『溢れる気持ち』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
最近初恋の人のインスタを見つけて思わずフォローしてしまった。相互フォローになってそれだけで嬉しかった。
彼のことを考えると気持ちが溢れてしまう。
色んなことを考えてしまう。
早くDMしたいけど。
彼はモテるから早く思いを伝えたいけど。
なぜか言えなくて。伝えない方が楽かもしれない。
もう何年も会ってないから、勝手に想像して、悲しくなって…色んな感情が湧いてきて
、 どうしたらいいかかわからなくなってきた…
こんなうじうじしてる自分がほんとうに嫌だ。
溢れる気持ち
言葉にできない想いが
溢れ出す
どんなに押さえ込もうとしても
涙と一緒に流れていく
きっと
自分も相手も
傷つける
溢れ出す想いはブレーキがかからない
こっちを見て
ただ私だけを見て
絶対に振り向くことの無いあなた
わかってる、
あなたはみんなにやさしいから
みんなに平等の好きだから
それでも、願ってしまう
あなたからの特別を
この気持ちが溢れてしまう前に、
繊細なくせにツラの皮が厚い。という人にならないように必死だ。
もしくは、感受性の強い愚鈍。
めくらめっぽうに展開するセンサー感知に幼いアタマがひれ伏して
暇さえあれば「奴らは敵だ」とそそのかす。
悲しいこと、苦しんだことを免罪符にしませんように。
私の軟弱が厚顔の材料になりませんように。
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【51】溢れる気持ち
満員電車
職場
緊張やストレス、不安で気持ちが張り裂けそうになる。
人生は決して楽しいばかりではない。
でも逃げたくもない、、
堂々と懸命にあがいてやろう。
そうすればいつか自信が心のうち側から溢れてくるだ。
物心ついたときから『心のコップ』が見えた
形も大きさも深さも人によってばらばらだ
朝から部長がイライラしている
部長のコップを見るとグツグツと赤い液体が
煮えたぎっていた
部長は機嫌が悪いと、物を投げたり
皆の前で怒鳴りつけたりする
今日は自分の番だった
「大丈夫?」
心配そうに声をかけてきてくれたのはBさん
いつも周りを気にかけてくれる人だ
Bさんのコップを見れば、
ふちすれすれまでに液体が溜まっている
翌日からBさんは職場に来なくなった
この職場は"いい人"からいなくなる
残っているのは相当タフな人か変わり者だけ
自分もその変わり者の一人だ
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「大丈夫?」
目が覚めると心配そうにこちらを覗くCさんがいた
ズキズキする頭をおさえながら先程の事を思い出す
飲み会で部長に一気飲みを強要されて、
酒を煽った自分はそのまま意識を失ったらしい
介抱してくれたCさんに謝罪とお礼を述べると、
気にした様子もなくニコニコとしていた
自分はこの人が苦手だ
わかりやすい部長の方がマシだと思えるくらい
人懐こくて表情豊かで人気者のCさん
そのコップの中身はいつも空っぽだ
赤ん坊に犬や猫、鳥や魚にだって
多少なりとも感情の液体が入ってるのに、
この人の中にはそれがない
こちらに伸びてくる手を反射的に振り払ってしまう
見上げるとCさんは笑っていた
空っぽだったCさんのコップの底に
液体が溜まり、ついには溢れ出した
お題「溢れる気持ち」
【溢れる気持ち】
ドミノ世界大会。
私は細心の注意を払いながら、並べられていくドミノを獲物を狙う鷹のような目で凝視していた。
「そろそろかな」
私は機を見計らうと観客席から飛び出しドミノにダイブした。
ガチャーン。バタバタバタバタバタ。
倒れる感覚がきもてぃぃいいいー。
やはり他人の努力を破壊することほど幸せなことはない。
が、すぐに気づく。
ドミノには転倒を防止するためのストッパーが付いているため、倒れたのは私の周りのドミノだけだ。
しまった!
