かたいなか

Open App
7/20/2025, 3:22:26 AM

今日もお題回収の舞台、厨二ふぁんたじー組織の「世界線管理局」は平和です。
「ここ」ではないどこかに位置し、世界間渡航の航路を開設したり運営したり、
あるいは滅んだ世界からこぼれ落ちたチートアイテムを回収したり、世界間のケンカを調停したり。
いろんな仕事をしておりまして、今回はその中でも、警察だか特殊部隊だかに似た仕事をしておる、法務部執行課、特殊即応部門のおはなし。

そのオフィスではちょっと大きめのドラゴン部長が、すごく苦しそうな顔をして、
ぴちゃぴちゃペロペロごくごくごく、
バニラシェークを舌に付けて、舐めておりました。

ぐぐ。 ぐぎゃ。 ぎゃぎゃ。
たまに低くうめいて、苦しい顔つきのまま、口をあけて舌を空気にさらすドラゴンを、
「だから言ったでしょう。軽く『飛べる』って……」
人間の男性が、目のクマをモミモミしながら、
じっと見て、ため息吐いて、そして、カタン。
仕事道具を整理して、デスクの上を片付けて、
そして、帰宅するのでした。

「では、部長。お疲れ様です。お先に失礼します」
部長ドラゴンは恨めしそうに、ぴちゃぴちゃ。
バニラシェークを舐めています。

――ことの発端は30分前。
ドラゴン部長はちゃんと人間に変身して、管理局の特殊即応部門の部門長として、
てきぱき、てきぱき。仕事をしておりました。
ドラゴン部長はビジネスネームを「ルリビタキ」といいまして、部下の「ツバメ」を見ておりました。

というのもツバメ、なんやかんやありまして、今日で徹夜が3日目。全然寝てないのです。

「ツバメ。そろそろ休め」
一味を1振りした赤味噌汁をマグカップで飲みながら、ルリビタキ、ツバメに言いました。
「人間の体は弱い。そろそろ寝ないと、良くない」

ルリビタキはドラゴンなので、べつに徹夜を3日しようと1週間しようと、その後に1日ぐっすりすればヘッチャラですが、
人間のツバメは、そうはいきません。
寝不足は良くないのです。体が疲れるのです。

「まだいけます」
顔をモミモミ、目のクマをクシクシして、
ツバメはそれでも、もうすぐ限界の様子です。
「もう少し。もうすこしで、おわるので」
ツバメは、先日捕まえたチートアイテム密輸犯のことと、その密輸犯がやらかした事件のことを、
それぞれ、まとめている最中だったのでした。
「くそっ、 もう少しなのに、眠気が……」

カチッ。
眠気で苦しそうなツバメが、小さな容器のツメを折り、フタをペリペリ開けまして、
中身を一気に、舌にのせて、こくり。
「ハァ。 ……よし」
途端にシャキッとしましたので、ラストスパート。
「いける。大丈夫だ。できる」
キーボードに指を滑らせて、情報をまとめます。

絶対に、真似をしてはいけません。
本当に、フリではなく、真似をしてはいけません。
それは希釈型のコーヒーポーションでした。

「ツバメ、それ、なんだ?」
「え?ああ、例のムクドリの喫茶店で作ってもらった、コーヒーポーションですよ。
カフェインが一気にクるので、私には丁度良い」

「美味いのか?」
「ああ……えーと、 そうですね。
部長は、真似なさらない方が良いかと。
軽く、『飛べる』ので」

「コーヒー味の飛行能力付与ポーション? どれ」
「あっ、ちょ、ちょっ!部長!!」

ぱきっ、ぐび!
ツバメが悪い薬を飲んでいないか気になったルリビタキ、自分の体でも試そうと、ツバメが飲んでいたポーションを一気飲み!
再明記します。絶対に、真似をしてはいけません。

というのも本来薄めて丁度良くなるべき味が、
原液のまま舌に落ちて、
酸味と、苦味と、コクと、風味と、カフェインと、
ともかくコーヒーの「コーヒー」であるすべてが、
一気に舌を含めた口の中、鼻の奥、味覚に関係するすべてを一瞬のうちに打ち据えて、
まさしく、軽く、「飛べる」のでした。

