君の奏でる音楽』の作文集

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君の奏でる音楽』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

8/13/2023, 8:34:51 AM

やはりアメリカは車がないと不便なので、免許と車を持ってる子にお願いしてみんな夜な夜な運転の練習をするようになった。その夜も男の子たち数人で運転の練習をした後、うちに寄る予定だったから、ずっーと待ってたんだけど、朝になっても来なくて。もう外が明るくなった頃やっと来たんだけど、みんな憔悴しきってた。サカイの説明では、住宅街で運転の練習をしていたところを住民に通報されてしまったらしい。複数の警察車両に包囲され、しかもライフルを向けられホールドアップ。後ろ手に手錠をかけられ、ひとりずつ車に乗せられたのだと。まだ英語で十分にコミュニケーションが取れなかったため、日本語の分かる刑事を呼んでもらい説明して解放してもらったのだと。
手首には手錠の後が赤く残ってた。
あの時は本当に怖い思いしたね。

8/13/2023, 8:32:40 AM

熱波も過ぎ去り、ようやく人心地つく今日この頃。

寒暖の差が激しいのか、既に庭のブドウは赤紫色に色付いて、ほんのりと秋の匂いを醸し出している。

試しに採ってみたが、まだまだ甘みは薄く梅干しのように酸っぱい。

もう少し待てば良かった、と白い袋ごとザルに入れて流しの横に放置。誰かが食べるだろう。

 そのまま夕飯の支度をする。

今日は焼き魚だ、エラと内蔵を喜々としてえぐり出し、流水で丁寧に中を洗う。

鱗とゼイゴを取って、背と腹に包丁で薄く切れ目を入れてから、魚の表面にお酢を塗りたくってからグリルに並べる。

グリルのスイッチを押すとチチチと音がして、青い炎がボアっと奥から吹き出した。

 そのまま魚が焼けるのをグリルのガラス面越しに眺めていると火災報知器がけたたましく鳴る。

ぎゃあ、カボチャが黒焦げに!報知器煩い!臭いっ。

焼き上がりを知らせてくれるグリルの音が呑気にピーっと鳴った。

テーマ「君の奏でる音楽」

8/13/2023, 8:24:19 AM

君の奏でる音楽で私は救われた。

救われたなんて馬鹿馬鹿しく思うかもしれない。

でも私はそう思った。

私も君と同じ何かを作り出す人間になりたい。

今度は私が誰かを救う立場になりたい。

8/13/2023, 8:14:17 AM

小さな赤いピアノ。いわゆる"おもちゃのピアノ"。
30年前、私が生まれた日に父が買ってきたらしい。
「気が早いのよ、昔っから。赤ちゃんが弾ける訳ないのに、ねえ」と母が苦笑いしながら教えてくれた。
鍵盤に触れてみる。チンとズレた音がする。
幼稚園から小学校低学年くらいまではよく弾いていたように思う。しかし他に夢中になることが増えると、すっかり見向きもしなくなっていた。
弾かなくなってからは、納戸にずっとしまい込んでいたのに、最近父が引っ張り出してきたらしい。
「昔を懐かしんでいるのかしらね」と母が言うから、しみじみ感傷に浸っていたら、玄関が開く音がした。
一緒に出かけていた父と夫が帰って来たようだ。

「ただいま!」とリビングに入って来た2人。夫の手には大きな箱。いそいそと箱を開け始める夫とその横でニコニコしている父。箱から中から出てきたのは小さなグランドピアノ…。
「これは?」驚きながら聞く私に、夫は満面の笑みで「もうすぐ生まれてくる我が子に!」と答えた。
母を見ると「お父さんより気が早いわね」と苦笑いしている。父を見ると「いやー、彼に我が娘への初めてのプレゼントの話をしたらな…」と意気揚々と語り出した。