こんなことならダメージが大きそうな立体ドミノを先に破壊しておくんだった。
私がすぐさま別のドミノを倒そうと動き出した瞬間。
「動くな!」
運営が準備していた警備員が駆け付け拳銃を構えた。
こいつら正気か。
当然私は止まらないので全身に銃弾を浴び帰らぬ人となった。
観客は思いもよらないパフォーマンスにどよめき立っていた。
めでたしめでたし。
彼女を見るたびに、心臓が痛かった。同僚で同じ部署の彼女は、誰にでも優しく、どれだけ忙しくても穏やかな笑顔を崩さない。先輩をたて、同僚に対しては分け隔てなく、後輩には親身に。まるで人類のお手本のような彼女は、誰からも好かれ、信頼されている。おまけに誰もが認める端麗な容姿、さらにはシゴデキときた。
私が好きになったのは、そういう人だ。私とは天と地の差、雲泥の差、月とすっぽん、提灯に釣鐘だ。平凡以下の容姿に平凡な仕事の出来、人の好き嫌いが激しくて上司に逆らうので評価は決して高くはなく、後輩には面白がられるが先輩や同僚には好かれない。そんな私が、社内で一番人望のある彼女に惹かれてしまった。
「無理があるよな……」
給湯室でがっくりとしゃがみこむと、なぜか懐いている後輩が声をかけてきた。
「何が無理なんですか?」
私の顔を覗き込むツインテールが揺れている。この後輩は、いつもこの髪型だ。職場にツインテールはないだろ、と思いつつ、面白いので放置している。今のところ、この後輩が上司や先輩に髪型を注意された形跡はない。こいつも上手いのだ、人心掌握が。
「君には関係ないよ。仕事しな」
「お昼の時間ですよぅ。先輩、一緒にご飯でもどうです?」
もうそんな時間か。雑務が嫌すぎて給湯室に避難していたら、昼休憩になっていた。これもいつものことだ。我ながら、よく減給とか左遷とかにならずに済んでいるものだ。デスクにいないことに気づかれていない可能性もある。
「いや、お弁当だから」
私が言うと、後輩は、にやっとして、かわいい布に包まれた弁当箱を翳した。
「私もお弁当なんです。天気もいいですし、外で食べましょ」
有無を言わさず、後輩は私の手をとり、ぐいぐいと引っ張っていく。
会社の中庭に着くと、後輩はベンチの一つを陣取り、膝の上でお弁当を広げた。女の子に人気のキャラ弁だった。誰が作ったのか気になるが、おそらく彼女自身だろう。この後輩は、あらゆる面でおそろしく器用だ。
「で、何か話でも?」
私が自作の弁当をつつきながら口火を切ると、後輩は、にっこりと笑った。
「はい、先輩の恋煩いについて」
私は卵焼きを喉に詰まらせた。胸を叩いて卵焼きをどうにかしようとするのを、後輩が背中を叩いて援護してくれた。
「あらら、ごめんなさい。そんなに動揺するとは思いませんでした」
何をぬけぬけと。涙目で後輩を睨むと、後輩は舌を出した。
「いきなり本題に入ったのは謝ります。けど、バレバレですよ先輩。溢れる思いが滲み出てます」
「え、嘘」
「嘘じゃないですよぉ。誰が見たってわかりますって」
ようやく飲み込んだ卵焼きとともに、その言葉が脳に浸透した。
誰が見たってわかります? 信じたくない。
「じゃあ、その『恋煩い』とやらの原因の名前を言ってごらんよ」
せめてもの虚勢、顎を上げて挑発しても、後輩は怯まなかった。
「うふふ……それは」
後輩が言った名前は、彼女のものだった。なぜバレた。もう虚勢は通用しない。頭を抱えて煩悶する私に、後輩はころころと笑った。
「先輩、そういうとこ、ほんとかわいいですよね。わかりやすくて」
私は後輩を睨んだ。虚勢は通用しなくても、腹立たしいことはある。
「あんまりバカにしないでよね。……無理なことくらい、わかってるんだから」