「おあッ!! が!! おあお!!」
コーヒーポーションの濃厚な「コーヒー」に、ルリビタキはすぐ、舌を撃ち抜かれてビックリ!!
吠えて、飛び上がって、悶絶して、あんまりビックリしてしまったので、人間の変身が溶けてドラゴンの本性に戻ってしまったくらいです。
「ぎゃおん!!ぎゃおおお!ぐぎゃあ!!
ぐわおぉぉぉぉん」

ドッタンバッタン、ばったん!
ドラゴン部長は鼻を押さえて、舌を出して、時々ペロンして、吠えて伏せてグネグネして、
ともかく、味覚も嗅覚も忙しそうです。
最終的に収蔵部のドワーフホトの隠しキッチンに問答無用で上がり込んで、冷蔵庫を物色し、大きな大きな容器に入ったバニラシェークに舌をドボン。
もちろん、ちゃんと代金は置いておきました。

だから言ったでしょう。軽く飛べるって。
ツバメはため息ひとつ吐いて、ラストスパートの仕事を終わらせ、さすがに限界。
仕事道具を整理して、デスクの上を片付けて、
そして、帰宅するのでした。 おしまい。

7/19/2025, 7:58:26 AM

前回投稿分からの続き物。
「ここ」ではないどこか別の世界に、「世界線管理局」という厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこは世界間の調整、運行、航路整備等々、ともかくいろんな仕事をしておったのですが、
中でも、主要業務複数個のうちのひとつに、チートアイテムの保管と管理がありました。

滅んだ世界のチートアイテムを回収したり、
魔法道具が別の世界で悪さをせぬよう保管したり、
場合によってはそれらのレプリカ、イミテーションなんかを作って業務を効率化したり。
ともかく、いろいろやっておりました。

前々回あたりのおはなしで登場した「眠気を誘うフローリング:イミテーション」なんかも、れっきとしたチートアイテム。
フローリングの範囲内に足を踏み入れた者の眠気を誘い、ぐーすぴ、かーすぴ、寝かしつけます。
オリジナルのフローリングの、効果も出力も全部落として、使いやすい模造品にしたハズ……
なのですが。

管理局に保管されるにあたって、
保管用の情報を登録して、保管場所も決まって、
フローリングの効果もテスト済み、
さぁ、あとは収蔵庫に迎え入れるだけ!
と思った直前で「待った」が入ります。

なんでもこの「眠気を誘うフローリング:イミテーション」、フローリングに足を踏み入れた者の眠気を誘うという効果をそのままに、
ただ効果の強さだけを小さくして、
使いやすさを念頭に作られたのは良いものの、
後々に、まさかの衝撃的事実が発覚。

『使いやすさを第一に調整したら、効果を弱くし過ぎて1回こっきりの使い捨てになっちゃいました』

『なんなら1回こっきり、そこで使ったら、
そこの底にくっついて、ほぼほぼ動かなくなっちゃう不具合が、実は発生しておりました』

『再調整した「フローリングVer.2」を送ります。
最初のVer.1を、なんとかして廃棄してください』

『なお焼却処理の場合、一気に全部燃やすと、
眠気を誘う効果が気化して、周囲をいわゆる、眠りの城にする可能性があります。
ぜったいに、生物のチカラで一度、細かくして、破片を少しずつ焼却してください』

<<破片を少しずつ焼却してください>>

さあ、お題回収といきましょう。
フローリングをカリカリ、カジカジ!
かじり放題の「special day」。
魔法のチカラを持つ木材の解体を任されたのは、不思議な不思議なハムスター。
ビジネスネームを「ムクドリ」といいました。