私は大きくなったお腹を撫でながら、困ったパパとジイジね…と我が子に心の中で語りかけた。


―――贈り物



                #40【君が奏でる音楽】

8/13/2023, 7:58:22 AM

微かに繊細で綺麗な歌声が聞こえてくる。
耳が痛くなるほどの高音ではないが、脆くてすぐ壊れそうな歌声だ。
俺はその声で目を覚ます、どうやら俺は、彼女の膝の上で寝ていたようだ。
歌声を奏でていた彼女は、少し申し訳なさそうにしつつ、でもふにゃっとした顔で
「あ、起きちゃったかぁ…ごめんね、寝てたのに私の歌声で起こしちゃって。」
と言った。
俺は彼女の肩にかかる髪を撫でながら少し顔を上げて
「ううん、大丈夫。歌上手いから聞いてて心地よかったよ」
と囁いたら彼女は頬と耳を紅く染めて「えへへ」と笑った。
俺はこんな顔で笑う彼女のこの可憐な歌声、彼女の奏でる音楽は彼女の美しい感情が出ていると思う。
君の奏でる音楽

8/13/2023, 7:37:27 AM

放課後。

蝉が鳴く真夏。

今となっては使われていない音楽室で、

君はピアノを演奏する。

曲名は無名。

そう、勝手に僕は名付けている。

聞いたことが無い旋律が、僕の耳に届く。

腰くらいまである、長い黒色の髪を揺らして、

君は激しく、かつ、美しく音色を奏でる。

話したことなんて一度もない、そもそも違うクラスだし。

でも、彼女の音楽はとても好きだ。

なんだか、音が生きているような気がするから。

〜君の奏でる音楽〜

8/13/2023, 7:31:25 AM

「君の奏でる音楽はつまらない」

僕の心は奈落へと落ちた。

8/13/2023, 7:01:28 AM

君の奏でる音楽のように、この世の世界も自分のこころも綺麗だったらいいのにな

8/13/2023, 6:58:52 AM

中学高校吹奏楽部の君の奏でる音は、
耳に優しくでも心に響き、
耳に残り何回も聞きたくなる。

大学でも君の奏でる音楽を
聞くことが出来たのは、
とても嬉しい事だった。

でも大学卒業したあと、
君は直ぐに音楽を辞めた。

『どうして辞めたの?』なんて、
聞く勇気は僕には無いし。
それに、音に詳しくない僕には、
聞く義理がない。

僕が聞いたとしても無視されるだけだろう。

でも、今年27歳。
大学卒業から5年は経つ。
今更かもしれないけど、
僕は急に聞きたくなった。

そしてメールで君にメッセージを送った。

『久しぶり。皆森翔葉(カイモリショウヨウ)です。
 君の音を聞きたくなったんだ。
 久しぶり聞けたりしないかな?
 無理かもしれないけれど、
 考えてみてくれたら嬉しいです。』と。

数時間待つと、メールが一通届いた。

「お久しぶりです。
 音楽はもう辞めたんだ。
 君のことだから、
 理由を教えてもらいたい、
 とかでも思っているんじゃないのかな。」
「でも、、楽器ももうないし、
 どうしようもないよ?
 会ってみるならできるけど。」

そう返ってきていた。
やっぱり君は僕の考えを見破るよね。
本当にすごいよ。
ありがとう、覚えててくれて。

でも…やっぱりあの音を聞けないとなると、
ショックなんだよね…。

『会えるなら、いつ頃がいいの?』
「今週か来週。かな。」
『僕今週金曜午後空いてるよ。そちらは?』
「すごい…私も空いてる。
 ◯◯駅近くの𝒻𝒾𝓇𝓈𝓉っていうお店で。」
『15時で大丈夫?』
「大丈夫だよ。15時にしよう。」
『それじゃあ、また、金曜日。』
「それじゃあね。」


