同棲してから初めて彼女と寝た。
不仲なわけではない、ただお互いのタイミングが合わず、また、引越しの忙しさもあり互いに設けた部屋で寝てしまっただけで。だから、何となく起きた時に感じる右腕の重みとか、心地よい寝息とか、そういうのを肌に感じるのは今日が初めてで。彼女が「長いの好きでしょ?」と自分の好みに合わせて伸ばしているロングヘアが、自分の顔に少し掛かって痒いな、とかそういうのを思うのも初めてだった。
愛しい。
起こしたい感情をグッと抑えて、僕の横にいる温もりに体を向けて体を優しく抱きしめる。か弱いこんな体で僕を愛してくれている。この細い指で僕のためにいつも家事をこなし、美味しい料理も作ってくれる。この長い髪の毛はお出かけの時はいつもくるくる巻きにして、お洒落な服を着て、僕に「このお出かけずっと楽しみにしてたの」と言う感情を教えてくれる。
愛しい。
思えば思うほど溢れ出るこの感情を、僕が向けるのは。
「ただ君だけ」
5/12/2025, 9:09:19 PM