10月28日 月曜日
No.2 【暗がりの中で】
夢を見ていた。
2年前に亡くなった両親と近所の公園で遊ぶ夢。
この夢を何回見たことだろう。
はじめは夢だと気づかずに淡い期待を抱き、目覚めてはじめて幸せの感情が夢の中だけだったことに気づく。
目覚めてしまえば、いつもの暗がりの中。
毎回タンスに寄りかかり、木の温もりを感じながら涙を流していた。
両親が急な交通事故で亡くなってから、2年。
祖父母のいない私は、顔も知らない親戚にたらい回しにされた。
母と仲の悪かった母の姉が週に一度うちに来て必要なものを揃えて帰っていくだけ。
それでも、生きていられるのはおばさんのおかげだから、わがままなんていってられない。
それに、私の親はママとパパだけ。
他の人なんていらない。
「どうしたの?そんな暗い顔して」
ママの優しい声がしてはっと顔を上げる。
私はブランコに座っていた。
「どこか具合が悪いのか?」
パパの低くかっこいい声が聞こえる。
これも夢。目覚めれば私は1人孤独だ。
「どうして?どうして私を置いていったの、」
気づけば私はパパとママにそう言っていた。
ママはびっくりしたようにパパの方を見る。
パパは私を見つめて固まっていた。
その瞳を真っ直ぐ見つめ返す。
パパの綺麗な茶色の瞳に輝くものが溜まっていく。
「頑張って、生きてくれ」
パパは今にも消えそうな声で弱々しくそう囁いた。
瞳に溜まった輝きが頬に流れていた。
––––はっとして意識が戻った。
重い瞼をゆっくりと開けた。
あたりは真っ暗で…
でもいつもの暗さとはどこか違った
孤独を感じさせる真っ暗な部屋にカーテンの隙間から少し差し込む太陽の光は、まるで「ちゃんと前を向きなさい。未来は明るいよ。」といっているようで大嫌いだった。
でも、そんな光はこの場所には見えない。
あたり真っ暗で自分の足元すらも見えない。
暗闇を手探ってみる。
いつも横にあるはずのタンスがない。
真っ直ぐと前を見つめる。
どこまでも真っ暗で何も見えないのだけど、なんとなくこの先にずっと求めていた”光”があるように感じた。
なんとなくだけど、絶対にこの先にある。
私が求めていたのは明るい未来じゃない。
私はこの世にたった二つしかないその光を求めて
暗がりの中を歩き出す。
暗がりの中で大好きな声が聞こえた
「生きてくれ」
胸がギュッと苦しくなって目に涙が溜まる。
でも、歩き出した足を止めることはできなかった。
10/28/2024, 1:49:48 PM