『溢れる気持ち』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
それは水のように湧き出すと思っていたの?
愚かにも無限の資源だとでも思っていたの?
風がいつしか止むように、
大地がいつしか荒むように、
水もいつしか涸れ果てるのだと、
少し考えればわかることだったでしょうに。
与えるばかりで返されないのならば、
この溢れる気持ちもいつしか消えていく。
長い長い一方通行に、私はもう疲れてしまった。
………あなたへの想いはもう失せてしまったの。
もう少し私を見ていてくれたのならば、
まだ頑張れたのかもしれない。
けれど、
あんなにもあなたが好きだと言う感情が、
どこから出ていたのかすら…私にはもうわからない。
【溢れる気持ち】
ようやく会えた。
あの時離れてからどのくらい月日が経ったのだろうか。
「お前なんかいなくても大丈夫だ」と己に言い聞かせていたが本音を言えば心細かった。あれは心に穴が開いていたんだろう。
久しぶりの再会にもかかわらず最後に会ったのは昨日のような態度で接する相手を見て不思議と安心しまう。
もっとその顔がみたい。それに話したいことは山ほどある。飯も食べに行きたいし、前みたいに頭をわしゃわしゃ撫でてもらいたい。何気ない時間を一緒に過ごしたい――
いろんな気持ちが押し寄せる。
心に開いていた穴から気持ちが溢れてしまうのを堪えて相手と同じように昨日会ったような態度で振る舞った。
「溢れ出る気持ち」
私は母への感謝の気持ちでいっぱいです。
私が生まれてから今まで、ずっとずっと大切に育ててくれました。私を少しでも楽しませようとしてくれたり、ちゃんと怒ってくれたり、グズグズな私にしっかり向き合ってくれました。
そんな母に、感謝の気持と大好きな気持が全身から溢れ出てきます。私に感謝の気持をおしえくれたのは母で、大好きという気持ちを教えてくれたのも母です。私は母からたくさんのことを学び、愛情を注がれてしました。私も母に負けないぐらいの愛情を母に注いでいきたいです。私は母への溢れ出る気持ちを毎日、全身で表現していこうと思います!
「なんか…疲れてる気がするな。」
きっかけはそんなもの。
「ジドウジンセイソウダンシステムニ、ヨウコソ
200エンヲ、オイレクダサイ」
「ソレデハ、アナタノゲンジョウヲ、オシエテクダサイ」
・年の離れた旦那と二人暮し
・子供はいない
・仕事は週4日
・先日、転職が決まり、今は転職先の勤務開始日まで自由な時間を過ごしている
・給料は自分で自由にできる
「デハ、シアワセナコトハ、ナンデスカ」
・好きな人が隣にいてくれること
・お金が自由に使えること
・衣食住に不自由せずに暮らせていること
・遊んでくれる友達がいること
・両親が元気なこと
「デハ、フシアワセナコトハ、ナンデスカ」
入力する手が、止まる。
「フシアワセな、こと?」
フシアワセ…ふしあわせ…不幸せ………あれ?
自分の口ぐせを思い出すと「料理を作らなきゃいけない」とか「掃除が全部私任せになってる」とか、不満に感じることはよく出てくるけど、不幸せなことって…何も、浮かばない?