会う約束ができた…。嬉しいことだ…!
聞かないようにしようかな、あのことは。



ほんっとうに楽しみです。




96テーマ【君の奏でる音楽】

8/13/2023, 6:50:20 AM

私の奏でる音楽だけが部屋に響く。
音楽が終わったのと同時に、
1人の拍手が聞こえて、
私は静かに微笑んだ。

あぁ、本当に凄い!
君の奏でる音楽は命が宿ってる!
音の一つ一つが生きているみたいだ!
絵を描くことが得意な親友はそう言った。

部屋には僕の絵が飾られていた。
僕はその絵を見ている親友を見て、微笑んだ。

やっぱりいつ見ても凄いや!
君の描く絵には魂がこもってる!
線の一つ一つ、色の濃淡が生きているみたいだ!
音楽を奏でることが得意な親友はそう言った。


やっぱり、音楽も絵も似ている。
君はいつもそれを否定するけど、
僕は似ていると思う。
…ははっ納得いってなさそうだね。
確かに創り出す工程は全く違う。
でも、結局は
「思いを伝える」
ことが大事なんだと思う。
…何を言ってるんだって?
まぁ、簡単に言えば
耳に伝えるか
目に伝えるか
の違いだろう?
だからきっと、僕らは仲良くなったんだよ。

8/13/2023, 6:49:57 AM

ロックであり、ワルツ。
未熟な魂を奮い立たせ、歓喜と笑顔で意欲に満たす。
その後、ワルツで安定した生活のリズムを作り出し、押し出す。

俺は満足して、ひとりラブソングを歌う。
叶わぬ思いを込めて、君の幸せを願う。

このバラードは、俺を癒し、君の未来を照らす。

思いは細かな粒子となり、遠く君の元へと届く。
君は同時に俺を思い出す。

楽しかったこと、辛かったこと、分かり合えなかった思い出。

未来へ進むために、リセットして新たな道へ進んだあなた。
そんなあなたの心の支えの一つに。

まだ見ぬ未来。ぼんやりと見据え、一歩を進める。

8/13/2023, 6:46:09 AM

雨が降る東海道。新幹線の窓は、その凄まじい勢いで水滴が小さな蛇のように走り抜けていっていた。私はぼーっと無数の蛇が生まれ続けるのを見つめた。低気圧のせいで私は頭が重かったのだ。新幹線内の気圧変化により、イヤホンを耳に挿し込み音楽を聴くのも億劫である。
 先程まで私は友人のエンディングダイアリーを読んでいた。彼女は先月、死んでしまったのだ。若いのに、癌であったのだ。三カ月前に彼女を見て、痩せたとは思っていたが、彼女はダイエットよと言って笑っていた。
 彼女の葬儀が終わり、彼女の夫が私に貸してくれたエンディングダイアリー。読んでわかったことだが、彼女は日常の中でぷつんと死にたかったらしいのだ。張った糸がハサミで切られるように。彼女は死の準備を密かに進めながらも、愛しい日常の陽だまりにできるだけ長く浸っていたかったのだ。 
 私はエンディングダイアリーの半分を過ぎた辺りで、彼女が隠していたどうしようもない苦しみに耐えかね、それを閉じた。自分は凄まじい苦しさに犯され解放されるのは臨終の時。夫には献身的に支えられつつ生きることを望まれた。

8/13/2023, 6:41:56 AM

君の奏でる音楽が

僕を励まし

僕を潤し

僕を少し切なくさせるんだ

8/13/2023, 6:39:30 AM

君の奏でる音楽

なんか
ロマンチックな
題名

中学生の頃
好きな女子がいた

彼女と普通に
おしゃべりしてるときは
楽しかったけど
彼女が
何か歌を歌うとき
声が違う感じして
ドキッとした

とてもきれいで
高い声で聞こえていた



ますます
好きなった
ずっと片思いだったけどね

彼女は早くに
結婚して
子だくさんって
風の便り聞いた

私も結婚して
長いけど
今じゃ
かみさんの小さな
イビキが
奏でる音楽(笑)

