かたいなか

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「『恋』+『愛』で合計8回目のお題なんよ……」
このアプリ、今年3月からのカウントなら、エモと空ネタと恋愛ネタで3割4割は成り立ってる説。
某所在住物書きは「秋恋」の進出単語に首を傾け、なんだそれはとネット検索を開始した。
そういうタイトルの歌があるらしい。

「初恋も、本気の恋も、失恋の恋物語も書いた。愛があれば云々ってお題もあった。ラブロマンスはエモネタ以上に不得意だ。その俺に、何書けって……?」
書いて、消して、また書いて消して。
何度も物語を組み直すが、己の納得のいく話がさっぱり出てこない。

ひとまず、何か投稿しよう。物書きはネタの枯渇に敗北し、ともかく今書けるものを書き始めた。
前回も前回であった。去年通りなら「次とその次のお題」も高難度のお題である。

――――――

今日も東京は相変わらず、9月下旬なのに暑くて雨降って、ムシムシしてて、
まるで梅雨明け前かその真っ只中みたいな状況。
季節通りの平常運転してるのは、新米と季節物の野菜に果物にスイーツと、あと来月に向けたハロウィンキャンペーンくらい。
お魚はよく分からない。ひとまず鮮魚コーナーにサンマが増えた気がするのは事実。

で。「季節物のスイーツ」だ。
栗だ。サツマイモだ。多分カボチャもギリ圏内だ。
おお、モンブランよ、スイートポテトよ。
私の愛しく恋しい秋の甘味たちよ。
今年はスイーツビュッフェでお目にかかります。

「やー、ホント助かった!ありがと」
貸しスペースに、今の時期だけ現れるスイーツビュッフェ専門店がありまして。
今年の3月から一緒の支店で仕事してる付烏月さん、ツウキさんと一緒に来店。
野郎な付烏月さんはお菓子作りが最近のトレンド。
『予約受け付け開始からこのビュッフェに目は付けてたんだけど、野郎ひとりじゃなかなか』って、来れずにいたらしい。
そこに私が声をかけたワケだ。「行こうよ」って。

なお付烏月さんより仕事上の付き合いが長い藤森先輩は「先約がある」ってことでパスされた。
1日150gくらいしか糖質を欲しがらない先輩だから、低糖質系でもないとなかなか捕まらない。
しゃーない。

「見て見て。ちゅら恋紅と紅はるかのプチケーキ」
紫と琥珀色のハロウィンカラーは、冷やされたカップに詰められて涼しそう。
「恋だって。どんな名付け物語があったんだろ」
『濃い味』と『恋味』でもかけたのかな。
そう付け足して、付烏月さんはぺろり、ふたくちサイズのそれを舌にのせて、堪能して、胃袋に収めて。幸福そうに笑った。

「そういえば付烏月さん。脳科学詳しいよね」
「詳しいってゆーか、図書館勤務時代に本読んだだけの、付け焼き刃の独学ね」
「ちゅら『恋』紅で、思い出したの」
「はいはい」

「付烏月さん昔バチクソ恋したひとが居て理詰めで秋にプロポーズして秒でフられたってホント?」
「ぶふっ、……ゲホッゲホッ!!」

「秋にプロポーズしたって、なんか脳科学的な根拠とかあったりするの?『秋の恋は』ってやつ?」
「どっから聞いたのそんなハナシ?!」
「私の質問に先に答えてくれたら話す」

はぁ。
ちゅら恋紅のプチケーキ、2個目をつまんで、付烏月さんが小さく首を振り、ため息をついた。
別に悪い思い出ではないみたい。イヤそうな雰囲気でもない。でも数年とか十数年とか、それくらい昔の懐かしそうな表情をしてた。

「ネットでは『秋は脳が恋をしたがる』とか、ホルモン的に秋に恋したがる』とか、言われてるね」
自分の「秋のプロポーズ」には言及せず、付烏月さんがプチケーキを食べながら言った。
「俺はそれの根拠になるハナシ、読んだことないし、それ系の論文漁ったこともないからなぁ」
なんとも言えないねー。
そう結ぶ付烏月さんはどうやら、少なくとも、「秋が恋や告白に適した季節だから」って理由で理詰めをしたワケでは、なさそうだった。

「いやそもそも、俺『実際にプロポーズしました』とも『恋人いました』とも言ってないからね?」
「ふーん」
「多分色々、誇張表現と誤解があるからね?」
「ふぅ〜〜ん」

9/22/2024, 5:09:59 AM