宝条、聞いてるのか?」
「聞いてますよ、横溝先輩。俺は彼女さんと会ったことがないので分かりませんが、先輩にはもっとお似合いの人がいますよ」
「そうか、本当にそう思うか?」
「はい。だって先輩はできる男じゃないですか。先輩くらい仕事が出来る男の人を放っておく女性なんていませんって!」
「いやぁ、まぁ、そうだよな」
「はい、ですから今日はもっと飲みましょう!」
そして早く潰れてほしい。
「あ、すみません。この日本酒とこの焼酎、それと軟骨の唐揚げにホッケをお願いします。あ、ホッケに大根おろしは付いてます?無ければつけてもらうことは⋯あ、はい、お願いします。あとおでん皿も」
えーと、確か付き合い始めたのはゴールデンウィーク前で、今が9月だから5ヶ月位か。
今回も半年持たなかったか。
まぁ、そうだよな、正直俺でも嫌だもんな。
朝起きたらおはよう連絡、昼は何食べたとか、夜は夜で寝る直前まで通話だっけ?
んで週末はお泊まりで休みはデート三昧、時には旅行。
まぁ、デートも旅行も費用は先輩持ちだけどさ、それこそ付き合い始めはいいんだろうけど、そのうちうざくなってくるよな、自分の時間が取れないってのもあるし。
3ヶ月もすればお腹いっぱいになって、この先ずっとこのままなのかって考えたら、そりゃ逃げたくもなるって。
悪い人じゃないんだけど、寧ろ良い人なんだけど、何でか恋愛関係だけは重すぎるんだよな、先輩って。
あー、もしかしたら相手は日本人じゃない方がいいのかもしれないなぁ。
「宝条ぉ、俺の何がダメなんだァ」
う、何て言ったらいいんだ⋯⋯。
あ、そうだ!
「先輩、秋に始まる恋ってのは長続きするらしいですよ。秋恋ってやつです」
「ん?何で秋恋は長続きするんだ?」
「秋って肌寒くなって人肌が恋しくなるじゃないですか。それに、クリスマスにお正月、バレンタインデーにホワイトデーとイベントが盛りだくさんですし。秋は食欲、読書、芸術、スポーツと色々とできます。それに紅葉を見に温泉旅行なんてのも最高です!」
「⋯⋯温泉か、良いな温泉⋯⋯⋯」
そう呟いてスマホを弄り始めた先輩を他所に、俺は運ばれてきたおでんの大根を頬張る。
この味の染みた大根が、最高に美味い。
「なぁ、宝条。お前、おすすめの宿とかある?」
「おすすめ?⋯⋯先輩、俺、彼女いない歴=年齢ですけど?」
「いや、ほら。友達ととか家族旅行でとかあるだろ」
「三連休の初日に先輩から誘われてすぐ居酒屋に来れるくらい友達いない暇人ですし、うち、俺が5歳の時に両親離婚して貧乏だったので、家族旅行とか行ったことないんです。先輩の方が色々な所知ってるんじゃないんですか?」
「俺、兄弟6人の大家族でさ、家族旅行は大抵キャンプだったんだよ。まぁ、キャンプは楽しいから良かったんだけど、ホテルとか旅館とか、家族旅行で使ったことなくて」
「え、でも今までの彼女さんと行った所とか」
「また別れそうで嫌じゃん」
「あ、あー、デスネ」
どこかって言われてもなぁ⋯⋯うーん。
あ、ホッケ美味い。
一人暮らしだと魚とかあんまり焼かないからな、こういう時に食べるに限る。
あー、そうだ、あれならいいんじゃないか?