健康で生きてる
小さなイビキ

8/13/2023, 6:38:02 AM

君の奏でる音楽は僕の心の一部となってともに成長する
絶対に離れないし絶対に忘れられない

8/13/2023, 6:28:28 AM

『君の奏でる音楽』

 今まで吹奏楽に費やしてきた長い長い時間を、たった十二分間で表現する。それが吹奏楽コンクールだ。恐らく、全国の吹奏楽部員はこの十二分を短いと感じたことがあるのではないだろうか。僕は今まさにそう感じている。
 今日はコンクールの県大会本番。三分程度の「課題曲」は大きな失敗もなく終わり、次は各団体が自分たちの持ち味を考慮して選ぶ「自由曲」だ。僕たち○○吹奏楽部の武器、それはなんといってもソプラノサックスの彼だ。彼は音大志望でプロを目指している未来の音楽家であり、僕らのリーダー的存在である。
 思えば僕らが県大会まで進むことが出来たのは彼のお陰だと言っても過言ではない。彼はいつだって一人一人の苦手を分析し、適切な練習内容を考えてここまで一緒に頑張ってくれた。彼と共に吹部人生最後のコンクールに臨めることがとても誇らしい。
 トランペット、トロンボーンのファンファーレで自由曲が始まった。その華々しさを受け継いだクラリネットの繊細なメロディーがホールに響き、スネアは軽快なリズムを刻む。と、ここで全体が急に静かになり、場面の雰囲気が一変する。低音楽器とアルトサックスが不気味な不協和音を重ねてゆく中でいよいよソプラノサックスのソロだ。
 彼が大きく息を吸い、そのままそれを音にしてゆく。最初は周囲に溶け込むような細い音だが、徐々に存在感を増してゆき、ソプラノサックスが彼という人間の色をホール全体に響かせる。最早、誰一人として顧問の指揮など見ていない。吹いている僕らも、観客も、審査員も、ここにいる全ての人は彼の音を追っていた。繊細で美しく、何処か寂しさも感じさせる彼の音色。練習で何度も聴いたソロだが、この本番という環境で、彼の音楽はまた更なる高みへと進化する。
 演奏中だというのに、僕は自分の涙腺が緩んでいくのを感じた。慌てて自分の楽譜に集中する。曲もいよいよ終盤に差し掛かっていた。各々の音が勢いを増し、十人十色な音色が生み出されるが、それでも僕らの音は確実に一ヵ所に集まっていく。彼のソプラノサックスが今、全ての音を受け止めて僕らを繋いでいた。
 最期のフェルマータ(程よく伸ばすという意味の記号)が顧問の指揮と共に収められた。胸が苦しい。この苦しさはきっと、今僕の心の中にある色々な感情がぐちゃぐちゃに混ざって生まれたものだ。この感情は、僕と、彼と、皆が作り出した音楽に似ていた。

8/13/2023, 6:21:24 AM

#君の奏でる音楽

イヤホンからピアノの音色が聞こえる。

昔、録音した、ピアノの音。

もう何年も前のことなのに、

君のピアノを聞かずにはいられない。

ねぇ、今どこにいるの?

8/13/2023, 6:19:47 AM

お題:君の奏でる音楽
『同じ音』

君はとても口笛が上手
でも僕は上手く吹けなくて
同じ音が出せないと泣く僕に
君は笑って言った
「同じ音ならあるじゃない」
その意味を理解出来なかったけれど
僕はその言葉に救われた

君の奏でる音楽はとても綺麗で
僕はとても不格好
それでも隣にいられた日々は
いつもとても暖かかった
君はとても物知りで
クイズを出すのが好きな人

君がいなくなった日々を
生きれるかなんて不安で仕方なかったけれど
最後にあなたが出したクイズの答えを
僕はずっと抱えて生きていくだろう
君と過ごした思い出と共に

あの日のクイズを皆さんにも
「同じ音を奏でる、みんながひとつ持っているものってなーんだ?」
どこからか君の口笛が聞こえた気がした

お盆なので大切な人を大切に出来るようにこの詩を。

8/13/2023, 6:12:47 AM

元気の出る音楽というのは、誰にだってあるだろう。
僕にとってのそれは、君の奏でる音楽だ。
そう聞くと、さぞ素敵な音を出すのだと思われるかもしれない。
高い演奏力か、表現力か、はたまた人を惹きつける才能か……要因は沢山あるだろう。でも、それはあくまで一般論であり、君の奏でる音楽の説明にはなっていない。
そうだと思わないか?

