その日は雨が降っていて、傘を持ってない君はずぶ濡れで街を歩いていたんだ。
私は、そんな君を見て声をかけた。
「大丈夫?私の傘に入りなよ」
君は素直に傘に入って、私が渡したタオルにくるまって、一生懸命に濡れた体をふいていたね。
それから、体をぐったりさせてよろよろと動くものだから、私は心配になって、君を病院に連れて行ったんだ。お金?そんなもの、私が払うつもりでいたさ。
先生から、病気で長くない事を聞いた時、私は胸がぎゅうってしたのが分かった。自分より確実に年若い君が、今後がないだなんて、私には現実とは思えなかったよ。
「生きたい」
私は、君の気持ちに応えたくて、たくさん君と過ごした。先生から残りわずかなら悠々と過ごしてもらった方がいいんじゃないかなと言われたけれど、諦められなくて、いろんなお医者さんを回って、君との時間を少しでも残せないかなと、ーー完全に私のエゴだったけれど。
今、私の胸の中で、君は今までの人生を振り返っているのかな。
「ミケ、私は君のおかげで幸せだったよ。」
【君の名前を呼んだ日】
5/27/2025, 7:21:05 AM