愛し合う二人を、好きなだけ

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小説
迅嵐※友情出演:太刀川慶



「ん゙……??」

目を覚ますと、そこはどこかの隊室だった。...この広さと匂いは...

「お、起きたか。おはよう」

聞きなれた声で確信を持つ。

「ねえ嵐山、...なんでおれ嵐山隊の隊室で寝てんの...?」

寝る前の記憶が全くと言っていいほどなかった。嵐山隊に特段用があった記憶もなく、本当に何故こんなところで寝ているのか。

「...覚えていないのか?」

心外そうにこちらを見る視線が痛い。チクチク刺さってます嵐山さん。

「...覚えてません」

嵐山は無言でおれにスマホを差し出す。そこには一枚の写真が写し出されていた。

「なっ…!?」

そこには、真っ赤になりながら抵抗する嵐山と意地でも抱きつくおれの姿があった。

「ちょっとまって?なにしてんのおれ!!」

「こっちが聞きたい」

曰く、おれは嵐山を見つけた途端無言で抱きつき、反撃した嵐山の肘が見事にクリーンヒットして意識を持っていかれたらしい。どうりでみぞおちが痛いわけだ。

「太刀川さんと話してたらフラフラ歩いてきたのが見えて...呼んだら人目があるのに急に抱きつくし、何も言わないしで大変だったんだぞ」

この写真も太刀川さんが面白がって撮ったものだという。

「あー...なんかうっすら思い出してきた...ごめん……」

「全く...ほら、今日は送ってやるからもう帰ろう」


玉狛に着くと、勝手知ったる嵐山はおれの自室までするりと向かった。電気をつけないまま器用におれを寝かせる嵐山は、さすが長男だとぼんやりと思う。

「絶対に寝るんだぞ」

「はいはい...……ねえ嵐山、明日非番でしょ?...明日さ、一緒に映画観に行こうよ。...今日のお詫びってことで」

「...!……普通に一緒に行きたいって言えばいいのに」

そう言いながらも、暗がりの中でも分かるほど嬉しそうに笑う嵐山は本当に可愛くて、思わずその形のいい唇を奪う。

「っ...!もう寝ろ!」

「おぶっ...」

またもやみぞおちに入れられた衝撃により、おれは深い眠りにつかざるを得なかった。

10/28/2024, 1:54:14 PM