猫頭魚子

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6/8/2025, 8:00:12 AM




「夢見る少女のように」

5/27/2025, 7:21:05 AM


その日は雨が降っていて、傘を持ってない君はずぶ濡れで街を歩いていたんだ。
私は、そんな君を見て声をかけた。

「大丈夫?私の傘に入りなよ」

君は素直に傘に入って、私が渡したタオルにくるまって、一生懸命に濡れた体をふいていたね。
それから、体をぐったりさせてよろよろと動くものだから、私は心配になって、君を病院に連れて行ったんだ。お金?そんなもの、私が払うつもりでいたさ。

先生から、病気で長くない事を聞いた時、私は胸がぎゅうってしたのが分かった。自分より確実に年若い君が、今後がないだなんて、私には現実とは思えなかったよ。



「生きたい」


私は、君の気持ちに応えたくて、たくさん君と過ごした。先生から残りわずかなら悠々と過ごしてもらった方がいいんじゃないかなと言われたけれど、諦められなくて、いろんなお医者さんを回って、君との時間を少しでも残せないかなと、ーー完全に私のエゴだったけれど。



今、私の胸の中で、君は今までの人生を振り返っているのかな。



「ミケ、私は君のおかげで幸せだったよ。」



【君の名前を呼んだ日】

5/15/2025, 8:08:21 AM

足りない、足りない。
ぐちゃぐちゃの頭で体が思う通りの息をする。
足りない、足りない。
動くだけの手足を動きゆる限り動かして、
それでもなお、足りてない。


手の感触だけを頼りに水面から顔を上げる。
歓声が聞こえる。

「今大会の一位はーーー」


心臓がうるさい。どくどくと感じる。
口からも鼻からも吸っているのに、霞んでいく。


ああ、私はまだ、満たされてない。


「酸素」

5/12/2025, 9:09:19 PM

同棲してから初めて彼女と寝た。


不仲なわけではない、ただお互いのタイミングが合わず、また、引越しの忙しさもあり互いに設けた部屋で寝てしまっただけで。だから、何となく起きた時に感じる右腕の重みとか、心地よい寝息とか、そういうのを肌に感じるのは今日が初めてで。彼女が「長いの好きでしょ?」と自分の好みに合わせて伸ばしているロングヘアが、自分の顔に少し掛かって痒いな、とかそういうのを思うのも初めてだった。

愛しい。

起こしたい感情をグッと抑えて、僕の横にいる温もりに体を向けて体を優しく抱きしめる。か弱いこんな体で僕を愛してくれている。この細い指で僕のためにいつも家事をこなし、美味しい料理も作ってくれる。この長い髪の毛はお出かけの時はいつもくるくる巻きにして、お洒落な服を着て、僕に「このお出かけずっと楽しみにしてたの」と言う感情を教えてくれる。

愛しい。

思えば思うほど溢れ出るこの感情を、僕が向けるのは。





「ただ君だけ」

2/5/2025, 3:41:05 PM

心を込めればなんだっていいなんて、冗談。
手作りならなんでも喜ぶなんて、嘘。
結局、どう足掻いてもあなたはわたしを選ばない。
ならば、わたしのこのくだけた心のように、


あなたも、くだいてしまおう。


【Heart to heart】

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