遠井一人

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やわらかな光が僕を照らし、それにつられて目が覚めた。
全く知らない場所だ。具体的には多分雲の上。寝てた所がどう見ても雲だし。
このやわらかい光ってアレだろうか。こう、死んだ人を包み込む神秘的なアレコレなんだろうか。
周りが全体的に眩しいのに全然不快じゃないのが凄い。全然僕の置かれた状況が分からないからもう一眠りしようか。
そう思ってパジャマを軽く整えて寝ようとした所に、ぽすぽすとこちらに向かってくる音がした。

「あ、やっぱりいる!やべぇやべぇやべえって!」

見ると、白い布を下半身だけに巻いた細マッチョなイケメンがこっちに走って来ている。

「ちょ、ごめん、ここで寝る前に帰って!君はまだ早いから!」

ゆっさゆっさと身体を揺らされて、流石に止めてほしくて蹴りを入れる。
綺麗に鳩尾に入って、彼はゔっ、と唸って崩れ落ちた。

「あと5分、あと5分でいいから……」
「い、いや寝てる場合じゃないんだよ君……あーもう仕方ない!」

再び寝ようとした僕の首と足首を持ち、イケメンは僕をぶん投げた。
さっきまで僕が寝ていた雲のような地面をすり抜け、僕は落下していく。

「うわぁぁぁぁ!?」
「今回は本当にごめん!!今のままならまたこっち来れるから頑張って!!」
「いや状況が読めないんだけどぉぉぉ!!」



不快な光で目を覚ます。知らない天井の光は、さっきまで感じていたやわらかい光と似ても似つかない強烈な物だった。
どうも僕は寝てる間に外出し、車に轢かれたらしい。幸い怪我は軽症で済んだ。車の運転手曰く超綺麗な受身を取ったそうで。夢遊病の症状だろうと言われた。
つまりあの雲の上での出来事は臨死体験ということか。その割には神様っぽいイケメンはかなり若い様に見えた。新人さんだったんだろうか。

とりあえず、睡眠外来へ相談に行こうと思った。

お題:やわらかな光

10/17/2024, 2:50:37 AM