「あれ…私…もしかして…?」
入力がなかったからなのか、もう一度同じ質問が流れる。
「デハ、フシアワセナコトハ、ナンデスカ」
・特になし
「ソレデハ、アナタハ、シアワセデスネ
ヒキツヅキ、シアワセナジンセイヲ、オスゴシクダサイ」
「幸せな人生…」
硬貨を求める最初の画面を見つめながら、私はその言葉を噛み締める。
「そうか、私、客観的にみたら、幸せなんだ。」
たかがシステムの回答だ。
しかも、気まぐれで200円硬貨を入れただけ。
回答内容もAIが発達したこの時代に、カタカナ表記の定型文のみ。
「…そうか、私、幸せなんだ…幸せ、なんだね。」
何故か、少しの涙が頬を伝った。
お題「溢れる気持ち」
嬉しすぎて溢れた気持ち。
私は幸せな時、心いっぱいに"幸せ"と
いう気持ちが溢れ出る。
しんどい時、心いっぱいになった"つらい"
という気持ちを押し込む。押し込む。
そしていつか、溢れる。壊れる。
どちらも溢れ出るのなら"幸せ"の気持ちの方がいいな。つらい気持ちは溢れるほど要らない。
実際はどっこいどっこいぐらいの
"幸せ"と"つらい"がこれからも来るんだろうなぁ。
今日はいつもより短めとなった気がします。今日もここまで読んでくださってありがとうございました。
お題は、『溢れる気持ち』でした。
最初はわからなかった。
君と目が合った時のこの感情の名前を。
ただ、顔に熱がこもって、胸が暴れ出す。
ろくに口も開けなくなるこの感情を、知らなかった。
君を知っていくうちに、分かってきた自分の想い。
君とずっと話していたい。君の1番になりたい。
だんだんと欲張りになっていく自分が、
ちょっと嫌いになりそうだった。
ようやく知った君への愛は、最初の頃より重たくて。
いっその事君を、どこかに閉じ込めてしまいたい。
恋慕はいずれ、執着に変わっていく。
つい、溢れ出てしまった気持ち。
「私だけを見てよ」
ため息とともに出た言葉は、
君の耳に入るには小さ過ぎて。
最近初恋の人のインスタを見つけて思わずフォローしてしまった。相互フォローになってそれだけで嬉しかった。
彼のことを考えると気持ちが溢れてしまう。
色んなことを考えてしまう。
早くDMしたいけど。
彼はモテるから早く思いを伝えたいけど。
なぜか言えなくて。伝えない方が楽かもしれない。
もう何年も会ってないから、勝手に想像して、悲しくなって…色んな感情が湧いてきて
、 どうしたらいいかかわからなくなってきた…
こんなうじうじしてる自分がほんとうに嫌だ。
溢れる気持ち
言葉にできない想いが
溢れ出す
どんなに押さえ込もうとしても
涙と一緒に流れていく
きっと
自分も相手も
傷つける
溢れ出す想いはブレーキがかからない
こっちを見て
ただ私だけを見て
絶対に振り向くことの無いあなた
わかってる、
あなたはみんなにやさしいから
みんなに平等の好きだから
それでも、願ってしまう
あなたからの特別を
この気持ちが溢れてしまう前に、
繊細なくせにツラの皮が厚い。という人にならないように必死だ。
もしくは、感受性の強い愚鈍。
めくらめっぽうに展開するセンサー感知に幼いアタマがひれ伏して
暇さえあれば「奴らは敵だ」とそそのかす。
悲しいこと、苦しんだことを免罪符にしませんように。
私の軟弱が厚顔の材料になりませんように。
______________________________
【51】溢れる気持ち
満員電車
職場
緊張やストレス、不安で気持ちが張り裂けそうになる。
人生は決して楽しいばかりではない。
でも逃げたくもない、、
堂々と懸命にあがいてやろう。
そうすればいつか自信が心のうち側から溢れてくるだ。
物心ついたときから『心のコップ』が見えた。
形も大きさも深さも人によってばらばらだ。
部長のコップを見るとグツグツと
赤い液体が煮えたぎっていた、
部長は機嫌が悪いと、物を投げたり
皆の前で怒鳴りつけたりする。
今日は自分の番だ。
「部長、今朝から機嫌悪いよね」
心配そうに声をかけてきてくれたのはBさん。
いつも周りを気にかけてくれる人だ 。
Bさんのコップを見れば、
ふちすれすれまで液体が溜まっている。
翌日からBさんは職場に来なくなった。
この職場は"いい人"からいなくなる。
残っているのは相当タフな人か変わり者だけ
自分もその変わり者の一人だ。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「大丈夫?」
目が覚めると心配そうにこちらを覗くCさんがいた。
ズキズキする頭をおさえながら先程の事を思い出す。
飲み会で部長に一気飲みを強要されて、
酒を煽った自分はそのまま意識を失ったらしい。
介抱してくれたCさんに謝罪とお礼を述べると、
気にした様子もなくニコニコとしていた。
自分はこの人が苦手だ。
わかりやすい部長の方がマシだと思えるくらい。
人懐こくて表情豊かで人気者のCさん。
そのコップの中身はいつも空っぽだ。
赤ん坊に犬や猫、鳥や魚にだって
多少なりとも感情の液体が入ってるのに、
この人の中にはそれがない 。
こちらに伸びてくる手を反射的に振り払ってしまう。
見上げるとCさんは笑っていた。
空っぽだったCさんのコップの底に
液体が溜まり、ついには溢れ出した。
お題「溢れる気持ち」
【溢れる気持ち】
ドミノ世界大会。
私は細心の注意を払いながら、並べられていくドミノを獲物を狙う鷹のような目で凝視していた。
「そろそろかな」
私は機を見計らうと観客席から飛び出しドミノにダイブした。
ガチャーン。バタバタバタバタバタ。
倒れる感覚がきもてぃぃいいいー。
やはり他人の努力を破壊することほど幸せなことはない。
が、すぐに気づく。
ドミノには転倒を防止するためのストッパーが付いているため、倒れたのは私の周りのドミノだけだ。
しまった!