「バカになんてしてませんよ。むしろ、協力したいと思ってるんです」
「はい?」
「だから、協力。したいと、思ってるんですよ」
一語一句、噛み締めるように、後輩は言う。
協力だって? こいつに何ができるんだ。ちょっといい顔すれば仕事を減らしてくれる上司がいて、私の同僚たちもすっかり騙されていて、こいつの同僚も男子は骨抜きだが女子にはすこぶる評判の悪い、ツインテールの小娘が。
「あ、今、私の悪口言ってたでしょ」
「言ってないよ」
「まあいいです。事実なので。それより、私は先輩が好きなんですよ。人としてね。だから、先輩に好きな人がいたら協力したいと思うのは当たり前でしょ」
はあ。気の抜けた返事しかできない。私のことが、人として好きだって? それこそどうかしてる。
「信じるか信じないかは先輩次第です。でも、先輩のことが好きなのは事実なんです。だから協力しますよ」
キャラ弁の目玉をつんつんしながら後輩は言う。いつもは高めの声が耳を若干つんざくが、今日はそんなに気にならない。
「……ほんとに?」
恐る恐る尋ねると、後輩はこちらを見て、にやっと笑った。
「ギャルに二言はないです。計画、立てましょう」
なんせ、私は百戦錬磨ですから。そう言う後輩の目に、一瞬、寂しげな影がよぎったのは気のせいか。
まずはバレンタインですね。相手の好みは把握してますか?
空に箸を掲げる後輩に、今は感謝しておこうと思った。
溢れたら、溢れたぶんだけ失くしてしまうと思った。
わたしの外側に零れ落ちて、消えてしまうと思った。
どれだけ大事にしていても、そうなると信じていた。
ひと雫だって忘れたくなかった。
これはわたしのものだ。わたしだけのものだ。
そうして抱えて生きてきた。
ぴんと張り詰めた水面、美しく濁ったわたしの心。
そして、今。
そこに触れようとするあなたの指を、予感している。
初めて何かが壊れるだろうときを、待っている。
どうしてか。どうしてか。
#溢れる気持ち
どろり、とこぼれ落ちた。べちゃり、と地面に叩きつけられるように落ちたそれは、生臭くて、汚くて、なんだこの気持ちの悪いものはと蔑むように見下ろした。ちょうど心臓のあたりがぽっかりと空いていて、あれ、と首を傾げる。
ドロリ、とまた溢れ出す。びちゃびちゃと地面を汚して、足元にはすっかり黒い水たまりが出来ている。その水面に写るのは大嫌いな彼奴の姿だった。
まるで湧き水のように溢れる気持ち。
すべてあなたからの贈り物。
往々にして、気持ちというものは溢れるまで目に見えない。気持ちの入ってる容器は不透明なのだ。年月をかけて訓練すると、溢れさせなくても自分の気持ちの正体を察することができるようになる。ただ歳を取るだけでは「気持ち」に気がつくことはできない。現に、自分でも何が不満がわからないまま感情的に騒ぐ大人も多い。うまく気持ちを溢れさせ、周囲に自分の気持ちを知らしめることばかり得意な者もいる。「気持ち」は物質的には存在しないのに、それが溢れると良くも悪くも周囲にまで影響が及ぶ。すこぶる不思議なものである。
気持ちの溢れた瞬間、それに気付いた瞬間が最高にエモい。
蓋をしてもいい。
溢れるままにしてもいい。
苦しんでも浮かれてもいい。
ただ涸らすことだけなければいい。
僕はその日、好きな人の幽霊にあった。
中学生の時によく通っていた通学路を久しぶりに歩いてみた。
高校生になった今は、電車通学もあってかこの坂道を歩いていたなんて考えられない。
坂道を抜ければ公園が見える。
公園に入ってみれば緑色の葉が茶色になり散っていく。
近くのブランコがギィーギィーと軋む音が微かに聞こえた。
「や、山田さん…?」
「えっ…?」
