『やわらかな光』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
やわらかな光
忌々しい電子音が鳴り響く午前6時。
10月にはいった、といっても気温は夏頃とほぼ変わらないから、布団の恋しさはまだないので、まだ起きやすい。あくまで"まだ"だ。
緩慢な動きで体を起こして、太陽を睨む。気温は変わらないが、こいつの日の出の時間は遅くなってしまった。
夏は鬱陶しいと思うほど輝いていたのに、今はその輝きが半減している。しかも今日は土曜出勤。本当に会社を爆発したい。マジレスすると爆発したら自分が生きていけなくなるから困るんだけど。
身だしなみを整えるのも程々にして家を出る。
やる気のない挨拶が、部屋に淋しく響いた。
暖かい光に包まれて、目を覚ます。まだ寝ぼけているが、昨日帰ってきて、酒を飲み、そのまま寝落ちしたのを思い出した。となると今は日曜日。あの忌々しい電子音もならないし、日光に冷たさは感じない。昼間と朝の中間の、やわらかい、暖かい光だ。
ゆっくりと息を吸って、寝返りを打った。
最高の二度寝日和だな……。
やる気のない声が、部屋に溶けていった。
かつて共にいた人を思う日は、唐突に訪れる。動いていた心臓を知らずとも、生きていた言葉があったことを誰が覚えているのだろう。あの日、同じ時間に同じだけ思考を攫い、なにでもいいと心の内を曝け出す、臆病なんて知りもしなかった夜のこと。なにとはなしに探し、それをグラスの波紋を眺めるようにして見遣ることができたあの日のこと。救われたかと言われれば、きっとそうじゃない。救われずともよかったから。それを求める人間はそこにいなくて、感情の発露をただ愛せる人がいただけだった。そして、愛せた人からいなくなっていった世界だった。やわらかな光を思う。生きた言葉が、いつか死んだ大地に根を生やし、だれかの木漏れ日になるように。たぶんそうやって、あそこにいたひとたちは、いまも生きている。
やわらかな光
やわらかな光が窓から射し込む、そんな心地が良いある日。
俺は久しぶりの、予定のない休日をだらだらと満喫していた。
というのも、床に寝っ転がって、暖かい日差しを浴びて。
うとうととしていた。
……が。
「もう、そんなトコで寝ないでよね、邪魔」
なんて。
洗濯カゴを持った恋人に、心底嫌そうな顔を向けられる。
でも、そんな顔も可愛いとか。
なんて、思ってしまうんだから、俺は相当な親バカならぬ、恋人バカってヤツなんだろう。
「何、ニヤニヤしてんの、気持ち悪い」
そこ、動かないんだったら、これ落とすよ、と。
彼がニヤリと笑って、持っていた洗濯カゴを更に持ち上げてみせるから。
「っ、ちょっ、それはダメ。危な過ぎ」
ちゃんとどきますから。
そう、慌てて起き上がる俺を見て。
彼は満足そうに笑って。
「ついでに、洗濯干すのも手伝って。わかった?」
「……はいはい。わかりましたよ」
可愛くて、強い、俺の恋人にはどうしたって敵わない。
そんなことを実感をした、休日だった。
End
見上げてみれば、色付いた葉が、陽光を受け止めて、白飛びしている。
赤を簡単に白くするほど、強い光は、木々の中で錯綜して、地面に届く頃には木漏れ日に、落ち着いてた。
木漏れ日にもぐって、ぼくの前をすすむ君も、落ち着いてる。
「まだ、ちょっとアツいね」
気まぐれなふうを装って、ふっかけてみた。
君は、スックスックと歩きながら、首を回してぼくを振り返る。
銀杏並木の道のりは、偶然貸切状態。
そんな特別を、木の葉が風にそよぐ音だけで乗り切るのは、寂しかった。
「たしかに、ハダアツい。
……風はもう冷たいんだけどな」
言い終わり、にっこり笑ってまた前を向く。
「今日はあまりふかないね、風」
自動車が、昼日を鈍く反射させ、ぼくにギラっと浴びせてくる。
自動車が起こす温風が肌を撫で、そこを反射光に焼かれるもんだから、ぼくの右半身がチョコ味っぽくなるのも時間の問題だ。
アスファルトを擦り走る音を残して、車はまた一台、また一台と過ぎ去っていく……
この道は、よく車が通る。この先に住宅街があって、ぼくらの背にはバス停がある、というのが、大体の理由だろう。
かくいうぼくも、先の住宅街に部屋を借りたばかりだった。
……家。
ぼくと、ぼくの前を歩く君が目指してるのは、そう、ぼくの家だ。
