かたいなか

Open App
11/23/2025, 6:11:54 AM

前回投稿分からの続き物。
最近最近の都内某所、某不思議な稲荷神社近くに、
深夜の限られた時間にだけ店を開ける人外御用達のおでん屋台が、時々出没しておりまして、
その夜は「こっち」の世界に仕事に来ている異世界出身のドラゴンが、人間の姿でご来店。

「珍しいな」
先客の雪国出身者さんに挨拶して、
「お前の方から、俺をメシに誘うなど」
そして、屋台のおっちゃんに、まずお味噌汁を注文して、それにパッと一振り。
紅色の和製スパイス、一味を咲かせたのでした。

雪国出身者は名前を藤森と言いました。
都内某所の私立図書館に勤めておって、前回投稿分のおはなしで3日間の出張を命じられたところ。
その藤森の出張先が、このドラゴンの職場。
ドラゴンは職場で「ルリビタキ」と呼ばれ、法務部に所属しておりました。

「あなたなら、何かご存知だろうと思って」
膝にのせた子狐の爆食っぷりを放っといて、藤森、ルリビタキに言いました。
「私と私の後輩と、後輩のそのまた後輩が、3人まとめてあなたの職場への出張を命じられました」

「ウチの予算増額まつりへの参加、だろう?」
知ってる。ルリビタキの返答はシンプルでした。
「来れば分かる」
すなわち、回答拒否。黙秘です。
「今日は俺のおごりにしてやるから、何も聞くな」

「何故です」
「黙秘」
「私にも知る権利はある」
「黙秘だ」
「少しくらい話してくれても良いでしょう」
「俺が初めて飲んだ味噌汁のハナシでもするか?」

「条志さん、……ルリビタキさん!」
「店主。こいつにも味噌汁1杯」

完全黙秘を続けるルリビタキです。
藤森のおでこにはシワが寄ってしまって、比較的大きな短いため息が夜風に溶けます。
藤森の膝に足をかけておでんをちゃむちゃむ食べておった子狐は、藤森の心を嗅ぎ取ったらしく、
大好きなお肉を藤森に、ぷい、と差し出します。

「ルリビタキさん」
藤森は話し足りないらしくお肉を受け取りません。

「最初に飲んだのはな。こういう紅色の一味を散らした、赤味噌だか合わせ味噌だかの1杯だった」
ルリビタキも藤森の要望を知ってるくせに、
紅色一味の味噌汁の、
つまり「紅の記憶」を語ります。

食べないなら、キツネ、食べちゃうよ。
子狐は大人ふたりがちっとも構ってくれないので、
そのまま大好きなお肉も、藤森のお皿のお肉も、ルリビタキのお皿のお肉も、全部ぜんぶ、ぺろり!
幸福に、堪能してしまいました。

ところで、そうこうしている間に、ルリビタキの個人端末にメッセージの着信が入ったようです。
「ツバメか」
ルリビタキはチラっと藤森を見て、
「ふむ」
それから、チラッとメッセージを確認して、
「なるほど?」
わざと、メッセージが藤森にも見えるように、端末を少し、すこーし、傾けました。

メッセージはたった十数文字。
『ヒバリが口紅をドワーフホトに貸し出しました』
藤森はピンと来ませんでしたが、
ルリビタキは「口紅」が意味するところを、その口紅の記憶によって、よくよく理解しておりました。

「なんだ口紅って」
藤森がついついポツリ、言いますと、
「うん」
ルリビタキは藤森に、自分の中の例の口紅の記憶を、共有してやったのでした。

「『七色の口紅セット』。ウチの局員が所有しているアイテムのうちのひとつだ」
「はぁ」

「なかなか規格外な武器というか、兵器でな」
「口紅が?」
「紅色の口紅のキャップを取ると酷い出力の高温高密度レーザーが出る」
「は?!」

「お前が出張を命じられた理由の予算増額祭りのバトルロイヤルで、それを出場予定の1人が」
「使うのか?!」
「使うなぁ」
「は?」
「使うだろうなぁ」
「はぁ……??」
「エグいぞ?俺の、あの口紅の記憶が正しければ」

