『何もいらない』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「今日のお髭すごく似合っています。素敵。外国の俳優さんみたい。」
「は、はあ…。」
「そんなに怖がらないで。捕まえて食べようというわけじゃないの。」
「そう、ですか…。はい…どうぞ。」
この子との会話は実に心臓に悪い。
店に来て世間話をして花を一輪買って終わりのときもあれば、今日のように熱烈…な思いを伝えられることもある。真っ赤なバラの花束を添えて。
しかし俺の答えを求める素振りは無い。故に少し不気味さを感じる。
「…いつもありがとう。」
「こちらこそ。いつも素敵な姿を見せてくれてありがとうございます。…あれ、これって。」
「…おまけ、です。この前そこにいるうさぎを褒めてくれたので…日頃の感謝を込めたというか。」
「ありがとう。でも本当に何もいらないのに。」
「良いんだ。俺が、こうしたかったから。」
プレゼントなんてものは所詮自己満足。あとは受け取った側に委ねられる。
「この子、とてもかわいい。あなたそっくり。大切にします。どうもありがとう。」
にこ、と普段とは違う年相応の笑顔を置いて店を出て行った。
あの子の手に渡った小さなくまのマスコット。
あれは少々自信作だった。あの顔だけで見返りはいらない。
あの子の気持ちもそういうことなのだろうか。
何もいらない
『何もいらない』
先王の崩御から三年。謎の流行り病だった。少なくとも民にはそう公表されると、目の前を歩む小さな背中は死んだような目で告げた。
世継ぎができたと喜んでいた妃の顔は今でも覚えている。
なぜかその後先王のお渡りが極端に減り、妃は子を瞳に映さなくなり、子は自然と私になついた。
熱にうなされたとき、私の指を離さず乳母やメイドを困らせたものだった。
「カイル。私が道を違えたときは遠慮なく私を打て。聞かぬなら斬り伏せろ」
「そのようなことは」
「下劣な血が半分でも流れた体だ。もう半分も似た者に成り果てつつある」
先王の病は、一言でいえば女狂いからきた自業自得な毒からくるものだった。盛ったのは王の愛人。協力した従者は妃の愛人だった。妃は今も愛人を増やしつつある。かくいう私も誘いは受けた。
貴女の娘以外、私はもう何もいらないというのに。
性別を隠して次の王との繋ぎをすると告げられた日、お付きの者で支えると皆で心に決めた。
その日ほのかな私の初恋は終わりを告げた。
そんなことを、僕は言った
でも言わなきゃよかったと後悔をした
何も得られないということは
どれだけ頑張っても
証が得られないのだと..
【何もいらない】
✂ーーーーーーー✂
生きるって長いようで短くて
過去を見れば
つい最近まで小さかったのに
なんて思うくらいあっという間で
でも
未来を見ると
嗚呼、まだまだ先があるな、
長いな、とか
逆にもう、あとこれしかないのか
とか、、、
なんか考えるだけで疲れちゃうや
【お疲れ様です】
『何もいらない』
君以外何もいらない
友達も、親友も、心友も、友人も、家族も、
僕には君だけいればいい。君しかいらないんだ
だから君も早く僕だけに目を向けて、僕だけを見て二人だけの世界で、二人だけで生きていこう?
ねえ、君もそう思うよね?
他の奴らのことなんて気にしなくていいんだ
だからさ、早く、僕に堕ちてくれない?