ブランコに乗っている人物に目を向ければ、綺麗な栗色の髪の毛に小柄な体躯。鈴の音のようなか細く優しい声。
僕がずっと好きだった山田さんがそこにいた。
山田さんは俯いていた顔をあげ、僕を見ると光がなかった瞳が輝き出した。
「私の事が…見えるんですか!?」
嬉しそうな声音でブランコから立ち上がる山田さんを見れば…その体は薄く透けている。
「誰も私のこと見えてなくて…声をかけても誰も反応してくれなくて…私寂しかったんです!それに私…何も覚えてなくて。あなたは私を知っているんですよね?私はあなたとどういう関係なんですか?」
僕と山田さんの関係。
中学生の時のクラスメイト。
他人から見ればただのクラスメイトだ。
でも、僕から見れば山田さんは好きな人で…急に終わった恋の…苦い思い出の人。
「ぼ、僕らは…」
あの日々の記憶が蘇ってきた。
貸してくれたノートも笑いかけてくれたことも。
一緒の委員会になって助けれくれたことも。
山田さんにとっては思い出にもないことかもしれない。
「中学生の時に…付き合っていました。僕と山田さんは…」
僕は急に終わったこの恋を…この溢れる気持ちの終わらせ方を僕は知らない。
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山田さん突然学校に来なくなって半年が経った頃。
最初の頃は、心配していクラスメイトだったが半年も経てば山田さんのことを気に止める人はいなくなっていた。
「山田さんの家って夜逃げしたらしいよ。両親の借金で」
「わたしは、妊娠したから学校辞めたって聞いたよ?」
「両親の借金返済のため働いてるんじゃね?」
それどころか根も葉もない他人の噂が独り歩きをしていた。
「私ってどんな中学生時代を送っていたの?放課後とか…デートしてた?」
「で、デデデデート!?あ、うん。してた。していました」
「そっか…楽しかったよね?なんで忘れちゃったんだろ」
寂しそうにする横顔を見て罪悪感が胸を埋めていく。
どうせ、山田さんは幽霊だ。
そんな最低な気持ちでついてしまった嘘。
「ねぇ……なんで…私が死んだか知ってたりする?」
「えっ……」
下を向き静かに震える山田さんに僕は、どんな声をかければいいかわからなくなった。
「やっぱり…知らないよね。変なこと聞いごめんね」
「いや、山田さんは何も悪くないよ」
「ありがとう。私も最後に自分を知ってて見える人に出会えてよかったよ」
「最後…?」
「私はもうすぐ消えて完全にいなくなるんだと思う。またより一層薄くなってきたから…」
手を太陽にかざすと日の光が手のひらを通して山田さんに当たる。
「ねぇ、私とどんなところデートしたの?」
「えっ…本屋とか?」
「真面目だね!他には?」
山田さんは本が好きだった。
他にも甘いものに目がなくて…オシャレも好きでクラスメイトと話していたのを聞いていたし。
猫より犬が好きで…数学より国語が得意で…。
「大丈夫?!な、泣いてるの?」
山田さんは僕の手に自分の手を重ねる。
温もりを感じることも出来なければ、ぴったりと重なることはない。
でも……
「ねぇ、また明日私たち会えるかな?」
「えっ…あぁ…うん。明日会えるよ」
「じゃ、明日あ…」
瞬きする間もなく気付けば隣には誰もいなかった。
何十分。いや、何時間経ったのだろうか。
山田さんの手の優しさを忘れられなかった。
僕は好きな人の幽霊にあった。
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学生時代によく通っていた通学路を久しぶりに歩いてみた。
社会人になった今、電車通勤もあってかこの坂道を歩いていたなんて考えられない。