紅色和風スパイス、一味の記憶と、それから不思議な口紅の記憶のおはなしでした。 おしまい。

11/22/2025, 9:55:17 AM

私、永遠の後輩こと高葉井が住む東京も、秋の終わりが目の前に、ハッキリ見えてきた。
東京は、イチョウ並木が見頃の真っ盛りだ。
みんなスマホを手に持って、あっちで動画撮影して、こっちで自撮りして、そっちは知らない。
都心の並木もキレイだけど、奥多摩の大イチョウも迫力があって、撮りに行ってる人がいるらしい。

大イチョウ。
大イチョウと聞くと、思い出す光景がある。
今年の夏、とある雪国、まだ青々とした葉っぱばかりの、見たことないくらい大きいイチョウの木。
地元では「イタズラギツネの大イチョウ」っていう名前で親しまれているらしいそこ。
理由あって、そこに行った。

推しが運転するバイクに乗った。
推しに「しっかり掴まって」って言われた。
だから、推しに、ドチャクソしっかり掴まった。
そしたら推しはバイクの速度を上げて、バイクで跳んで、それで、それで……
……それで、要するに夢の時間だった。
推しの背中にくっついて、推しのおなかに腕を回して、推しのバイクに乗る時間だった。

あの夢をもう一度、
あの、夢の断片だけでも、もう一度、
いや断片の断片の、そのまた断片でも良いからm

「高葉井。高葉井」
「……」
「聞いているか高葉井、高葉井」
「……」
「高葉井日向、こーうーはーい!」
「はいツー様! じゃないや。先輩だ」
「悪かったなお前の好きなツーサマじゃなくて」

トン、とん。
夏のイチョウの夢の断片を脳内リピートしていた私を、先輩がテーブルを指で叩いて起こした。
私が勤務してる私立図書館は、三連休なんて関係無い、それどころか三連休のせいで、本来なら休館日の月曜日も仕事に出なきゃいけない(なお代わりに火曜日が休館日になる)。

「ということで、アンタたち」
図書館職員室で話し合いをしてた副館長が、私と先輩と、それから私の後輩のアーちゃんを見て、
「アンタたちに、ウチの親組織、管理局への2泊3日出張を命じるわよー」
それで、推しが勤務してる職場への出張を、
さも当然みたいにサラっと言った。

「えっ、え、ごめんなさい副館長、
親組織への出張って何のハナシでしたっけ」
「そのまんまよ、そのまんま。管理局でボーナス予算をかけたバトロワ大会をすることになったの。
アンタたち、図書館代表で行って、バトロワ優勝して、予算もぎ取ってらっしゃい」

「へ?」
「詳しくは前回投稿分を確認なさい」
「ぜ? え?」
「ほら、分かったらアンタの、夢の断片でも何でも、叶えてらっしゃい」
「ぇえ……??」

「無理ですよ、勝てっこないですよ」
完全に絶望してるアーちゃんが嘆いた。
「法務部の実動班とか、完全にバケモノです。
私達なんて、3位にも5位にも入れないです」
辞退します。 させてください。
アーちゃんはどこからともなく辞表の白封筒を取り出して、机の上に置いた。
それから私の方を見て、めっちゃ懇願してる目で、唇を固く、キュッとした。
同調してほしいんだと思う。

分からないでもない(だって勝てない)

「悪いけど、拒否権無いわよ」
多古副館長が言った。
「出発日時も決まってるから、カンネンなさい」
はい、アンタたち用のチケット。
多古副館長はシャシャシャっと、私達の目の前に、
多分「ウチの親組織」行きと思われるチケットを寄越して、それでフフンと満足そう。

「先輩、」
ねぇ、先輩、どうしよう。
絶望顔のアーちゃんから視線を外して先輩の方を見ると、先輩は先輩で真剣な顔をしてる。

「高葉井」
先輩も、こっちを見た。
こっちを見た先輩は私に何かを言おうとして、やっぱりやめて、でも何か言いたそうで、
アーちゃんとは違う深刻さで、目を逸らした。

そんな先輩と私と、それからアーちゃんを見る副館長は、ただただ私に、「良かったじゃない」と。
「アンタの推しと夢の断片の続きができるのよ」と、言うだけだった。

11/21/2025, 9:58:34 AM

逆に見える方の未来なんて、スマホの習慣天気予報くらいしか思いつかない物書きです。
今回のお題は見えない方、「見えない未来へ」とのことで、こんなおはなしをご用意しました。

