『暗がりの中で』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
がしゃーん!
部屋に響く鋭い音。それは床に叩き落とされた食器が発した音だった。
「うるせえって言ってんだろ。」
鋭い眼光でこちらを見やる男の姿は数年前と比べて随分と変わったようだった。男の子と呼ぶには大きくなりすぎた背、何も容姿のことだけでは無い。
心もここ数年で悪い方向へと大きく変化してしたようで。
しかし、いわゆる反抗期とは訳が違うらしかった。最初は学校を休みがちになり、その後あまり外へ出たがらなくなり、遂に部屋からもほとんど出ることがなくなって今に至る。
理由は絶対に教えてはくれない。だからこそ彼の抱える闇は大きくなり続けここまで来てしまったのだろう。
ああ、いつか私は暗がりの中にいる貴方を照らすことが出来るのだろうか。正解のない問を私はずっととき続けている。
そんなことをかんがえながら落ちた食器を片付けるのだった。
No.1【暗がりの中で】
部屋の電球が切れた。
一人暮らしを始めてから初めての事態であった。最初は停電か、とも思ったが、トイレもお風呂場も電気がつくし、違うなとすぐに判断がついた。現在、23時。明日も早いし、これから寝る判断もできる。これが実家であれば母に頼んで買い置きの電球をつけてもらえるが、現在一人暮らしでこの時間ではどうしようもない。
手探りでひとまず明かりのつけられる場所をつけて、足元に注意しながら壁伝いに歩いてベッドに潜る。寝るしかないのか。折角、日記を書いていたのに。頑張れば、携帯の明かりとか、今つけた明かりの中で続きを書くことはできるだろうけれど、やりたくない。ここ数年携帯に接する時間が長すぎるな、と思ってやっと最近減らせてきていたのに。数分前までどこもかしこも見えていた部屋が、今はわずかな明かりの中で見えるところと、目が慣れてきてぼんやりと見えるところだけ見えている状態になってしまった。急に真っ暗になるからと動揺してしまったが、そもそも寝るとしたらつけてきた電気は消さなければいけないじゃないか、と冷静なってきた頭で思う。
なんか、うまくいかないな。
嫌な事は続くとは言うけれど、今日はこれ以外にも片手で足りるくらいの嫌なことがあって、なんとなく鬱々とした気分を払うための日記だった為に、これはもう今日一日がアンラッキーだったと感じてしまう。そして、そんなことを考えているとベッドに入っても寝れるわけがない。
諦めて起き上がって、つけていたわずかな電気も消した。少しだけ慣れていた目が、また最初から慣れようとしている。またやっとの思いでベッドに潜ると、足元に携帯が当たった。変なところに置いていたらしい。手元にやると不可抗力で画面が開く。寝る前に携帯を見たくないのにな、と思い目を伏せようとしたが「スーパームーン」の文字が目に入った。今日は月が綺麗な日らしい。ベッド脇の一人暮らしだとあまり活躍しないカーテンを開くと、部屋がグーっと明るくなった。高いビルに囲まれた中でもその名通りの月が静かにそこにいて、私を照らしていた。描き途中だった日記が、カーテンを開けた勢いでめくれる。
まるで、私の嫌な事はここで切れるとでもいいたげに。
( おやすみなさい )
【暗がりの中で】
【暗がりの中で】
こういう時は手を伸ばしたり
叫んだりして”誰か”を求めるらしい
でもここではそんなおとぎ話の様な
幸せは降ってこないことを
僕が1番知っていた
だけど何処で聴いたのか何故だか知っている音が
頭に響く度に光を放って
僕がここに居ることを教えてくれるから
なんとなく、思い浮かんだ音を返してみたよ
2024-10-28
暗がりの中で…
長野県に元善光寺というお寺がある。
息子は、小学校の社会見学でそこのお戒壇めぐりをした。
お戒壇は真っ暗だ。
クラス全員がぞろぞろと一列に並んで入った。
息子は出席番号が一番最後だったから、
どんなときにも最後尾だった。
途中で女の子が一人動けなくなってしまった。
暗闇が怖くて足がすくんでしまったのだ。
息子はその子の手を引いて出てきたそうだ。
お戒壇の途中には、「幸福のかぎ」というのがあり、
息子はその女の子と一緒に幸福のかぎを触ったらしい。
さて、その話には、今のところ続きはない。