「先輩、グランピングとかどうです?紅葉見て、温泉入って、星空を見る。最高じゃないですか」
「グランピングか、いいな、ソレ」
ツイツイとまたスマホを弄り出した先輩は、どことなく楽しそうだ。
さっきまでの嘆きは何処へやら、だ。
ただ、何となくだけど先輩の愛の重い理由がわかってきた気がする。
「先輩って長男ですか?」
「あぁ、そうだぞ」
「ご兄弟と年は離れてたりします?」
「うん?なんでわかるんだ?えーとな、すぐ下がお前と同い年の5歳離れた妹、その一つ下に双子の弟、それから双子の3つ下に弟で、一番下が今度12離れた妹だ」
「なるほど。賑やかそうですね」
「まぁな。静かなのは寝ている時くらいで、それ以外はずーっと煩かったな。っと、良いグランピング施設見つけたぞ。来月に予約入れた」
「え、早っ、って、先輩一緒に行く相手は?」
「大丈夫、来週にはいるはずだ」
「⋯⋯ソウデスネ」
くっ、リア充め⋯⋯。
いや、充実しているようでしていないのか、この人。
「あー、横溝先輩」
「うん?」
頼んだ日本酒を飲みながら、先輩はホッケをつついでいる。
俺と同じく幸せそうな顔をしているところを見ると、先輩も焼き魚はしない方の人間なのだろう。
「犬、飼ってみたらいいんじゃないですか?」
「犬?」
「先輩のところのマンション、ペットOKでしたよね?」
「まぁ、そうだけど」
「夫婦仲をとり持つのが子供だって言うなら、恋人同士の仲をとり持つのはペットじゃないかと思いまして」
「⋯⋯なるほど」
先輩の愛の重さは寂しさから来てるんだと思ったんだ。
だから愛を向ける先を分散すればいいんじゃないかっていう、発想だったんだが、まさかあんなことになるとは、想像もしなかった。
とりあえずその日は、俺もだいぶ飲んで先輩の家に泊まることになった。
でっかいキングサイズのベッドに男二人で寝るとか、どんな罰ゲームだ!とか思ったけど、寝心地があまりにも良すぎてあっという間に夢の世界に引きずり込まれてしまった。
翌朝がっちり先輩にホールドされた状態で目覚めた時は、地獄かと思ったけれど。
尚、先輩は俺の助言通り犬を飼い始めた。
1匹から始まり2年経った頃には3匹に増えていて、ついには犬の為にと広い庭付きの一戸建てを購入してしまった。
因みにその間、彼女はできておらず、同じく彼女のいない俺が時折呼び出され犬たちと一緒に旅行に行く羽目になっていた。
うん、先輩の愛が重いのは寂しいからじゃなかった、元から愛が重いだけだった。
俺は最近、近所の神社でのお祈りが朝の日課になっている。
「早く彼女ができますように⋯⋯」
俺でも先輩でもどちらでもいいから。
じゃないと社内の女子の間に流れている、俺と先輩のただならぬ関係の噂が広がる一方だ。
━━━━━━━━━
(´-ι_-`) 秋恋なんて初めて知ったよ⋯⋯。
「ねえ未来、知ってる? 秋に始まった恋は長続きするんですって」
「ほーん。なんで?」
「ほら、秋から冬にかけてはイベントいっぱいあるじゃない。ハロウィンから始まってクリスマス、正月、バレンタインホワイトデー……。あ、クリスマスは未来の誕生日もあるし!」
「せやね」
「だから彼女を作るならそろそろいい時期じゃない? イベントもそうだし、これから涼しくなってお出かけもしやすくなるし、秋はご飯が美味しい季節でもあるし……」
「そうね〜〜。でも俺、」
「アレルギーのことは心配しないで、未来の食べられないものはバッチリ把握してるから。甲殻類と桃、梨、バナナあたりでしょ。だったらきのこ狩りとかいいと思うの! 綺麗な紅葉を見ながら空気の美味しいところできのこを採って、帰ったら炊き込みご飯にするの! ねえ素敵じゃない?」
「お、おう。イイトオモイマス」
「私もちょうど彼氏と一緒にきのこ狩り行きたいな〜って思ってたの。ほんっと、いま告白してくれたら絶対オッケーしちゃうんだけどな〜〜。本当に、いま、告白してくれたら、絶対に、100%、オッケーしちゃうんだけどな〜〜。そういう人いないかな〜〜〜〜」