「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」という厨二ふぁんたじー組織がありまして、
巨大で、強大で、資金潤沢な組織でありました。
その管理局の経理部の、一番偉い経理部長は、ビジネスネームをプロアイルルスといいまして、
プロアイルルス経理部長は、予算配分と余剰資金の運用方針と、ゲリラボーナス配布の決定権と、
ともかく、資産財産に関する全権を、その手に握っておったのでした。

ところでこのプロアイルルス経理部長、
だいたい4〜5年に一度か二度・三度の頻度で
資産運用利益の1%をドンと局内ひとつの部署に
ボーナス予算として付与する代わりに
ボーナスを求める部署と部署と部署を集めて
何かのゲーム、お題、競争等々で争わせる
という、珍妙極まりない趣味を持っておりまして。

「にゃごにゃご」
プロアイルルス経理部長——カギ尻尾のおでぶ巨大猫が、ヒゲを撫でながら言いました。
「にゃご、にゃごにゃご。にゃーご」

「プロアイルルス部長は、こう仰っています」
経理部長の通訳は、部長の身の回りのお世話をしている魔法生物。

「『今年は、ここ50年・100年で、最高の運用益が出た。よって運用益の5%を、ひとつの部署に特別予算として付けることとする』。
各々、予算を必要としている部署は、部長の出題するお題にかなう人選で申し込むように」

「運用益の5%」。
この通達に、各部各課各部門、沸き立つことを通り越して、ガチでシンと静まり返りました。
運用益1%のボーナスですら、その部署の財政が一気に変わるのです。それが5倍の5%です。

「にゃあごにゃごにゃご。にゃご」
「プロアイルルス部長は、
『予算が欲しければ、各部各課、各部門、3人1組で模擬戦のトーナメント戦を制するのだ』
と、仰っています」

「にゃごにゃーご。にゃごにゃご。にゃご」
「『各々、闘え、争え』と、仰っています」

さぁさぁ、ここからお題回収。
管理局には特殊部隊のような役割を持つ、法務部執行課の実動班、特殊即応部門というのがあって、
どうせ、模擬戦ならば、そこが模擬戦トーナメントを制して終わりだろうと、
思われては、いたのですが。

「今年の特別予算は!我々がいただく!」
管理局内にある難民シェルターの、大規模改修と増改築および区画整備とを実現するべく、
環境整備部の難民支援課と空間管理課が手を取り合って、イケボマッチョと電設のエキスパートと、奥多摩出身君を選出。

「収蔵部もぉ、ホンキ出すぅー」
環境整備部が各課を超えて同盟を組んだと思えば、収蔵部収蔵課は課の単体で、
財力にモノを言わせたお嬢さんが、別部署に勤務する武器・兵器コレクターから最恐最強最狂グッズのレプリカをレンタル。

私達も、俺達も、我々も。
各部署がホンキを出しまくり、もはやどこが優勝するか、見えない未来へとなってきました。

「勝つぞぉ!おー!」
「すべてはシェルター内の環境整備のために!」
「今年も予算はウチが頂きます」
「取り敢えずウチが貰っとくわ」

あっちの部署、こっちの課、そっちの部門。
それぞれがそれぞれで武装して、準備して、
結果として、優勝者の見えない未来へ向かって、
それぞれがそれぞれ、決戦の時を待つのでした……

11/20/2025, 9:56:44 AM

「明日は明日の風が吹く」。
某ピンク玉の座右の銘にして、代表的なエンディング曲だそうです。
英題は「A New Wind for Tomorrow」。
お題に無理やりこじつけるなら、「新しく吹き渡る風は明日のため」とでも訳すのでしょう。

