『光と闇の狭間で』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
【光と闇の狭間で】
天は泣き、地は仰ぐ。少女は一人泣いていた。
神よ。これが罰か。怒りの津波に我らを落とし、
悪魔よ。これが罪か。共に神への哀しみを晴らすため。
神よ。父よ。我らは無条件に貴方を愛するのに、
貴方は我らに罰を与えてばかりだという。
祝福など何処にもない。貴方は独善でしかない。
影に身を包み、堕天使と踊ろうにも、
黒く染まったその翼が再び羽ばたくことはない。
これが、諦めることでしか成し得なかった世界がこの末路だと言うのなら、
何処までも人のまま、愚かに隠れて祈ろう。
神も、悪魔もできない我ら人間だけの贖いを。
善にも、悪にもなれない不完全なままの存在でいよう。
いつか我らの時代が訪れる。孤独な楽園を築こう。
触れることも、消えることもない。
光と闇の狭間で。
▶32. 「光と闇の狭間で」
31.「距離」
:
1.「永遠に」近い時を生きる人形✕✕✕
---
日が傾きはじめ、人形は野営の準備を始めた。
充分に薪を集めてから火を起こす。
ごくたまに人が通りがかることもあるため偽装と消火用を兼ねて、
水を汲んだポットも近くに置いておく。
人形の体は冷えても動作に支障が出ないし、今夜は人間と一緒にいるわけでもないから放熱の必要がない。だんだんと気温が下がり、焚き火に近い前部の温度はさほど変わらないが、背部の温度は少しずつ下がっていく。
(あの夜は、背中に温度を感じた。状況的にシブだったのだろうが)
なぜそうしたのかは分からないし尋ねてもいない。
太陽の光が沈んで消え、夜の闇が近づいてくる。
その摂理に抗うように火を焚く。
人形も同じようなものだろうか
人間が生まれて死んでいく、その狭間で延々と動き続ける。
仕入れ屋に人形であることが知られた影響か。
ゆらり、ゆらりと揺れる炎を見つめながら、
具体性のない問いに思考が流れていく。
✕✕✕は、そのような自分を止めなかった。
光と闇は繋がっている
生と死も繋がっている
✕✕✕は薄闇を孤独に羽ばたく鳥を見た気がした。
生きるものも年取らぬ人形も等しく闇が覆い、夜は更けていく。
光闇の隙間で
光と闇の隙間で
君に会った
私は光で
君は闇
君のとっては
逆かもしれない
でも
お互い
光と
闇に
吸い込まれた
もう会えそうにない
もうすぐ雨止むから….その日も晴れるらしいよ
さりげなく君を誘った
君は、これでもかというくらい
僕の目を見ないままずっと雨の中雨宿りをしている
僕は悩みオペラを観るように
闇を拭う
君は育ちがいい
僕は生きる術を学び生きて来た
東京を初めて駆け抜けた卒業旅行
その時も僕は1人だった
沢山の愛をお互い受けて育ち
愛を奏でないなんて勿体無いよ
こんなにも、まだ光に満ちているのだから
人はみんな誰かの為と言いながら
実は自分を押し殺せない
闇から光を覗き込み、何が見えるんだ?
光の中にいて、闇を寄せるのだ?
答えは、それが闇であるということ
気づかないまま死にゆくもの
地獄の中の違った微かな希望を転写してすがるもの
ね、虹が見えるでしょ
今度君を誘う時、もっとかっこよく誘おうと思った
西陽が心地よい部屋で
海に沈む太陽に想いを馳せる時
僕の可笑しさと涙が交差する
……光と闇の遊園地
ジェットコースターは二日酔いなら乗れないけれど…
魔法使いに願いをかけよう
スイッチを切ってから
番号はもう変えないから電話して
細い声で叫んでみた….
光と闇の狭間で….