ようやく始まった一人暮らしで、初めて君を招くんだ。そう考えると、背中にジワっと熱がほとばしった。手を握ってみると、水っぽい手のひらが指先を受け止める。
緊張するな、意識するとな……
大袈裟に歩幅の小さくなったぼくを、君は知らずにズンズン前を歩いていく。
そういえばぼくの家を知らない君が前を歩いてるって、おかしくないか。
「この頃は、難しい季節だよなー……」
考えてたぼくは、君の気まぐれな言葉で一旦止まった。
前を見直してみる。君が立ち止まっていた。ハラリと落ちた銀杏がひとつ、君の足元に落ちる。この機会に、追い抜こうと過ぎったが。
ぼくは足を止めた。
「……どうしたの?急に立ち止まっちゃって」
君の顔を覗こうと、体を傾けてみる。
見えそう、というタイミングで、丁度君が振り向く。
ぼくを見上げるその目は、木の葉の影に沈んでいたけれど、白い頬はやわらかい陽の光に包まれて暖かそうだった。
「……疲れた、」
だっこしてくれ、と、腕まで伸ばしてねだってくる。
体を傾けているせいで垂れたマフラーを君が握って……ぼくの首を引き寄せた。
「……へ」
君の顔が急速に近づいて、ぼくの顔に接近して……!
「あ……」
ぼくの耳を通過してった。
「ん。もちあげてくれよ」
君は、ぼくの首に腕を回している。
こんな道の真ん中で、ハグのなりそこないみたいな体制で、ぼくは、……
「……?おい、アンタ耳、まっかだぜ?」
「〜〜もぉ〜っ!」
「うおうおうお……」
肩を、押し返してやった!
ちょっとよろめいていたが、ぼくも反動でよろめいたんだ、おあいこだ……
っいや、いやいや!ぼくのこの、この!いじめられ傷つき、踏みにじられた心は、君をよろめかしたぐらいで“おあいこ”にはならない!
……フーッと吹いてきた風に、ハラ、ハラ、と銀杏が落ちてくる。君に引っ張られたせいで少し形が崩れたマフラーも、風にのって揺れた。
「ど、っどーしたんだよ、いきなり」
やけに動揺した瞳でぼくを見つめている。ぼくは肩で息をしながら、君を見つめて黙っている。
車が、ぼくらの右隣を立て続けに過ぎ去って……落ちてく銀杏が、車の通過風でクルクル踊って……
停止してるぼくらの間を、世界はフツーに流れてく。
「……」
「…………」
「………………」
「………………………」
ぼくらの停止時間は、君がこてんと首を傾げたことで終わった。
なんだよその目、ずいぶん不安げだね……
君はぼくの動作に目の色を変えたが、ぼくは気にせず、姿勢を正した。
「だっこはしない、ホラ、君先、歩いてよ」
君は、上目遣いにぼくを見上げていたが。
ぼくの言葉を聞くと、しっかり顔をあげて「ヘンなヤツだな」とにっこり笑う。
そしてまた、ぼくに後ろ姿を見せて、目的地もハッキリ知らないないのに、先陣切って歩いてくれる。
「……これで、おあいこだよ」
銀杏から零れる陽の光が君とぼくをささやかに照らして、ぼくのちいさなつぶやきは、車の通過風に踊った。
こんな銀杏並木を、貸切状態で君と歩けるんだ。景色と君を、写真になったつもりでこの目に焼き付けなきゃあ……君を駅まで迎えに行った張り合いがない。
だから先を歩いてほしいや。
柔らかな陽光が降り注ぐ
太陽の光だ
その光と熱は、何を地球に齎すのか
人類の希望の光となりて、日々を彩っている
何度か死後を妄想したことがある。死後と言うと、天国や地獄がどのようなものかと勘違いされるが、そこでいかに暮らすかではなく、死んだ直後どのように天国や地獄に運ばれるかというものについてだった。
それは妄想を超えるはるかに美しく、人類に希望を与えるものだった。私は特段良いことをしたつもりもなかったが、それでも大天使と形容するに相応しい美しい女性が、厳かに、やわらかい光と共に現れるその光景を見て、地獄に行くと思う者はいないだろう。
死というものは、生の終着点であるが故に恐怖される。ただ、死の後にこの光景があることを知っているならば、死も恐れずに済むのだろうが、それを生者に伝えるすべをもう持ち合わせていなかった。
何のために願い
何のために祈るのか
見下ろす度に疑問に思う
絵空事に縋って
心の拠り所にする
愚かなのか哀れなのか
私には分からない
しかしそれで救われるのなら
糧になるのなら
私はそれに応えたい
ある神の記述書
第一部二章一節二項より
【やわらかな光】
やわらかな光に溶けているように見えて、
やわらかな光、そのものである君の横顔。
境界線はどこへ行っちゃったのかな…?