と、いうハナシは置いといて、
今回の物語のはじまり、はじまり。

「ここ」ではないどこかの世界に、「世界線管理局」という厨二ふぁんたじー組織がありまして、
異世界から異世界へ渡航許可を受理したり、
滅んだ世界からこぼれ落ちたチートアイテムが他の世界に流れ着いて悪さをせぬよう回収したり、
要するに、世界の円滑な運行をサポートする仕事を、真面目にやっておったのでした。

今回のおはなしのお題回収役は、管理局内の空間にまつわる仕事をする「環境整備部」の局員で、
なんと、「こっち」の世界の奥多摩地方出身。
局内では、「奥多摩君」と呼ばれています。

都内のブラック企業に比べれば、福利厚生も給料も、やりがいも格別に高待遇だったので、
東京に帰らず、管理局員用の寮で、有意義に厨二局員ライフを謳歌しておった
のですが。

「今日ばかりは、さすがに東京に戻らないと」
そうです。「今日」です。
奥多摩君が昔々に友達と遊び倒したファミキューブのゲームソフト、ケービーのスカイライドのほぼほぼ続編、ケービーのスカイライズが、
20年の時を経て、発売されるのです。

ギリギリ昭和生まれの奥多摩君、昔々を思います。
ああ、嗚呼、友人と共に待ち合わせをして、
当時はグルチャなんて便利な物は無く、
ネットで回線を繋げることもなく、
誰かの家に集まって、ゲームをしたものでした。

ポップなキャラとガッチガチの場外乱闘、
友情ブレイキングなレースゲーム、
吹き渡る風は友人の殴打の風圧だったか、
吹き渡る風はタイムアタックの高速運転だったか。

ああ、あぁ、嗚呼。
既に生活拠点が東京どころか、日本でもなく、
なんなら地球ですらない奥多摩君ですが、
どうしても、もう一度、今現代の現行機のクオリティーで懐かしの感動を味わいたいのです。

なお20年前一緒に吹き渡る風を感じながらゲームを楽しんだ仲間とは完全に疎遠な奥多摩君です。
管理局には奥多摩君の他にも、地球から仕事に来ている局員は居るハズですが、
奥多摩君、彼等を見つけて一緒に吹き渡りゲーをできるのでしょうか??

…——「なに、ゲーム?」
東京でゲームの新作を買う前に、吹き渡る風の奥多摩君、同じ環境整備部に所属するビジネスネーム・キリンさんのところへ行きました。
キリンさん、キリンさん。地球から仕事に来てるゲーム好きな局員を知りませんか。

「ふむ。ゲーム好きな局員は知らんが」
キリンさん、なかなかのイケボで言いました。
「滝行仲間の地球人なら知っているぞ。なんでも天狗という種族の末裔らしい」

アッハイ、すいません、結構です。
水圧によって風吹き渡る、滝行に連行されかけた奥多摩君。全速力で逃げました。

…——「ゲーム?」
キリンさんから逃げ切った奥多摩君、ちょうど経理部まで辿り着いたので、ビジネスネーム・ロシアンブルーさんに聞いてみました。
ロシアンブルーさん、ロシアンブルーさん。地球から仕事に来てるゲーム好きな局員を知りませんか。

「地球から仕事に来てる局員なら、経理部の仕事柄で何人か知ってるけど、」
ロシアンブルー、遠くを見ながら言いました。
「趣味までは把握してないわねぇ……」

ところで向こうからキリンが余裕の足取りであなたにロックオンしてるけど、何かあったの。
ロシアンブルーのその一言で、衝撃が走り渡った奥多摩君。更に遠くへダッシュしました。

…——「なに。地球出身の?ゲームが好きな?」
キリンさんから更に逃げた奥多摩君、最後は管理局のエントランスロビーに到着。
受付の窓口でコンコン子狐にジャーキーを献上している、ビジネスネーム・コリーさんに聞きました。
コリーさん、コリーさん。地球から仕事に来てるゲーム好きな局員を知りませんか。