若い者のロマンスを年寄りは期待するが
まぁ、黙っておくか……
暗がりの中で、何にも干渉されずに、二人寄り添っていたい。
そんな願いも生まれないほど、あの人へ向ける気持ちが小さければよかったのに。
【暗がりの中で】
─────
叶わぬ想いばかり。
【暗がりの中で】*141*
みんなで肝試し
何人かで移動してて
さりげなーく隣を歩いて
さりげなーく袖の端っことかつまんだりとか…
なんて楽しい夜なのぉぉぉ!!笑
最高かよッ
課題が終わらない。
過去の自分を恨む。
3時。暗がりのなか、睡魔に耐えつつ机へ向かう。
5時。日が昇る。
外の青さに驚く。
課題は仰天するほど進んでいない。
窓を開け、朝の空気に顔を当てる。
そうしたら、空へ吸い込まれる。
自分が街を飛んでいるのだ。
息が詰まっているうちに自分は急降下する。
地面がみるみる近づく。
何も考える暇がないまま、地面に打ち付けられた。
その瞬間、目が覚めた。
3時。暗がりのなか机に座っている。
5時。日が昇る。
今度は夢じゃない。
窓の外へ顔を出す____
3時。暗がりのなか机に座っている。
課題は終わっている。
そんな妄想に浸る。
暗がりのなか、課題が終わらないことをそっちのけで。
風塊が袋小路に溜まる夜
鳥の音におどろき躓き
暗闇から助けを求めてるんだ
君にこちらを見て欲しいんだ
♯暗がりの中で
小説
迅嵐※友情出演:太刀川慶
「ん゙……??」
目を覚ますと、そこはどこかの隊室だった。...この広さと匂いは...
「お、起きたか。おはよう」
聞きなれた声で確信を持つ。
「ねえ嵐山、...なんでおれ嵐山隊の隊室で寝てんの...?」
寝る前の記憶が全くと言っていいほどなかった。嵐山隊に特段用があった記憶もなく、本当に何故こんなところで寝ているのか。
「...覚えていないのか?」
心外そうにこちらを見る視線が痛い。チクチク刺さってます嵐山さん。
「...覚えてません」
嵐山は無言でおれにスマホを差し出す。そこには一枚の写真が写し出されていた。
「なっ…!?」
そこには、真っ赤になりながら抵抗する嵐山と意地でも抱きつくおれの姿があった。
「ちょっとまって?なにしてんのおれ!!」
「こっちが聞きたい」
曰く、おれは嵐山を見つけた途端無言で抱きつき、反撃した嵐山の肘が見事にクリーンヒットして意識を持っていかれたらしい。どうりでみぞおちが痛いわけだ。
「太刀川さんと話してたらフラフラ歩いてきたのが見えて...呼んだら人目があるのに急に抱きつくし、何も言わないしで大変だったんだぞ」
この写真も太刀川さんが面白がって撮ったものだという。
「あー...なんかうっすら思い出してきた...ごめん……」
「全く...ほら、今日は送ってやるからもう帰ろう」
玉狛に着くと、勝手知ったる嵐山はおれの自室までするりと向かった。電気をつけないまま器用におれを寝かせる嵐山は、さすが長男だとぼんやりと思う。
「絶対に寝るんだぞ」
「はいはい...……ねえ嵐山、明日非番でしょ?...明日さ、一緒に映画観に行こうよ。...今日のお詫びってことで」
「...!……普通に一緒に行きたいって言えばいいのに」
そう言いながらも、暗がりの中でも分かるほど嬉しそうに笑う嵐山は本当に可愛くて、思わずその形のいい唇を奪う。
「っ...!もう寝ろ!」
「おぶっ...」
またもやみぞおちに入れられた衝撃により、おれは深い眠りにつかざるを得なかった。
暗がりの中で
静かな闇に身を委ね
浮かぶのは淡い記憶
君と過ごした時間が
小さな灯火のように滲んで消える
触れられぬ距離にあるものを
ただ見つめ続けるだけで
少しずつ色褪せていくのが
こんなにも切ないなんて
遠くで微かに響く足音も
君が去っていく音のようで
振り返れば何もなく
ただ静寂だけが寄り添っていた。
貴方が迷った時
一番最初に手を差し伸べるのは私でありたい。
『暗がりの中で』
暗がりの中でひとりぼっちの私を
見つけてくれる人はいるのかな…
みんなもいるといいね
10月28日 月曜日
No.2 【暗がりの中で】
夢を見ていた。
2年前に亡くなった両親と近所の公園で遊ぶ夢。
この夢を何回見たことだろう。
はじめは夢だと気づかずに淡い期待を抱き、目覚めてはじめて幸せの感情が夢の中だけだったことに気づく。