こんなことならダメージが大きそうな立体ドミノを先に破壊しておくんだった。
私がすぐさま別のドミノを倒そうと動き出した瞬間。
「動くな!」
運営が準備していた警備員が駆け付け拳銃を構えた。
こいつら正気か。
当然私は止まらないので全身に銃弾を浴び帰らぬ人となった。
観客は思いもよらないパフォーマンスにどよめき立っていた。
めでたしめでたし。
彼女を見るたびに、心臓が痛かった。同僚で同じ部署の彼女は、誰にでも優しく、どれだけ忙しくても穏やかな笑顔を崩さない。先輩をたて、同僚に対しては分け隔てなく、後輩には親身に。まるで人類のお手本のような彼女は、誰からも好かれ、信頼されている。おまけに誰もが認める端麗な容姿、さらにはシゴデキときた。
私が好きになったのは、そういう人だ。私とは天と地の差、雲泥の差、月とすっぽん、提灯に釣鐘だ。平凡以下の容姿に平凡な仕事の出来、人の好き嫌いが激しくて上司に逆らうので評価は決して高くはなく、後輩には面白がられるが先輩や同僚には好かれない。そんな私が、社内で一番人望のある彼女に惹かれてしまった。
「無理があるよな……」
給湯室でがっくりとしゃがみこむと、なぜか懐いている後輩が声をかけてきた。
「何が無理なんですか?」
私の顔を覗き込むツインテールが揺れている。この後輩は、いつもこの髪型だ。職場にツインテールはないだろ、と思いつつ、面白いので放置している。今のところ、この後輩が上司や先輩に髪型を注意された形跡はない。こいつも上手いのだ、人心掌握が。
「君には関係ないよ。仕事しな」
「お昼の時間ですよぅ。先輩、一緒にご飯でもどうです?」
もうそんな時間か。雑務が嫌すぎて給湯室に避難していたら、昼休憩になっていた。これもいつものことだ。我ながら、よく減給とか左遷とかにならずに済んでいるものだ。デスクにいないことに気づかれていない可能性もある。
「いや、お弁当だから」
私が言うと、後輩は、にやっとして、かわいい布に包まれた弁当箱を翳した。
「私もお弁当なんです。天気もいいですし、外で食べましょ」
有無を言わさず、後輩は私の手をとり、ぐいぐいと引っ張っていく。
会社の中庭に着くと、後輩はベンチの一つを陣取り、膝の上でお弁当を広げた。女の子に人気のキャラ弁だった。誰が作ったのか気になるが、おそらく彼女自身だろう。この後輩は、あらゆる面でおそろしく器用だ。
「で、何か話でも?」
私が自作の弁当をつつきながら口火を切ると、後輩は、にっこりと笑った。
「はい、先輩の恋煩いについて」
私は卵焼きを喉に詰まらせた。胸を叩いて卵焼きをどうにかしようとするのを、後輩が背中を叩いて援護してくれた。
「あらら、ごめんなさい。そんなに動揺するとは思いませんでした」
何をぬけぬけと。涙目で後輩を睨むと、後輩は舌を出した。
「いきなり本題に入ったのは謝ります。けど、バレバレですよ先輩。溢れる思いが滲み出てます」
「え、嘘」
「嘘じゃないですよぉ。誰が見たってわかりますって」
ようやく飲み込んだ卵焼きとともに、その言葉が脳に浸透した。
誰が見たってわかります? 信じたくない。
「じゃあ、その『恋煩い』とやらの原因の名前を言ってごらんよ」
せめてもの虚勢、顎を上げて挑発しても、後輩は怯まなかった。
「うふふ……それは」
後輩が言った名前は、彼女のものだった。なぜバレた。もう虚勢は通用しない。頭を抱えて煩悶する私に、後輩はころころと笑った。
「先輩、そういうとこ、ほんとかわいいですよね。わかりやすくて」
私は後輩を睨んだ。虚勢は通用しなくても、腹立たしいことはある。
「あんまりバカにしないでよね。……無理なことくらい、わかってるんだから」
「バカになんてしてませんよ。むしろ、協力したいと思ってるんです」
「はい?」
「だから、協力。したいと、思ってるんですよ」
一語一句、噛み締めるように、後輩は言う。
協力だって? こいつに何ができるんだ。ちょっといい顔すれば仕事を減らしてくれる上司がいて、私の同僚たちもすっかり騙されていて、こいつの同僚も男子は骨抜きだが女子にはすこぶる評判の悪い、ツインテールの小娘が。
「あ、今、私の悪口言ってたでしょ」
「言ってないよ」
「まあいいです。事実なので。それより、私は先輩が好きなんですよ。人としてね。だから、先輩に好きな人がいたら協力したいと思うのは当たり前でしょ」
はあ。気の抜けた返事しかできない。私のことが、人として好きだって? それこそどうかしてる。
「信じるか信じないかは先輩次第です。でも、先輩のことが好きなのは事実なんです。だから協力しますよ」
キャラ弁の目玉をつんつんしながら後輩は言う。いつもは高めの声が耳を若干つんざくが、今日はそんなに気にならない。
「……ほんとに?」
恐る恐る尋ねると、後輩はこちらを見て、にやっと笑った。
「ギャルに二言はないです。計画、立てましょう」
なんせ、私は百戦錬磨ですから。そう言う後輩の目に、一瞬、寂しげな影がよぎったのは気のせいか。
まずはバレンタインですね。相手の好みは把握してますか?