「どうだろうな?私はあまり、局員の出身や出自に詳しくないのだが、 ふむ、ふむ……」
コリーも遠くを見ながら、言いました。

ロシアンブルーとの一件で、奥多摩君、コリーが見ている視線の先を、おそるおそる確認しました。
「あっ」
奥多摩君は全力で、また駆け出しました。
結果として管理局のエントランスから出た奥多摩君に、吹き渡る風は少しだけ、涼しいものでした。

明日は明日の風が吹き渡ります。
今日は今日の風に、立ち向かわねば、ならぬのです。

11/19/2025, 9:59:17 AM

【世界線管理局 収蔵品
『記憶のランタン』『記録のランタン』
『記々の壁掛けスクリーン』】

記憶と記録、2個で1セットのランタン。
周囲の生命がリアルタイムで忘れていく記憶を、
記録のランタンが収集し、ロウソクに成形する。
記録のランタンが成形した記憶のロウソクを、
記憶のランタンが記録の灯火として燃やす。

記憶のランタンの灯火を影絵に投影して、忘れた記憶の記録映像を出力するための魔法のスクリーンが存在していたものの、
先日ハムスターにかじられ損壊した。

<<ハムスターにかじられ損壊した>>

――――――

あんなに暑かった東京都にも、とうとう冬の足音が、大きく聞こえてくるようになりました。
都内某所には本物の魔女のおばあちゃんが店主をしている、不思議な不思議な喫茶店がありまして、
魔女のおばあちゃんの手元には、いろんな世界から流れ着いた魔法のランタン、神秘のランタン、不思議で奇妙なランタン等々、
ランタンの形をした道具が、静かに、誰にも悪さをせず、キレイに棚に並べられたり、吊られたり。

ところで今回のお題は「記憶のランタン」。
とある滅亡世界から流れ着いた、その世界が「その世界」として間違いなくそこに在った証拠として、
魔女のおばあちゃん・アンゴラが、
時折丁寧に拭いてやったり、たまに火を灯してやったり、そこそこ大事にしてやっておりました
が。

このたび記憶のランタンの付属品を、悪いイタズラハムスターがカジカジ!壊してしまいまして。

「だって!だってすごく噛み心地がよさそうな木材が目の前にあるんだぞ!そりゃ噛むよ!」
ガラガラガラ、がらがらがら!
記憶のランタンの付属品を損壊したハムスターが、
アンゴラに捕縛されて、アンゴラの命令で、アンゴラの大好きなお茶っ葉を、
絶妙な温度でもって、焙煎しています。

ハムがガラガラ回しているのは、ネズミ車の形をした、イタズラハム専用の焙煎器。
イタズラハムは、熱さと冷たさを0.5℃、0.2℃、ともかくその単位で調整できるハムだったので、
ハムがそのチカラを解放して、専用焙煎器に入ってトットコ走りますと、カンペキな温度で焙煎が為されるのでした。

記憶のランタンの付属品、「記々のスクリーン」をカジカジ壊されたアンゴラおばあちゃんは、
イタズラハムが本能のままにスクリーンの木材をカジカジしているところを現行犯。
即座に捕獲して、「おしおき」して、
ハムが本能を理由に全然反省しませんので、
最終的に、ハム専用のガラガラ焙煎器にハムをブチ込み、アンゴラの大好きな紅茶の茶葉を、サッと焙煎させる罰を与えたのでした。

「ほら、あと500g残っているわ。頑張って」
「『頑張って』、じゃないよ!僕のこと毎回毎回、まいかい、こき使って!」
「それは、あなたが私の店の家具家財をかじって傷つけるから、悪いのよ。
さぁさぁ。走った走った。頑張って」
「くぅぅぅぅ!あとで覚えてろよ!」

ちゅーちゅー、ギーギー!
とっとこイタズラハム、ぶつぶつ不平不満を言いながら、回し車式の焙煎器の中で走る、はしる。

「記憶のランタンの灯火、見てみる?」
「なんだって?!」
「あなたが壊した付属品、じゃない方よ。誰かが忘れた記憶のロウソクで、いろんな色に光るの」
「あっそ!」

ガラガラガラ!
結局イタズラハムは始終不機嫌。
記憶のランタンの温かい光も、特にリラックス効果を示しませんでしたとさ。

Next