目覚めてしまえば、いつもの暗がりの中。
毎回タンスに寄りかかり、木の温もりを感じながら涙を流していた。
両親が急な交通事故で亡くなってから、2年。
祖父母のいない私は、顔も知らない親戚にたらい回しにされた。
母と仲の悪かった母の姉が週に一度うちに来て必要なものを揃えて帰っていくだけ。
それでも、生きていられるのはおばさんのおかげだから、わがままなんていってられない。
それに、私の親はママとパパだけ。
他の人なんていらない。
「どうしたの?そんな暗い顔して」
ママの優しい声がしてはっと顔を上げる。
私はブランコに座っていた。
「どこか具合が悪いのか?」
パパの低くかっこいい声が聞こえる。
これも夢。目覚めれば私は1人孤独だ。
「どうして?どうして私を置いていったの、」
気づけば私はパパとママにそう言っていた。
ママはびっくりしたようにパパの方を見る。
パパは私を見つめて固まっていた。
その瞳を真っ直ぐ見つめ返す。
パパの綺麗な茶色の瞳に輝くものが溜まっていく。
「頑張って、生きてくれ」
パパは今にも消えそうな声で弱々しくそう囁いた。
瞳に溜まった輝きが頬に流れていた。
––––はっとして意識が戻った。
重い瞼をゆっくりと開けた。
あたりは真っ暗で…
でもいつもの暗さとはどこか違った
孤独を感じさせる真っ暗な部屋にカーテンの隙間から少し差し込む太陽の光は、まるで「ちゃんと前を向きなさい。未来は明るいよ。」といっているようで大嫌いだった。
でも、そんな光はこの場所には見えない。
あたり真っ暗で自分の足元すらも見えない。
暗闇を手探ってみる。
いつも横にあるはずのタンスがない。
真っ直ぐと前を見つめる。
どこまでも真っ暗で何も見えないのだけど、なんとなくこの先にずっと求めていた”光”があるように感じた。
なんとなくだけど、絶対にこの先にある。
私が求めていたのは明るい未来じゃない。
私はこの世にたった二つしかないその光を求めて
暗がりの中を歩き出す。
暗がりの中で大好きな声が聞こえた
「生きてくれ」
胸がギュッと苦しくなって目に涙が溜まる。
でも、歩き出した足を止めることはできなかった。
暗がりの中で
育児日記を付けている。
隣りにはすやすや眠る息子。
月齢は3ヶ月の後半。
俗に言う魔の3ヶ月なのか…
数分前まで大泣きしていた。
暗がりの中で
授乳、睡眠、おむつ交換…
今日の一日を振り返り
今日の息子を記録する。
沢山笑い、沢山泣いて
息子の今日が終わっていく。
暗がりの中で
私は育児日記を見返していく。
毎日毎日、
幸せをくれる息子の100日が
がそこにある。
暗がりの中で
私は隣を見つめてる。
愛しい彼を
今日も愛でながら
束の間の睡眠にはいることにしよう。
ー【暗がりの中で】ー
列車の中から救い出して
なけなしの意地で転がるのはまだ生きてる証
失いたく無いのに変えなければならない何が迫っている
祈るべきか差し出すべきか
自分と神とどちらを選ぶか
辛うじてまだ死なないだけで
夢を見てるんじゃ無いか
人間である前に動物でいること
痛むこと
まだ生きてる証
少なくとも不幸ではなかった幸福を
列車から救い出して
自身さえ訝るような魂の行方を
掻き出そうと藻がいている胎内の衝動を
救い出して
灰は燃えない
暗がりの中で燻る灰を弔ってくれ
まだ生きてる証を燃やして
燃やして
どうか
ここが地獄じゃないのなら一体どこが地獄だっていうんだ
体の中で脳みその中で暴れ回っている衝動を上手く掻き出せずに、もどかしくて苦しむ時間を繰り越す日々はまるで止まることのない列車のような。この世界は悲観的な個人には生き辛くて、どうせ潰される思想ならせめて言葉に残して弔ってやろうと思っています。価値観なんかで塗り固めた皮を剥げば所詮動物でしかないのなら、何も残らなくとも燃え滓の生き様で走り抜けてみたいですね。
暗がりの中で
日本人の夢は、バケツ大のプリンを食べることと聞いたことがある。
英国人である私には少しも理解できないが、いかにも日本人らしい慎ましく馬鹿馬鹿しい夢である。
しかし笑うまい。
何事にも身の程というものがある。
私のような、上流階級と比べては彼らが可哀そうだ
なぜなら私のような立場の夢ともなれば、とてつもなくスケールが大きい。
バケツ程度では満足できないのだ。
私の夢を知りたいか?