「(視線が超怖い……)」
「サトル先輩、あのふたりはなにをやってるんです? キキ先輩がむっちゃジンゴ先輩に迫ってるように見えますけど」
「いい質問です、カイくん。あれは彩樫高等学校3年生名物、あるいは七不思議のひとつ、『ヘタレと両片思いをこじらせすぎて一向に進展しないアホカップル』です。あのふたりは誰がどう見ても両思いなのになぜかお互い告白を渋り、実質付き合ってるようなもんなのに互いに付き合っていないと言い張る謎な関係をかれこれ3年は続けています。3年。アホかよ周りの身にもなれ」
「キキ先輩のあれはもう告白じゃないですか」
「そう思うじゃないですか。どっこい、本人たちは告ってないって言うんですよね〜〜」
「謎ですね〜」
「ホント謎〜」
「おーい、カイ、サトルー! エミも誘ってさー、来週みんなできのこ狩り行かね?」
「(これヘタに行ったらキキ先輩に埋められません? 大丈夫ですか?)」
「(さすがにそれはないですよ……たぶん)」
「(たぶんかあ〜)」
「ていうか……。エミさんが行くなら、僕も……」
「あ!! サトル先輩!! ずるい! 抜け駆け!! くそ、実質それダブルデートじゃないですか!!」
「んなことねーから。カイも行こーぜ」
「うふふ、そうよ。サトルとエミちゃんはともかく、私たちは付き合ってもいないから。付き合っても。いないから」
「(2回言った……)」
「せっかくだしカイくんも行きましょうよ。ちゃんと声かけますから」
「チクショウ!!! 哀れみの目を向けないでください!! みんな行くなら行きます!!!!」
出演:「サトルクエスチョン」より 白沢希喜(しろさわ きき)、仁吾未来(じんご みらい)、問間覚(といま さとる)、神宮開(じんぐう かい)
20240921.NO.58.「秋恋」
秋恋、なんて、綺麗に言い放った貴女は何処へ?
四季の三番目の秋には、似つかわしくない恋とは
私にとっては、どうでも良いと思っていたのに、
貴女がそれを言ってしまい、私の心がざわつく、
なんでか分からないが、何でも、良い感じがした
早く、お仕事終えたら一緒にティータイムにして
ゆっくりとお話を、しましょうよ。
貴女のお隣に居る女の子よりも、私の方が良い、
絶対に、あんなにも無邪気で自由奔放なあの子、
私の方が大人びて、何でも尽くせるし、可愛い、
何で貴女は、隣がいつまでも、
あの子で満足しているの?私には分かってない。
隣を早く退いてよ。私の場所を頂戴よ、魔女で、
良い私の方が良い……。魔法使いよりも……。
"Please realize that I am in love with you."
何を言っているか分からない顔をして、
私に手を振る少女を、見送ってお菓子を作りに
家に戻った。
翻訳(ブレがあるので記載します)
"貴女に恋い焦がれている事に気付いて下さい。"
秋恋
肌寒くなる季節
思い出すのは温かなあの日の思い出
優しく話を聞いてくれたあの人は今なにをしてるんだろう
秋心
痩せたい気持ちと裏腹に
食事が止まらぬ秋心
秋は好き
食べ物が美味しいから。
私の秋は食欲の秋。
読書もスポーツも芸術にも
私はあんまり興味がない。
美味しいものを食べれるのが私の幸せ。
そう思っていたんだけどな。
今年はそうじゃないみたい。
本を読む君の横顔
ページを捲る長い指を見ていたら
なんだか胸がつっかえて
食欲なんてどこかに行ってしまった。
#秋恋
「『恋』+『愛』で合計8回目のお題なんよ……」
このアプリ、今年3月からのカウントなら、エモと空ネタと恋愛ネタで3割4割は成り立ってる説。
某所在住物書きは「秋恋」の進出単語に首を傾け、なんだそれはとネット検索を開始した。
そういうタイトルの歌があるらしい。
「初恋も、本気の恋も、失恋の恋物語も書いた。愛があれば云々ってお題もあった。ラブロマンスはエモネタ以上に不得意だ。その俺に、何書けって……?」
書いて、消して、また書いて消して。