――「んんー、ハムスターの僕としては、遠慮なく木材を徹底的にかじってくれって、
そりゃもう、まさしくspecial dayだよね」

カリカリカリ、カジカジカジ!
とっとこムクドリ、ただ「木材を徹底的に細かくしてくれ」とだけ言われたので、
何の疑いも持たず、廃棄指示のあったフローリングを、本能そのままに削ります。
日頃、ケーブル噛むなだの、家具壊すなだの、
あれこれ言われてフラストレーションが、バンバン溜まりっぱなしだったムクドリなのです。
「めいっぱい削れ」と言われたら、そりゃもう。

「んんん、かじり心地のすごく良い木材だ。
あんまり心地良過ぎて、 よすぎて、
なんだか、ゆめごこち、ゆめのなかの きぶ ん」

カリカリカリ、カジカジカジ!
順調に「眠気を誘うフローリング:イミテーション」を細かくしておったムクドリです。
ですが、さすが「眠気を誘うフローリング」、木材をかじりたいハムスターの本能をもってしても、
段々、だんだん、本能に追いつかないくらい、
ムクドリに、眠気が迫ってくるのです。

「ああ すぺしゃる でい」
残り半分の木材を残して、
とっとこムクドリ、こてん!眠ってしまいました。

ぐーすぴ、かーすぴ。とっとこムクドリは夢の中。
ですが、フローリングを廃棄してもらわなければ、困ります。寝ている場合じゃないのです。
「んん、もう、かじれない……」
ムクドリとしては夢の中でも、木材をかじっておるようですが、実際は完全にノビてます。

どーすんだよ、 どーしよっかぁ。
ムクドリに処理を頼んだ局員、顔を見合わせまして、ひとまず福利厚生部の医療・医務課に連絡。
ムクドリに悪い影響が出てないか、一応、検査してもらうことにしましたとさ。

7/18/2025, 3:10:01 AM

前回投稿分からの続き物。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
その敷地内の空を、
大きくて強くてキレイなドラゴンが、
ツバサを一切動かさず、巨大な放物線を描いて、
宙を、舞っておりました。

ドラゴンは本当に、ほんとうに、とっても強いドラゴンでしたし、魔法も使えましたが、
さすがにツバサを動かさず空を移動するなんて芸当は、できないハズでした。

管理局の中を歩いていて、ひょんなことから「とあるフローリング」の中に入り、
それがすごく適温で、ドラゴンの本能が「ここは寝床だ」と強く主張しましたので、
フローリングにおなかをペタっ、尻尾もペタっ、
くっつけてしまって昼寝して、
そして、なにやら「どぉん!」デカい音と体への衝撃がありましたので、起きたらなんと、空の上。

『ん、 ……んん??』

ドラゴンは、それはそれは美しい、数学者や物理学者が見たら感動するくらい、完全に完璧な放物線を為して、現在減速上昇中。
BGMはクラシックがきっと最適解。
バッハの無伴奏チェロ組曲第1番だの、
G線上のアリアの管弦楽組曲第3番だの、
なんならパッヘルベルのカノンでも良いでしょう、
ともかく、美しく、シュールであったのでした。

『なんだ、俺は、今どうなっているんだ??』

ドラゴンの体は物理法則に従い、放物線の頂点に到達して、加速降下運動に移行しました。
眼下をぼーっと観察すれば、
風にそよぐ草原、川底まで透明な清流、小鳥の群、
お題の「揺れる木陰」もあります。
どうやらドラゴン、管理局の中に作られた、難民シェルターの緑地エリアを落下中のようです。

青い空に心地よい風、今日はとっても良い天気。
滅んだ世界、死んだ故郷からこぼれ落ちて流れ着いた難民たちは、皆みんなこの良い天気を享受して、
日向ぼっこしたり、釣りをしたり、カフェのテラス席でそよ風に当たりながらケーキを楽しんだり。
それはそれは、もう、それは。
美しい、尊い、平和と平穏に満ちておりました。

よくよく観察すると、ドラゴンの部下の人間、ビジネスネームを「ツバメ」という男も、
揺れる木陰の下、テイクアウトのコーヒーを飲みながら、この良い天気を堪能しています。
はぁ。 挽きたてコーヒーの香りを深く吸い込んで、小さな歓喜と一緒に、吐き出しています。

