(下書きとして一時保存)
20241229.NO.121「冬休み」
別にクリスマスだからと言ってどうと言うことはなくいつものようにただ仕事なのだけど、この時期になると毎年思い出すことがある。
小さい頃熱を出した。それもただの熱じゃない、氷嚢が載せた途端に水に戻るくらいの高熱。何歳だったか、幼稚園だか小学校低学年だったか、そのくらいの年の頃の話だ。
高熱は数日続き、俺は生きるか死ぬかの危ない橋を渡っていたらしい。はは、そんなことはもう覚えてないんだけど。
でも、ひとつだけ覚えていることがある。熱がいちばん高くなった日の夜、俺はとある夢を見た。
その夢で俺は知らない場所にいた。それは広い室内で、中にはたくさんの人がいた。多くがまだ若い、高校生くらいの子ども。他にも大人や俺の家族に顔見知りがいた気がするけど、そこら辺はもうぼんやりしている。高校生たちは学校でもないのに制服を着ていて、他の人たちもみんなスーツで、なんだかやけに黒いなぁと思ったのを覚えている。
彼らは皆静かな声で話していて、時折同じ方向に目をやってはため息をついたり泣き出したりしていた。
俺も同じ方向を見た。そこには1枚の写真があった。
黒い額縁に入った写真。写っているのはまだ若い男性。なんとなく誰かに似ている気がしたけど思い出せない。前髪を上げて堂々と額を出して笑うその姿は明るく、写真の中から動き出しそうなほど生き生きして見えた。
これだけ。これで全部。やけに生々しくて現実みたいな夢だったけど、たったこれだけ。
だからその時はいつの間にか忘れてしまったけれど、数年後にまた俺はその夢を鮮明に思い出すことになる。
数年後。俺は能力がないととっくに諦められていて。仁吾家の次期当主候補として親戚を迎え入れると言われて。俺は新しく弟ができるのにほんのちょびっとだけわくわくしていて。彼の名前は未来と言って。
彼と初めて顔を合わせた瞬間、あの黒い額縁が重なってすべてを悟った。
子どものときのクリスマス。
18年前の12月25日。
ライちゃんの誕生日だ。
彼が産まれた時に、俺は彼の死期を見た。
出演:「サトルクエスチョン」より 仁吾未先《ジンゴ ミサキ》
20241225.NO.120「クリスマスの過ごし方」
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20241223.NO.119「ゆずの香り」
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