『暗がりの中で』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
暗がりの中で
私は37歳独身。
中小企業で事務職に就く普通のOLだ。付き合っている人はいても、いつも長続きしない。
結婚なんてとっくの前に諦めてる。
そんなある日突然、ポストに手紙が届くようになった。送り主の名は書いていない。不審に思い、警察に届けようかと思ったけど中身を見て思い止まった。
あの人の筆跡によく似た文字だったから。10年前に突然いなくなってしまった彼。
私が唯一、心から愛したあの人。
恋文と受け取れるような時もあれば、どこかの風景をただ描写していたり、不思議な言葉を並べただけの走り書きに近いものもある。
書かれた文字は歪んでいたり、かすれていて読みにくい箇所が多い。
本当は誰が書いたのかわからないそれを何度も何度も読み返した。全て暗記するほどに。
読むたびにあの人と過ごした日々が甦ってくる。そして、彼に会いたくて胸がギュッと締め付けられるのだ。
毎日手紙が届くようになって半年程過ぎた日のこと。
ある晩、近くの路地裏の暗がりの中にうずくまる人影を見つけた。
「おかえり」
「たこ焼き買ってきてくれた?」
男は黙って俯いている。
クシャクシャになった紙切れを手渡される。手紙と同じ筆跡のその文字は短い詩が書かれてある。
「見せて、傷口。」
大丈夫
私があなたを死なせやしない。
end
星を眺める私の横で君はタバコに火をつける
何を話す訳でもない
ただ傍で時間を共にしているだけ
なんでもない特別な時間
もうあの匂いを感じることは無い
もっと君と居たかった
微かな灯に照らされる君の顔を見ていたかった
もう叶わない願いと知っていても
あの日を思い今日も1人涙を流すだけ
#暗がりの中で
暗がりの中でぽっと灯る朧気な光。それは君の手の温かさ。
私は何度その光に助けられたことだろう。
私が闇だとするならば君は光。決して交わることの無いけれど、君は何度でも手を差し伸べてくれた。
暗がりの中にふわっとあたたかい光がやどる。
そして私の心も軽くなる。
まるで暗がりの中のたったひとつだけの星みたいに。
zene
土砂降りの雨を降らす黒い雲すらすり抜ける。隠し切れない暗がりで、目を凝らすわずかな時間稼ぎでいい。
二度と来ないチャンスなら、殴られても蹴られても手を離さずに捕まえる。
どうしてもこの人でなければいけなかった。
雲の向こうで神鳴りは見咎めるが、うまく隙をついた罪は成就した後です。
罰ならこれからいくらでも、体当たりしていくつもり。
ただひとつ、痛む拳を引っ込めて諦めてくれたこの人は、気の迷いだと見逃して下さい。
「暗がりの中で」
「暗がりの中で」
闇に閉ざされた私の心の中は、ずっと真っ暗で、真っ黒で。
誰も信じられず、誰も求めず。
全てを拒否して、微かな光さえも差さない程の、本当の真暗闇だった。
そんな私に、貴方は微笑みかけて、言葉をかけて。
最初は貴方の存在は、私の目にも心にも映らなかった。
貴方の言葉も、全く私に届かず、響かず。
でも、貴方は根気良く、長い時間をかけて私の心の中に入ってきた。
少しずつ貴方の声が聞こえてきて、姿が見えてきて。
木漏れ日が木々の隙間から差す様に、貴方という光が私の中に差してきて、閉ざされた私が、少しずつ開いて行った。
そして、今まで、キチンと見えなかった貴方の姿が見えるようになり、私の扉も開かれて。
そしたら、貴方だけでなく、周りにいる他の人の声も聞こえるようになって、姿も見えた。
私の周りは、敵ばかりじゃなくて、実は暖かい人が溢れてた。
そんな当たり前の事に、やっと今気づけた。
何で今まで気づけなかったのだろう。
自分の辛さは見えて心を閉ざしたのに、何で人の辛さとか優しさが見えなかったんだろう。
貴方が光をくれたから、見えた。聞こえた。気づけた。
貴方にも、周りの人にも。
ごめんなさい、有難う。
これからも、私が駄目だったら叱ってください。
甘えてたら、言ってください。
辛い時に受け止めてくれる場所がある事を知った私は、前よりは強くなれたと思うから、キチンと受け止めて、考えて行けると思う。
そんな自分になれたと思うから。
昔は暗い場所が怖かった。
恐ろしいものが潜んでいて、
暗闇からこちらを覗いているように思えたからだ。
だが、気づいた時には暗い場所も平気になった。
昔は怖かった中が全く見えない暗い部屋も、
恐ろしいどころか入れるようになった。
自分が大人に成長したように感じた。
大人になって嬉しいような、悲しいような。
なんとも言えぬ感情が胸に広がった。
私の心は暗い
けど…唯一私を誰かが照らしてくれたのが
家族だった。