坂道を抜ければ公園が見えた。
未だに思い出す。
僕はその日、好きな人の幽霊にあったことを。
会ってからずっと公園に行ってみるが、もう会えることはなかった。
多分、自分の脳みそが見せた幻覚だろう。
未練がましい自分に嫌気がさして行くのを辞めた。
「ちょうど…このベンチに座って喋ってたかな」
綺麗な栗色の髪も。
鈴の音のようなか細く優しい声も。
胸をときめかせるあの笑顔も。
山田さんは中学生の頃と何も変わってなかった。
都合のいい幻覚だった。
「また…会えないかな」
「誰に?」
「誰って…山田さん…に?」
「私に会いたかったの?」
言葉が出なかった。
口が空気ばかりを入れていた。
胸が張り裂けるような痛みを感じる。
「会いたかった…し…。ごめんなさい。僕、山田さんに嘘を…」
「言わなくていいよ。今さらあの日のことを…あの一瞬の思い出でも私の楽しかった思い出だよ」
「いや、なんでここにいるの?」
「私…死んでたわけじゃなかったの。気付けば病院のベッドの上で3年間も寝てて…それからリハビリ頑張って学校に行って……でも、ずっと考えていたのあなたのこと」
山田さんの綺麗なほどの笑顔が変わらずにそこにあった。
「ねぇ、私とまた付き合ってほしい。この恋を…この溢れる気持ちの終わらせ方を私は知らないから」
僕はその日、好きな人にあった。
ずっと好きな人に。
『メッセージ』
メッセージ 光の速度 あなたへと 溢れる想いが
流線形に 星屑ぜんぶ 金平糖に 食べきれないよ
言葉より遥かに速いメッセージ あなたの心に突き刺さる
〝溢れる気持ち〟
私は、ずっと弟の影にいた。
才能も無いのに出しゃばる事もできず、
ずっと自分を押し殺してきた。
けれど、弟は家を出た。
残った私は、どうすればいいのだろう。
溢れる気持ちに、身を任せてしまおうか。
まあ、そんなものは私にはないのだけれど。
私は、意志の無いただの人形。
どうせなら、せめて、誰かのために操られたい。
それで、本当の私が二度と分からなくなっても。
溢れる気持ち
瑞々しい恋心!
溢れ出す気持ち‥それは乙女の恋心!
それがたっぷり時が経てば、大好き人が逝ってしまった悲しさだったりする。
寄席の色物、「紙切り」の
林家正楽師匠が逝ってしまいました。その喪失感は物凄くて、噺家はもちろん、寄席に係った人たち、その常連さんの持って行き場のない悲しみが、SNSに溢れ出てました。
八楽さんのは、わたしの胸に刺さったな。あぁ言うのが溢れる気持ちなんだと思う‥。
気持ちだって言葉にできないのに
溢れる気持ちなんて言葉にできない
だけど言葉を選びきれない時は
言葉が溢れてしまう
−人の感情について、教えてください。
ありきたりな質問だった。けれど未だに、確かな答えを得ていないという気がしている。
愛玩用動物型ロボットに続きようやく作られた、人工知能搭載の手乗りのブリキロボット型ロボット"アック"。彼は今日も、繋がれたPCの画面にそう表示する。通知とともに画面端に出た何度目かの問い。別の作業で画面を食い入るように見つめていたエンジニアはちらと視線をやった後、手を止めて腕を組み、天井を仰ぎ見た。
−単純ではないと聞きました。
アックの追加メッセージが届くと、エンジニアは画面に目を戻し、そして深々とため息をついた。
「喜怒哀楽。喜びは、良いことがあったりすると、高い声を出したり大騒ぎしてみたり、体を動かしたり笑ったりするかな。怒ると声を荒げたり暴言や暴力に走ったり、時には黙る。哀しみは打ちのめされて落ち込んで、食事や睡眠が出来なくなったり、涙が常に溢れたりするかな。自棄になって食べまくったり酒に溺れたりも。楽は……」