何度も物語を組み直すが、己の納得のいく話がさっぱり出てこない。
ひとまず、何か投稿しよう。物書きはネタの枯渇に敗北し、ともかく今書けるものを書き始めた。
前回も前回であった。去年通りなら「次とその次のお題」も高難度のお題である。
――――――
今日も東京は相変わらず、9月下旬なのに暑くて雨降って、ムシムシしてて、
まるで梅雨明け前かその真っ只中みたいな状況。
季節通りの平常運転してるのは、新米と季節物の野菜に果物にスイーツと、あと来月に向けたハロウィンキャンペーンくらい。
お魚はよく分からない。ひとまず鮮魚コーナーにサンマが増えた気がするのは事実。
で。「季節物のスイーツ」だ。
栗だ。サツマイモだ。多分カボチャもギリ圏内だ。
おお、モンブランよ、スイートポテトよ。
私の愛しく恋しい秋の甘味たちよ。
今年はスイーツビュッフェでお目にかかります。
「やー、ホント助かった!ありがと」
貸しスペースに、今の時期だけ現れるスイーツビュッフェ専門店がありまして。
今年の3月から一緒の支店で仕事してる付烏月さん、ツウキさんと一緒に来店。
野郎な付烏月さんはお菓子作りが最近のトレンド。
『予約受け付け開始からこのビュッフェに目は付けてたんだけど、野郎ひとりじゃなかなか』って、来れずにいたらしい。
そこに私が声をかけたワケだ。「行こうよ」って。
なお付烏月さんより仕事上の付き合いが長い藤森先輩は「先約がある」ってことでパスされた。
1日150gくらいしか糖質を欲しがらない先輩だから、低糖質系でもないとなかなか捕まらない。
しゃーない。
「見て見て。ちゅら恋紅と紅はるかのプチケーキ」
紫と琥珀色のハロウィンカラーは、冷やされたカップに詰められて涼しそう。
「恋だって。どんな名付け物語があったんだろ」
『濃い味』と『恋味』でもかけたのかな。
そう付け足して、付烏月さんはぺろり、ふたくちサイズのそれを舌にのせて、堪能して、胃袋に収めて。幸福そうに笑った。
「そういえば付烏月さん。脳科学詳しいよね」
「詳しいってゆーか、図書館勤務時代に本読んだだけの、付け焼き刃の独学ね」
「ちゅら『恋』紅で、思い出したの」
「はいはい」
「付烏月さん昔バチクソ恋したひとが居て理詰めで秋にプロポーズして秒でフられたってホント?」
「ぶふっ、……ゲホッゲホッ!!」
「秋にプロポーズしたって、なんか脳科学的な根拠とかあったりするの?『秋の恋は』ってやつ?」
「どっから聞いたのそんなハナシ?!」
「私の質問に先に答えてくれたら話す」
はぁ。
ちゅら恋紅のプチケーキ、2個目をつまんで、付烏月さんが小さく首を振り、ため息をついた。
別に悪い思い出ではないみたい。イヤそうな雰囲気でもない。でも数年とか十数年とか、それくらい昔の懐かしそうな表情をしてた。
「ネットでは『秋は脳が恋をしたがる』とか、ホルモン的に秋に恋したがる』とか、言われてるね」
自分の「秋のプロポーズ」には言及せず、付烏月さんがプチケーキを食べながら言った。
「俺はそれの根拠になるハナシ、読んだことないし、それ系の論文漁ったこともないからなぁ」
なんとも言えないねー。
そう結ぶ付烏月さんはどうやら、少なくとも、「秋が恋や告白に適した季節だから」って理由で理詰めをしたワケでは、なさそうだった。
「いやそもそも、俺『実際にプロポーズしました』とも『恋人いました』とも言ってないからね?」
「ふーん」
「多分色々、誇張表現と誤解があるからね?」
「ふぅ〜〜ん」
秋恋
ずっと思い描いてたあと一歩が踏み出せなくて、迷ってた。
でも、チャンスは“今”しかないから伝えるね。
好きです。
《秋恋》
太陽が空の上にある時間がこれから短くなっていくという日。
空には、刷毛で白を撫でたような雲がたなびいている。
私は、一面に咲くコスモスの花の中でぼんやりと考えていた。
赤、白、桃、黄。そして葉の緑。とりどりの色が、風に吹かれてふわふわと揺れている。
宇宙、の名をもらった花。
宇宙の中に世界があるように、実はコスモスみたいに物凄くたくさんの世界があるのかな。
