部屋の電球が切れた。
一人暮らしを始めてから初めての事態であった。最初は停電か、とも思ったが、トイレもお風呂場も電気がつくし、違うなとすぐに判断がついた。現在、23時。明日も早いし、これから寝る判断もできる。これが実家であれば母に頼んで買い置きの電球をつけてもらえるが、現在一人暮らしでこの時間ではどうしようもない。
手探りでひとまず明かりのつけられる場所をつけて、足元に注意しながら壁伝いに歩いてベッドに潜る。寝るしかないのか。折角、日記を書いていたのに。頑張れば、携帯の明かりとか、今つけた明かりの中で続きを書くことはできるだろうけれど、やりたくない。ここ数年携帯に接する時間が長すぎるな、と思ってやっと最近減らせてきていたのに。数分前までどこもかしこも見えていた部屋が、今はわずかな明かりの中で見えるところと、目が慣れてきてぼんやりと見えるところだけ見えている状態になってしまった。急に真っ暗になるからと動揺してしまったが、そもそも寝るとしたらつけてきた電気は消さなければいけないじゃないか、と冷静なってきた頭で思う。
なんか、うまくいかないな。
嫌な事は続くとは言うけれど、今日はこれ以外にも片手で足りるくらいの嫌なことがあって、なんとなく鬱々とした気分を払うための日記だった為に、これはもう今日一日がアンラッキーだったと感じてしまう。そして、そんなことを考えているとベッドに入っても寝れるわけがない。
諦めて起き上がって、つけていたわずかな電気も消した。少しだけ慣れていた目が、また最初から慣れようとしている。またやっとの思いでベッドに潜ると、足元に携帯が当たった。変なところに置いていたらしい。手元にやると不可抗力で画面が開く。寝る前に携帯を見たくないのにな、と思い目を伏せようとしたが「スーパームーン」の文字が目に入った。今日は月が綺麗な日らしい。ベッド脇の一人暮らしだとあまり活躍しないカーテンを開くと、部屋がグーっと明るくなった。高いビルに囲まれた中でもその名通りの月が静かにそこにいて、私を照らしていた。描き途中だった日記が、カーテンを開けた勢いでめくれる。
まるで、私の嫌な事はここで切れるとでもいいたげに。
( おやすみなさい )
【暗がりの中で】
10/28/2024, 2:07:13 PM