もし、幸福と地獄が紙一重なら
私は今、その狭間にいるかもしれない。
職場で一人の仲間として歓迎されている私と
孤独いう名の爪弾きにされている同僚がいる。
私は任された仕事をこなせば感謝され
「大丈夫?」とか「一緒に頑張ろう」と
手を取り合ってみんなで一つの電車に乗って
ゴールのない職務に取り組む。
それが普通だと思っていた。
孤独という名の服を着た彼は
一人でも自分なりに淡々と仕事をこなしている。
「かわいそう」
と思うけど、彼には孤独にされた理由があるらしい。
私だってついこの前までは彼とも親しかった。
話そうと思えばいつだって話せばいい。
ただ、この光と闇の狭間では
明るい方を選ばなれけば私も地獄に落ちる。
彼を置き去りにするのは心が痛むけど
みんなの孤立にさせたい理由もわかる。
どうすればいいか。
これが今の職場での悩みの一つだ。
一年半ぶりに実家に帰った。
何回も涙が溢れそうになって、胸がギュッてなった。
家族は私のことをすごく愛してくれているし、私も同じくらい愛したいんだなあ。
同じくらい、愛したいんだなあ。
-光と闇の狭間で-
【光と闇の狭間で】
社会に出てから、2年と数カ月が過ぎた。
今日は高校時代の友人と会う約束があった。
お気に入りの服に着替えて、
いつもより時間をかけてメイクもした。
出かける準備はバッチリだ。
…だけど、そこから、身体が動かない。
LINEグループでは、連絡が飛び交っている。
私も返信しなければ…とは思うものの、
何をどう返せばいいのか、わからない。
既読をつけてしまうのが怖い。
そもそも、私が遊びに行っていいの?
気心の知れた仲だけど、だからこそ、怖い。
何が?何が怖いの?この感情は本当に恐怖?
なんで自分のことなのにわからないの?
私は、今、何を考えているの?
思考がグルグルと悪循環していたとき、
電話がかかってきた。
(…電話。せめて、電話くらい出なきゃ。)
意を決して、画面をタップする。
「よう。そろそろ出発だけど、大丈夫か?」
『…ごめん、今日…行けない。』
ちゃんと話さないといけないのに、
声の震えを抑えられない。視界がぼやける。
「おい大丈夫なのか?」
『うん…、大丈夫。』
「そうか。……無理、するなよ。」
『…うん。ほんと…ごめん。』
「気にするな。大丈夫だから。な?
今日はゆっくり休め。」
『うん。…ありがと…ごめん。』
「ああ。それじゃ、またな。」
"また"…か。
連絡もまともにできなくて、
当日にドタキャンするような、
電話口で泣き出すような面倒なやつに、
"また"の機会なんて、あるのだろうか。
一度悪い思考に囚われてしまうと、
そう簡単には抜け出せない。
自分はなんて弱い人間なんだろう。
―――
いつの間に眠っていたんだろう。
気が付くと、外は既に暗くなっていた。
スマホで時間を確認して、
そのまま何となく動画を漁ってみる。
少しすると、LINEの通知が表示された。
"調子はどうだ?"
"今、家の近くなんだが
少し会えないか?"
"今朝はごめんね
もう大丈夫"
"どれくらいで着くの?"
"5分もかからないと思う"
"了解、待ってるね"
やり取りを終えて、外に出てみる。
夜風は冷たく、雲がかかって月も見えない。
真っ暗な空を見上げていると、
遠くから眩しい2つの光が向かって来た。
「なんだ、外で待ってたのか?寒いだろ。」
『うん、平気。』
車を停めて駆け寄って来る。
吐き出される息は真っ白だった。
『中、入る?』
「いや、今日はコレ渡しに来ただけなんだ。」
『なに?』
そう言って手渡された紙袋。
「甘いの好きだろ?みんなで買ったんだ。」
『うん。…ごめんね、わざわざ「謝るなよ。」…ごめん。
…ありがとう。』
「おう。」
『中、見ていい?』
「あぁ、もちろんだ。」
中に入っていたのはバウムクーヘン。
『…米粉?』
「そうだ。米粉のバウムクーヘン。ショッピングモールで
出張販売してたんだ。3種類あるぞ。。」
『へぇ〜、美味しそう。』
「それなりに日持ちするから、少しずつ食べろよ。」
『うん、ありがとう。』
「…やっと笑ったな。」
『ん?何?』
「いや、何でもない。」
暗闇に独り、取り残されてしまったような気持ちと共に、
曇っていた空も晴れていく。
満月が辺りを明るく照らす。
あなたの優しさが、私に光を宿してくれた。
※空気の問題とかは考えてないです。
「あぁ、旦那様。私の可愛いあの子はどこへ行ったのです?」
「やめなさい。あんな「ルナたい」の話をするなんて。それより、私達にはこの素晴らしい子がいるじゃないか」
言って父さまは母さまのお腹を撫でられた。
その時ばかりは父さまの目は愛する我が子をみる目だった。
「母さま!母さま!出して!父さま!助けて…」
結局、僕は弟の姿をみることも叶わず深い深い地の底に落ちた。
人は生まれつき首元にマークがありそれで判断される。