天を見上げたツバメと、ドラゴン、目が合います。
ツバメが、天上に上司ドラゴンがおったので、素っ頓狂の目が点々。開いた口が塞がらりません。
完全に、フリーズしています。

そりゃそうです。そして、ドラゴンも同じです。
加速落下中のドラゴンだって、自分がなんで放物線を描いて落下中なのか理解してないのです。

ツバメの個人端末に連絡が来て、ツバメがハッとして、その連絡に応答しようとしたあたりで、
ドラゴンは、「揺れる木陰」の発生源たる木を破壊して、地面に激突。

バキバキバキッ!! どぉぉぉぉん!!!!
「ぎゃおぁおおん!!」「どゎぁぁぁー!」

それまで放物線を描いておったドラゴンは草っ原に小さな小さな、すごく小さなクレーターを作って、
それで、ばたんきゅ、気絶してしまいまったとさ。

で、ここから先が、そのドラゴンを「射出」した張本人のネタバラシと小話。

「わぁぁぁぁ!部長さぁん、しっかりしてぇー!」
ぱたぱたぱた!
ドラゴンを追っかけて、管理局収蔵部の局員、「ドワーフホト」が走ってきました。

ドラゴンは法務部の、特殊即応部門の部門長。
前回投稿分のひょんなことにより、魔法かつチートなフローリングで寝ておったこのドラゴンを、
ドワーフホトはどうにかフローリングから出そうとして、しかしドワーフホトひとりのチカラではどうにもならないので、
経理部の親友の「スフィンクス」から、ドラゴンを移動させる機械を借りようとしたら、
そのスフィンクスが持ってきたのは、何をどう見てもクレーンではなく、カタパルト。

何をするつもりなの、ドワーフホトが聞く前に、
ニヨニヨ楽しそうな顔したスフィンクス、自走式カタパルトを作動させ、ドラゴンを発射台に固定。
「発射ァ!」音声コマンドと物理ボタンの二重セキュリティにより、射出したのでした。

どうしてこうなった(しりません)

「やぁー、飛んだ飛んだ!大成功だぜぇ!」
嬉しそうにスフィンクスが言いました。
「大成功、じゃないよぉぉ!」
頭を抱えてドワーフホト、言いました。
「わぁぁぁ!部長さぁん!ごめんなさぁぁぁい!」
「なんでホトが謝るんだよ。寝起きにはアレくらいが丁度良いって」
「アレくらいってぇ、『アレくらい』ってぇぇ」

片方は大満足の笑顔、片方は大騒動におおあわて。
揺れる木陰を作っておった例の木は、完全にバッキバキに折れてしまったので、
伐採されて有効利用が為されて、そして、キャンプ用の薪になり、夜を美しく照らしましたとさ。

7/17/2025, 9:52:24 AM

【世界線管理局 収蔵品
『眠気を誘うフローリング:イミテーション』】

現存するどこかの世界で、今もオリジナルの方が稼働している、いわば現役のチートアイテム、「眠気を誘うフローリング」。
このイミテーションは、本来ならば「すでに滅んでいる世界」のアイテムを回収、収蔵、保管するハズの世界線管理局が、
諸事情により――要するに今回のお題が「真昼の夢」であったので――フローリングの持ち主に寄贈要請を出した結果、管理局の管理下に入った物。

「イミテーション」の等級は言葉のとおり、オリジナルのフローリングを模倣した下位互換であり、
オリジナルほどの効力は持たない。

ところでこの「眠気を誘うフローリング」は、その名の通り、フローリングに体を入れた生物を問答無用で寝かしつける。
取り扱い説明書を抜粋するに、
「フローリング効果による眠気症状の緩急に合わせ、弱まったところで一気に抜け出せば一応覚醒は可能である」が、
睡眠欲求が強い場合は起きられない。