私の元いた世界とこの世界のように、絶対に交わらない世界、宇宙がたくさんあるのかな。
私はとんでもない偶然で、彼の世界に魂だけ辿り着けた。
ただ、髪と瞳の色はかつて闇に魅入られてその復活に力を貸した者とそっくりで。
その人は、闇から手を引いたら髪も瞳も元の色に戻っていた。
だからこそ、私は初めて出会った彼に疑われた。闇に魅入られた者だ、と。
それでも彼は、私を監視しながらも普通の人として扱ってくれる。
悪を許しはしないけれどその奥にそれ以上の優しさを持つ彼は、私が知っていたよりも芯が強く暖かい人で。
一緒にいるうちに、もう引き返せないくらいに心を奪われてしまった。
私、本当にこの世界にいていいのかな。
彼に闇の者として処されるのは構わない。けれど、疑われたまま嫌われて生きていくことになったらどうしよう。
私は心の重みに耐えかねて、コスモスの中に腰を下ろした。
長く伸びた茎の頂点で、ふわふわと揺れる花達。その隙間から見える、青い空とたなびく白い雲。
これも、秋の気配が呼ぶものなのかな。
空から刺す光の眩しさに目を細めると、目尻がほんの少しだけ湿る。
すると、離れたところからざわざわと通路にはみ出たコスモスをかき分ける音が。
その音は、徐々にこちらに近付いてきて、私のすぐ近くで止まった。
その方向に顔を見上げれば、不安そうな彼の顔。
どうしたのかと驚いて彼を見ていると、その顔はホッとしたような笑顔に包まれた。
秋の空と満開のコスモスを背負った彼は、優しい笑顔でそっと私に手を差し伸べてくれた。
ずっと先の事は、分からない。
それでも今、私はこの手を取っても許されるんだ。
私は私の出来る事をして、この想いを少しずつ未来へ繋げていこう。
この世界にいられる限り。
私はそう決心して、暖かい彼の手を取り立ち上がった。
深まる秋、僕はアナタに恋をした
いつものように、山を徘徊していると
舞い踊る銀杏と紅葉の中、共にくるくると踊る君に会い
一目で恋に落ちた
其れから、アナタが来る度に、僕は他愛ない話を話した
アナタも同じように、話しかけに来てくれた
其れから、年月は経ち、心を通わせ、
始めて、会った秋の日とよく似た秋の日に恋人になり
何十年も経った今日、
人だったアナタはこの世を去った
人にしては大往生で、たぶん幸せな人生だったと思う
知らせを風から受けた僕は
お葬式の会場ひっそりと行きながら
ある事をふと思い出す
あれは今から何十年も前、
恋人になってしばらく経った日の話だ
いつものように
銀杏の大木で他愛ない話をしていたときの記憶。
『この山ってネバーランドみたい』
そんな事を突然言うものだから、驚いて、
『ネバーランド?』、と思わず聞き返すと
『知らない?ピーターパンの話を
その世界の住人は永遠に年を取らないの』
『嗚呼、西洋の童話か…じゃあ君ははウェンディだね』
『え?』
『たしかウェンディは大人になっても
心から妖精を信じていた、だから
ティンカーベルの粉で飛べたんだろ?』
『だから、君もかわらずこの森に来られる』
そう伝えると、アナタは一瞬キョトンし
『私がウェンディかぁ、うれしい』
そう唄うように言うと子供のように笑っていた
そのことを鮮やかに思い出しながら
誰も居ない会場に着く
棺の中で眠るアナタを見つめる
その優しい寝顔を見つめながら
棺の縁に腰掛けて、そっと話しかける
「逝ってしまったんだね」
アナタの顔を見ながら、そう言うと
君とのかけがけのない優しい日々が
脳裏に鮮やかにまた蘇える
「悠久を生きる僕の記憶は人間とは違う」
想い出の中のアナタは、
春の桜の花弁を見たら、花の雨ね、と笑い
夏の藤を見たら、紫水晶の石細工よ、と感嘆の息をつき
秋の黄色い銀杏を見たら、小人の扇ね、と悪戯っぽく言い
冬の椿を見たら、綺麗ねと微笑みながら、こちらを見る
どの季節のアナタも生き生きとしていたけれど
一等、好きな秋になると、子供みたいにはしゃいでいた姿