けどとても優しくゆりそってくれてうれしかった
私は今好きな人と文化祭のお化け屋敷に居る
「わっ!!」
彼は「大丈夫?」と私の手を繋いでくれた
「うん大丈夫。結構本格的でびっくりしただけだよ」
彼は言った「なら出るまで手繋いでよっか」
暗がりの中で
「先輩、大丈夫ですか?いや、大丈夫じゃないから来たんですけど」
合鍵を使用して入ってきた俺に、先輩は何が何だか分からないという表情をしていた。
「…なに、それ?」
先輩はパンパンに詰め込まれて今にもレトルトカレーの箱の角によって破けそうなレジ袋を指さした。道中あったクリエイトで、お粥やらゼリーやらプリンやらを、適当に買って持ってきたのだ。
先輩はインフルエンザにかかってしまったらしい。電話越しの苦しそうな声に耐えかね、「うつすからこないで」とのメッセージを完全に無視してここまで来たわけだ。ちなみに上着の下はパジャマのままである。
「どうぞ、先輩」
「…ありがとう」
つっこむことにも疲れたのか、雑に感謝を述べたあと、先輩は寝返りをうって俺に背を向けた。
暫く沈黙が続き、しびれを切らした先輩が口を開く。
「なんで帰らないの?」
「なんで帰らないといけないんですか」
「君にインフルなんてうつしたら大変なことになるから」
「大変なことってなんですか」
俺のことなどどうでもいい、先輩が元気でいてくれるのが一番です、なんて言おうとしたら制止されてしまった。そしてまた沈黙が続き、俺は立ち上がった。もちろん、電気を消す為に。
「…なんで消したの、ていうか早く帰りなさい」
「先輩、やっぱり俺、病気は寝た方が治りやすいと思うんですよ」
「え?」
布団の中、先輩の横に侵入する。混乱している先輩に密着し、額に手を当ててみた。熱い。
「心配だったんです、俺。流行り病とか言って、突然死んじゃったらって思ったら怖くて」
「…それとこれは関係無いでしょ、離れて」
「嫌です。先輩が寂しくないように一緒に寝てあげますから、目瞑ってください」
先輩はもう言い返すことにも疲れを感じたのか、それから起きるまでは何も言葉を発さなかった。食欲が無いせいか、前会った時よりも細い気がする。思い返せば俺は、ずっと先輩に迷惑ばかりをかけていた。だからこんな時ぐらい、先輩の役に立ちたかったのに。
暗がりの中で密かにそう考えているうち、俺は眠ってしまった。
そして結局、俺と先輩は朝まで眠り、先輩のお父様とお母様にあらぬ誤解をされることとなってしまった。
先輩は数日後、無事に復活したが、案の定俺の方が今度は熱を出してしまった。先輩が叱りながらも看病してくれたので、まぁラッキーだった…?
暗がりの中で
私はあの日からずっとずっともがいていた。
まるで先の見えない真っ暗なトンネルのようだった。
トンネルは誰かに襲われることもないし安全かもしれない。
ここから出るのは怖い。
でも私は踏み出した。まだ見ぬ景色を見るために。
気づけば光の中を突き進んでいた。
暗がりの中であなたが私の手を引いたから。
怖いもの世の中あまりに多すぎてお化け屋敷をゆったり歩く
題-暗がりの中で
「暗がりの中で」
暗いところが苦手な僕は夜が嫌いだった。
小さい頃、親に虐待を受け、暗い箱に閉じ込められた。
それが原因で、暗いところが苦手になった。
そんな僕は高校に入って、彼女に出会った。
僕を照らしてくれる太陽みたいな人。
冬は日が落ちるのが早い。
だから、出来るだけ早く家に帰りたかった。
でも、どうしても無理な日はある。
そんな僕を知った彼女は僕を救ってくれた。
暗がりが怖いだなんて子供みたいだけど。
彼女は笑わずに真剣に聞いてくれた。
それから一緒に帰ってくれた。
だから、暗がりが怖くなくなった。
そんな彼女に感謝している。
僕の太陽みたいな人。
暗がりの中で誰も知らない誰もいないところで消えたい
ジオラマの地平線
分厚いフィルターの向こう側から
私は全てを知っている
私は世界を観測している
誰も知ることはない
暗がりの住人
【暗がりの中で】
暗がりを知ってしまった
蝋燭の灯火が揺らす影をみてから
/お題「暗がりの中で」より
暗がりの中で行う百物語
百話めを話す時何かが起こる
暗がりの中で息を潜める。鬼に見つからないように。
……足音が聞こえる。近くにいるのか探している声だって聞こえる。
……大丈夫。ここは絶対に見つからない。だって私のとっておきの隠れ場所なんだから。
そう思っていてもやっぱりちょっと不安だからさっきよりももっと身を縮こませる。
足音が遠ざかっていって、私はホッと息を吐く。
隠れるのはあまり好きじゃない。ドキドキするから。
それに絶対に音を立てないと思えば思うほど笑いが込み上げてきちゃう。
だけどダメダメ。我慢我慢!