「ルナたい」、「さなたい」、「きざし」
この世界は主に3つの階級があり住む世界が分けられる。
「ルナたい」
首元のマークが△(さんかく)な人がこの名を名乗る。
世間からはゴミ扱い。
地上とは切り離された太陽の光が届かない場所に彼らは居る。
その誰もが、優しく、臆病だ。
彼等はただ真っ直ぐ前を向く。
この目で一目太陽を見ようと。
「ルナたい」の子供から「きざし」がでた例はない。
「さなたい」
首元のマークが◯(まる)な人がこの名を名乗る。
「ルナたい」より人数が少ない。
劣等感を感じやすく、繊細で自意識過剰。
太陽の光の下で生き、暗闇を知らない。
いつも下を向き、自分達より劣っている者を見下している。
一方で傷つきやすく、ちょっとしたことでふさぎ込んでしまう。
「きざし」
首元のマークが☓(ばつ)な人がこの名を名乗る。
3つの階級の中で最も地位が高い。
「ルナたい」と「さなたい」の間に住む。
上には太陽、下には闇が。
ただ、「きざし」は最も重要な役を担っているので、失敗すると「ルナたい」に落とされることもある。
正義感と責任感が強い。
ほかの2つに比べ頭がいいのも特徴の一つ。
現在「きざし」は2人だけ。
「ねぇ、じいちゃん」
「?」
「弟は、元気?」
「あぁ」
じいちゃんの目元にぎゅっとシワがよった。
「そう…階級は?」
「……いや、心配することじゃないよ。現に今ここにいないじゃないか」
ここは「ルナたい」の住む場所。
最も人口が多く一番広い場所だ。
じいちゃんは真剣な顔に戻って言う。
「それより、また“上”が揺れたんだ。“下”に落ちてくるかもしれないから気をつけろよ」
「“上”って「さなたい」のこと?」
「そう、もう時間だ。楽しかったよ、次来るときはなにか持ってこよう」
じいちゃんの首元から△のマークがちらっと見えた。
※この世界は「ルナたい」「さなたい」「きざし」をそれぞれ自由に移動できる。
「はるくんのおじいちゃんって凄いよね」
はるは俺の名前。
「そう?」
「そうだよ!はるくんのおじいちゃんが「ルナたい」で一番最初に「さなたい」にあがった人じゃん」
「でも、すぐに戻ってくるかもね。ほら、前に「さなたい」から「きざし」に上がった人いたじゃん?あの人だって、「きざし」の人と性格が合わなくてすぐ「さなたい」に戻ってきたじゃん」
じいちゃんは滅多に“上”に行かない俺に色々教えてくれる。
前にじいちゃんが持ってきてくれたのはこの世界の形。
俺等が一番下の土台。
真ん中に「きざし」の場所があってその上に「さなたい」の場所がある。
砂時計みたいな形をしてた。
「きざし………良いなぁ」
「えっ?」
聞き返す。
「仕事は大変だろうけど、それでもちやほやされるんだもの」
「…純粋なんだな」
「はぁ?」
「違った。間違えた。…いいよな、きざし」
「…うん」
じいちゃんは、弟の階級の事を教えてくれない。
でも多分、弟は「きざし」だ。
「さなたい」なら俺に遠慮することも無いんだろうけど、「きざし」だとそりゃまぁ、うん。
遠慮する、よな。
俺は自分の首元のバツ印を触った。
俺が、11か12だったころ、弟が生まれる時。
ミスをおかした。
その頃の「きざし」は俺を入れて2人。
俺が「きざし」から「ルナたい」に落ちたのはすぐに報道された。
ただ、幸いだったのは「きざし」の顔は両親や兄弟、また、生まれた時に世話をする使用人にしか分からない点だった。
そして、俺が「ルナたい」に落ちてから、入れ替わるように「きざし」が生まれたのは大きく取り上げられた。
両親はどれほど喜んだだろう。
「きざし」を2人産み、そしてその1人は「きざし」として成功したんだから。
今、新しく入った「きざし」は瞬く間に成長しとんでもない量の仕事をこなしている。
笑った。
笑うしかなかった。
俺は性格が悪いのかもしれない。
あの地獄の環境で、何も知らず、せっせっと社会のために貢献している弟を、笑うしか無かった。
俺はあの部屋で「きざし」のために用意された部屋で、悟ってしまった。
俺達は透明人間なのでは無いかと。
俺は疑問だった。
なぜ、一番偉い俺達のマークがバツ印なのかと。
ずっと、考えていた。
ずっと。
先輩、俺より前にいた「きざし」に聞いてみた。
そしたら先輩は笑って言う。
「そりゃ私達が失敗作だからさ」
「でも」
「わかるよ、不思議だよね。じゃあ聞くけど、誰が決めたと思う?」
「何を?」
「私達の順位を、どうして「きざし」が一番上なのか」
「それは」
「私は、多分一番偉いのは「ルナたい」だと思うんだよね」
「はっ?」
「あんなにいい人達なんだよ?善人が不利になる世界、神様が作ると思う?」
「……」
「つまり、私達「きざし」は善人を導くために産まれたんだよ。
頭がいいのも正義感が強いのも、私達が分かった知識を独り占めしようしないように。
「きざし」は「兆し」だから。私達が生まれることによって時代が変わるでしょ?