「何もいらない」
私が欲しいのは君 君だけだ
他には何もいらない 君からの愛が欲しいんだ
それが叶えば 僕は君を やっと やっと 殺せる
オニロ。
何ももう望んだりなんかしないから
もう二度と、自分の手の届かない希望に縋ったりなんかしないから
もう、何もいらないから。
それでも、誰よりも純粋で綺麗で優しい人達の首に手をかけようとするならば。
相手が神様だろうがその喉元を噛みちぎってやる。
「何もいらない」
2年前、原因不明の病と闘った。
毎日もがき、苦しみ、涙を流しては弱音を吐いた。
その時に思ったことがある。
日常を当たり前だと思ってごめんなさい、何もいらない、これからは大切にするので、
普通に生きられる体に治してください。と。
「はい、どうぞ」
その声に、微睡みにあったアキラの意識は現実へ急激に引き揚げられた。
埋めていた膝頭から顔を上げると、目の前に金属製の容器が突き出されていた。
泣いていたからか、目が膝に押しつけられていたからか、若干視界がぼやけている。
その奥でいまいち表情の判らない鳥頭とアキラの視線がぶつかった。
「あ、ああ。ありがとう」
戸惑いながら受け取った容器には、澄んだ液体が五分ほど注がれ、天井の照明をゆらゆらと反射している。
なかなか口をつけない事を不思議に思ったのか、イハは「これは、人族が飲んでも良いほど浄水してます、良い水です」と補足された。
-そういう訳では…
と思いつつも、水を口に含むと、身体が渇水していた事に気付いたように、一気に飲み干してしまった。
「…ヒスイ様は」それを待っていたようにイハはアキラに話しかけてくる。
「毒が抜けるまで一晩、頸が完全に繋がるまで追加二晩、眼球や肺などの再構成で四晩かかります。毒の除去の副作用で恐らく身体機能が著しく上昇しますよ」
一拍置いて、アキラは容器を投げ捨ててイハに詰め寄った。
「眼と肺…再構成って…どういう事だよ!?ヒスイの治療だけじゃないのか!」
頭では、あの時イハに頼る以外の選択肢がなかったこと、恐らく全くこの器械族に害意はなく純粋に保護してくれたことは理解できていたが、それでも怒鳴る事を止めることはできなかった。
「はい、人族にとって、空気も有毒ですので、生まれ落ちるまたは生まれた後に、処置が為されます。しなくとも直ぐに死亡することはないですが、生存年齢は短いでしょうね」
イハはアキラの質問に淡々と答える。
「ヒスイ様はご指示のとおり未処置でしたので、今後侵され無いよう再構成をしておりますよ?」
「てことは、俺も?」
「はい、アキラ様にも受けさせるように指示されております」
「ヒスイが?」
「はい」
−治療のとき外にいたから、そこで伝えたのか
「ちなみに断ることは?」
「自由意志でございますよ、そうする場合は防毒防塵の防護装備を用意しますから。人族にはひどく苦しいですから、不利益の方が大きいですね」
「…怒鳴って悪かったよ。解った」
アキラはヒスイが目覚めるのを待って、施術を受けることにした。
何もいらない。私はあの子が戻ってくれば、時間だって、お金だって、命すらもいらない。そう何もいらないからあの子を戻して欲しい。
「あの子じゃなくて私だったら良かったのに。」
お題『何もいらない』
「出張の土産」「箱買いしたら賞味期限が思ったよりもたなかった」「二本セットからしか買えなくて」などなど。彼がここに来るときの手土産という名の言い訳も、そろそろレパートリーが尽きる頃ではないだろうか。彼は本日仕事、もうすぐ退勤の時刻。助け舟一割、エゴ九割ほどの気持ちでスマホに指を滑らせる。「一緒に食事をしましょう」「家まで来てください」「用意はできているのでそのままで」今日は言い訳が不要になるところまでいきたいが、さて。
(題:何もいらない)
君がいたら何もいらない
なんてことは言わない
僕は性能がいいパソコンが欲しいし
ニキビに負けない綺麗な肌が欲しい
テンションが上がる部屋も欲しいし
気楽に海外に行けるお金も欲しい
心の支えになる友人や
決断の背中を押してくれるメンターも
地位や名誉だって
あるにこしたことはないと思ってる
そう つまり僕は欲張り