・やわらかな光
オレンジ色の光に照らされた水槽と、その中で静かに佇む1匹の亀。
今日も人工の太陽を拝んで1日を過ごす君が愛らしくて仕方ない。
今度の休日は一緒に日向ぼっこしたいね、と自宅に届いた電気代の支払い用紙を見ながら心の中で思うのだった。
「本棚見ながら光に関係するものを探してたワケ」
光を放つ職業、光を放つ元素、光を放つ気象現象。
湯気にけぶる銭湯の光も、「やわらかな光」には違いないだろう。某所在住物書きは考えた。
「ふと、ヘンな生き物を紹介してる本が目に留まってさ。『チョウチンアンコウも光るじゃん』と」
海底に光を投じるチョウチンアンコウ。食用にはならぬらしい。そもそもどうやって深海魚から「やわらかな光」のネタを書くのか。
「チョウチンアンコウ鍋、閃いちまってよ……」
で、結果、こうなった。 物書きは言う。
つまり料理ネタであった。
意外と食い物の物語は、万能なのかもしれない。
――――――
今回のおはなしの冒頭は、暗い海の底からお届け。最近最近のお話です。某海域のおはなしです。
マリンスノーの降りしきる、陽光届かぬその場所に、ゆらり、ゆらり。ゆらぁり、るらり。
小さな、柔らかな光を投げるものが在りました。
チョウチンアンコウです。
ゆらり、ゆらり。ゆらぁり、るらり。
チョウチンアンコウは疑似餌の光を、柔らかく、怪しく振りまして、愚かな餌を誘います。
何も知らない愚かな餌は、知らないうちに口の中、バックン!丸呑みに、食われてしまうのです。
さぁさ、おいで、疑うことを知らぬ馬鹿な餌ども。
チョウチンアンコウは泥に隠れ、次を待つのです。
ところでさっきから泥が動いちゃいないかしら?
ずずず、ずりずり。ずずず、ガリガリ。
何かがチョウチンアンコウを、隠れている周囲の泥ごとさらってゆきます。 底引き網漁です。
底引き網を知らない深海魚は、知らないうちに編みの中、ずるずる。漁獲されてしまったのです。
さぁさ、おいで、海底に住まう魚たち。
底引き網は泥をまいて、回収地点へ向かうのです。
ところでチョウチンアンコウ、「アンコウ」なのに食用にはされないそうですね?
…――「で、アタシはそれを知ってて、大師匠に『チョウチンアンコウはアンコウじゃありません』って、言ったのによぉ……」
場面と日付が変わりまして、都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家、来客用お座敷のド真ん中。
客にして同業者であるところの呑んべぇが、ちょこんとお行儀よくお座りしてる子狐の目の前に、
旅館でよく見る黒い小鍋と固形燃料のセットを出して、着火男、もといガスマッチで火を灯しました。
コトコト、かたかた。味噌ベースで組まれた煮汁は、よい匂いを伴って、小鍋のフタを揺らします。
呑んべぇ、ぽつり言いました。
「『アンコウに変わりねぇだろ』、だとさ」
え?「呑んべぇで野郎口調のキャラを、過去作10月13日投稿分あたりで見た」?