「……はぁ。ちょっと何言ってるかわかんない」
「なんでわかんないんだよ」

夕方の音楽室。
壁に寄りかかりながら座る君に僕の熱弁が全く伝わっていなくて悲しくなってくる。

「とりあえず、その富澤ムーブで返事するの辞めようか」
「いやいや、今のはまじで何言ってるかわかんなかったやつだからね?いつでもサンドを挟んでくると思うなよ」
「いつもまずそれで返事するだろうが…」

″サンド″というのはコイツの好きな芸人の名前。好き過ぎてやたらとネタを挟んで来るので、俺もいつしかツッコミが当たり前になってしまった。

「大体なんなんだよ。『君の奏でる音楽〜』とか、「僕は〜』とか。お前そんなキャラじゃ無いだろ」
「雰囲気あって良いだろ?夕暮れが綺麗な音楽室に親友が2人…。好きな音楽について語り合う構図は画になるからな。こかは、君と僕を使う事で優し気な雰囲気を醸しているわけで…」

続ける俺の説明など興味が無いようで、窓の外を見ながら大あくびをしている。聞く気がないなら最初から尋ねないで貰いたいものだ。

「文芸部員の考え方はロマンチック過ぎてようわからん」
「うるせ。お前こそ軽音部の練習は良いのかよ」
「言っただろー。今活動休止中。メンバー揉めてんだよ、文化祭もあんのにどうする気なんだか」
「他人事だな。お前もメンバーだろ?」

そう尋ねると心底面倒そうな顔をしてこちらを振り向いた。

「お前にはわからねぇよ。あいつら毎日のようにケンカしてるんだぜ?解散すんにもメンバー足りないからバンドが組めなくなるし、毎日毎日俺は蚊帳の外であいつらのケンカ眺めてるだけって…頭痛くなるわ」
「それは…ご愁傷様な事で」

天を仰ぎ大きなため息を吐いているコイツが少し可哀想にも思えるが、コイツの場合他人に興味が無いので本当は揉めていようがどうでも良いんだろう。ただ、純粋に音楽が好きで音楽さえ出来ればきっとそれで満足なのだ。
メンバーが揉めようと、ライブが出来れば良いのだろうが、それは果たして良い音楽なのだろうか。

「仲直りさせてやれば?お前蚊帳の外なら仲取り持ってやれば良いじゃん」

そう提案する俺に対しコイツは、心底嫌という事がわかる程に表情が歪む。普段無表情な癖してこういう時だけは豊かに変わるから面白い。

「えぇーーーやだよ。絶対に嫌。俺無理そういうの。つか実際どうだって良いし。俺はライブさえ出来ればそれで満足なんだよ」

思った通り。コイツは自分の音楽さえ出来れば良いのだ。
前に『バンドマンなんてのは自己中の集まりだ』などと言っていた。そして『うちのメンバーはそれが顕著に現れているから纏まりが無いんだよ。オレは違うけど』などと言っていたが、コイツも大概である。
結局自分が良ければそれでいいのだ。自分のやりたい音楽が出来るなら、それで満足。だから深く干渉する事もせず、ただ外から傍観するだけ。

「でも今のままじゃライブ出来ないんじゃねーの?」
「まぁな。でも、いっなんだかんだライブまでには仲直りするからどうにかなるだろ」
「そう言って、この前のライブは全然纏まってなくて悲惨だったろ」
「オレは上手かったから良い」
「お前が上手くたって、バンドとして悲惨だったら意味ないだろ…。バンドなんだから、ソロじゃ無いんだぞ」

その言葉が癪に障ったのか、いきなり立ち上がって大声を出した。

「んな事わかってるよ!」

思わず出てしまった声量に、本人すらもびっくりしてる。しかし勢いは止まらず、とめどなく言葉が溢れてきた。

「オレだって良い演奏がしたいさ!バンドとして!個人じゃない。メンバーで一つの良い物を作りたいよ…。作りてぇよ。だってバンドなんだぜ?5人で一つの音楽を作らないと何の意味もねぇなんて、お前に言われなくたってわかってんだよ!」