そして、一番最初のはるくんの問いだけど、私達は人の手助けをするけど、時には悪い事もするから。
それに、はるくんは知らないかもしれないけど、「きざし」が「きざし」って名前じゃなくて、人の首元にマークが無かったころ、一度「きざし」が神様を否定してるから、神様が怒ったんじゃないかな?」
「そんな馬鹿な」
「いいんだよこれで。あんまり考えすぎると仕事ができなくなるよ」
俺達は人のために仕事をする。
生まれた時から、「きざし」に仕事をしないなんて選択肢はない。
俺達に言葉は無い。
ひたすらに数字書いて、たまに文字も書くけど。
きっと誰も読まない。
俺達がいくら、「きざし」は今後いっさい仕事をしないなんて言おうが無視される。
俺達の言葉は聞こえない。
兄として、弟が心配になった。
少しだけ。
「ルナたい」にも「さなたい」にも言葉はあって、活気にあふれてるけど。
「きざし」は常に、時間がおってきてひたすらに数字を書いている。
弟の苦悩が見えるようで、気持ち悪くなった。
ー光と闇の狭間でー
締め方思いつかなくてごめんなさい。
テーマとか考えてなくて何と無く書いたから自分でなにかに当てはめて読んでもらえたら嬉しいです。
あと、もしかしたら前のお題書いてなかったかもしれません。
ごめんなさい。
『光と闇の狭間で』
「生きているふりをするのは、草臥れるね」
喫茶店の隅の席で、その人は言っていた。
常連である私から見ても、いつ家に帰っているのかと疑わしくなるくらい、その人はいつもそこにいた。
そこはレトロなどという言葉では表せないくらい、長く生き残っている風な古色蒼然とした店で、アールヌーヴォー様式のステンドグラスが嵌め込まれた窓から射す一筋の陽光だけが、朝でも昼でも薄暗いその店の唯一の光源であった。
「おかしなことを言いますね」
そう私が言うと、
「だって君、影のない僕らが真実生きていると言えないだろう」
と、薄く笑ってカップに口をつける。
その人は、珈琲にうるさい人だった。
「影が、ない?」
それに、“僕ら”と言ったか。
「なんだい、気づいていないのかい。君だって、もう随分と薄くなっているじゃないか」
その人が指差す先は、私の足元だ。
言われて見れば、大分薄く感じる。
いやしかし、この店内の薄暗さのせいであろうと、頭を振って顔を上げた。
「この店に入ってきたのはいつだい?
この店に来る前の記憶はあるかい?