では教えよう。
私の夢とは――
紅 茶 で 満 た し た プ ー ル を 泳 ぐ こ と で あ る ! ! !
分かるか?
日本人ではバケツで満足するが、私クラスとなればプールになるのだ。
どんな強欲な日本人でも、プールいっぱいのプリンは望むまい。
そこが私と日本人との圧倒的な差だ。
ふふふ、笑いが止まらぬ。
おっと『笑うまい』と言ったのに笑ってしまった。
英国紳士にあるまじき行為である。
反省せねば……
だが反省は後。
私には為すべきことがある。
それはもちろん、紅茶のプールで泳ぐこと。
長年の夢が叶い、ようやく実現までこぎつけたのだ。
私は紅茶で満たされたプールを前に、
紅茶の香りが、私の鼻腔を満たす。
カップとは比べることが出来ないくらい、圧倒的な紅茶の香り。
これが選ばれた人間だけが辿り着くことができる高みなのだ!
長かった。
ここまでの紅茶の葉を集めるのにどれだけ苦労したことか……
ようやく苦労が報われる。
喜びを分かち合おうと、友人たちも誘ったのだが固辞されてしまった。
ヤツらの断る時の態度と言ったら……
言葉こそ選んでいたが、目だけはおぞましい物を見るような目だった。
どうやらこの偉業が理解できないらしい。
選ばれし者は孤独なのだ
いかんいかん。
何を落ち込んでいるのだ。
せっかく夢が叶うというのだ。
塞ぎ込む時間は無い。
私は悪い感情を振り払うべくプールに飛び込む。
紅茶の中に入った瞬間、私を紅茶が包み込む。
そして嗅覚を始めとした五感すべてで、紅茶を感じる。
私はなんて幸せなのだろう。
このまま死んでもいい――
その時だ。
足に違和感を感じたのは。
すぐにふくらはぎに激痛が走る。
その痛みに思わずうめき声を上げる。
しかしそれがいけなかった。
口を開けたのは一瞬だったにも関わらず、紅茶が私の口に流れ込んできたのだ。
息が出来なくなり、パニックに陥る
溺れる!
私は
私は生命の危機を感じ、助けを求めようとした。
だが無駄だった。
ここには私以外には誰もいない、一人きりなのだ
「し、死にたくない」
私はそのまま、紅茶の中に沈んでいくのであった。
◇
「うあああああ」
私は勢いよく跳ね起きる。
周囲を見ると、見慣れた家具が並べてある。
どうやらさっきのは夢だったようだ。
若く、恐れを知らなかったときの夢だ。
あの後、たまたま様子を見に来た執事によって、私は救出された。
たしかに死んでもいいとは思ったが、本当に死にかけるとは思わなかった。
こっぴどく怒られ、私の夢は儚く散った。
日本人は慎ましいと笑ったが、彼らは知っていたのだ。
望みすぎては身を滅ぼすと……
そしてバケツでちょうどいい事を知っていたのだ。
完敗である。
「旦那様、紅茶が入りました」
「ありがとう」
執事の入れた紅茶の香りが鼻をくすぐる。
やはり紅茶は良い。
一日が始まるって感じだ。
さて反省はここまで、今日を始めるとしよう
私は執事の置いたバケツを手に取り、紅茶を飲み干す。
「やっぱり程々が一番だな」
子守唄が聴こえる。
目を開ける。
目を開けたはずなのに、視覚が捉えたのは、瞼の裏より僅かに明るい一面の、果てしなく広がる暗がりだった。
子守唄が聴こえる。
身じろぎをした。
足首の先の方にずしりと重みがあった。
床で、金属が擦れた音が鳴った。
子守唄が止まった。
暗がりの中で、微かに息を呑む音が聞こえた。
何かが擦れる音がして、手におずおずと温もりが触れた。
温かい何かは、しばらく手をつついて、それから素早くこちらの手を握った。
柔らかくて、温かい。
静かで、滑らかで、優しい、そんな感触だったから、振り解かなかった。
暗がりの中の手が僕の手を包んで、宥めるように強く、握った。
また何かが擦れる音がして、気配が、握った手の向こうからゆっくり近づいてきた。
顔が寄せられた気配がした。
優しい、甘い香りが仄かに香った。
「大丈夫だから」
ひっそりとした静かな声で、気配は言った。
手を強く握りながら。
「大丈夫だから。手を離さないで」
手の温かさが僅かに上気した。
僕は握り返した。温かくて、心地の良い優しい手を。
右の三つ目の手だ。
分かるように軽く、くっきり、手の内側に力を込める。
「良かった」
