「なんか…疲れてる気がするな。」
きっかけはそんなもの。
「ジドウジンセイソウダンシステムニ、ヨウコソ
200エンヲ、オイレクダサイ」
「ソレデハ、アナタノゲンジョウヲ、オシエテクダサイ」
・年の離れた旦那と二人暮し
・子供はいない
・仕事は週4日
・先日、転職が決まり、今は転職先の勤務開始日まで自由な時間を過ごしている
・給料は自分で自由にできる
「デハ、シアワセナコトハ、ナンデスカ」
・好きな人が隣にいてくれること
・お金が自由に使えること
・衣食住に不自由せずに暮らせていること
・遊んでくれる友達がいること
・両親が元気なこと
「デハ、フシアワセナコトハ、ナンデスカ」
入力する手が、止まる。
「フシアワセな、こと?」
フシアワセ…ふしあわせ…不幸せ………あれ?
自分の口ぐせを思い出すと「料理を作らなきゃいけない」とか「掃除が全部私任せになってる」とか、不満に感じることはよく出てくるけど、不幸せなことって…何も、浮かばない?
「あれ…私…もしかして…?」
入力がなかったからなのか、もう一度同じ質問が流れる。
「デハ、フシアワセナコトハ、ナンデスカ」
・特になし
「ソレデハ、アナタハ、シアワセデスネ
ヒキツヅキ、シアワセナジンセイヲ、オスゴシクダサイ」
「幸せな人生…」
硬貨を求める最初の画面を見つめながら、私はその言葉を噛み締める。
「そうか、私、客観的にみたら、幸せなんだ。」
たかがシステムの回答だ。
しかも、気まぐれで200円硬貨を入れただけ。
回答内容もAIが発達したこの時代に、カタカナ表記の定型文のみ。
「…そうか、私、幸せなんだ…幸せ、なんだね。」
何故か、少しの涙が頬を伝った。
お題「溢れる気持ち」
2/5/2024, 2:46:34 PM