でもそもそも 君がいない世界なんて
欲しいっていう衝動が
湧いてこないかもしれない
つまりその 僕が言いたいのは
君がいる世界は豊かだってことさ
【何もいらない】
何もいらない
「さぁ、今日は何をしようか?」
僕は動かない人形に今日も問いかける。
僕たちの周囲には、積み木や車のおもちゃ、テディーベアにクレヨンが散らばっている。
「そうだ、今日は新しいおもちゃを持ってきたんだよ。見たいかい?」
返事を待たずに、僕はカバンからあるものを取りだした。
きらりと光るそれは僕の見開いた目をカッと映し出した。
「僕はね、本当に何も持ってないんだ。本当は。」
目を伏せながらぽつりぽつり話し始める男を、人形は生気のない目で見つめている。
「だから僕は、君のために何かあげられるものはないかって、ずっとずっと探していたんだ。」
彼は深く息を吸い込んで言った。
「どんなおもちゃも君に捧げるに値しない!何か君に支える能力も才能さえも持っていない!君をもてなすためにパーティーを開こうとしたって友人の一人だっていない!」
彼は引き攣った笑いで続けた。
「だから思ったんだ。僕の命を、君に捧げようって。」
男は妖しく光るそれを、人形に突き刺して狂ったように笑った。
「僕の命はね、君自身だよ。僕は君が居なきゃ生きていけないんだからさ、当たり前だよね?君もわかってただろ?」
「僕はね、君以外は何もいらない…。」
「僕はこれでやっと、無価値な命を終わらせられるんだ。今まで僕を生かしてくれて、ありがとう。」
男は涙を流しながら、人形から引き抜いたそれを自分の身体に沈めた。
「愛する君をずっと縛り付けていた罰を、やっと受けられた……不思議と今、心地いいんだ……」
「いつか、本当に、君に、何かを捧げられる人に、生まれ変われたら……なんて素敵だろう、ね……」
沢山のおもちゃに囲まれて目を閉じた2人は、身を寄せ合うようにして眠りについた。
物が捨てられません。いずれ使うかも、とか、これを買った時に必要になるかも、とか。人との縁も、いつの間にか壊れていくのを恐ろしいと思っていました。自分の中にはいらないものが沢山あって、でも一つも捨てることも無くすことも変えることも出来なくて、新しく手に入れたいものばかり。
そうして全部諦めて何もかも手放そうとして、一度に沢山捨てました。ゴミ袋がいくつかと、紙が1枚。
今は中途半端にまた戻ってきた縁と、捨てられなかった自分自身。
欲は途切れることがない。欲だけが膨張して、飲み込まれそうになる。
「なにもいらない」って言えるようになりたい。
《何もいらない》
剣を振る度に呼吸が乱れ、姿勢が崩れる。
「はぁっ……はあ……ッ……!」
観客の声が五月蝿い。
その姿も全部、五月蝿い。
相手の剣とがぶつかって、金属音が嫌に響く。
——いなくなれ。黙れ。
苛立ちを隠せない自分に呆れすら抱きながら、そう、ふと思う。
すると、呼吸を重ねるにつれ、観客の姿が空に解けていく。
そういう感覚に陥っているだけだろうが、今はそれでよかった。
今度は、呼吸が邪魔だった。
自分の息が荒くて、それが鬱陶しい。
風の唸る音が呼吸の間に聴こえて、勘で攻撃を躱す。
また一合と切り結び、離れた。
——相手のも全部、邪魔だ。
繰り返される呼吸が、酷く煩わしい。
「はっ……はぁっ……ふー、ふッ……」
呼吸もまた、空に、解ける。
彼我の差は五メートルほどだろうか。
けれど、今はその距離すらも、いらない。
——これが最後だ。
剣先が動いて、自然に吸い寄せられる。
体も、まるでいらない。
何もいらない。
ただ一心にそこを斬るだけだ。
相手を殺す為の剣を。
「————」
果たして、彼の者の剣は相手に届いた。
無我のそれには、“生”の気配が感ぜられなかった。
それ故に、呼吸も置かず、瞬きもなく行動を起こせたのだろう。
「——ッはぁ、はあっ……はッ……!!」
大量の血飛沫を浴びて漸く、荒く呼吸を吐いた。
そうして彼は、後に剣聖として語られるまでに成るのだ。
誰かを殺すまで知れぬ境地など、知りたくもなかったろうが。
その境地こそが剣を殺し、生むのである。
何もいらない!
そう、愛する人と
一緒なら、何もいらない!