<<睡眠欲求が強い場合は起きられない>>

――――――

今日も平和な異世界組織、「世界線管理局」です。
相変わらず管理局を親の仇のごとく敵視している敵対組織、「世界多様性機構」のスパイが、
管理局の業務を妨害しようと、あるいは管理局の建物を破壊しようと、潜入しておったようですが、
ぶっちゃけ管理局は機構と違って、
財源は潤沢だし、人材も揃ってるし、なにより収蔵しておるチートアイテムの質と量が違います。

その日はとある世界から、特別なチートアイテムが管理局の収蔵部に届きまして、
その名も「眠気を誘うフローリング:イミテーション」。見た目は普通の床なのに、ひとたび体がその中に入ると、たちまち眠ってしまうのです。

それこそ「真昼の夢」になろうと、
ガッツリ寝た朝の強制二度寝になろうと、
なんなら、敵対組織に潜入している最中でも。

今回のお題は「真昼の夢」。
平和な異世界組織「世界線管理局」に潜入していたスパイの皆様は、皆みんな、このフローリングの効果をテストするための被験者にされてしまって、
ぐぅすぴ、かぁすぴ。
全員仲良く、眠ってしまったのでした。

「わぁー。ホントに寝てるぅー」
機構のスパイの潜伏先に、
管理局の収蔵部局員が、先回りしてフローリングをポン!設置しまして、数時間放置。
「大漁〜、大漁〜。ふんじばっちゃうぞぉー」

収蔵部のビジネスネーム「ドワーフホト」が、
お茶淹れて楽しんで、クッキー焼いて楽しんで、稲荷子狐と遊んで楽しんで、
それからフローリング設置場所を確認してみると、
さすが模造でも「眠気を誘うフローリング」、
スパイさんホイホイよろしく、フローリングの上に、機構のスパイが落ちておって、
ぐぅすぴ、かぁすぴ、いびきをかいています……

が、
ところで、管理局を敵視している機構のスパイがフローリングの罠にかかって寝ておりますが、
その機構のスパイと一緒に管理局のドラゴンが
ぐぅすぴ、ぷしゅるる、ぐぅすぴ、ぷしゅるる、
フローリングの上に一緒に落ちて、ヘソ天してガッツリねていますよ?

「特殊即応部門の部長さんだぁ……」
ドワーフホトは、すぐ分かりました。
このドラゴンは、すごく強いドラゴンでした。
雄々しく、大きく、とっても強いこのドラゴンは、そんなドラゴンなのに、フローリングでおなかを見せて、真昼の夢を楽しんでおるのでした。

多分このヘソ天ドラゴン、機構のスパイのあとをつけて、そのスパイがフローリングに引っかかって寝てしまったので、
匂いをかいで無力化を確認しようとしたところ、
一緒に、フローリングに引っかかったのでしょう。

で、
どうやってこの、おなかプニプニ最強ドラゴンを、フローリングの効果範囲外から引っ張り出せば良いのでしょう?
ドワーフホトひとりのチカラでは、ドラゴンの体は重くて重くて動かせないし、
なによりドラゴンを引っ張り出すためにフローリングに足を入れてしまったら、ドワーフホトもフローリングの効果で、寝てしまうのです。

ミイラ取りがミイラとはこのことでしょう。

「……スフィちゃんに、頼むしかないぃ、よね」
寝ぼけて舌などベロンチョしておるドラゴンを見ながら、ドワーフホト、考えました。
「スフィちゃんなら、丁度良い機械作ってくれるぅ。スフィちゃーん、何か良い機械出してぇー」

とてとてとて、とたとたとた!
ドワーフホト、真昼の夢の中のドラゴンたちを残して、異部署の親友のところへ走っていきます。
その後のハナシは、そろそろ文字数が文字数なので、次回投稿分にお預け。
しゃーない。しゃーない(総字数1850くらい)

7/16/2025, 6:01:04 AM

前回投稿分からの続き物。
最近最近の都内某所、某杉林に隠された奥深くに、
「世界多様性機構」なる異世界発の厨二ファンタジー組織が建てた、通称「領事館」がありまして、
そこはつまり、東京に避難してきた異世界からの難民を、生活基盤としても、メンタルの相談としても、支援するために作られた館でした。