この店から出た覚えはあるかい?」
薄く笑うその人の足元に影があるのかないのかは、わからない。
何故ならその人はいつも光の射さない隅の席にいた。
薄闇の中で手招く人と私の間には、弱くなり始めた陽の光。
そのあわいも、時間と共に闇に呑まれるのが想像できた。
光と闇の狭間で君は何を思うだろう。
上を向けば光があり、下を向けば闇がある。
その真ん中に居る君は何を思って、どちらに行くのか。
気分が上がるから光の方へ行くのか、少し疲れたから闇の方へ行くのか。
でもきっと光も闇もどちらもなくてはならいのものなのだろう。
ずっと明るければそれはそれで疲れてしまうし、ずっと暗いところにいれば嫌な方にしか考えられなくなってしまう。
どちらか1つではなく、どちらも大事。
光と闇の狭間にいる時こそ自然体であり、それこそ偽りのない君自身だと言えると思う。
光と闇の狭間で
キラキラした自分を装うことができる。
自分の意思に反して微笑むことも別段苦ではない。
いわゆる世間で言うところの、私は愛嬌のある女だ。
いつの頃からそうだったのか、定かではないが、おそらく物心つく前からそうだったのではないかと踏んでいる。
その証拠に、私の小学校の通信簿の先生からのコメント欄には六年間を通して、八方美人、お調子者の文字が常連だった。
八方美人て何だろう?
私自身、その言葉の意味すら知らない頃から、周りの大人たちにはそう評価されていたのだ。
同級生の間でも、私は常に明るく、いつも友達に囲まれているイメージだったと思う。
それは、決して嘘ではないが真実とも違う。
あくまでみんなの目に映る私は実像ではなく、虚像だからだ。
八方美人とは、どこから見ても欠点のない素晴らしい美人。
これが転じて、誰からもよく見られたいと愛想よく振る舞う人に使われる蔑称らしい。
たしかに、私は誰からもよく見られたい、というより少なくとも人を嫌な気分にさせたくないと思って日々生きている。
愛想よく振る舞うのはそのためだ。
そうか、八方美人は褒め言葉ではなかったのだな。
何となくそんな気はしていたが、やっぱりそうか。
とはいえ、短くない人生これ一本でやってきた私としては、今さらどうすることも出来ない。
何しろビシッと一本筋の通った正真正銘の八方美人なのだから。
家族の前ですら気は抜けない。
ペットの前ですら良い顔をしている自分がいる。
もうここまでくると病気だなと思う。
重々自覚済みだ。
一日が終わる頃、私は自室に籠る。
すべての人や物をシャットアウトし、キラキラを自分から剥ぎ落とし、微笑みの皮を脱ぎ去る。
決まって年に数日ほど、生きる意味を見失うことがある。
あれ?私何やってるんだ?と自己嫌悪の沼に堕ちていく感覚を味わう羽目になる。
いわゆる闇の期間だ。
でも、それも長くは続かない。
そして、それ以外の大半の日は、光と闇の狭間でキラキラニコニコの八方美人生活を楽しんでいる。
良くも悪くもない。
ただただ私はそういう人間なのだ。
お題
光と闇の狭間で
『光と闇の狭間で』
この世界には全て表と裏があると思う。
綺麗な部品だけ表に見え、汚い部品は裏に隠れている
自分が見ているものは果たして綺麗なものなのか
綺麗な部分しか見れてないのか
はたまた、必然的に綺麗な部品しか見ようとしていないのか
人は見栄を張る生き物だ。
自分を偽ってまで綺麗に見せようとする
だからこそ、人は汚い部分を隠したがる
そうして表と裏がある世界が当たり前になっているのだろう
生きやすい世界に見えて
本当は生きづらい世界なのかもしれない
そんな光と闇の狭間で私は今日も生きている。
「光と闇の狭間って何?」って彼が言う
「だいたい"ここ"だよ」って私が言う
彼の名前は"私の恐怖"だ
温かい陽射しが降り注ぐ窓際で
僕は1人、戦っていた。
「ぽかぽかな陽射しに負けちゃダメだ。負けたら怒られるのは目に見えている。でも、でも…」
お昼ご飯を食べ、お腹が満たされている中、仕事に取り掛からなければならないのに。
降り注ぐ光と、目を閉じれば闇。という、光と闇の狭間で、僕は睡魔と戦うのだった。
あの人は私をどう思っているんだろう。