……でもどうしても我慢できなくて、うふふと声が出てしまった。
すると案外近くにいたのか、ふすまがゆっくりと開き鬼がひょこっと顔を出して、にっこりと声をあげた。
「お姉ちゃんみーつけた!」
ま、たまには妹とかくれんぼも悪くないわね。
暗がりの中でアイを探す毎日。
今の時期はこれが当たり前。
今日も心の底ではそう思ってる。
こんな日々に皆と一緒に話して、笑って、帰る。
何気なく、当たり前っちゃ当たり前なこの日々。
考え込みやすいし、顔怖い時あるし、愛嬌ないし、明るくないし、メンタルやばいし、優しくないし。
まだまだある、ダメダメな所ばっかなアイでも、こんなに充実した日々を過ごしてる。楽しい。
暗がりというより、本当は明るいはずなのにアイで光を遮ってしまっているだけ。
本当のアイを知らずに出していないだけ。
こんなにも周りのアイに恵まれているというのに。
当たり前じゃない日々はかけがえのないものだから。アイを大事にすること。出すこと。無理に変えないこと。理解しようとすること。永遠のアイはそこにある
暗がりの中で
暗がりは毎日ある。ないと言う人は夜がない土地に住んでるんだろう。そういう土地がないとは言わない。太陽が5個くらいある惑星系だとあんまり夜こないんじゃない? アイザック・アシモフにも「夜来る」ってお話あったよね。
そう、普通に生きてたら毎日暗がりがある。暗がりは昼日中にもあって、それはたとえばカクレンボにほ楽しい空間だよね。
そういう問題じゃないと?
うん。気づいてた。きみは暗いとこにいないと生きられないと、そう、そうだよ、そう思ってるんだよね?
じゃあいまからぼくと南半球真夏ツアーに出かけよう。君の知り合いは誰もいない。きみを指さし妖怪や悪魔扱いするやつもいない。きみが本当に明るい日差しがだめなのかはビーチで日差しに当たってから決めよう?
※※※
ていうかこんなのより私が書いたせなけいこ追悼文読んで!
せなけいこさんが亡くなった。代表作「ねないこだれだ」も好きだけど、めがねうさぎもばけものつかいもすきだった。「きれいなはこ」が特に大好きだった。こどもがはじめて出会う異形の絵本は、子どもが異形と化す絵本でもあった。せなけいこさんの絵本の中ではオバケもかわいい猫も犬もこどもも等価なものであって、オバケだから怖がられることもないかわりに、こどもだから特にかわいがられることもなく、こどもも排除される恐ろしいものになりうる恐ろしい世界を描き、それでも読者に愛される不思議な絵本を作った人だった。
「きれいなはこ」はきれいなものを自分のものにしようとして異形になってゆくわんちゃんやなんかを描いて本当に怖かった。落語に取材した「ばけものづかい」ではばけものの気持ちがわかって不思議な気がした。「めがねうさぎ」はうっかりめがねを天ぷらにするうさぎが本当にバカバカしくて親近感が持てて楽しかった。
でもやっぱり、せなけいこさんの最高峰は「ねないこだれだ」なんだと思う。夜を怖いと思う気持ち。でも夜を起きていたい気持ち。そして夜を起きているとオバケになってしまうというあの恐怖。
せなけいこさんはもう長く生きたのでゆっくりお休みしてほしい。でも気が向いたら、この世にときどきやってきて、オバケとしてみんなをびっくりさせてほしい。
チャレンジ99(暗がりの中で)
その夜は、とても疲れていた。帰宅して鍵を閉め、玄関に上がる。ふらふらする。暗がりの中で、電気の壁スイッチに手を伸ばす。バランスを崩し、玄関の床に頭をぶつけた。
目から火花が出る、という表現は本当だ。青紫色の光が視界に広がる。時間をかけて起き上がる。幸い、大事にはならず、安心した。
ただし、メガネのフレームが外側に曲がってしまった。修理に出したが、完全には直っていないようだ。
この日以来、無理はできないと自分に言い聞かせている。油断禁物だ。