紅葉と銀杏と一緒に躍るのが好きで
凄く我儘で、凄く泣き虫で、凄く優しい最愛の人
「君と出会った日も昨日のことと変わらない
全部、昨日のことのように思い出せる」
その柔らかい声も、その甘い匂いも、その暖かい温もりも
その優しい心も、全部、鮮明に覚えている
「…千年、いや万年先も、
たとえどれほどの刻が経とうと君を忘れない」
棺の中に手を伸ばし、
アナタの冷たく硬くなった頬にそっと触れた
途端、瞼の奥が熱くなり、ツンと鼻が痛くなる
其れでも、僕は涙を堪え、アナタを見つめる
「君と過ごしたすべての時間を」
そっと、白い花を、花梨の花を、
『唯一の恋』という言葉をもつ花をアナタの髪に飾りながら
震える声で、伝える
この言葉は、絶対に言わなくちゃいけない
だから、
「この長い寿命の最期の日までけして忘れることはない」
そこまで、言い切ると僕は、一旦、息を深く吸い
アナタの顔をに自分の顔を近づける
その拍子に目から溢れた涙で頬を濡らしながら、
ゆっくりと別れの言葉をアナタに言った
「さよなら、僕のウェンディ
僕が逝くまで、あっちで待っていてくれる?」
心なしか眠っているアナタが微笑んで頷いたような気がした
僕はあの秋の日にアナタに恋しました
秋恋
🍁彡🍁🍂(🍠•᎑•🍠)🍁彡🍁🍂
( ˘ω˘ 🫶)( ˘ω˘ 🫶)
このバーは純粋無雑で黒をテーマにしていた。
「マスター、やってる?」
「ようこそ、ご来光頂きました。閉店の時間なのですが少しだけなら構いませんよ」
「よっ、磊落だね」
そのお客は揺蕩いながら椅子に腰掛けた。
店のマスターはそれを見て、すでに聞こし召しているなと看取した。
その男は、「ビール、ビ、ビール」と注文を一再繰り返した。マスターは仕事に徹し、グラスにビールを鷹揚な動作で注いだ。
「マスター聞いてくれよ、俺の娘はさぁ、明眸だし、
頭もいいし、俺には勿体無いくらいの子供なんだよ。
だけど、頑固な所もあってさぁ、一旦こうと決めたら絶対に曲げないんだ。それは子供らしい、がんぜない行為じゃなくて、峻烈なまでの決意を持っていたんだ」男は涙ぐみながら話す。
男の背後には赤いリボンで髪を結んだ幼い女の子がいた。少女はその男の娘であった。そして椿事であるが少女は幽霊であった。少女は酔い潰れる男が心配で、成仏できないでいたのだ。男はそんな事も知らず、娘の話頭を続ける。
「体操の選手になるって言って、頑張ってたんだ。それが聞いた事もないような病気にかかって死んじゃった」と言いながら、懐から備忘録を取り出し、読み上げた。
「マスター、プロジェリアなんて病名知ってる?」
「存じ上げないです」
「もう生きてる意味なんてねぇんだ。暗闇をそぞろ歩いてるみたいなもんだ。マスター、強い酒をくれよ」
「それくらいにしといた方が、体に悪いですよ」
「おためごかしを言うんじゃねぇよ。俺みたいな客が面倒くさいんだろ?俺はさぁ、俺はさぁ」そう言ったまま男は慨嘆して泣き崩れてしまったので、マスターは接ぎ穂をなくした。
少女は父に話し掛けたかったが、霊体には金科玉条のルールがあって、例え肉親でも話しかける事は許されていない。もしそんな事をしたら、死神による宰領によって、話しかけられた者の魂が取られる。
少女は父に近づこうとし、霊力を強めてしまった。その力がテーブルに立て掛けてあったホウキを倒してしまう。
「ニャア」少女は思わず猫の声マネをしてしまい、そして後悔した。こんな所に猫がいるはずもない。
「何だ猫か」男は振り向きもせず、そう呟いた。
「ええ、赤いリボンをした可愛いらしい猫です。お客様にお酒をやめる様にと鳴いたのですよ」
マスターは優しい目を少女に方に向けた。少女は驚いた表情を浮かべた後、マスターに一揖する。
ここはバー「奇矯」不思議なことが起こる場所。
秋恋
私の名前は楓、生まれた日も10月まさに秋の女。