それがわたしの望みだから。
めぐみより
シャカ族の王子であったゴータマ・シッダールタは、何不自由もない暮らしをしていたが、人生に疑問を抱いて出家してしまう。その時29歳だった。
シッダールタは苦行林で激しい苦行を何年も続けるが、大した成果はなく、これ以上続けても無駄だと思い、一切の苦行を止めてしまう。
川で身を清め、乳粥の施しを受け、菩提樹の下に座り、ただ静かに瞑想し続けて、ついに悟りを開いたのである。この時35歳。
私は仏教について本格的に学んだ訳ではないが、上の⬆話は幼稚園の時に先生から習った、ほぼそのままである。
だから、仏教とはシンプルに考えれば、一切の雑念を捨てて、ただ、ただ瞑想に打ち込んで悟れば良いのである。
禅宗の道元という人も「只管打坐」と言っている。つまり、「ただ座って瞑想せよ」だ。坐禅する事が重要なのだ。
でも、人は食べないと死んでしまうので、午前中は托鉢などして施しを受ける。午後からはずっと坐禅するのである。
これは、つまり釈迦の真似をしているのであるが、
釈迦のオリジナルという訳ではなく、釈迦が生まれるずっと前からインドではバラモン達もそうしていたものらしい。
禅の修行では、出家する時に全ての財産や地位を捨て、「一衣一鉢」だけ持つ事を許される(衣は用途別に3枚)。本来は托鉢で得た供物をその鉢で食べるものであったらしい。
じゃあ、その悟りとは何かと言えば、私には到底答える事は出来ない。
でも、宇宙の真理を説き明かす何かであるらしい事は分かる。
仏典を勉強してみると、量子力学みたいな構造の話など出て来て驚いてしまう。
私が釈迦に漠然と憧れるのは、その生活スタイルなのかも知れない。
基本的に彼は「一衣一鉢」を生涯通した。
たまに説法する事もあったが、多くは独り座して瞑想に耽っていた。
釈迦くらいになると托鉢にも行く必要はなく、何日も瞑想し続けたり、食べてもほんの少しだけだった。
言葉はあくまで少なく、弟子が何か質問しても否定する以外は沈黙によって了承していたという。
ご承知の通り、いま仏教はたくさんの宗派に別れているが、突き詰めればシンプルなもので、
禅宗の修行の形がそれに近いのかも知れない。
真理を知れば、何もいらない。
「何もいらない」
政略結婚なんて古臭いものが今でも存在するという事実を、私は身を持って知った。実家からの手紙には私に政略結婚をさせるという旨と相手の写真等が同封されていた。会ったこともない何も知らない相手と結婚するなんて虫唾が走る。手紙をゴミ箱に投げ捨て、ベットに身を沈めた。
窓の外に広がる満天の星空、開かれた窓からは冷たい風が吹き込み体温を奪ってゆく。
今自分がやっている事を続けられなくなるのは嫌だ。ずっと昔からやりたくて、ようやく親の許可が降りて家から出られたというのに。
私は所詮蜘蛛の巣に囚われた蝶なのだ
地位も名誉も何もかも捨てて、貴方と生涯を共にしたかった。貴方が私を想ってくれるのならそれ以上は望まない。
何も要らない。
呼吸も、
家族も、
スマホも、
自分も、
全部全部?
自分は欲しい。
って、欲望じゃん⋯⋯
お題『何もいらない』
私の妻は欲がない。我々はいわゆる『政略結婚』というもので、お互いに被害が一致したがゆえに初対面の女と婚姻関係を結んだ。
私は世間が流布する噂で「冷血漢」だの「目が合ったら首から頭が落ちてた」だの言われているらしい。たしかに私は、騎士を代々輩出する家柄だ。私も騎士で、戦場に駆り出されることが多い。戦に身を置けば、心を凍らせてないと仕事をこなせない。「目が合ったら首が落ちてた」は、それくらい俺が数多の人間の命を手にかけてきたということだ。
きっと、私の妻は厄介払いでここに来たのだろう。本来、見た目麗しく気立てが良いとされている次女と結婚するはずが、長女の方と結婚することになった。
次女の人柄は知っている。同じ学院出身だから。次女は外面がよく、裏で気に入らない者をいじめていたからひとまず安堵した覚えがある。
なら長女も人柄が妹に似たのかといえばそうではない。妻は家に来た当初、高貴な家柄にしては地味な色のドレスを身にまとい、自信がなさそうで常にうつむき、メイドがやればいい仕事を率先して行おうとする女だった。
それを私は許さなかった。妻に家事をやらせることをメイドに言いつけてとりやめさせた。地味なドレスでは気の毒だが妻の好みがわからず、とりあえず妻に似合いそうな白基調のドレスを注文した。のみならず、なにを与えればいいか分からないので高価なダイヤの指輪を与えた。そうしたら、「こんなに数々の品々にこの扱い、私にはもったいないです」と泣かれた。
顔を覆った妻の手は、高貴な育ちに似つかわしくなく荒れていた。
だから私は聞いたのだ。
「お前はなにが欲しいのだ?」
すると、妻は涙を浮かべて言った。
「なにも欲しくありません。貴方が私に優しさを向けてくださる、それだけで私の欲しいものは手に入りましたから」
妻はいわゆる妾の娘だという。妾であるがゆえに冷遇され、使用人のような扱いを受けてきたとのこと。だから、人に優しさを向けられるのは初めてだ、とのこと。
私は目の前の妻の境遇が許せなくて、妻がいじらしくて思わず妻を抱きしめた。
いっぱいの時間はいらない
肩や腰が痛い時間もいらない
つまらない時間もいらない
寂しい時間もいらない
物欲もいらない
欲という欲全ていらない
何もいらなくなったら呼吸すらしなくなるのかな
なんか病んでるみたいで嫌な文章になった