「ねえ未来、知ってる? 秋に始まった恋は長続きするんですって」
「ほーん。なんで?」
「ほら、秋から冬にかけてはイベントいっぱいあるじゃない。ハロウィンから始まってクリスマス、正月、バレンタインホワイトデー……。あ、クリスマスは未来の誕生日もあるし!」
「せやね」
「だから彼女を作るならそろそろいい時期じゃない? イベントもそうだし、これから涼しくなってお出かけもしやすくなるし、秋はご飯が美味しい季節でもあるし……」
「そうね〜〜。でも俺、」
「アレルギーのことは心配しないで、未来の食べられないものはバッチリ把握してるから。甲殻類と桃、梨、バナナあたりでしょ。だったらきのこ狩りとかいいと思うの! 綺麗な紅葉を見ながら空気の美味しいところできのこを採って、帰ったら炊き込みご飯にするの! ねえ素敵じゃない?」
「お、おう。イイトオモイマス」
「私もちょうど彼氏と一緒にきのこ狩り行きたいな〜って思ってたの。ほんっと、いま告白してくれたら絶対オッケーしちゃうんだけどな〜〜。本当に、いま、告白してくれたら、絶対に、100%、オッケーしちゃうんだけどな〜〜。そういう人いないかな〜〜〜〜」
「(視線が超怖い……)」
「サトル先輩、あのふたりはなにをやってるんです? キキ先輩がむっちゃジンゴ先輩に迫ってるように見えますけど」
「いい質問です、カイくん。あれは彩樫高等学校3年生名物、あるいは七不思議のひとつ、『ヘタレと両片思いをこじらせすぎて一向に進展しないアホカップル』です。あのふたりは誰がどう見ても両思いなのになぜかお互い告白を渋り、実質付き合ってるようなもんなのに互いに付き合っていないと言い張る謎な関係をかれこれ3年は続けています。3年。アホかよ周りの身にもなれ」
「キキ先輩のあれはもう告白じゃないですか」
「そう思うじゃないですか。どっこい、本人たちは告ってないって言うんですよね〜〜」
「謎ですね〜」
「ホント謎〜」
「おーい、カイ、サトルー! エミも誘ってさー、来週みんなできのこ狩り行かね?」
「(これヘタに行ったらキキ先輩に埋められません? 大丈夫ですか?)」
「(さすがにそれはないですよ……たぶん)」
「(たぶんかあ〜)」
「ていうか……。エミさんが行くなら、僕も……」
「あ!! サトル先輩!! ずるい! 抜け駆け!! くそ、実質それダブルデートじゃないですか!!」
「んなことねーから。カイも行こーぜ」
「うふふ、そうよ。サトルとエミちゃんはともかく、私たちは付き合ってもいないから。付き合っても。いないから」
「(2回言った……)」
「せっかくだしカイくんも行きましょうよ。ちゃんと声かけますから」
「チクショウ!!! 哀れみの目を向けないでください!! みんな行くなら行きます!!!!」
出演:「サトルクエスチョン」より 白沢希喜(しろさわ きき)、仁吾未来(じんご みらい)、問間覚(といま さとる)、神宮開(じんぐう かい)
20240921.NO.58.「秋恋」
9/22/2024, 5:48:22 AM