はぁ、はぁ、はぁ。
肩で息をしながら滲み出る涙を目に溜めている。

何て声を掛けようかと迷っていると、音楽室の扉が開いた。





「あれ?1人?大きな声が聞こえたから、てっきり誰かと話してるのかと思ったんだけど…」

扉を開け様子を見に来たらしいクラスメイトが音楽室の中見回す。
ジャージを着ている所を見ると、こいつも部活で学校に来ていたのだろう。

「あ、あぁ。悪い。電話してた」

オレは慌てて窓際に置いていたスマホを手に取り見せた。

「なんだ、そうだったの。また1人で何か喋ってるのかと…声、廊下まで響いてたから」
「大丈夫だって、もう1人で喋るなんてしないから。悪いな、気をつけるよ」
「…ま、何かあったら言ってよ」
「ん。ありがと」

扉が閉まり去った事を確認して、オレはまた椅子に座ってため息をついた。
お前はオレの顔を心配そうに見つめている。

「…悪い。言い過ぎた」
「俺の方こそ何も考えずに…言ってごめん」
「お前は悪くない。悪いのはオレだ。お前に八つ当たりしたんだ。バンド内での揉め事もオレが間に入れば良いのは本当だ。蚊帳の外なんて言って、本当は諦めていただけなんだよ。オレは…オレだけが、まだあの日から立ち直れて無いんだ」

オレの言葉にお前は申し訳無さそうな表情を浮かべた。

「お前のせいじゃ無い。お前は何にも悪くねぇよ。オレがまだ向き合えてないだけなんだ」

お前の手を握ろうとした手は空を掴む。やっぱり触れないみたいだ。先程乾いたはずの涙が、また溢れてきそうだった。

「ごめん…。俺があの時ちゃんと周りを見ていたらこんな事には…」
「別にお前のせいじゃないだろ。悪いのは全部、あの時飲酒運転してたおっさんだ。オレはアイツだけは絶対に許さねぇ…」

つい語尾に力が籠る。今でもあの日の映像が脳裏から離れない。
オレと別れた直後だった。横断歩道を渡るお前を見送り手を振っている所に、飲酒運転の車が突っ込んできた。
運転手は無事。しかしコイツは打ち所が悪く、その後病院で息を引き取った。

お盆は、地獄の釜が開いて死者の魂が帰ってくる日らしい。お前はオレを心配して、地獄からオレの所に来てくれたんだな。自分の家にも帰れた筈なのに、真っ先にオレの所に来てくれた。
それが嬉しくて、情け無くて、オレは死して尚お前に心配を掛けているのだと思うと自分に腹が立つ。
オレは変わりたかった。向き合いたかった。お前の居ない事実にずっと目を瞑って居たが、それももう今日で終わりにしよう。

「なぁ、聴いてくれるか?」
「いいよ」

お前は「何が?」と訊く事もなく、いつも即答してくれるな。どんな時でもオレの話を聞いてくれた。ただ側で頷くだけのその時間が、オレは好きだった。
オレを親友だと言ってくれた。オレも親友だと思っていたさ。いつも恥ずかしくて、照れ臭くて言えなかった事沢山あったんだ。居なくなって気づくなんて遅いと思われるだろうが、オレはには沢山あったんだ。明日も、明後日も、当たり前にお前に会って話が出来ると思っていたから伝えられない日が来ないと思って無かったから。

オレはケースを開けてギターを取り出す。アンプに繋ぎストラップを掛け、弾く準備をしてお前の方に向き直った。

「オレはこういうの苦手だから。自分の感情とか伝えるの苦手で曲にしたんだ。歌詞はいつもお前に書いて貰ってたし、自分で一から書くのは始めてで上手く伝わるかわかんねぇけど…。お前が居なくなって、どう向き合えば良いかわからなくて…でもオレにはこれしか無かったから」
「うん…わかってる…」
「オレは、もうお前に心配掛けたく無い。お前が安心して帰れるように、聴いて欲しい」

深呼吸をして、ギターを奏でる。ベースもドラムの音も無い。ギターの音だけじゃ寂しいけど、今はこれが精一杯だ。だけどお前に伝えるのはオレの音だけで良い。
オレはお前の書く詩が好きだった。お前の詩に曲を付けるのが楽しかった。お前とバカやって、笑って、ケンカした日々すらも愛おしいんだ。