共通の趣味のお笑いがきっかけで知り合った人がいた。初めて会った日に海とカフェに行った。初めて会ったよね?って確認したくなるほどずーっと友達だったみたいな緊張感のなさと居心地の良さが不思議で仕方なかった。帰り道、手を繋がれた。嫌じゃなかった。でも罪悪感を覚えて、後日手を繋いだことを反省していたと伝えてしまった。2回目に会った時、前回に比べて全然手を触れてこないことに気がついた。これは私に対する優しさなのだろうか。一緒に過ごした数時間は一瞬で過ぎ、まだ6時なのにあかりをつけないと足元も見えずらい帰り道で、手を繋いだこと後悔したの?今日会ったこともまた後悔するの?って言ってきた。私が言葉を濁しているとじゃあ今日は、、と軽く抱きしめてきた。
遊ばれているだけなのか、そうじゃないのか。私は今光と闇の狭間にいる。
「光と闇の狭間で」
新しくできた団地に家を建てた
明るいベージュのかわいい家だ
最近の外壁の流行りは黒らしい。周囲に建つ家は黒ばかり。周りの家が黒すぎて、我が家が白く輝いてしまう
「なあ、今週のプルス読んだか?」
切り出したのは、いつものように俺の部屋に上がり込んでロング缶を引っかけ始めたスグルだ。
「え? 一通り読んだけど、なんの話?」
無造作に床に置いてあった週刊少年プルスを手に取り、手渡すと、パラパラとめくり始めた。
「ここ、新人賞のページ、麦飯ねこ、佳作取ってる」
そんなアマチュア漫画家のペンネームを言われても知らないけど。そう思いつつ、スグルが次に何を言い出すのかを想像して心臓がキュッと締まる。
「これ、砂川ミネコだよ」
透明な水の入ったグラスに、真っ黒いインクが一滴落ちた。
「うそ」
反射的に出たその言葉に、意味なんてなかった。砂川ミネコ、専門学校の大教室、教壇から見て前から2列目、入り口側から見て一番奥、デカい丸メガネでじっと講師を見ていた目立たない女性。
「なんで、あいつが?」
揺れる。黒いインクは病巣が巣食うように無数の黒い枝を伸ばし、透明な水を染めていく。
専門にいたときは何ひとつ目立った結果を出してなかっただろ? 課題だって印象に残ってないし、評価だって高くなかった。なんで、俺より先にあいつが?
プルスのページをじっと見つめる。絵のタッチは好みじゃない。全然上手いとも思わない。こんなのが。俺より。選考員の講評が書かれている。
【絵は荒削りで、掲載レベルには達していませんが、テーマに強い意志を感じました。これが描きたいという熱意が伝わってくる力作でした。】
「なに? 嫉妬してんの?」
こいつ俺の反応見て嗤いに来たのか。嫉妬? そうか、嫉妬してるのか。
黒いインクはグラスの外側を覆うように拡がり、たった一滴で液体を満たした。
「そうみたいだな。ものすごく気分が悪い」
俺がそう言うと、スグルは本当に嗤い始めた。
「にゃはは、うん。それでいいんじゃない。俺も、すごくムカついてる」
なんだよそれ、だったらこんなとこで傷を舐め合ってる場合じゃないだろ。
深夜、スグルは酔っ払ってそのまま寝てしまったようだ。私はスグルの睡眠を気にするつもりもなく、いつものようにラジオを点けた。
『えー次は、ラジオネーム《オーボエの遠吠え》』
黒く濁った液体に、白いインクが大量に流れ込む。グラスの中は白く見える。
脳に浮遊感を覚えながら、俺は虚ろな眠りへと落ちていった。
「こいつはまだずいぶんかかりそうだな」
夢の中で、スグルの声が聞こえたような気がした。
それは変わらず訪れる
暗闇に紛れ身を隠していても
あっという間に引き摺り出される
如何に抵抗しようとも
その宿命からは逃れられず
何度も何度も繰り返す
そう
敵の名は母親
布団の中の楽園から
否応なしに引き摺り出される
布団という鎧を剥がされ
カーテンを空け朝日という閃光を受け
今日も渋々起き上がり
楽しくもない日常という苦行に放り出される
「光と闇の狭間で」
見事です 窓から見える 紅葉が
暖かい 小春日和に うきうきと
「ダメ元で聞くけど、クリスマスの日バイト入れない?」
そう訊ねた僕につい先日彼氏が出来たと浮かれたように教えてくれたバイトちゃんは「いいっすよ!」とあっけらかんと答えた。
「え!?彼氏くん用事あるの!?」
「ん?いや、どうでしょう。聞いてないけど、彼氏もうちも仏教徒なんで大丈夫ですよ」
「デートしないの!?」
「?彼氏もうちも仏教徒…?」
「クリスマスはそういう宗教感じゃないから!」
不思議そうに同じ言葉を繰り返したバイトちゃんに「バイト入れなくていいから彼氏くんに予定聞いておいで!」と叫んだ。