気にしてはなりません。細かいことは、ただ過去作へのスワイプが面倒なだけなのです。
ゆらり、ゆらり。ゆらぁり、るらり。
小鍋を温める固形燃料が、やわらかな光を揺らします。青い固形から赤い炎が、やわらかく穏やかに、揺れ上がっています。
「アンコウ。キツネ、食べたことない」
ゆらり、ゆらり。ゆらぁり、るらり。
火よりも鍋のフタ、上がる湯気をガン見してる子狐は、どうやら稲荷の不思議な不思議な子狐らしく、言葉を喋ります。
「まだ?もう、たべていい?」
美味いものはなんでも好きな子狐なので、味噌の香りにヨダレと幸福度と期待が爆発。
ぶんぶんビタン、狐尻尾が業務用扇風機よろしく、高速回転しています。
「おまえ熱い汁物大丈夫?」
呑んべぇが、子狐に聞きました。
子狐は秒で即答しまして、つまりコンコン。
「ちょっとネコジタ」
コトコト、かたかた。小鍋はよくよく煮えまして、チョウチンアンコウ鍋のできあがり。
呑んべぇはどこからともなく酒瓶3本取り出して、
子狐はヒノキのおひつから山盛り白米取り出して、
それぞれお揚げさんだの酒盗だの、いなり寿司だのたらこだのをオトモに大宴会。
つい先日まで海底で、やわらかな光を揺らしていたチョウチンアンコウは、呑んべぇと子狐の腹の中。
「やわらかな光」とチョウチンアンコウのおはなしでした。 おしまい、おしまい。
やわらかな光の
電球色の下
美味しそうに見える
🆕三角チョコパイ
おいもとキャラメルを
食している
美味しかった〰🤭
やっぱり秋はお芋だね🍠
✴️182✴️やわらかな光
貴方と生まれるかもしれないその遠い子孫の類似点は薄まった血くらいだが、貴方が西の空を見上げて見える彗星は、8万年後の子孫が先祖を思う光になるかもしれない。貴方と8万年後の子孫だけが通えるアウラ的存在を特別に思いたい。
やわらかな光が僕を照らし、それにつられて目が覚めた。
全く知らない場所だ。具体的には多分雲の上。寝てた所がどう見ても雲だし。
このやわらかい光ってアレだろうか。こう、死んだ人を包み込む神秘的なアレコレなんだろうか。
周りが全体的に眩しいのに全然不快じゃないのが凄い。全然僕の置かれた状況が分からないからもう一眠りしようか。
そう思ってパジャマを軽く整えて寝ようとした所に、ぽすぽすとこちらに向かってくる音がした。
「あ、やっぱりいる!やべぇやべぇやべえって!」
見ると、白い布を下半身だけに巻いた細マッチョなイケメンがこっちに走って来ている。
「ちょ、ごめん、ここで寝る前に帰って!君はまだ早いから!」
ゆっさゆっさと身体を揺らされて、流石に止めてほしくて蹴りを入れる。
綺麗に鳩尾に入って、彼はゔっ、と唸って崩れ落ちた。
「あと5分、あと5分でいいから……」
「い、いや寝てる場合じゃないんだよ君……あーもう仕方ない!」
再び寝ようとした僕の首と足首を持ち、イケメンは僕をぶん投げた。
さっきまで僕が寝ていた雲のような地面をすり抜け、僕は落下していく。
「うわぁぁぁぁ!?」
「今回は本当にごめん!!今のままならまたこっち来れるから頑張って!!」
「いや状況が読めないんだけどぉぉぉ!!」
不快な光で目を覚ます。知らない天井の光は、さっきまで感じていたやわらかい光と似ても似つかない強烈な物だった。
どうも僕は寝てる間に外出し、車に轢かれたらしい。幸い怪我は軽症で済んだ。車の運転手曰く超綺麗な受身を取ったそうで。夢遊病の症状だろうと言われた。
つまりあの雲の上での出来事は臨死体験ということか。その割には神様っぽいイケメンはかなり若い様に見えた。新人さんだったんだろうか。
とりあえず、睡眠外来へ相談に行こうと思った。
お題:やわらかな光
カーテンの隙間から覗く白む空
一度は眼も開きかけるも
予定調和の二度寝
再び夢の中
もう起きたくない晩秋の朝
(やわらかな光)
d!の薔薇話です。
苦手な方はほんとごめんなさい
公開されるって知らなかった💦
日が昇る少し前 ,
まだ空は暗い時間 .