暗がりの中で、ほとんど息のような声が、耳に届いた。
「ありがとう」
声はそう囁いて、今まで耳の付近を漂っていた柔らかな香りが、少し遠のいた。
何も見えなかった。
僕自身の、変わり果てたはずの体も、人間…少なくとも人型の体をしているのであろう声の主の体も。
暗がりの中の状況も、暗がりの外の様子も。
暗がりの境さえも。
視界は一面の黒しか捉えない。
真っ暗な暗がりの中に、僕の僅かに荒い息遣いを感じる。
暗がりの中に、握られた手の、温かい感覚を感じる。
握られた手の先の、静かで柔らかな生きている感覚も、感じる。
それだけだ。
耳を立てて、鼻を蠢かす。
暗い、暗い、暗がりの中。
右の上から三つ目の手を握っている、確かな感覚だけが、光のように思えた。
暗がりが、ずうっと向こうまで広がっていた。
昨日はなぜか眠れなかった。
暗い部屋の中に雨音だけが響く。
目を開けると黒一色でその黒が自分を写す。
偶にある眠れない夜は自分を考えるいい機会をくれる。
何も見えないからこそ自分がよく見えるのかな。
(暗がりの中で)
この世には、何回やってもコダックしか出てこない「♾️(無限)コダック」というガチャガチャがあるのですよ。無限にコダックなんてイカれてるぜ!とやってみたけど売り切れて5回しかできなかったのですが。
そのうちの1個がシークレットの蓄光タイプで、寝る時に部屋の電気を消すと暗がりの中で、
ぼわゎゎゎゎと微妙に光を放っております。
ぼんやりと光るコダックかわいい。
__________
子供の頃に、例えば好きなゲームや漫画やお菓子などを親に禁止されて育つと、大人になってその抑圧から解放されてしまった時に、反動で爆発してしまうんよね。
自分のなかにいる、子供の自分が泣きやまない。
どんなになだめても、飢餓感が埋められない。
暗がりの中で、子供の自分が今も泣いている。
とある国の どこか遠い場所。
暗がりの中で、金色の目が光りました。
「きゃっ!」
やみ夜の中で驚き立ち止まった王女様の前を、一匹の黒猫が横切っていったのです。
黒猫は不吉な予兆。
そう言い伝えられているこの国では、忌み嫌われている存在です。
王女様も例に漏れず、黒猫が通り過ぎ去った道を、顔を顰めながら見つめました。
それもそのはず。
王女様は、結婚が嫌で逃げ出していたからです。
相手がどんな人間がなんて知りません。
王女様は、結婚すること自体が嫌だったのです。
(知らない国に一人で嫁ぐなんて、寂しいもの)
だからどうしても捕まるわけにはいかなかったのです。
黒猫は、王女様の意にそぐわない結婚を予兆しているかのようで、王女様の心を不安にしました。
また暗がりで、金色の目が光りました。
王女様は怖くなって、さらに歩みを早めようとした時、足元を黒い影が横切りました。
小さな悲鳴をあげ、反射的に立ち止まった王女様でしたが、突然後ろから誰かに抱き上げられました。
ランタンの光に照らされた相手は、とても綺麗な男性でした。
彼は、王女様が口を開く前に捲し立てました。
「ダメじゃないか! このまま進んでいたら、君は崖から落ちていたんだぞ!」
そう。
暗がりで気が付かなかったのですが、王女様が向かおうとしていた道の先は、崖に続いていたのです。
(もし……黒猫が横切らなければ……私が立ち止まらなければ……)
王女様は、真っ逆さまに落ちる自分を想像して、ぶるりと身を震わせました。そして、助けてくれた男性に大変感謝しました。
*
結婚式が始まりました。
王女様の顔には笑顔が浮かんでいます。
何故なら、今伴侶として隣にいるのが、あの日自分を助けてくれた男性だったから。
彼こそが、王女様の結婚相手だったのです。あの日、王女様がいなくなったと聞き、いてもたってもいられず、一人探しに飛び出したのです。
それを知り、王女様は自分の身勝手さを恥じました。
そして、彼のことをもっと知りたいと思うようになり、いつしか愛情へと変わったのです。
王女様は彼の国へ嫁ぎました。
しかし一人で寂しくなんてありません。
優しい夫、子供たち、そして黒猫たちに囲まれて、末長く幸せに暮らしました。
黒猫が救い、縁を結んだこのお話は国中に広がり、黒猫はいつしか恋愛の象徴として、長く人々から愛される動物となったそうです。