領事館に勤める者は、当然東京出身でもなく、この世界出身でもなく、
今のところ、1台の空気清浄機搭載型移動掃除機(魔改造済み)を除いては、全員が異世界人。
異世界の技術を使って、
異世界から避難してきた者の悩みを受け止め、
故郷の世界が滅んでしまった者の生活を支援して、
そして、 そして、 領事館は領事館自身がドチャクソに敵視しておる管理局ほどの資金源がありませんので、いつも資金がカッツカツなのでした。

お題のように、領事館の支援対象が「二人だけ」なら良かったのですが、そうはいかないのです。
■■倍なのです――「二人だけの。」

で、そんな世界多様性機構の領事館には、もちろん異世界発の組織なので、
異世界の魔法道具やら、チートアイテムやら、地球上のどの科学技術より進歩した機械技術やらが、
複数個、だいたい20個から30個くらい、保管され、使用もされておりまして。

特に領事館の親元、世界多様性機構の本部には、
地球の気候変動だの、地球温暖化だの、そんな「ちっぽけな」問題を1ヶ月くらいで全部解決できる大型機械が、保管されておるのでした。

異世界渡航技術の確立していない日本で、地球で、この世界で、環境問題解決マシンを許可無く、勝手に使うことはできません。
別世界の人間が、他世界の問題に介入して、その問題を解決することは、原則として違法なのです。
それは違法なことなのです。それは、この世界にとって、長期的には良くないことなのです。
この世界の問題は、この世界のチカラで、解決法を見つけ出して、実行すべきなのです……

が、
ある日、都内在住の雪国出身者が
ひょんなことからその「異世界にこの世界の環境問題を解決する技術があるんだぜ」を
運良く、あるいは運悪く、知ってしまいまして。
その雪国出身者は名前を藤森といいました。

「別世界の人間が、この世界の問題に介入することが違法なのでしょう」
風吹き花咲く雪国から来た上京してきた藤森。
昨今の気候変動で少しずつ、しかし確実に数を減らしている日本の花々を、酷く悲しんでおりました。
「私はこの世界の出身で、この世界の人間だ。
私が異世界の機械を使って、この世界の問題を解決するのは、あなたがたの法律で完全合法とはいかずとも、完全違法でも、ないのでは」

この世界の人間に任せていては、日本の花が消えてしまう。日本の四季も、冬の雪も消えてしまう。
藤森は世界多様性機構の領事館の、一番偉い「館長」に、直接、直談判するのでした。
「私は、どんな手段を使ってでも、日本の花を、故郷の雪を守りたい。チカラを貸してください」

なにより気候変動が一気に解決すれば東京の夏は確実に涼しくなるのです。
だってまず体温超え、微熱超えの酷暑が消えます。
これは早急に、緊急に、なんとかすべきなのです。

「アンタの言いたいことは分かった」
領事館の館長さん、藤森の話を聞いて言いました。
「たしかに、俺達『異世界人が』、『異世界の技術を使って』、この世界に介入するのは違法だし、
アンタが言ったように、『現地人が』、『異世界の技術を使って』、この世界に介入するのは、一部に限って法律の穴になってる」

ポン、ぽん。
館長と藤森、二人だけの館内で、館長が藤森の肩を叩き、視線を合わせて、そして、言いました。
「時が来たら、俺達世界多様性機構は、アンタを機構の臨時・現地職員として歓迎しよう。

それまでこのことは秘密だ。二人だけの。
俺と、アンタだけの」

いいな。時が来るまで、待つんだ。
館長が言いました。
日本の花を愛する雪国の藤森は、静かに目を細め、
そして、深く、頷いたのでした。

「二人だけの。」をお題にした、ちょっと真剣でガッツリふぁんたじー、そしてドチャクソ厨二ちっくなおはなしでした。
この先藤森と領事館がどうなるかは、今後配信されるお題次第。 しゃーない、しゃーない。

Next