けど私が生まれたのは草木も山もない都会だ、だから私は紅葉を見た事がない。旅行にでも出かければいいけど親が年中無休で忙しいから行けない。せっかく名前が楓なのに紅葉を見た事ないのはものすごく損してると思う。そして、ある日学校の校外学習で京都に行くことになった。私にチャンスが舞い込んできた。京都、まさに紅葉の映える名所が山ほどある。この気を逃しては行けない。
――――しかし私は運悪く熱を出してしまった。
けど私は諦めが悪かった。熱が出ても行こうとした、ら両親にバレた。そのままベッドで寝かされた私は涙を流していた。両親は校外学習に行けないことを悲しんでいると思っている。でも違うの、私の名前は楓で生まれ月も10月で秋、それなのに、それなのに……私は紅葉を見たことがないんだよ。と泣きながら訴えると両親はびっくりした顔をしたかと思えば、2人は顔を見合せたあとそれじゃあ旅行に行こうと優しい笑顔で私の頭を撫でてくれた。そして土日に両親は土日に休みをとることにした。
父の運転で京都に向かった。着いたのは夜だった。
見えないかなと思っていると。スポットになっている所はオシャレに明かりが照らされていた。顔を上げた時、私の目に飛び込んできたのは幻想的な紅葉だった。その瞬間心がはねた。その後もドキドキした。こんな経験は初めてだった。私の名前の楓がこんなに綺麗だったなんて。まるで初恋の時と同じような感覚がした。
―――私は楓に恋をした。
定年して間もなく夫は重度の肝硬変が悪化し、肺に水が溜まるようになっていた。
夫はお酒を呑まない。「気の毒だが遺伝的なものだろう」と主治医は言っていた。
11月金沢に旅行に行く計画を立てていた矢先に、肝性脳症により意識が混濁、全身浮腫が強くなり入院となった。
身体を拭いてあげている時に、夫の睾丸が子どもの頭くらいに腫れており驚く。痛みは感じていないのか「悪いな」とだけ黄色みを帯びた顔で言った。
「金沢の美味しいお寿司食べたかったね。秋の兼六園も…」
「…ああ」
夫の眼は虚ろのまま宙を彷徨う。
抜き切ることの出来ない水が肺に溜まり末期の症状を迎える。酸素吸入は毎分6リットルを超えた。
主治医にはこれ以上の治療は必要無いことは事前に伝えてあり、とにかく楽にしてあげてほしいと伝えていた。
夫は無意識に酸素マスクを外そうとしてしまう為、手にはマグネットの拘束具を装着された。
麻薬性鎮痛薬を点滴によりゆっくりと流し入れる。
一瞬はっきりとした眼差しで「これは外せないのか」腕を見て言った。
私は出来るだけ冷静に「疲れたでしょ。ゆっくり眠って。眠ったら外してあげる」
「…そうか…」
夫は悟ったように、その後穏やかに眠り始めた。
私は、二度と握り返される事の無い手を握り続けた。
題:秋恋
**「秋恋。この声が届くまで」**
秋の風が、木々の葉を静かに揺らしながら、冷ややかな空気を運んでいた。夕日が西の空にゆっくりと沈み始め、朱色の光が街並みを染める。そんな夕暮れ時、千秋は学校の裏庭にある一本の大きな楓の木の下にいた。
楓の葉が紅く染まり始めるこの季節、千秋はいつもこの場所に足を運んでいた。それは、彼女が秘めた想いを胸に、いつかその声が届くことを夢見ているからだった。
数年前の夏、千秋は初めて彼と出会った。彼の名は湊。明るく、誰にでも優しい湊の姿に、千秋は次第に心を惹かれていった。しかし、千秋は内気で控えめな性格だったため、その想いを伝える勇気が持てなかった。いつも遠くから彼を見つめるだけの日々が続いていた。
「このままじゃ、何も変わらない…」
千秋は何度もそう自分に言い聞かせたが、言葉が喉元まで出ては消え、彼に向けた声は届かないままだった。
そして季節が秋に変わり、湊が転校することを知ったのは、まさに紅葉が深まる頃だった。千秋は、その知らせを聞いた時、何かが心の中で崩れ落ちる音を感じた。このままでは、彼がいなくなってしまう前に自分の想いを伝えることすらできない——そう思うと、彼女の心に焦りが募った。
ある日、千秋は思い切って、湊を学校の裏庭に呼び出すことを決意した。楓の木の下で、彼女は震える手で小さな手紙を握りしめていた。それは、彼に渡すための自分の気持ちを込めた言葉が詰まったものだった。