空に箸を掲げる後輩に、今は感謝しておこうと思った。
溢れたら、溢れたぶんだけ失くしてしまうと思った。
わたしの外側に零れ落ちて、消えてしまうと思った。
どれだけ大事にしていても、そうなると信じていた。
ひと雫だって忘れたくなかった。
これはわたしのものだ。わたしだけのものだ。
そうして抱えて生きてきた。
ぴんと張り詰めた水面、美しく濁ったわたしの心。
そして、今。
そこに触れようとするあなたの指を、予感している。
初めて何かが壊れるだろうときを、待っている。
どうしてか。どうしてか。
#溢れる気持ち
どろり、とこぼれ落ちた。べちゃり、と地面に叩きつけられるように落ちたそれは、生臭くて、汚くて、なんだこの気持ちの悪いものはと蔑むように見下ろした。ちょうど心臓のあたりがぽっかりと空いていて、あれ、と首を傾げる。
ドロリ、とまた溢れ出す。びちゃびちゃと地面を汚して、足元にはすっかり黒い水たまりが出来ている。その水面に写るのは大嫌いな彼奴の姿だった。
まるで湧き水のように溢れる気持ち。
すべてあなたからの贈り物。
往々にして、気持ちというものは溢れるまで目に見えない。気持ちの入ってる容器は不透明なのだ。年月をかけて訓練すると、溢れさせなくても自分の気持ちの正体を察することができるようになる。ただ歳を取るだけでは「気持ち」に気がつくことはできない。現に、自分でも何が不満がわからないまま感情的に騒ぐ大人も多い。うまく気持ちを溢れさせ、周囲に自分の気持ちを知らしめることばかり得意な者もいる。「気持ち」は物質的には存在しないのに、それが溢れると良くも悪くも周囲にまで影響が及ぶ。すこぶる不思議なものである。
気持ちの溢れた瞬間、それに気付いた瞬間が最高にエモい。
蓋をしてもいい。
溢れるままにしてもいい。
苦しんでも浮かれてもいい。
ただ涸らすことだけなければいい。
僕はその日、好きな人の幽霊にあった。
中学生の時によく通っていた通学路を久しぶりに歩いてみた。
高校生になった今は、電車通学もあってかこの坂道を歩いていたなんて考えられない。
坂道を抜ければ公園が見える。
公園に入ってみれば緑色の葉が茶色になり散っていく。
近くのブランコがギィーギィーと軋む音が微かに聞こえた。
「や、山田さん…?」
「えっ…?」
ブランコに乗っている人物に目を向ければ、綺麗な栗色の髪の毛に小柄な体躯。鈴の音のようなか細く優しい声。
僕がずっと好きだった山田さんがそこにいた。
山田さんは俯いていた顔をあげ、僕を見ると光がなかった瞳が輝き出した。
「私の事が…見えるんですか!?」
嬉しそうな声音でブランコから立ち上がる山田さんを見れば…その体は薄く透けている。
「誰も私のこと見えてなくて…声をかけても誰も反応してくれなくて…私寂しかったんです!それに私…何も覚えてなくて。あなたは私を知っているんですよね?私はあなたとどういう関係なんですか?」
僕と山田さんの関係。
中学生の時のクラスメイト。
他人から見ればただのクラスメイトだ。
でも、僕から見れば山田さんは好きな人で…急に終わった恋の…苦い思い出の人。
「ぼ、僕らは…」
あの日々の記憶が蘇ってきた。
貸してくれたノートも笑いかけてくれたことも。
一緒の委員会になって助けれくれたことも。
山田さんにとっては思い出にもないことかもしれない。
「中学生の時に…付き合っていました。僕と山田さんは…」
僕は急に終わったこの恋を…この溢れる気持ちの終わらせ方を僕は知らない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
山田さん突然学校に来なくなって半年が経った頃。