先に死にやがって、バカやろう。まだあのマンガ返して無いんだぞ。大好きなバンドのライブ、また一緒に行こうって約束しただろ。お前の好きなアイスの新作出てたんだぜ、オレはやっぱり好きじゃ無かったわ。お前の味覚がわかんねぇよ。
オレはお前と修学旅行行きたかった。大学同じ所行こうって言ったじゃねぇか。社会人になったらどうするって、とんでもない未来予想図描いてたのに、お前が居なくなってしまったら何にもならねぇだろ。

あぁ、居なくなってしまったんだな。隣に居たお前の姿毎日探しているよ。
教室の机が、とうとう無くなってしまったんだ。名簿からお前の名前は消えたし、お前の居た証が少しずつ消えていくのが堪らなく嫌だった。
だから、今こうして目の前に居るお前だって本当はオレにだけ見えて居る幻覚なんじゃ無いかと思ってんだぜ。
幽霊なんて信じてなかったけどよ、今は、今だけはその存在に賭けたいんだ。
幻覚なんかじゃ無い。お前が目の前に居るって事実を。


曲は最後のサビを終え、アウトロに差し掛かる。
いつの間にか溢れ出ていた涙が頬をつたり、手元にまで落ちてくる。視界がボヤける。気のせいかお前の存在までボヤけてるみたいだ。
オレは拭えない涙で視界が曇らないよう、精一杯目を開く。

足先から消えかかるお前の姿に、まだ行かないでくれという気持ちと、安心して帰って欲しいという気持ちがせめぎ合っている。

夕陽が沈み掛けて居る。もう時期夜だ。そこかしこで焚かれた煙の匂いが風に乗って教室に漂う。
迎えが来たのだ。時間なのだ。もう少し、もう少しだけで良い。最後にお前に…。

最後のギターを掻き鳴らした時には、もう見えなくなっていた。

ボヤける視界で最後に見たのは、大粒の涙を流しながら笑うお前の顔だった。
逝ってしまったのだろうか。最後まで音は届いただろうか。オレの気持ちは、想いは届いただろうか。

「ありがとう、親友」

耳元で囁かれた言葉に思わず振り返る。しかしそこには誰も居なかった。
気のせいか、それとも…。

「ありがとよ、親友。お前の事は一生忘れねぇよ」

窓の外、落ちた夕陽の気配が残る青黒い空に呟いた。
そよ風がカーテンを捲る。お前の笑い声が聞こえたような気がした。


#親友へ 【君の奏でる音楽】

8/13/2023, 5:39:32 AM

君の奏でる音楽

どこからともなく聞こえるヴァイオリンの音色。音楽に詳しくない俺は、曲名も知らないし誰が弾いているのかもわからない。古くて汚い校舎の隅で鞄を背負いながら考える。惹き込まれそうな音色に、体が離れたくないと嘆いていた。窓から差し込む光は茜色に染まっていて、5時を告げる放送が帰りを急かさせる。ふんわり香る夏の匂いに胸がきゅぅっと締め付けられるような気がした。綺麗事を許してはくれない世界を、弱音を罵倒する様な世間を、無視して駆け出して行けたらどれだけ楽だろうか。何も力になれない自分が嫌になって、逃げ出しても怒る人はいないだろうか。迫りくる明日にサヨナラを告げても、許されるだろうか。俺を何処かに連れ出してくれる人がいたら、なんて心のなかで叫んでも、何も変わりはしない。薄っすら黄ばんで踵の部分は潰れている上履きを眺めながら、オトノナルホウヘと歩き出す。階段を登って、屋上に繋がる扉を思い切り引く。ばっ、と顔を上げると相手もそうだったようで目を丸くしてこちらの様子を伺っていた。同じ制服を着た背の高い男。ヴァイオリンと弓を手にしていて、色白の肌が楽器の茶色に映えていてきれいだった。

「あなたの心と、人生の一部、ちょっとちょーだい。」

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