ふと意識が起きた .
目を開けて見れば ,
隣には愛してやまない彼がいた .
ただその日常の些細な幸せが ,
何よりも嬉しくて ,
可愛らしい寝顔を晒す彼に抱きついた .
彼の体温が伝わる .
少し低めで ,
でもどこか温かい .
彼らしい , 彼の体温 .
また段々眠気が起こる .
「おやすみ」
小さく呟いて ,
私は再度眠りに落ちた .
「ん … 」
嗚呼 , 現実だ .
今度は外がとても明るくて ,
カーテンから差し込む光が
とても眩しい .
でもどこか , 優しくやわらかな光は ,
彼を思わせる .
懐かしい夢を見たからか ,
あの頃を懐かしんで ,
感傷に浸る私がいる .
もう泣かないと決めたと言うのに .
しかしまぁ ,
今日ぐらいはいいだろうか .
なんてったって , 今日は彼の命日なのだから .
久しぶりに戻らない日常を振り返って ,
頬に涙を伝わせる .
戻らないとわかっているから ,
やり直せないと分かっているから ,
ああしておけば ,
ああ言っておけば .
伝えていれば ___ ,
「泣かんで」
ふと背中に彼の体温を感じる .
夢でも幻でもない .
彼の声 , 彼の体温 .
思わず振り返ったが ,
そこには誰もいなかった .
嗚呼そうか ,
彼は逢いに来てくれたのだ.
夢の中でも , 現実でも ……
「ゾムさん , 大好きです」
涙を無理やり引っ込めて ,
嗚咽混じりに呟いた .
それに応えるようにして ,
空いた窓の隙間から ,
優しい風が流れてきた .
彼は , どこまでも優しい .
いつまでも ,
いつまでも ……
彼は愛おしい唯一の人 .
お題:やわらかな光 2024.10.17
うつし世をぢつとハシビロコウ不動
「鋭い眼差し」
涼風至る親子ハンタームーン
八万年後の彗星目指す
「やわらかな光」
やわらかな光
これは実話なんだけど
子供の頃に母親と二人で寝ていたら深夜2時位に金縛りにあった
生まれて初めての金縛りで声も出なくて
怖いから目を瞑ってやり過ごそうとした
そしたら台所の方から包丁とまな板がぶつかる
「トントントントン」
って音が聞こえてきて
あぁ、お母さんがお弁当作ってくれてるのかな…
と思ったけど
横を見たらお母さんの寝顔があった
じゃあ今台所にいるのは誰だろう
そう思ったら急に怖くなってまた目を瞑った
そしたら今度はその「トントントントン」っていう音が少しずつ近づいてきた
台所…リビング…寝室…そして寝ている私の耳元
右耳で鳴り響く音を聞きながら
私もしかして死ぬのかな…なんて考えが浮かんだ
そしたら、目の前が急にオレンジ色に光った
目を瞑っているから真っ暗なはずなのに
不思議と眩しいとは思わなくて
むしろ安心感のある光だった
その光が消えた瞬間
耳元まで来ていた音は消え
金縛りもなくなった
私は慌てて起き上がってバクバクうるさい心臓に手をあてた
何が起こったのかは分からないけど
あのやわらかな光が私を助けてくれたのは分かる
手を合わせて心の中でお礼を言った
そしたら耳元でまた音が聞こえた
「チッ」
やわらかな光にまどろむ君
お腹いっぱいで
スヤスヤ寝てる
頭を柱によりかからせて
横向きに足を投げ出して
君を見つめる幸せが
いつまでも続きますように
やわらかな光…
…を浴びたいがほぼeverydayブルーライトだもんなァ〜
やわらかな光
暖かい穏やかな太陽は
安らぎとなって
懇切丁寧に
目に光をさすので
誰かの目も、
同じように柔らかくなるのでした
それは縋りたくもなれば
踏ん張る選択肢もできれば
這い上がる未来にもなるのでした