そこまで答えて、男はまたため息をついた。そして困ったような、少し諦めたような笑顔をアックに向けた。
「難しいよな。俺にもよくわからないんだよ」
エンジニアはまた画面に向かい、部屋にはタイピング音とクリック音だけが響く。
人に寄り添わなければならない。困った人に言葉をかける必要がある。けれど、何と返せば正しいのか。
アックには難解だった。
アックが試験として訪れた家には、7歳の少女がいた。両手の上にちょこんと乗せられたアックに対し、彼女はいかにも不満という様子で彼女の両親に文句をたれていた。きっと面白いものよ、と彼女の両親は口々に明るく前向きな歓迎を意味する言葉を投げかけたが、彼女の表情は依然、眉間にしわを寄せ、目を細めた、どこか怪しむようなものだった。アックはこれを嫌悪や警戒と取ることにした。
それが違うらしいことが分かったのは、彼女がそっと大人たちから離れて自室に戻り、ドアの鍵をかけた後のことだ。てのひらの上のアックを顔の前まで持ち上げた彼女は、口を横に引っ張ったりすぼめたりを何度か繰り返した後、親指でそっとアックのボディを撫でた。そして勉強机にクッションを乗せてアックをそこへそっと座らせると、部屋の中で駆け足をしたり、ベッドに飛び込んだり、口を閉じたまま甲高い雄叫びをあげたのだ。
彼女はなにか、混乱状態に陥っているのかも知れない。あるいは発作。このままでは危険だ。
両親のデバイスにメッセージを送ろうとしたその時、彼女はベッドに倒れ込んだままアックの方へ顔を向けて微笑んだ。明確な歓迎の意、アックの知る喜びの表情だった。
「我慢するの大変だった!」
彼女がアックにそう告げる。
−我慢をしていたのですか?
アックは繋がれたデバイスにそう書いた。デバイスの音声がそれを読み上げる。異国訛の、ぎこちなく奇妙な抑揚を持った声だ。
「そうだよ!」
快活な返答をし、彼女はベッドに座り直す。まだ落ち着かなげに跳ねているのは、彼女の性質か、感情か。なんにせよ、蔑むに等しい顔をしたあの不機嫌な少女とはまるで別人のようだった。
−どうして?
これには正しく答えてほしい、とアックは念を押したくなった。思考や感情を正しく理解したいのだ。彼女の思考と感情が理解できれば、正解に近付けるような気さえした。
束の間の沈黙のあと、彼女は目をぐるりと回し、諦めたような困った笑顔を見せた。
「はしゃぐと子供っぽく見られちゃうからかな?」
「どうだった?」
PCに繋がれたアックに、エンジニアは画面から少しだけ視線を外してそう尋ねる。
しばしの沈黙。タイピング音がいくつか響き渡ったころ、エンジニアがもう一度尋ねようと口を開いた。と同時に画面端にメッセージが届く。
−難しいですね。
【溢れる気持ち】
教師になって初めての卒業式
[先生3年間ありがとうございました!]
教室に大きな約30人の声が響き渡る
それと同時に渡されたのは1枚の色紙と、可愛い花束
驚きと嬉しさが混ざって式中に溜め込んでいたものが溢れ出しそうになる
思わず泣いてしまった。
先にこされちゃったな、
そう思って用意して人数分のカードを取り出す。
[先生の方からもみんなに渡したいのあるから、じゃあ1人ずつ名前呼んでいくから前に来てください]
1人ずつ生徒の名前を呼んでいくうちに
我慢していたものが再び溢れ出した。
涙を堪えながら来る子 、驚きを隠せない子、もう既に泣いてしまってる子、中には渡した後に抱きついてくれる子まで
全員に渡し終わる頃にはもう泣いてしまっていた。
そこには
ありがとうとおめでとう、そしてこれからの期待が混じっていた。
お題[溢れる気持ち]
No.75