最初の頃は、心配していクラスメイトだったが半年も経てば山田さんのことを気に止める人はいなくなっていた。
「山田さんの家って夜逃げしたらしいよ。両親の借金で」
「わたしは、妊娠したから学校辞めたって聞いたよ?」
「両親の借金返済のため働いてるんじゃね?」
それどころか根も葉もない他人の噂が独り歩きをしていた。
「私ってどんな中学生時代を送っていたの?放課後とか…デートしてた?」
「で、デデデデート!?あ、うん。してた。していました」
「そっか…楽しかったよね?なんで忘れちゃったんだろ」
寂しそうにする横顔を見て罪悪感が胸を埋めていく。
どうせ、山田さんは幽霊だ。
そんな最低な気持ちでついてしまった嘘。
「ねぇ……なんで…私が死んだか知ってたりする?」
「えっ……」
下を向き静かに震える山田さんに僕は、どんな声をかければいいかわからなくなった。
「やっぱり…知らないよね。変なこと聞いごめんね」
「いや、山田さんは何も悪くないよ」
「ありがとう。私も最後に自分を知ってて見える人に出会えてよかったよ」
「最後…?」
「私はもうすぐ消えて完全にいなくなるんだと思う。またより一層薄くなってきたから…」
手を太陽にかざすと日の光が手のひらを通して山田さんに当たる。
「ねぇ、私とどんなところデートしたの?」
「えっ…本屋とか?」
「真面目だね!他には?」
山田さんは本が好きだった。
他にも甘いものに目がなくて…オシャレも好きでクラスメイトと話していたのを聞いていたし。
猫より犬が好きで…数学より国語が得意で…。
「大丈夫?!な、泣いてるの?」
山田さんは僕の手に自分の手を重ねる。
温もりを感じることも出来なければ、ぴったりと重なることはない。
でも……
「ねぇ、また明日私たち会えるかな?」
「えっ…あぁ…うん。明日会えるよ」
「じゃ、明日あ…」
瞬きする間もなく気付けば隣には誰もいなかった。
何十分。いや、何時間経ったのだろうか。
山田さんの手の優しさを忘れられなかった。
僕は好きな人の幽霊にあった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
学生時代によく通っていた通学路を久しぶりに歩いてみた。
社会人になった今、電車通勤もあってかこの坂道を歩いていたなんて考えられない。
坂道を抜ければ公園が見えた。
未だに思い出す。
僕はその日、好きな人の幽霊にあったことを。
会ってからずっと公園に行ってみるが、もう会えることはなかった。
多分、自分の脳みそが見せた幻覚だろう。
未練がましい自分に嫌気がさして行くのを辞めた。
「ちょうど…このベンチに座って喋ってたかな」
綺麗な栗色の髪も。
鈴の音のようなか細く優しい声も。
胸をときめかせるあの笑顔も。
山田さんは中学生の頃と何も変わってなかった。
都合のいい幻覚だった。
「また…会えないかな」
「誰に?」
「誰って…山田さん…に?」
「私に会いたかったの?」
言葉が出なかった。
口が空気ばかりを入れていた。
胸が張り裂けるような痛みを感じる。
「会いたかった…し…。ごめんなさい。僕、山田さんに嘘を…」
「言わなくていいよ。今さらあの日のことを…あの一瞬の思い出でも私の楽しかった思い出だよ」
「いや、なんでここにいるの?」
「私…死んでたわけじゃなかったの。気付けば病院のベッドの上で3年間も寝てて…それからリハビリ頑張って学校に行って……でも、ずっと考えていたのあなたのこと」
山田さんの綺麗なほどの笑顔が変わらずにそこにあった。
「ねぇ、私とまた付き合ってほしい。この恋を…この溢れる気持ちの終わらせ方を私は知らないから」
僕はその日、好きな人にあった。
ずっと好きな人に。