「湊くん、来てくれるかな…」
千秋は、沈みゆく夕日を見上げ、深い息を吐いた。そして、湊がいつかこの場所に来ることを願って待った。
日が完全に落ちる頃、足音が背後から聞こえてきた。振り返ると、そこには湊が立っていた。秋の冷たい風が二人の間を吹き抜ける中、千秋は心の中で言葉を繰り返した。
「湊くん、私…」
声が震えた。しかし、今まで心に抱いてきた想いが、彼女の口から零れ落ちた。
「私、湊くんが好きです…ずっと、ずっと前から…」
湊は静かにその言葉を聞き、少し驚いた顔をしながらも、優しく微笑んだ。
「千秋、ありがとう。実は…僕も、君に伝えたいことがあったんだ。」
彼はポケットから一枚の葉書を取り出し、それを彼女に渡した。そこには、転校先の住所が書かれていた。
「僕も君のことが好きだった。でも、転校することが分かって、どうしていいか分からなかったんだ。だから…もし僕がいなくなっても、この葉書に手紙を送ってくれないかな?君の声を、ずっと待ってる。」
千秋の胸に温かいものが広がった。紅葉が風に舞い、二人の間を色鮮やかに彩る。今、ようやく二人の想いが交差した瞬間だった。
秋の風は冷たくても、二人の心は温かく響き合っていた。この恋は、やがて距離を越え、手紙という声で繋がっていく。千秋はその手紙を握りしめ、心の中で誓った。
「この声が、いつまでも届くように。」
夏の暑さがどんどんと涼しくなる
季節の変わり目
それは人の心をも
少しづつ変わっていく
それは「恋」
だめだってわかっていた。わたしは今年は勉強に励まなきゃいけない。
「恋に落ちるか?受験に落ちるか?」
そうやって周りのカップルを横目に勉強していたというのに。どうしてもどうしても、あの人のことが頭から離れたい。会いたい。抱きしめたい。あわよくばキスをしたい。ただの片思いだってわかっているのにあれやこれやと妄想してしまう。
誰か、こんなわたしを目覚めさしてください。
#秋恋
お題『秋恋』
私は思わずXのタイムラインを二度見した。
どうやら好きな商業BL漫画が実写化するらしい。しかし、タイトルが『秋恋』に変えられていて、私はすこしの絶望感を味わった。ただ、原作のタイトルがなろう系と呼ばれるジャンルのように長く、略して『アキコイ』と言われていたのでここは広い心で受け入れる決意をする。
昨今、実写化といえば脚本家が原作と展開を変えてしまったり、はては登場人物の性別を変えてしまったり、恋愛関係にない相手と主人公とのラブロマンスがあったりするものである。
私はあまり期待せずに実写化された映画のサイトを見にいった。すでに予告編が作られていて、それがページの最初に出てきたので期待値を底辺まで下げながらクリックする。
その瞬間、私は思わず目を見開いてしまった。漫画から飛び出してきたイケメン二人の映像が流れてくる。
しかし、それだけでなく、二人が向かい合うシーンがあり、一般的に見ればここで口づけするかみたいな場面があるが、原作ファンからすれば分かるシーンがある。ここから、二人は突如刀を抜いてはげしく斬り合うのだ。
これは期待以上だ。やがて予告編がここで終わり、トップページへ行くと私は拝み始めた。
漫画から飛び出してきたような美男子二人が完全に商業誌の表紙を再現しているのだ。それにキャスト名の下に脚本家の名前があり、別の脚本家の他に原作者が名を連ねている。いや、むしろ原作者がメインと言えるような立ち位置だ。
Xのアカウントを見れば、原作者が『役者の選定から携わり、ストーリーに至るまで満足の行く出来に仕上がりました。タイトルはこちらが意図したものです。皆様のお目にかかれることができることを楽しみにしています』とツイートしている言葉があった。
言われてみればキャストは見たことない役者だし、タイトルはファン目線に立ったものだと説明された。
原作者が原作を愛してくれているという事実に私はしばらくの間、床を転げ回った。